すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.63*やばい!】



広い廊下、高い天井。
初めて来た、この会場で私、有泉凜は―――

迷子になりました。

いや、気付いたら樹里音も功刀さんもいなくない!?みたいな!!
まぁ、すっかり迷子な訳ですよ。

……これは真剣にヤバいのではないのでしょうか。

「あれ?有泉?」

プチパニックな私に声を掛けてきたのは、

「あ、網倉!」

エアーマンこと網倉だった。
何か今日はよく会うなぁ。今まで怖いぐらいに空気だったのに。

「何でお前一人なんだ?」

「……ま、迷子になったの!」

痛い所をついてくる網倉に、私はしぶしぶ返す。
高一にもなって迷子とか……穴があったら入りたい。

「っていうか、網倉こそ何で一人なの?」

私も聞いてみる。
すると網倉は常に無表情な顔から一転、耳まで真っ赤に染めて。

「……ま、迷った」

と呟くような声で言った。
うわ、何このギャップルール。
いや、特に萌えるとかそんなのは全くないのだけれども。

「え、網倉も迷ったの!?高一にもなってダサッ!」

私はなんだかおもしろくって、少しからかってみる。

「お前、その言葉が自分にも刺さっていることを忘れるなよ」

「すみませんでした」

矢のような速さで返ってきた網倉の言葉に私の心は粉々です。
まじ刺さったわ、今の。

「とりあえず、リハーサル室Bに行けばいいんだっけ?」

しばらくして思い出したように網倉が訊いてきた。
私は頷く。
そして、そのリハーサル室Bに向けて歩き出したその時、

「ちょお、見てみ!ロリやで、ロリ!しかもあれはただのロリやない、合法ロリや!!レアやでー!!」

「ちょっと、頼むから他校の人がいる前で性癖暴露だけはやめてね」

「俺、ちょっと声かけてくるわー!!」

「おい、ちょ、待てよ!!」

目の前に不思議な三人組発見。
え、何この人達。