すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【番外編*Wish under the Milky Way-空気くんのお願い-】



「凜ちゃん、これってここでいいのー?」

「うん、そこに置いといてー」

私は同じクラスでトランペットパートの三門理奈ちゃんに声を飛ばした。
ここは夜の音楽室。
学校に許可を取って皆で集合したのだ。

なぜなら、今日は七月七日。
―――そう、七夕!
部活の皆で短冊を書こうじゃないか!という絢音先輩の発案により、現在に至る。
ちなみに短冊は一人一枚ずつなのだが、うーん……何を書こう。
ここは私としては『出番がもっとほしいです』なんだけどなぁ。
でもやっぱり吹部として『コンクール県代表!』だよね!
きっと先輩も皆にこれを書いて欲しくて企画したんだと思うし!
私は長方形の髪の上にペンを滑らせる。

あとはこれを飾り付け担当の川端下先輩に渡すだけ。……なんだけど。
他の人が何て書いたのか見てみたいのが人間の心理ってやつだよね。

「そうとなったら誰かの見に行こうっとー」

私がその場から周りを見渡すと、視界には網倉が。
もうこの際空気くんでいいか。
人生妥協は必要だよね、と割り切って網倉の元へ向かう私。

「あーみくらっ」

私は網倉を後ろから軽くどつく。
すると網倉は鋭い視線をこちらに向け「何?」と不機嫌そうに言った。
さすが堅物もどき。
こういうのに慣れてないですなー。

「網倉は短冊何て書いたの?見せてよー」

網倉が黙々とペンを動かしているのが気に食わないので横からひょいっと短冊を奪ってみる。

「お、おい、有泉……っ!」

すると網倉は予想通りの反応。
ちょっとおもしろい。
私はニヤッと笑みを浮かべて手の中の短冊に視線を移した。
するとそこには、

「『出番がもっとほしいです。あと網倉と書いて主人公の相手役候補だったのに小説内では空気と読むのから、網倉と書いてやっぱり主人公の相手役候補は違うっすね!そこに痺れる憧れるゥゥゥ!と読んでもらいたいです』……って、どんだけキャラ位置に対して貪欲!?アンタどんだけ出番欲しいの!?」

「加賀美部長ぐらい」

「無理でしょ!あの人、主 人 公 ☆の私より出番多いからね!?」

私は言う。
何だか虚しくなってきたよ。
っていうかそろそろ他の人のところ行かないと!
網倉だけとか絵面的に地味だしね。

「地味って何!?」

「じゃあ私、小尾先輩のところ行ってくるから」

「スルー!?」

久しぶりの出番なのにも関わらず、扱いがひどい網倉(主人公の相手役候補だったのに小説の中では空気)だったとさ☆