二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄 完結、そして……
日時: 2011/07/29 00:16
名前: 白黒 (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=22252

はじめまして、白黒です。
白黒にちなんでポケットモンスターブラック・ホワイトの小説を書こうと思いました。
内容はオリジナルの要素を含みながら、ゲームの通りに進行したいと思います。
何分まだ中学生で、文才もないですが、それでも読んでくれたらありがたいです。
コメントを貰えれば、幸いです。
無事完結致しました。そしてこの物語は、次回作の『混濁の使者』へと続いていきます。参照をクリックして頂ければ、そちらに飛びますので。

登場人物
>>28

プロローグ
>>2
カラクサタウン
>>4
サンヨウシティ
>>5 >>6 >>7 >>8 >>13
シッポウシティ
>>14 >>15 >>16 >>21 >>27
ヒウンシティ
>>29 >>32 >>33 >>42 >>44 >>45 >>47 >>50 >>51 >>54
ライモンシティ
>>55 >>59 >>61 >>62 >>63 >>64 >>65 >>69 >>70 >>71 >>72 >>73 >>74 >>76 >>79 >>80
ホドモエシティ
>>83 >>84 >>85 >>86 >>87 >>89 >>90 >>92 >>95 >>96 >>100 >>101 >>102 >>106 >>107 >>108 >>113 >>114 >>115
フキヨセシティ
>>119 >>122 >>123 >>125 >>126 >>127 >>128 >>129 >>130 >>131
セッカシティ
>>132 >>133 >>136 >>137 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>155 >>159 >>162 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167
バトルサブウェイ
>>196 >>199 >>200 >>205 >>207 >>208 >>209 >>210 >>211 >>213 >>217 >>218 
ソウリュウシティ
>>227 >>235 >>238 >>239 >>242 >>243 >>246 >>249 >>250 >>253 >>254 >>256 >>259 >>260 >>261 >>262 >>263 >>268 >>269 >>271 >>272 >>275 >>279 >>280 >>281 >>284 >>285 >>287 >>288 >>289 >>290 >>291
ポケモンリーグ
>>292 >>293 >>294 >>295 >>296 >>297 >>298 >>299 >>300 >>301 >>302 >>305 >>306 >>307 >>308 >>309 >>310 >>311 >>312 >>313 >>314 >>315 >>316 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>340 >>343 >>344 >>347 >>348 >>349
エピローグ
>>350
番外編
ミキの特訓 前後編 >>52 >>53
トライアルハウスバトル 前後編 >>81 >>82
旧ライモン遊園地の夜 前後編>>111 >>>112
四季の川 前後編>>143 >>144
Heaven of battle 前後編 >>168 >>169
過去のプラズマ 前後編 >>282 >>283
マルチバトルサブウェイ 前中後編 >>317 >>318 >>319
夢のドリームマッチ 対戦表
リオVSメイル >>181 >>184 >>187 >>188
アカリVSキリハ >>189 >>190 >>191
ムントVSレンジ >>192 >>193 >>194 >>195
100章記念 イリスQ&A
>>231 >>232 >>233 >>234

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Re: 64章 フキヨセジムの風 ( No.129 )
日時: 2011/05/31 17:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

