すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-
作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI

【harmony.22*委員長と副委員長!】
毎月第一水曜日。
この日は委員会活動の日で委員会に所属する生徒は放課後残って活動をしなくてはならない。
私、鈴木詩織もその一人。
ちなみに所属しているのは全ての委員会のトップ的存在の執行委員会。
たくさん仕事があるので正直面倒だとも思う。
でも、私にはどうしても委員会に行きたい理由がある。
「あ、鈴木さん。今日も早いね」
私が執行委員会の使う教室のドアを開けるといつものように彼―――加賀美悠先輩は私に微笑んだ。
その表情に私の心臓が跳ねる。
「そ、そんなことないです……それなら先輩こそ早いじゃないですか」
「俺は委員長だからだよ。早く来ないと青山さんに怒られるしね」
そう言って苦笑いする吹部の中ではヘタレで有名な加賀美先輩。
それを知らない人が見たらただの長身のイケメンなんだけどな。
でもそのギャップと誰にでも平等な優しさがいいんだよね。
―――私の委員会に行きたい理由はこの人にある。
だって、一秒でも長く加賀美先輩の笑顔が見たいから。
学年が違うから学校ではすれ違えたらラッキー程度だし、同じ部活だからっていっても金管と木管は学年が違えばあまり関わりがないし……。
そうなると加賀美先輩と話せるのは月一回のこの委員会しかチャンスがない。
それに、
「失礼しますー!なあ、加賀美、資料あったで!」
先輩の周りにはいつも他の女の先輩がいるし。
「ありがとう、青山さん」
先輩は微笑んだ。
せっかくの二人きりの空間に入ってきたのは同じ吹部で副委員長の青山先輩だ。
別に先輩が邪魔だとかそういうことを言うつもりはないけど、少し残念だなぁって。
いつもそう。
学校で一、二を争うほどモテる先輩の周りには部活外では同級生に、部活では米長先輩やひなた先輩など女の先輩が必ず周りにいる。
まぁ、部活内での周りの先輩たちは先輩が好きとかそういうのじゃないと思うんだけど。
「でな、加賀美。その資料取りに行く途中にな、絢音に会ってん。それでな、その後に詢に会って風礼亜にも会うたんよー。何かホンマ今日は吹部dayやなぁ思ってー。あ、でな、これも聞いて欲しいんよ。昨日、柚羽ちゃんと瑛太くんに会うて……」
「ちょ、青山さん!一気に喋りすぎ!」
「あ、ごめんな。まぁ、加賀美やしええか」
「え、ちょっとそれどういう意味!?」
先輩たちは私の目の前で楽しそうに会話を弾ませる。
私はそれがおもしろくなくて、席に着いた。
すると青山先輩は私に視線を移して、
「あ、詩織ちゃん。ごめんね、割って入っちゃって。何か加賀美に話あった?」
何で標準語に戻すんですか?
何で、何で……黒い感情が私の心を渦巻く。
ああ、これが嫉妬ってやつなんだろう。
別に青山先輩は加賀美先輩の事、同級生としてしか見てないことだってわかってる。
でも、
「―――いえ、別に」
先輩が好きだから色々考えてしまうんだ。

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