すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-
作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI

【harmony.8*THE☆吹部の華!】
明るく軽快な音が教室内に響く。
ここ二年A組は放課後、トランペットパートの練習場所と化す。
―――と、いうわけで!お久しぶりです、有泉凜です!
この小説、各パートとかそれぞれのキャラにスポットライトを当ててるから主人公といえども出番が少ないんだよねー。
主人公とは名ばかりだよね。
そんな感じでこの小説ももう八話。
やっと吹奏楽の華といわれるトランペットパートにスポットライトが当たります!
最初の方に書きたかったんですけど、全学年そろったパートから話を書くのでパーカスの方が先になっちゃいました。
まぁ、誰も見てないからいいですよね☆
ってことで、第八話です!!
「あ、美玲。いいところに来たじゃない。これ先生に持って行ってくれないかしら」
私―――美馬美玲が音楽室に入ると、みさちゃんが今度のコンクールで吹く曲のスコアを私に手渡した。
ちなみに、みさちゃんとはファゴットの川端下美咲の事である。
「あ、うん……」
「ありがと」
私の語尾を濁す返事に、みさちゃんは微笑んだ。
もう、頼まれたら断れないの知ってるくせにー!!
私は心の中でブツブツ文句を言いつつも、顧問の先生にスコアを渡した。
そしてようやく練習場所の教室にたどり着いた。
「失礼します」
私はドアに手を掛け中に入った。
すると、
「ですから、先輩!ドラ●もんの尻尾は黄色ですって!」
「だから違うって、大我。尻尾は絶対青だっつーの!」
目の前でいがみ合う女と男。
私は溜め息をつく。
「先輩、大我くん。真面目に練習してくださいよ。……それに、ドラ●もんの尻尾は赤です」
私は二人の方を見ずにムスッとしながら言う。
もう慣れたけど、さすがに疲れる。
……私の所属するトランペットパートは問題児を抱えています。
一人はいがみ合っていた二人の女の人の方、井鳥美香先輩。
いつもナチュラルメイクとまつ毛のカールを欠かさない。
二人目は男の方、新入生の沢登大我くん。
明るく元気でフレンドリー。
だが、二人には最悪の共通点がある。
「……せ、先輩も大我くんも練習しましょうよーっ」
―――真面目に練習をしません……。
先輩は寝るとかめんどいとかで結局サボるし、大我くんは大我くんで喋ってばっかりだし……。
でも練習しなくても先輩は部内で一、二を争うほど上手だし、大我くんは中学時代もペットパートでしかも部長だったらしく上手。
何でなんだろ……天性の才能というやつなんだろうか。
ちょっと悔しいです。
「えー練習ー?いいじゃん、明日すれば」
「だ、ダメですよ。明日もそう言うんですから」
私がそう言うと先輩は「しょうがないなー」とブツブツ文句を言いながら楽器を手にした。
そして、大きくブレスをとるとペットに息を吹き込む。
―――綺麗な音……。
この音が実は私の憧れだ。
私も練習しよう。
そう思い、私もペットを手にする。
「そうだ、美玲ちゃん」
ふと先輩は手を止めた
「何ですか、先輩」
私は先輩の方に視線を移した。
すると手にはペットに代わってビューラーが握られていた。
あのまつ毛をクルッとさせるやつである。
「まつ毛やっちゃダメ?」
まつ毛のカールをやり直したいのだろうか。
でも、先輩のまつ毛を見ると十分にカールしているように見える。
人には人の美意識があるからなぁ……。
「私に制止する権利はないので……ご自由にどうぞ」
私が言うと先輩はニーッと笑みを浮かべて、
「じゃあ、お言葉に甘えて」
私の頭を押さえて身動きが取れないようにした。
そして、私の顔に近づくビューラー。
……もう、嫌な予感しかしません。
「せ、先輩ぃ―――!!」
教室には私の叫び声だけが響いた。

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