すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.23*イカの塩辛味!】



「はぁ……今日も長かった……」

いつも通り、音楽室から第二準備室までの大移動を終えた由里子先輩は準備室の前で項垂れた。

「お疲れ様です、先輩」

「ホントお疲れだよ……」

俺が言葉を掛けるが由里子先輩は項垂れたまま、ぐったりとしている。
今から練習なのに、覇気がなさすぎですよ。
俺は先輩の弦バスを担ぐと、

「ほら、先輩。あと数センチなんですから頑張ってくださいよ」

とドアに手をかけた。
すると由里子先輩は俺の手を止めた。

「余計なことしないでよ、翔くん。一人で持てるってばっ!」

そしてムスッとした表情でドアを開け、中へと入っていった。
強がってはいるが、やっぱりその足取りはおぼつかなくて。

「やっぱりおもしろい……」

「何が?」

「おわっ!?」

俺が呟くと後ろから突然声がして振り向く。
すると目の前には弦バスを担いだ今藤瑛太先輩とユーフォを持った今藤柚羽先輩がいた。
ちなみに名字から分かるかもしれないが、先輩たちは双子である。

「何?あ、私たちお邪魔だったぁー?」

柚羽先輩がわざと憎たらしい口調で言った。

「あ、ごめんね翔くん。じゃあ僕たち別の所で練習してくるよ」

それに同意するように瑛太先輩も言う。

「違いますって!お邪魔なんかじゃないです!……っていうか、福沢先輩は?」

俺は先輩に訊く。
福沢先輩とはチューバの二年生の先輩。
いつもはこの時間には来ているのに今日はまだみたいだ。

「まぁ、飴でも食べながら練習しようよ。翔くん、何味がいい?」

さらっと話題転換し、瑛太先輩は俺の前で飴玉が入っているであろう袋をごそごそと漁る。
瑛太先輩は演奏中にも飴玉を頬張っているほどの飴好きで有名だ。
おかげで弦バス周辺はいつもフレグランスな香りでいっぱいです。

「じゃあ、イカの塩辛味とかたくあん味で」

「薬袋くん!?」

「薬袋くん変わった味のチョイスするなー」

俺の言葉に二人の先輩は笑う。
……あの先輩、ツッコみ待ちです。