神の使徒と希望のヒカリ 作者/乃亜 ◆uz.dYBj786

「お母さん―・・」


恐怖が体の中に存在した。

           でも

不思議と恐く無かった。

        理由は

             分かった



+31夜+【屍】




「お母さん―・・?」

恐怖に怯える声は

私でも分かった。

頬に生暖かい物が流れ、頬が濡れる。 


「アハハハハ!!ツイニバレチャッタ・・!コナル!」


少しだけど覚えている声が在る。



「お兄ちゃん・・?お兄ちゃんなの・・?」



違う、違うと

心の中で叫び続けていた。

でも次の言葉で私の思いは

一気に崩れ落ちた。



「アァ!ソウダヨ!コナル!サァ!オ兄チャンニコ.ロサレテクレ!ボクハモウコノ衝動ヲ押サエルノニ必.死ナンダヨ!サァ!」


その時、体がいきなり揺らめいた。

意識が遠い―――

ドクドクと心臓が音を発てる。

血がポタポタと滴る。

「ぁ・・」

腹には目の前のアクマと呼ばれていた物が私の腹に大きな爪の様な物を刺していた。

不思議と痛みは感じない。

とても気持ちが良い。

「ああ・・・私、もう少しで死.ぬんだ・・」

ふと口から言葉が出た。

                       トコロ
「ソウダヨ・・コナル・・コナルモ、オ母サント同ジ天国
ニ・・・」





「・・おい、ソイツを離せ。」



   声が 聞こえた気がした。


 私は目の前のアクマをいつでも壊す事は出来た

 
           でも

 アレはお母さんとお兄ちゃんだから

   殺.せなかった。


―――――ザシュッ


目の前のお母さんとお兄ちゃんは

無残に切り裂かれた。

「お兄ちゃ・・!お母さん・・!」


私の声は届かなかった。

いきなりお兄ちゃんとお母さんは光を放った。


そして


天へ消えた



私の後ろには

神田が居た。


その時の私は感情を抑える事が出来なかった。

私は神田の首元を掴むと叫んだ




「どうして!どうしてお母さんとお兄ちゃんを殺.した!?」


ポトン・・ポトン・・

涙が服に滲み、黒い染みになる。


「返せ・・!私の・・ッ!お母さんとお兄ちゃんを・・ッ!返せ・・・返せ・・・!!」



無理な事は分かっていた。

でも気持ちの整理がつかない。

落ち着こうとしても、体が言う事を聞かない。



温かくなった。



「・・・・すまない・・・」



神田がゆっくりと私を抱きしめた。





――――もう涙は止んでいた。


私はまた涙を流した。


「わぁぁぁぁぁぁ・・!!」







 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


それから私は黒の教団へ連れて行かれた。

私はまだ神田に対して憎しみを抱いていた。

黒の教団でイノセンスとアクマの説明をしてもらった後

アクマの最後は壊すしか無いと言う事を知った。





神田に「ゴメン」を言いたかった。


もう憎しみは消えていた。



神田はその時、教団の冷たい廊下を歩いていた。

瞳は哀しい色をしていた。


私は神田の肩をたたいて言った。



「ゴメン―――――・・・」




その時の

神田は少し笑った気がした。






そうだ


忘れていた人は

この人なんだ


私が愛していた者は



この人なんだね―――――