「出て来て、ケンホロウ!」
フウロが次に繰り出すのは、灰色の羽毛を持つ、全体的に地味な感じのポケモン、ケンホロウだ。
「ケンホロウ、ハトーボーの進化系か。きっと手強いね……フタチマル、水の誓!」
フタチマルは開始早々水柱を上げ、ケンホロウを攻撃する。
「ケンホロウ、避けて」
しかしケンホロウの動きはかなり素早く、噴出される水柱を次々とかわしていく。
「ケンホロウ、電光石火!」
そして高速でフタチマルに特攻する。
「フタチマル!」
「続けてかまいたち!」
さらに空気の渦を作り出し、そこから無数の真空の刃を放ち、フタチマルを切り刻む。
「くぅ、フタチマル、シェルブレード!」
接近戦は不味いと思ったのか、フタチマルは二刀流のシェルブレードでケンホロウに斬り掛かる。
「ケンホロウ、鋼の翼!」
だがケンホロウの鋼の翼でホタチは弾かれてしまう。
「しまった!」
「決めるよケンホロウ。ゴッドバード!」
ケンホロウは大きく羽ばたくと、煌く光に包まれた。そしてその光はエネルギーに変わり、それを纏ってフタチマルに突っ込んでいく。
「フタチマル、あの大技を防ぐには全力のアレしかない。だから、相手の攻撃と、技の衝撃。両方耐えてくれよ。ハイドロポンプ!」
それに対し、フタチマルは未完のハイドロポンプを全力で放ち、迎え撃つ。
「ケンホロウ!」
「フタチマル!」
ゴッドバードとハイドロポンプが激突し合い、砂煙が舞う。やがて互いのエネルギーが混じり、爆発する。
そして押し負けて吹っ飛ばされたのが、ケンホロウだった。
「ありがとう、ケンホロウ戻って。」
フウロはケンホロウをボールに戻す。
「フタチマル、よくやった。戻ってくれ」
イリスもフタチマルをボールに戻す。何故なら、フタチマルはハイドロポンプを全力で放ち、その衝撃で後方に盛大にぶっ飛んだからだ。そのせいで全身の気力を使い果たし、戦闘不能となった。まあ、ケンホロウを倒して戦闘不能になっただけでも、功を奏したと言えるだろうが。
「……それじゃあ、次は私のエースの登場だよ。出て来て、スワンナ!」
フウロの最後のポケモンにしてエースは、コアルヒーの進化系、スワンナだった。
「……スワンナか。ホドモエのコアルヒー空襲を思い出すな……」
イリスはジム戦だということも忘れて、過去の苦い思い出を思い出し、感傷に浸るのだった。
「っと、そんな感傷に浸ってる場合じゃない。今はジム戦の真っ最中。一時でも気を抜いてはいけない」
イリスは復活した。早い。
「スワンナは水・飛行タイプ。なら、出て来いバチュル!」
イリスは水タイプと飛行タイプの両方と相性の良い電気タイプを持つバチュルを繰り出した。
「へえ、バチュルか。確かにスワンナと相性は良いけど、それだけじゃ私のスワンナは倒せないよ」
「そんなことは分かってますよ。伊達にバッジ5つ集めたわけじゃありません」
イリスは今までのジムリーダーたちとの戦いを思い出しながら言う。
「なら良いけどね……それじゃあ行くよ。スワンナ、水の波動!」
スワンナはその場から飛び立ち、上空からバチュル目掛けて水の波動を撃つ。
「避けろバチュル!」
だがバチュルの動きは素早く、いとも簡単にスワンナの水の波動を避ける。
「それなら、連続で水の波動!」
単発で避けられるなら連発でという安易な考えで、スワンナは水の波動を連続で発射する。
「バチュル、回避だ!」
しかし俊敏なバチュルには水の波動は掠りもせず、次々と回避されいく。
「それならこれどう? スワンナ、暴風!」
スワンナは翼を大きく羽ばたかせ、猛烈な暴風を発生させる。
「バチュル!」
暴風はバチュルを吹き飛ばし、壁に激突させる。
「バチュルは素早いけど、防御や特防が低めなのが欠点で弱点。まあ、完璧なポケモンなんて、存在しないけどね」
フウロはさも勝ったかのように喋るが
「残念ですが、僕のバチュルはまだやられていませんし、暴風すら受けてませんよ」
「? それってどういう——」
意味?とフウロが言うより早く、電気を帯びた網がスワンナに絡みついた。
「!? エレキネット……? スワンナ!」
スワンナは必死で網を千切り、エレキネットから脱出する。
「今のは一体……?」
見ると、壁際にいるバチュルはだんだんと姿が消えていく。そしてその壁よりも右の方に、バチュルが何事もなかったかのように立っていた。
「身代わり。自らの体力を削って自分の分身を出す技です。僕のバチュルは、その身代わりが使えるんです。さっきの暴風も、身代わりで回避しました」
とイリスは説明する。
「へえ、ますます楽しくなってきた。なら、私も本気行くよ」
「本気……?」
自信満々で楽しそうな声を発するフウロに、訝しげなイリス。
「そう、本気。スワンナ、雨乞い!」
スワンナはそう指示されると、舞い踊るように何かを乞い始めた。すると、ぽつりぽつりと雨粒が降り始め、やがて車軸を流すような雨が降る。
「凄い、雨ですね。でも、雨天状態にして、どう本気を出すんですか?」
「見てれば分かるよ。スワンナ、暴風!」
スワンナは、翼を大きく羽ばたかせる。



