すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.38*この解放感って!】



「いやー!いいよね、由里子ちゃん!」

放課後のパート練習中、同級生の涼が笑顔で言った。

「何がよ」

私は椅子に座り、返す。
すると涼の笑顔はさらに明るくなり、

「今って先輩方修学旅行中じゃん?」

「それがどうしたのよ」

私が返事を返すたびに目を輝かせながらニヤつく涼。
何なのよ、今日の涼。
やたらとニヤニヤしちゃって……今日の晩御飯がハンバーグとか?
……って、それ翔くんの大好物じゃん!
何考えてんの、私ー!!

「それがどうしたの、って先輩方いないんだよ!?ってことは、」

一瞬の間。
何なのよ、このタメ。

「私達、二年生の天下なわけだよ!!」

涼は某ライトノベルの涼宮さんばりのポーズと笑顔で言った。

「は?天下?」

私は聞き返す。
何で三年生がいないと二年生の天下なのよ。

「だって、先輩方がいない=三日間だけ二年生が最上級生じゃん!私たちが」部活を仕切るんじゃん!天下じゃん!」

と、涼はドヤ顔。
正直イラっときます。
とりあえず今分かったのは今日の涼は面倒だという事。
今日はどこかのパートに非難するとするかなぁ。
早速、私は楽器を背負って椅子から立った。

「あれ?由里子ちゃん、どこいくの?」

「涼がうるさいから他のパートいってくる」

「え、泣いていい?」

私の言葉に涼が言った。
もう、本当に面倒くさいなっ!

「うるさい、ヘタレパシリ!!」

私は今日一番の大声で言った。
すると涼は一気に不機嫌な表情に変わって、

「へ、ヘタレだと!?それを言うなら部長のほうがヘタレだから!」

と言い放った。
その瞬間、ここ音楽準備室のドアが開いた。
ドアの向こう側にいたのはサラサラの髪を風になびかせている長身の芸能人並みのイケメン部長。

「……あ……か、加賀美先輩こんにちはー……ははー」

その人物を映した涼の目が泳ぎまくっていたのは言うまでもない。