神の使徒と希望のヒカリ 作者/乃亜 ◆uz.dYBj786

      嫌な予感。

       それは当たっていた。



+30夜+【―紅―】




あの神田と言う男と別れてから一週間。

母は前より少し顔色が悪くなり

前ような笑顔を見せなくなった。

笑顔を見せたといえば

たまに体が凍りつきそうな笑顔を見るだけだ。

嫌な予感はまだ続いていた。


    そして ついに

     嫌な予感は

     現実になってしまった。



         +

その日は

危険に侵されながら隣町まで母のクスリを買いに行ったため、ついつい疲れて、昼間から寝てしまっていた。

         +


「ん~・・・」


ゆっくりと毛布から顔を上げた。

目の前には大きな満月が光り輝いていた。

もう、夜だ。


「寝ちゃってたかなぁ・・・」

まだ体温で温かい毛布は、月の光に照らされていた。


いつも母と二人だけで居る部屋は

月に照らされ、少し寂しげに見える。


「―――――あれ?」


母が居ない。

いつも あの硬いベッドで寝ている母が居ない。


――――タッ

私は何故かステッキを掴むと、外へ走り出た。







外は月の光でいっぱいだ。

何もかもが影と光に分かれている。


「お母さん・・ッ!」


昼間と違い、人が居ない町並みは少し恐怖を覚えた。


「何処・・ッ!?お母さん・・!」

クタクタになっている足を無理矢理走り出させる。

「お母さん!お母さ・・・ッ!!」

息も切れ始めた時だった。



「・・・・おかあ・・・さ・・ん・・・」


目の前には母が居た。

いつも寝たきりの母が。


「どうしたの?コナル。そんなに走って。」

母はいつもとは違う優しい笑みを浮かべた。

「お母さん・・・・ッ!」

私は光に照らされた母を抱きしめた。


「コナル・・どうしたの?」

「ううん・・・何でも無いの・・・」

ゆっくりと母の洋服に顔を沈める。


――――ぬちゃ・・

嫌な音がした。

頬に付いた生暖かい物を手に取る。


      それは

       紅色の血だった。

「お・・かあ・・さん・・?」

体が無意識の内に震えていた。


「どうしたノ・・?コナル・・?」


    オカシイ。

私の脳はそう体に訴えていた。


恐怖でいっぱいになっている体をゆっくり母から外すと、母の後ろを見た。


母の後ろには――――


     沢山の屍があった。


嫌な予感が的中した。

恐怖で体が動かない。

「ドウシタノ?コナル。ドウシタノ?コナル。ドウシタノ?」

母の虚ろだった目がグルグルと回る。

何度も何度もその声が耳の中に響く。


――――バリッ・・・

鈍い音が鳴り、母の皮がいきなり破れた。


「あ・・あ・・ああ・・」

恐怖と哀しみで声が出ない。



―――――そう


    私の目の前には


     レベル2ノアクマガイタ。