フキヨセジム戦、中盤終了しました。いきなりですが話変わって、最近更新が滞り気味です。なんだか創作意欲が萎えてきてしまいましたが、僕と僕の書く小説を応援してくださる読者様がいる限り遅れようと書き続けます!……すません、自意識過剰な上に暑苦しいですよね、忘れてください。では次回予告。次回はフキヨセジム戦決着です。雨天状態とスワンナのあの大技とのコンボをお楽しみに。

Re: 65章 雨天の暴風と雷 ( No.130 )
日時: 2011/05/16 17:10
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

スワンナは大きく翼を羽ばたかせ、猛烈な風を発生させる。
「暴風はもう見切ってますよ。バチュル、暴風が迫ってきたら回避するんだ」
イリスがそう指示したすぐ後、スワンナの放つ暴風がバチュルに当たろうとしていた。
「今だ、避けろ!」
バチュルは右に飛んで避けようとする。しかし
「!? 暴風が、大きい……!」
そう。スワンナの放った暴風は、一発目よりも遥かに巨大な風だった。大きさだけでなく、スピードも威力も段違いである。それだけ大きいと、さしものバチュルも避けきれず、大きく吹き飛ばされた。
「バチュル!」
今の暴風で、バチュルはかなりのダメージを負っただろう。
「暴風は雨天時に使うと巨大化して、命中率が上がる。さらに風が大きくなるってことは、その分威力やスピードも上がるってわけ」
フウロはそう説明する。そして、それを聞いたイリスの額には雨粒ではない、水滴が浮かんでいた。
「それは、厄介だな……」
イリスはそう言うが、実際は厄介どころではない。バチュルの武器は攻撃ではなく素早さと回避率。流石にチラーミィには劣るものの、それが効かないとなると、かなりやばい状況である。
「さあ、どんどんいくよ。スワンナ、暴風!」
今度の暴風は攻撃目当てではなく、その攻撃範囲を活かして、バチュルを吹き荒れる竜巻の様な風の中に閉じ込めた。
「バチュル!」
「スワンナ、水の波動!」
そこで間髪入れず、スワンナは水の波動を放つ。
「相手が見えない……」
暴風の壁は凄まじく、まるで周りの様子が分からない。ただでさえ素早さの高いスワンナが見えないとあれば、もう攻撃の当てようがない。
「くそ、エレキボール!」
とりあえずイリスはダメ元で暴風の壁にエレキボールを放たせてみる。エレキボールは壁を突き破ったが、それ以外の手応えはない。スワンナには当たらなかったようだ。
「スワンナ、冷凍ビーム!」
スワンナはまたも風の壁から攻撃を仕掛けてくる。それも、バチュルを正確に狙って。
「……こっちからは何も見えないのに、何でそっちからの攻撃は正確に僕のバチュルを狙えるんですか?」
もっともな質問だ。こちらから相手が見えないということは、相手もこちらが見えないはずなのだ。にもかかわらず、スワンナは的確にバチュルを狙って攻撃している。
「ふふ。それは、私が風を読むことが出来るから。暴風だけじゃない風を読んで、あなたのバチュルがどこにいるのかを把握しているの」
「それは……マジですか……」
流石に何も言い返せないイリス。風を読むとか言われたら、そりゃあそうもなる。
「って言うのは冗談。本当はスワンナの鋭い目で暴風の中をよく見てもらってるだけだよ。まあ、風を読めるってのは嘘じゃないけどね」
ズルッとイリスはずっこけそうになった。
「真面目なのかなんなのか……」
茶目っ気があると言った方が良いだろう。
「さて、それじゃあお喋りはこれくらいにしてと。スワンナ、冷凍ビーム!」
「避けろバチュル!」
どこから来るか分からない冷凍ビームを、バチュルは辛うじてかわす。
「お次は水の波動!」
「かわせ!」
さらに次々と連射される水の波動も、掠ったりしつつも直撃は免れる。
「これだけの猛攻を避け続けるなんて、随分と精神が丈夫なバチュルだね」
「ええ、まあ。このバチュルはそれが取り柄ですからね」
「なら、そろそろ決めさせてもらおうかな。スワンナ、暴風!」
スワンナは、風の壁越しから暴風を放ってきた。
「! バチュル、身代わり!」
そしてイリスは、避けられないと瞬時に理解し、回避ではなく防御の身代わりを指示する。
「もう一回暴風!」
「身代わり!」
バチュルの作り出す身代わりは、スワンナの暴風の一撃で吹き飛ばされてしまう。
「身代わりは自らの体力を削る技。無限に使えるものじゃないよ。このままじゃ、いずれ体力が底を尽きて、やられるよ?」
負けを促すようにフウロは言う。確かにこのまま身代わりを使っていても、ジリ貧だ。何か対策を打たなければやられてしまうが、イリスは何も思いつかない。
「くっ、どうすれば……」
この時イリスの頭の中には、電気石の洞窟でプラズマ団と戦っていた光景が映し出されていた。
「! そうだ、あの技なら……」
そして何か閃いたらしく、勝気な顔付きになる。
「バチュル、体中の電気を溜めるんだ。この一撃で決められなければ、僕らはやられる。だから、ありったけの電気を凝縮させるんだ」
そう言われバチュルは、余力を全て使って体の芯に電気を溜める。
「何をやるかは知らないけど、真っ向勝負なら受けて立つよ。スワンナ、全力で暴風!」
そしてスワンナもまた、羽を大きく羽ばたかせ、今まで以上の暴風を発生させる。
「バチュル、スワンナが撃つと同時にやるぞ」
そう言ってイリスはスワンナを見据える。そして、スワンナが最後の羽ばたきをしたところで、口を開く。
「バチュル、雷!」
バチュルは全身の力を一気に空に解き放ち、雷雲を発生させ、スワンナに雷を落とす。雷は雨天時に使うと必中する技。風の壁による目隠しも、意味を成さない。そして雷の直撃を受けたスワンナは、タイプ相性で4倍のダメージを受けたわけで、戦闘不能となった。

