すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.57*つないだ、】



「ことりちゃん」

そんな時、後ろから声を掛けられた。
もう呼び方的に誰かわかるのだが、まぁ一応振り返ってみる。

「楓くん」

案の定、楓くん。
そして、私の楓くんへの呼び方が定まりません。

「これからバスまでパート別だけど俺もことりちゃんたちと一緒でいいの?」

ぃよっしゃァァァァァァァ!!ヤバイktkr!!FOOOOOOOOOOOOOOOOO☆……取り乱しました。
楓くんと一緒だったら美咲と二人っきりという、超次元的百合空間から解放される!!

「いいに決まってるだろ。楓くんも一緒に行こう」

私は今日一番の笑顔で言う。
そのわりにはセリフが落ち着いてるけど。

「あれ?そういえば、川端下さんは?」

バス停に向けて出発しようとしたその時、楓くんがあたりを見渡しながら言った。
確かに美咲、いない。というか、もう既に皆いない。
結論、やばい。

「多分、米長先輩と喋ってたからパーカスと一緒に行ったんじゃないか?」

私の言葉に楓くんは「へぇー」と返した。
あれ?聞いてました?
私が不信感を漂わせていると楓くんは携帯を開いて液晶に視線を落とした。
そして焦ったような表情で携帯を閉じ、

「ことりちゃん!時間ヤバいよ!あと三分しかない!」

彼にしては珍しく大声で言う。
私は少し驚く。
そして、

「もう、何ボーっとしてんの!行くよ!」

と私の手を握って強引に走り始めた。
え、何この展開―――!!

「え、あの、ちょ、楓くん!?」

―――つないだ手と手から伝わる温度、弾む呼吸と心臓が私を熱くする。

そんな、夏。