すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.54*エアーマンが倒せない!】



南梨高吹部が乗るバスの出発五分前にティンパニーのSが無いことに気づいた、パーカッションパートリーダーの米長。
そこで、米長は急いで取ってくるように凜と網倉に指示を出すのだった。

っつーわけで、網倉と音楽室からティンパを運んでいます。
気まずいです。空気がつらい。
いや、空気が辛いというのは網倉が辛いという意味ではなくて!

「……」

さっきからこんな感じで沈黙が続いていて、空気が重たいって意味です!
だって網倉、真面目というか堅物だから喋りにくいし……特に話すこともないよねーみたいな。
でも、ちょっと沈黙状態が続くのは耐えかねますな。

「……」

やっぱり沈黙。
いくら心の中ではそんなことを思っていても、実行に移せないのが私の悪い所です。
―――もうこうなったら、実行に移してやる。
私無理だもん!喋らないのとかマジMURI
……あー!!もう沈黙無理!辛い!生きてるのが辛い!略して生きツラ!!
自分を捨てるのよ、凜!

「あ、網倉さー」

「何」

網倉はクエスチョンマークすら付けずに言う。
ちなみに私の方すら見てません。ムカつく!
っていうか、話し掛けたはいいけど何を話そう……。
とりあえず無難な質問からしてみるか。

「網倉は何か好きな食べ物あるの?」

THE☆無難!
これで網倉との会話も……

「何で有泉に言う必要があるんだ?」

弾まなかった。
つか、コイツ―――腹立つ!!

ま、まぁ、いいよ。水に流してあげようじゃないの。
次の質問!とりあえず会話を途切れさせない感じで!!

「じゃ、じゃあ逆に嫌いな食べ物は?」

今度こそ!今度こそ網倉だって……

「ははは」

わけがわからないYO☆
何でそこで笑うの!?もう……わけがわからないYO☆
もう、私ダメ。堪忍袋の緒が切れた。

「……から」

「え?」

「さっきから何なんだよ!お前は!!」

私のいつもの数倍大きい声に呆気にとられている網倉。
だがそんなのは無視して私はマシンガンのように続ける。

「私が沈黙を打ち破るべく質問投げかけて場を和まそうとしてるのに何なの!?ねぇ、ホントなんなの!?えっと、その、アレ……うん、何なの!?」

「え、あの、有泉?」

網倉が訊いてくるが私はオール無視。
今ならスルースキル検定一級ぐらいとれる気がする。ないけど。

「私の質問全部へし折りやがって……お前はエアーマンか!!」

「え、エアーマン?」

「小説の中で空気と空気読めないの空気でエアーマンだよ!!」

ここまでぶちまけたところで私は我に返る。
はぁ……疲れた。
もう、エアーマンが倒せない……。