「はい。これがフキヨセジム勝利の証。ジェットバッジだよ」
「ありがとうございます」
バトルが終わり、空が晴れ渡ったところで、イリスはフウロからバッジを貰った。
「そういえば、ネジ山の方にプラズマ団……でしたっけ? とかいう人たちが向かっていったんですが、あの人たちってどういう人たちなんですか?」
「プラズマ団のこと知らないんですか!?」
イリスはプラズマ団の情報のお礼を言うよりも、ツッコミの方を優先した。これが、悲しいツッコミの習性である。



フキヨセジム戦、無事終了しました。さて、特に書くこともないので、次回予告をパパッとやっちゃいます。次回はたぶんお分かりになると思いますが、ネジ山です。特に何をしようとか、そういうのは決めてませんが、その辺は何とかしますので、お楽しみに。

Re: 66章 ネジ山 ( No.131 )
日時: 2011/05/16 23:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

ネジ山。そこは、質の良い鉱石が取れることで評判が高い鉱山だ。その内部は鉱石を取るために山を掘り進めて洞窟を作り、上層・中層・下層・最下層の4層に分かれている。ネジ山の中央はカルデラの様に窪んでいて、そこから各層に移動できるようになっている。また、冬になり雪が降ると、窪みに雪が積もり、一面が銀世界になって鉱山から観光名所へと変貌する。

