すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.50* You and I who has learnt her and his secret-彼女と彼の秘密を知ってしまった君と私-】



もうあの噛んだ件はさっぱり水に流してもらい、なんやかんやで生物準備室の近くまで来た私と大我くん。
なんやかんやで、っていうのは別に作者が楽をしようとしたわけではなく何をしゃべったか全く覚えてないので割愛、という意味。
……変なこと喋ってなきゃいいけど。

「何か喋ってる……」

私が頭の中で“変なこと”のパターンを考えていると隣で大我くんが呟いた。
耳を澄ませてみると男の人と女の子の笑い声が聞こえてきた。
おそらく声の主は、萱沼先生と功刀さんだろう。
あの二人、意外と仲良いんだ……。

あれから数分。
やっと功刀さんが準備室から出てきた。

「大我くん、功刀さん出てきたよ!」

「あ、ホントだ!じゃ、俺行ってくる!」

大我くんは鞄をもう一度肩にかけなおして功刀さんの方へ向かおうとした。
その時、

「功刀さん!」

功刀さんの名前を呼びながら、準備室から出てきた萱沼先生。
その声に振り返る功刀さん。
私は急いで大我くんを引き戻した。

「ちょ、理奈ちゃん!?」

よく状況が分かってない、大我くん。
私はあの二人の方を指さした。すると、大我くんは理解した様子。

「明日、大会だそうですね」

先生の言葉に功刀さんは頷いた。
すると先生は笑顔で、

「応援してるよ、頑張って!」

私は正直驚いた。
普段、絶対に丁寧語の萱沼先生が口調を崩したのを初めて聞いたから。
それに、

「はい!」

普段滅多に笑わない功刀さんが満面の笑みを浮かべていたから。
そして、私は見た。
そんな功刀さんが萱沼先生に向けた笑顔を見た瞬間、大我くんの表情が曇ったところを。
その時、解った。

功刀さんが大我くんを好きなのではなく、大我くんが功刀さんを好きなんだ、と。