すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.58*手と手。】



どうも、有泉凜です。
先輩方に置いて行かれてから五分ほど。
やっとバスに着きましたー!!感動!!

ですが、

「乗れぬ……」

視界に映るのは出勤時間とちょうど重なり、満員になったバス。最悪。
どうやって乗るの、これ。

「有泉、こっち!」

私が困り果てていると網倉の声が。
ただバスの中にいるのか姿が見えない。

「網倉、どこにいるー?」

私は彼の名前を呼ぶ。
すると、人ごみの中から見覚えのある顔が。

「あ、いた!おーい、あーみくーらくーん!!」

私はその顔に手を振る。
すると私に気が付いた網倉は少し困ったような顔をしながら、こちらに駆け寄ってきた。

「公衆の面前で大声で名前を呼ぶな、恥ずかしい」

「ごめーん」

むすっとする網倉に適当に返事をする私。
そんな私の腕を網倉は掴んで、

「もういい。それよりも時間ないから行くぞ、有泉」

とバスの中へ引っ張っていくのだった。
え、何!?ちょっと待ってよ!!
何で私、網倉と!?

「―――……」

―――もう、何だかよく分からなくて思考回路が停止しそうなぐらい、熱い。

そんな、夏。