「偶然だねチェレン。君も今からネジ山を通り抜けるなんて」
「そうだね。まあ、バッジはとっくに手に入れてたけど、ポケモンを鍛えたりしてたからね」
「そんなことよりも早く行きましょうよ」
といったやり取りの後、3人はネジ山の内部へと歩を進める。
「あれ? あそこにいるのってヤーコンさんじゃない?」
イリスがネジ山に入って間もなく、前方にいる人物を指差す。そこにいたのは、確かにホドモエジムジムリーダーのヤーコンだった。
「おお! 誰かと思えばお前達だったか」
ヤーコンの方も気付いたらしく、イリス達の方を向く。
「お前達がここにいるって事は、フキヨセのジムリーダーに勝ったんだな」
「はい。辛勝でしたけど……」
イリスがやや複雑な顔で言う。
「それよりも、ヤーコンさんは何故こんなところに?」
「こんなところとは何だ。ここは俺様が売買している鉱物を採掘しているところだぞ」
「初耳ですよ、そんなの……」
イリスは尊敬と呆れが混ざったように言う。
「ネジ山はいいぞ。特に俺様のお気に入りは、この先にある……いや、実際に見たほうが良いな」
ヤーコンは途中まで言ったことを中断する。とても気になる。
「話は変わるが、最近ジムリーダーとポケモンリーグでプラズマ団について話し合いが行われたんだ」
「話し合い、ですか」
イリスとミキが食い付く。一応この2人はPDO隊員なので、そういう情報はきっちりと得ておくべきだろうと思ったからだ。
「とりあえずプラズマ団を壊滅させるには、奴らの拠点を叩くのが一番だという結論が出た」
「つまり、プラズマ団のアジトに攻め込むわけですね」
アバウトだが、確かにそれが一番だろう。そしてこの作戦(?)に影響する事柄が、味方の戦力、敵の戦力、そして地形と相手の拠点の在処だ。
「だが、肝心の奴らのアジトが一向に見つからねえ。奴ら、地面にでも潜ってるのか、全く尻尾が掴めねえのよ」
ヤーコンがやれやれといった風に溜息を吐く。似合わない。
「まあ、子供のお前らがそんなに気張ることはない。お前達は楽しくポケモンと旅をしていればいいんだ。それが子供というものだからな」
いつもの嫌味にも聞こえるが、とても良いことを言っているような気もするので不思議だ。
「それじゃあ俺様はそろそろ行く。お前達も頑張れよ」
とヤーコンは似合わない激励の言葉を残し、ネジ山から去っていった。
「……それじゃあイリス。僕は先に行くよ」
「うん、分かった。僕らはのんびりと歩いていくことにするよ」
と言うがチェレンも歩いて進んでいる。まあ、チェレンはかなり速足だから、あっと5回くらい言う間には姿が見えなくなっているのだけど。

「ミキちゃん。僕思ったんだ」
イリスはネジ山の内部をちょうど半分くらい過ぎた頃に、そう言い出した。
「何をですか?」
「PDOやプラズマ団のことだよ。僕達は今までPDOのリーダーやサブリーダーの存在を知らなかった。普通は入隊したら真っ先に教えてくれても良いようなことなのに」
「師匠、それは私たちが契約する時に『どこの支部にも属さない遊撃部隊のようなものでお願いします』と言ったからではないでしょうか」
「ん? そうだっけ?」
真面目に疑問符を浮かべるイリスに、呆れ顔のミキ。最近イリスの威厳は消失してきた。
「私、師匠が師匠である自信なくしてきました……」
「逆破門?」
イリスはやはり疑問符を浮かべる。
「まあいいや、そんなこと」
「全然よくないですよ!? 私にとっては大問題です!」
真面目で真剣に言うミキ。流石のイリスも少したじろぐ。
「あ、ああ、ごめん……とにかく話を変えるね。プラズマ団のことなんだけど。あいつら、何がしたいんだと思う?」
ここでイリスは、分かりきったことを聞く。ミキは答えるまでもないとは思うが、一応自分の師なので答える。
「ポケモンの解放でしょう? 実際そう言ってたじゃないですか?」
「そうなんだけど、ポケモンを解放してどうするんだろう? ポケモンが可哀想だからってポケモンと人間を仕分けするのは、まあ分かるけど。それでも大した意味を持つとは思えないんだ」
「? どういう意味ですか?」
「考えてもみなよ。ゲーチスは人間の心理を利用してポケモンと人間を分けようとしてるんだろうけど、それがいくら平和的であっても、反乱分子は必ず現れる。それにこの世界は広い。イッシュだけでなく、他の地方も同じく解放運動をするには、いささか時間が掛かりすぎると思うんだ」
「はあ……」
途中から何が何だか、ミキには理解出来なかった。見た目はともかく中身は大人びてるミキだが、それでもまだ10歳なのだ。
「ごめんね。こんな話聞かせちゃって。今のは忘れていいよ」
イリスは笑顔でそう言うが、その笑顔もどこかぎこちなかった。まるで、なにか大事な事を見落としてるような、何か重大なことが見えてきそうな、そんな顔だった。

