すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-

作者/ 夕詠 ◆NowzvQPzTI



【harmony.56*よっ、置物部長!】



「渚ー、暑いー」

美咲が言う。

「そうだねー暑いねー」

私は美咲を睨む。
ちなみに美咲と私の距離、ゼロセンチメートル。
完全に密着されてます。

「美咲ー、そんなに暑いなら離れようかー。私、蒸発しちまいそー……っつーことで、一秒以内に離れないと埋めるぞ」

私はその言葉と同時に美咲を突き飛ばした。
あー、涼しい。

「渚ひどい!もう私、郁花先輩のところ行ってくるから!」

美咲はそういうと米長先輩の元へ。
あー、涼しい、涼しい。

「凜ちゃんと網倉、遅いですね」

米長先輩の近くで美咲が言う。
ホントに行きやがったよ、アイツ。
つか、顔近!!米長先輩、よくスルー出来るな。

「そうだねー……もう時間ないし私達だけでもバス乗ろうか」

米長先輩の呟きに即座に加賀美先輩は反応し、指示を出す。
よっ、さすがおきものぶちょ……あ、失言。

「皆、これから俺たちだけでもバスに乗ります。バスまではパートごとで固まって移動してください」

「はい!」

加賀美部長の指示に部員たちは返事をする。
何か運動部より運動部だよね、吹奏楽部って。

……っていうか、パートごと!?
それって美咲と一緒じゃん!しかもファゴットだから二人だけだし。
ないわー。もうホントないわー。何がないわーって言ったら……ないわー。

「ことりちゃん」

そんな時、後ろから声を掛けられた。
もう呼び方的に誰かわかるのだが、まぁ一応振り返ってみることにした。