すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-
作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI

【harmony.53*Five minutes!】
「せーのっ!」
私達、六人はチャイムを持ち上げる。
不安定で怖いです。落としたら土下座じゃすまないな……。
吹奏楽部員全員が見てるから言い逃れも出来ないしね。
途中、いい天気だったり(関係ない)、川端下先輩のブロッコリーが落ちていたり(濡れ衣)、秋さんの腕が折れていたり(嘘)しながらも、やっとの思いでトラックに積み込みます。
「郁花先輩、これで全部ですか?」
チャイムをトラックに乗せた後、川端下先輩が訊いた。
米長先輩はトラック内を見渡しながら楽器を確認する。
そのとき、井鳥先輩が、
「郁花、ティンパのSは?」
ティンパとはティンパニーの略称で打楽器の一種。
S、M、L、LLと色々なサイズがある。
井鳥先輩が言っているのはSといって一番小さいものだ。
「S?……あ!ホントだ!」
それを聞いて米長先輩はもう一度トラック内を確認する。
そして、こちらに向き直って、
「ティンパのSが無い!……加賀美、あたしらが乗るバスの時間は!?」
「えっ!?あ、えっと……十時半。今は九時五十五分だから、あと五分しかないよ!」
加賀美先輩はかなり焦った表情で返した。
「あと、五分……先輩、どうします?」
加賀美先輩の言葉を聞いて不安そうに千紘ちゃんは言う。
米長線先輩はしばらく黙った後、口を開いた。
「どうするも何も持ってくるしかないじゃない!えっと、誰にしようかな……綾瀬くん、凜ちゃん!急いで取ってきて!!」
米長先輩は大声で指示を出した。
―――……って、私!?

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