すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.37*ベストオブKY様!】



修学旅行最終日。
二回目の楽しいグループ研修の中、一部の人の空気だけ淀んでいる。
米長さんと箭本さんと悠だ。
何があったのかは知らないが、お互いに目も合わせない。
悠と同じ部屋だった瑛太に訊いてみたところ、箭本さんに呼び出されて部屋から出て戻ってきた時、既にあのような感じだったらしい。
という事は、箭本さんと何かあったと考えるのが普通だが、だとしたら何で米長さんまで?
俺の頭の中を色々な想像が巡る。
本人に聞いてしまえば済む話なのだが、さすがに聞けるはずもなく。

「あのさー」

そんな沈黙の中、ベストオブナルシス子の小尾さんが口を開く。
そしてこのモノローグは多分フラグだ。

「せっかくの最終日なのに何で米長たち、そんなに暗いのよー!」

フ、フラグ回収完了!!
さすがとしか言いようのない小尾さんの発言をやはり米長さんは睨む。
だが、そんな視線にナルシス子兼KYが動じるはずもなく。

「お願いだから空気重くするーっていうか、汚さないでよねー。私の可愛さが半減しちゃうー」

……やめて、ナル子!!
お前が一番空気を汚していることに気づいて!早く!早急に!一刻も早く!!
わ、やばいって!米長さんめっちゃ怒ってるって!
しかも割と温厚なタイプな悠と箭本さんも結構我慢の限界っぽいし!
そんな事を班の皆が思う中、さらにナル子の暴走は加速する。

「まったく、何でそんなに暗いかなー!……あっ!!もしかして米長、ヘタレにフラれたとかー!?ウケるんですけどー!!」

―――……最悪だ。
毎回思うけど、この人は素でやってるの!?ホントに素なの!?
小尾さんを除く研修班メンバーは冷や汗。
あ、ヤバい。
おそらく全員が悟ったことだろう。
米長さんがキレる……!!

「うるせぇよ、小尾」

だが、皆の予想を反して呟いたのは悠だった。
そして箭本さんが小尾さんの前に立って、

「二度とフラれた関連の単語を発するな、小尾」

と、あらゆる柔道の技をかけまくるのだった。
なんだかんだで皆、元気そうで何よりです。