すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.27*貧血と修学旅行!】



「部活へのお土産何買おうかなー!!」

俺の前の方の席で貴家さんがいつもの数倍トーンの高い声ではしゃいでいる。
今は二泊三日の修学旅行先の北海道に向かう新幹線の中。
席は電車などによくある四人で向い合わせられるタイプのヤツだ。
クラス関係なく適当に座るので、前の四人は貴家さん、米長さん、青山さん、箭本さん、こっちの四人は悠、瑛太、雅人、そして俺―――飯室詢と吹部が固まっている。
ちなみに後ろの四人は井鳥さん、今藤さん、南梨さん、小尾さんとこれまた吹部である。
ここに名前の出ていない町浦さんは単独行動でもしているのだろう。
せっかく部活の事忘れて遊ぼうと思ってたのに。
別に部活が嫌なわけじゃないけど、たまには羽を伸ばしたいだろ?
まぁ、そんな幻想は打ち砕かれ、新幹線は北へと進む。

「詢くん、トランプやろうよ」

俺がボーっと窓枠の向こうで流れる景色を見ていると瑛太が言った。
その口にはやはり飴玉が。
そしてその隣に座る雅人の口にも飴。
……飴キャラ率高ぇ。

「いいけど、何やるんだ?」

俺が言うと瑛太はカードを切りながら答える。

「“エクステリアーゼ・クレイセル”」

「何それェェェ!!何、俺だけが知らないの!?みんな知ってるの!?」

俺が残りの二人に同意を求めると、二人は不思議そうな顔で俺を見つめ頷いた。
え、マジで俺だけが知らないの!?それってそんなにポピュラーなカードゲームなの!?

「悪い。誰かルールを説明してくれないか?」

仕方がない。ここは情報を得なければ。
すると雅人がもう何個目か分からない飴を頬張りながら、

「説明しよう。エクステリアーゼ・クレイセルとは―――」

……エクステリアーゼ・クレイセルとは、遡ること数世紀、中国あたりで生まれたカードゲームだ。
このゲームの起源にはこんな説がある。
ある一人の木こりが仕事の休憩中に木の皮に数字を書いたものを使い、同じ数字が二枚揃うとその皮を自分の手札から引いていき最終的に手札が無くった方が勝ちというものを妄想上のグラマラスな美女と行ったことが始まりとされている。ちなみに金髪だったそうだ。
その時の木こりの心情、
“え”!?何この人マジ美人!!
“く”ーりすーまーすが今年もやぁーってくっるー♪
“す”っげぇ、俺マジ木こりでよかった!!
“て”、もしかしてコレ夢オチなんじゃ……。
“り”んしょう体験とか!?
“あ”、でも俺、体透けてねぇしなぁ。
“ー”――もう、いいや!これは現実!
“ぜ”ったいそうだ!そうに決まってる!
“く” ーりすーまーすが今年もやぁーってくっるー♪……あれ、二回目?
“れ”んこん食べたいなぁ。
“い”ちごでもいっかなぁ。
“せ”んたくばさみーにょ!……お、これ流行語大賞取れるんじゃね!?
“る”って難しくない?
という十三分の頭文字から名前を取って“エクステリアーゼ・クレイセル”と言う名前になったと言われている。



―――……うん、何かツッコんだら負けな気がする。