すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-
作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI

【harmony.41*甲山府の華!】
ここは南梨高のある市の隣にある甲山府高等学校。
小中高一貫教育を県内で唯一行っている進学校である。
ちなみに男子校。
今日もっていうか常に彼女募集中です!
「あー……暑い!!」
「梅くん、うるさい」
昼休憩中の七月の音楽室。
その一角で叫んでいる男子生徒―――京都出身の糸目キャラ梅垣京平とそれに冷静な口調で制止を掛ける女顔の美少年の花形晶、そして昼飯のコロッケパンを黙々と頬張る俺―――乙黒秋臣。
俺たちは小学校からの内部組で、同じ部活とだけあって割と仲がいい。
ただ、この二人には欠点と言うか、一癖あって……。
普通に付き合っている分には何の問題もないのだが、少しばかり許容範囲を超えているのだ。
「っていうか、花」
「何、梅くん」
花形はそっけなく返事を返した。
「毎年思っとったんやけど、その髪と恰好、暑くないん?」
梅垣はそう言って花形を指差した。
花形の格好は黒髪ロングの髪に紺襟に水色リボンのセーラー服。
花形には女装癖があるのだ。
「暑くないよ。この髪はヅラだし制服は男子のより涼しいし」
女子も顔負けの笑顔で言う、花形。
この笑顔が花形の最大の難点。
ここは男子校。彼女なしの女に飢えた奴らが集う場所。
そんな中で華奢で小柄な女顔の奴が女装で学校生活を送ったら……もちろんモテモテ。
花ちゃん、なんてあだ名までついて今では甲山府のマドンナ的存在となっている。男なのに。
本人もまんざらでもない様子なので卒業するまでこのままだろう。
まぁ、バレンタインにはチョコレート全部俺と梅垣に横流しされてきて食い放題だからいいか。
男の手作りチョコなんて微塵も嬉しくないけど。
「っていうか、花って何で女装なんかしとるん?」
再び梅垣が問うと、
「せっかく女子より可愛い顔に生まれたんだから可愛い恰好しないと損でしょ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。

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