すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.49*Because I am having wait for the helicopter today-私、今日ヘリコプター待たせてるから-】



「樹里音、一緒に帰ろうぜー」

「ごめん、大我。樹里音、今日ヘリコプター待たせてるから」

「へ、ヘリ!?……まぁいいや。じゃあ俺、つばさと帰るわー」

まただ。
また、あの子と話してる。
それが堪らなく嫌で、そんなこと思ってる自分も嫌で。
また一つ溜め息をついた。

私、三門理奈には中学からずっと好きな人がいる。
―――同じ部活で同じトランペットパートの沢登大我だ。
だが彼には仲のいい二人の幼馴染がいる。
フルートパートの深沢樹里音ちゃんとクラリネットパートの功刀つばさちゃん。
いつも三人は仲が良くて、私の入る隙なんてどこにもない。

でも、樹里音ちゃんは恋愛に全く興味ないみたいだし、大我くんの恋愛関係の噂も高校に入ってからは聞かない。
ただ、私聞いたことあるんだ。

功刀さんの好きな人は大我くんだって。

もしその噂が本当だとしたら、私に勝ち目はあるのかな?
多分……いや、絶対ない。

「りーなちゃん」

「わっ!?」

後ろから突然肩を叩かれすっとんきょうな声が出てしまう。
振り返ってみると、大我くんがいつもの笑顔でいた。

「大我くんかぁ……。ビックリさせないでよー!で、どうしたの?」

私は平常心を保ちながら聞く。

「つばさ、知らない?何か見当たらなくてさー」

大我くんの言葉に私は夏休み中は鞄置場と化している、ここ―――三年B組の教室を見渡してみる。
ホントだ。いない。
……あ、そういえば、

「功刀さんなら確か、ノート出しに生物準備室に行ったと思うよ」

さっきそんなような事を樹里音ちゃんに話して教室を出て行ったっけ。

「ねぇ、理奈ちゃん。生物準備室ってどこだっけ?」

大我くんはしれっとした顔で言う。
今は八月。
つまり入学して五カ月ほどたっている。

「いい加減、覚えな……」

私はそこまでであることに気づいた。

―――これ、チャンスじゃない!?
確か私の鞄には功刀さんと同じく出し忘れのノートが入っていたはず。
これを利用して、「私もノートだしに行くところだったし、大我くん一緒に行かない?」みたいな感じで自然に二人っきりの空間を作れる!やばい!完璧!

「ねぇ、大我くん」

そうと決まったら即実行!
あとはさっきのセリフを……!

「わ、わたわた私もノートだしに行くところだったし、大我くんも……い、いいいいぬあbcばlyvcべbygsyf一緒に行かないっ!?」

……も、もう死にたいィィィィィィィィ!!