すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.47*練習したくない!】



月日が流れるのは早く、主 人 公 ☆こと私、有泉凜がひょんなことから吹部に入って四か月。
―――八月某日。
ついに明日はコンクール本番。
なので、部内は最強にピリピリモード。
一人を除いては。

「暑いー!!やっぱこういう日ってアイス食べたいよねー!!」

ボーンパートリーダー、貴家絢音先輩だ。
私がボーンをやるきかっけになった憧れの先輩なのだが、実は練習が大嫌い。
何で上手いのかが疑問です。

「っていうかさ、そんなに吹きっぱなしで疲れないのーっ?和真、私疲れたよー!!」

「先輩は何もしてないでしょうが!!」

和真先輩にもたれかかる絢音先輩を避け、和真先輩は練習を再開しようとする。
だが、そんな和真先輩をガン無視し絢音先輩は続ける。

「だいたいさぁ、和真は堅いんだよー!何か、こう、もっとさー!はじける?みたいな?そういうのは無いのーっ?ねぇ、秋」

「いや、急に僕に振られましても……ねぇ、詩織さん?」

「え!?私ですか!?」

もうこれ完璧に絢音先輩の押し付け合いだよ!
っていうかもう絢音先輩じゃなくて、ただの酔っ払いだよ!
そんな酔っ払いな絢音先輩は椅子を何個か並べて、そこに寝転がった。

「あーもう、練習したくないー!!」

「いや、ずっとサボってたじゃないですか」

「……寝るっ!!」

「コンクール前日なうゥゥゥゥゥゥゥ!!」

和真先輩が大声で言うが、絢音先輩は本格的に寝る姿勢に入っている。
これは駄目だ。
その状態を見かねた秋さんは立ち上がって、

「後輩ながら言わせてもらいますけど、明日が本番ですよ?少しは練習なさった方がよろしいんじゃないでしょうか」

「あとでー」

イライラ気味の秋さんに生返事を返す絢音先輩。
ホントに練習する気ないな、この人……。

「自由曲の三連符のところはやられましたか?百四十七小節目のボーンメロディーのカッコいいところは?」

爽やかなイケメンスマイルを引きつらせながら秋さんは畳み掛けるように言う。

「やった。もう余裕、余裕」

手をひらひらさせながら絢音先輩は無表情で言った。
それを見て秋さんは言葉を詰まらせる。
とりあえず絢音先輩は一刻も早く、長く寝たいようです。

私たちが先輩を放っておいて練習をしていると、いきなり絢音先輩は起き上った。
そして、ボーンを構え練習をし始めた。

「やっと練習する気になりましたか」

秋さんが皮肉っぽく言う。
絢音先輩は、

「そういえば私、本番になると緊張しすぎて何にもできなくなるの忘れてた」

へらっと笑った。
―――先輩、それ普通に困ります。