すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.34*私の気持ちと修学旅行!#1】



少し緊張しながらホテルの部屋を出る。
すぐ隣は悠ちゃんたちの部屋。
あとは悠ちゃんを呼び出して、私が言うだけ。

好き、って言うだけ。

たったそれだけなのに、まるで人生の全てがかかってるような気持ちになる。
凄く怖いけど、今言わなきゃもう言えない気がするんだ。

「よし、押すぞ!」

私は悠ちゃんたちの部屋の呼び鈴を押した。
すると、中から瑛太が出てきた。
ここで悠ちゃんが来たら話は早かったんだけどなー。

「どうしたの?箭本さん」

私がボーっとしていたからか困り顔の瑛太が訊いてきた。

「悠ちゃん呼んで」

私はその一言をやっとの思いで言葉にする。
この程度でこんなに緊張してたら駄目だ。
とても告白どころじゃない。

「ひなた、何?」

ふいに声が聞こえ顔を上げると、視線の先には悠ちゃん。
その瞬間、私の顔の温度が上昇する。
とりあえず、ここじゃ言えないから別の場所に行かないと。

「あの……話があって。階段横にでいい?」

視線が合わせられず、目が泳ぐ。
悠ちゃんはもう、気づいただろうか。
私の気持ちに。

「いいよ」

悠ちゃんはそれだけ言った。
心臓が跳ね上がる音を聞きながら二人で階段横へと向かった。