すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.39*フビンとクウキ!】



とある日の一年E組のHR。
それは生物教師の担任、萱沼のこの一言で始まった。

「今日のHRは席替えします」

少し気だるいような担任の言葉に教室内は一気にざわつき始めた。
だが、そんな空気をぶち壊す人物が一人。

「あの、先生。今は夏休み直前です。普通なら席替えの季節ではないはずなので席替えは必要ないかと思います」

堅物学級委員長、網倉綾瀬。
知ってのとおり吹部のサックスパートだ。
そして読者さんと作者の間では空気である。

「網倉くん。僕もそう思うのですが、三門さんの班がうるさいと苦情が来たので……」

先生は困った笑顔で三門さんこと理奈ちゃんを見た。
同じ吹部に所属するトランペットパートの理奈ちゃんが班長を務める子の班は確かに授業中、うるさい。
でもだからって、こんな時期に席替えなんて……面倒だなぁ。
でも新しい席で心機一転!もいいよね!
と、ポジティブシンキングに働きかけてみる私。

そして、席替え開始。
私たちのクラスはくじ引き方式。
引いた番号の席に座る、アレ。
出席番号順に引いていく。

私の名字は『有泉』だから、三番目。
あー緊張するー!!
今一番目の人が引き終わって、次は網倉。
網倉は教卓の上に置いてある箱に手を入れ、引いた。
そして自分の席まで戻ってくる。
網倉、どの席になったんだろう……。
少しだけ気になる。少しだけ。

網倉が引き終わったという事は次は私の番。
私は緊張の面持ちでくじを引いた。
何で席替え程度で緊張してるんだろ、私。
若干自分を情けなく思いながら、箱の中から引いた四つ折りの正方形の紙を開く。
そこにあった番号は、十三番。
一番後ろの窓際の席だ。隣は……二十五番かぁ。
まぁ、これから暑いし風入ってくる席とかラッキー!!
なんて、思っていたのですが……。

「有泉、もしかして十三番?」

突然話し掛けてきたのは、網倉。
……うん。私コレ、フラグだと思うの。

「そうだけど。網倉は?」

嫌な予感が体中を駆け巡る。
そして網倉はいつもの無表情を崩さないまま口を開いて、

「二十五番」

フラグ回収しちゃたァァァァ!!