Re: 67章 シスターコンプレックス ( No.132 )
日時: 2011/05/17 23:18
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

イリスとミキはネジ山を抜けると、セッカシティに到着した。
「ここがセッカシティか。確かこの街はイッシュ唯一の湿原地帯で、冬には雪が積もるんだよね」
イリスはどこか嬉しそうに言う。といっても、イリスは大体いつもこんな調子だが。
「さて、それじゃあポケモンセンターで宿を取って休むと——」
「師匠」
イリスが軽く予定を立てていると、ミキがそれを遮るようにイリスを呼ぶ。
「何、ミキちゃん?」
「セッカに来たなら、家に泊まっていきませんか?」
「家? ……ああ、そういえばミキちゃん。セッカ出身だっけ」
かなり古い設定だが、その通り。ミキはセッカシティ出身である。
「それじゃあ、そうさせてもらおうかな」
「はい!」
イリスが泊まるのが嬉しいのか、ミキはいつになく上機嫌だ。まるでイリスを幽霊屋敷に放り込んだように。

「ただいまー」
ミキの家は街の東側にあり、すぐ側には湿原が広がっていた。
「ミキ! 帰ってきたのか!」
ミキが家の扉を開けるなり、ドドドドドという轟音(?)が鳴り響き、イリスよりも2つ3つ年上くらいの少年が現れた。
「ただいま、兄さん」
どうやらミキの兄らしい。
「よく帰ってきたな。ところで父さんは?」
これも忘れがちな設定だが、ミキは父親とともにヒウンに行き、父親はそのまましばらく帰ってこないのだ。
「お父さんはPDOの任務でしばらく帰ってこないって」
「そうか。……それよりミキ、こいつは誰だ?」
ミキの兄がイリスを指差して訊ねる。
「ああ。この人は私の師匠の」
「イリスです」
と、イリスとミキの息がピッタリ合った自己紹介をするも、ミキの兄は何故か硬直している。
「……ルンダ」
「ん? 何か言った?」
「何で俺というものがありながら男をつくってるんだあぁぁぁ!」
鼓膜が破れるほどの大音量でミキ兄は叫ぶ。イリスにはあまりの音量に何を言っているのかすら分からない。
「男って。兄さん違うよ。この人は、私の師匠で——」
「おい」
ミキの言うことも聞かず、ミキ兄はイリスの胸倉を掴み上げる。
「俺はザキ。お前は?」
「イリスです。というか、さっき名乗ったような気が……」
「俺のミキをどう誑かしたかは知らんが」
「僕も知りませんよ」
「それ相応の覚悟は出来てるんだろうな?」
「どれに相応なんですか? そしてなんの覚悟ですか?」
イリスは全く状況を理解できていないらしい。まあ、無理もないが。
「そのすかした態度。気に入らねえな」
そう言いつつザキは拳を握る。
「ちょ、ちょっと兄さん! 暴力沙汰はダメだって約束したはずだよ!」
「お前は黙ってるんだ。そして俺のことはお兄ちゃんと呼べと言っただろう」
「それは666回ほど断ったはずだよ!」
666回って、多すぎるだろ。しかも不吉だし。とイリスは場違いながら思った。
「ふん。ならこうしよう。これから俺とバトルして、お前が勝てばミキをくれてやる。ただし、俺が勝てばミキに一生近づくな」
勝手にも程がある。
「兄さん、それは……」
「つっこみたい部分はたくさんありますが、まあいいでしょう。受けて立ちます」
「師匠!?」
こうして、ミキを賭けた(失礼な物言いだが)イリスとザキのバトルが始まるのであった。

