すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.17*ハイテンションとヘタレ】



「あれ?まだ加賀美だけ?」

俺が音楽室のカギを開け、ピアノ椅子の上でくつろいでいると同級生の貴家が入ってきた。

「うん、皆まだHRがあるらしくて遅れるって」

貴家はふーんとだけ言って鞄をピアノの横に置いた。
さっき言った通り他の三年生はクラスのHRが終わっておらず、まだ来ていない。
俺と貴家はそれぞれ皆と違うクラスなのでここにいる。

ちなみに今、凄く気まずい。

実は今まで一緒のクラスになったことがなく、そんなに関わりがなかったせいか、俺と貴家の関係は極めて薄い。
貴家は明るくフレンドリーなイメージがあるが、実は極度の人見知りだと米長さんから聞いたことがあるし、俺は言わずもがなチキンなので無言に包まれる音楽室。
もう、さっさと練習しろよぉ―――!!気まずいんだよぉ―――!!

……と、念じても当然動いてくれるはずもなく。
仕方がないので俺が動こう。最初からこうすればよかったんだ。
そう思いながら立ち上がると、貴家が気まずそうな表情をする。

「……加賀美、話があるの」

そのとき貴家が口を開いた。
俺は貴家の方を向く。

「今まで言おうか言わないか迷ってたんだけど……」

貴家は俯きがちに言う。その顔は赤い。
え、何これ、もしかしてこれが俗にいう・・・・・

告白フラグ―――!?



俺の心臓が高鳴る。
別にずっと好きだったわけではないけど……そりゃあ、美人に告られるって思うと、ね?

「ズボンのチャック開いてる!!じゃ、私練習してくるから!!」

彼女の言葉と音楽室のドアが閉まる音と共に俺の青春は儚く散ったのだった。