すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.51*チャイムを運ぼうとするだけのお話!】



なんやかんやで一日が過ぎ、家に帰ってチョコレートを食べ、ご飯を食べ、抹茶プリンを食べ、ポテチを食べ、風呂に入り、ポッキーを食べ、夜が来て、朝が来て、今。
ついにコンクール当日!
ちなみに今は朝七時の音楽室。眠いです。
そして、そんな晴れ舞台の日に私、有泉凛、

「髪切っちゃったー!!どうどう!?」

私はロングから胸までのセミロングになった髪を超ドヤ顔で詩織に見せつける。
すると詩織は無表情で、

「わー凜かわいー。ちょーにあうー。やばーい」

うわ、ひでぇ!!詩織、ひでぇ!!
超感情こもってないじゃん!しかももう遠くにいるし!
何なんだよ!あぁ、私みたいな?テンションうざいし?どうせ存在感無いですし?主 人 公 ☆なんて単語使わないと主人公と認識してもらえないような?そんな駄キャラとは関わりたくないですよねー!あぁ、そーですかー!
……やば、今ので卑屈キャラというアイデンティティーもプラスされてしまった!
もう私、マイナスのイメージしかないじゃん!!完璧に人生詰んだじゃん!!

……さぁ、仕切りなおして!
今はコンクール会場に持っていく楽器をここ、北棟四階の音楽室から外に止めてあるトラックまで積み込む作業中。
個人の楽器、パーカスの軽いもの、重い物、チャイム、楽譜と荷物を運ぶって流れになっています。
で、これから最後のチャイムの移動にかかります!
ちなみにチャイムとはのど自慢大会などで合否の判定を出しているあの楽器のこと。
重いしデカいし幅を取るから運ぶのは六人がかり。
メンバーは私、ひなた先輩、クラの鹿島先輩、海道先輩、川端下先輩、千紘ちゃんの六人。

「チャイムは階段の傾斜と平行になるように斜めにして、上の部分は凜ちゃんと佳枝ちゃん、真ん中は美咲とひなた、下は海道くんと千紘ちゃんの男二人で持ってね」

後ろからパーカッションパートリーダー兼副部長の米長先輩が指示を出す。
すると鹿島先輩が、

「先輩、千紘ちゃんは“男の娘”なので一番重い下の部分は無理だと思います!」

と元気に提案。
ちなみに一番下は女子でも持てます。

「そうだね。ごめん、千紘ちゃん。あたしの配慮が足りなかったわ。女の子に一番重い所につかせるなんて……」

「先輩、僕男です」

深刻な表情の米長先輩に千紘ちゃんは言った。
そして千紘ちゃんの必死の「持てます!」発言連発もむなしく、メンバーから外されてしまった。

「じゃあとりあえず代わりを呼ばないとねー。」

そう言って周りを見渡す米長先輩。
そして呼ばれた人物は、

「千紘ちゃんの代わりのあっくんでーす!」

なぜか何もない所で盛大につまづき、壁の角に頭を打ったあと、いつもと変わらぬイケメンスマイルを浮かべた秋さんだった。