ミキの兄、ザキは一言で言えばシスコンである。
ザキはPDOセッカ支部統括という地位を持つほどに有能な人間だが、妹であるミキを溺愛しているところが、唯一と言っていいほどの欠点だった。もし6番道路で仕方なく(?)とはいえイリスとミキが一緒に寝たことを知れば、暴力沙汰どころか流血沙汰になることであろう。
ミキはザキがシスコンだと分かっていて「兄さん」と呼んでいる。まあ、生まれたときからベタベタしてくる兄から悪影響を受けなかったミキの精神がそうさせているわけだが。
ちなみにイリスはザキのことを過保護程度にしか捉えていない。イリスはこういったことに疎いのだ。
なにはともあれ、イリス対ザキのポケモンバトルが、今まさに始まるのであった。
「勝負のルールを説明するぞ。ポケモンの数は4体のシングルバトルだ。先にどちらか一方のポケモンが全て戦闘不能になった時点でバトルを終了する」
「はい、分かりました」
現在地はセッカシティにある湿原の、比較的乾いている場所。ここでバトルを行うのだ。
「それじゃあミキ。審判を頼むぞ。俺に有利な判定を下しても構わない」
「サラッととんでもないこと言わないでよ……」
嘆息するミキ。だがそれでも審判役はやるようで、2人の中央辺りにある石に腰掛けて、手を上げる。
「それでは、バトル開始!」
「出て来い、モンメン!
「頼むぞ、チラーミィ!」
バトルが開始され、ザキはモンメン、イリスはチラーミィをそれぞれ繰り出す。
「先攻はくれてやる。俺からのハンデだ」
「それじゃ、ありがたくもらっておきます。チラーミィ、スイープビンタ!」
チラーミィは尻尾を硬化させ、モンメンに向かっていく。



ついにセッカシティまで来ました。今回はミキの兄、ザキが登場しました。いや、実はこういうキャラを登場させたいなと思っていたんですよ。次回はそのザキとのバトルです。お楽しみに。

Re: 68章 イリス対ザキ ( No.133 )
日時: 2011/05/18 23:25
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

「モンメン、葉っぱカッター!」
モンメンはチラーミィが突っ込んでくるのに対し、葉っぱカッターで牽制する。
「避けるの無理そうだな……チラーミィ、叩き落せ!」
チラーミィは向かって来る葉っぱを避けず、硬化させた尻尾で叩き落していく。
「隙だらけだぜ。葉っぱカッター!」
モンメンはチラーミィが葉っぱを叩き落している隙に、再度葉っぱカッターを放つ。
「チラーミィ!」
「休ませないぜ。毒の粉!」
さらにモンメンは、素早い動きでチラーミィに接近し、毒の粉を浴びせる。
「特性、悪戯心か。チラーミィ、くすぐる!」
「避けろ」
チラーミィは接近してきたモンメンをくすぐろうとするが、モンメンは後ろに下がって回避した。
「もう一度くすぐる!」
だがチラーミィは諦めず、今度は自分から接近してくすぐろうとする。
「一生やってろ。アンコール」
しかしここで、モンメンの特性悪戯心によりモンメンの方が速くなり、アンコールをした。
「アンコール……?」
「知らないのか。アンコールを受けたポケモンは、しばらくの間同じ技しか使えなくなるんだよ」
つまりそれは、チラーミィはしばらくの間、くすぐるしか使えないということ。
「そして、その程度なら容易にかわせる」
チラーミィが連続で使用するくすぐるを、モンメンはかわし続ける。

「うわぁ。兄さん手加減全くしてない……」
審判役のミキは、2人のバトルを半ば観戦状態なのだが、まあ審判なんて特にやることはないものだ。
「師匠、大丈夫かな……?」
ミキはこのバトル、ザキよりもイリスに勝ってほしいようだ。それもそのはず、シスコン兄貴の傍にずっといるなんてことは、耐え難いものなのだから。

「決めるぞモンメン、目覚めるパワー!」
モンメンは自分の周りに茶色の球を浮かべ、それをチラーミィ目掛けて放つ。
「チラーミィ!」
この目覚めるパワーは格闘タイプ。つまりノーマルタイプのチラーミィには効果抜群なわけで、戦闘不能となった。
「戻ってくれ、チラーミィ」
「はっ。大したことないな、お前。そんなんで俺に挑もうなんて、10世紀早いぜ」
いや、挑んできたのはあんただろ。とつっこみそうになる衝動を押さえ、イリスは新たなポケモンを出す。
「出て来い、ワシボン」
モンメンは草タイプなので、飛行タイプが弱点。そのためイリスはワシボンを出した。
「弱点で攻めれば勝てるとでも思ってんのか?」
「まさか。ワシボン、ビルドアップから燕返し!」
ワシボンは初っ端からお得意の繋げ技で、モンメンを攻撃する。
「くっ、葉っぱカッター!」
モンメンはギリギリのところで葉っぱカッターを放つが、ワシボンには手傷程度しか与えられず、戦闘不能となった。
「戻れモンメン。次はお前だ、ランプラー!」
ザキは2体目に、ランプポケモンのランプラーを繰り出す。
「ランプラーか。僕の好きなポケモンですよ」
「お前に好かれても嬉しくない。ランプラー、炎の渦」
ランプラーはワシボンを炎の渦で取り囲む。
「エアスラッシュで切り裂け!」
指示通り、ワシボンはエアスラッシュで炎の渦を切り裂こうとするが、無駄だった。
「ニトロチャージだ!」
突如、炎の渦の外からランプラーが炎を纏って突撃してきた。いきなりだったため、ワシボンは避けられず、その攻撃を受けた。
「逃がすな! エアスラッシュ!」
ランプラーの突撃方向に向かって空気の刃を放ってみるが、手応えはない。はずれのようだ。
「もう一度ニトロチャージ!」
ランプラーはまたも炎を纏って突撃してくる。どうやら炎の渦で壁を作り、死角から攻撃する作戦らしい。
「同じ手には引っ掛かりませんよ。ビルドアップ!」
この作戦はフキヨセジムで既に経験しているため、イリスにとってはそんなに苦ではなく、たった1度食らっただけで見切ってしまい、対応している。
「ニトロチャージだ!」
「ビルドアップ!」
ランプラーが炎を纏って突撃してくるのに対し、ワシボンはビルドアップで防御する。
「ニトロチャージ!」
「しつこいですね。ビルドアップ!」
ワシボンはビルドアップしてニトロチャージに備えるが、攻撃が来ない。そしていきなり、炎の渦が消え、ランプラーが姿を現す。
「ワシボン、シャドークロー!」
ビルドアップで上がった攻撃力に、ワシボンの攻撃力。さらには弱点を突く攻撃なので、もしランプラーがこの攻撃を受ければ、戦闘不能は免れないだろう。しかし
「ランプラー、クリアスモッグ」
ランプラーはいかにも清潔そうな煙を出し、ワシボンを覆っていく。そしてワシボンはというと、今までビルドアップで増強した筋肉がなくなってしまったのか、力強さがなくなっている。
「これは……!?」
「クリアスモッグは、相手の能力変化を元に戻す技だ。お前がコツコツ溜めてた攻防も、全部おじゃんになったんだよ」
ザキは勝ち誇るように言う。
「決めるぞ。オーバーヒート!」
ここでランプラーは、全身の火力を全て使っての業火を発射、いや放出した。
「ワシボン……!」
そしてワシボンは、そのオーバーヒートに向かって突っ込んでゆく。



イリス対ザキのバトル、始まりました。今回のバトルは4対4という中途半端な数で、恐らくあと2回は続きます。シスコン兄貴のバトルがあと2回続きます。まあ、それはさておいて、次回もバトルです。お楽しみに。


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