二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ 0・メモリー 堂々完結
日時: 2014/12/07 13:44
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: oLjmDXls)

【読者の皆様へ】
初めまして、二次などで創作を行っている、タクと申します。この度はデュエル・マスターズ 0・メモリー、完全に完結しました! 今まで皆さん、応援ありがとうございました。続編、デュエル・マスターズ D・ステラも応援よろしくお願いします!

【番外編あらすじ】
教団の脅威は去ったはずだった。教団の神官、バラモンとデトロイトによって呼びこされた2人の無法の覇者、そして竜神王。しかし、それはやがて世界を脅かす要因に。そして、ヒナタがデュエマをやめる!? 衝撃の番外編、ついに本格始動!

用語集>>10

登場人物紹介>>02
デッキ紹介>>67
デッキ紹介2 >>190
参照1000突破企画:切札紹介 >>114

本編>>247

番外編:強襲の竜神王編

エクストラターン0:キー・メモリアル >>246
エクストラターン1:異変 >>253
エクストラターン2:竜神王 >>254
エクストラターン3:恐怖 >>257
エクストラターン4:狂気 >>258
エクストラターン5:行動開始 >>261
エクストラターン6:デコード >>262
エクストラターン7:ケリを付けろ >>265
エクストラターン8:敗者の条件 >>266
エクストラターン9:急襲、竜神王 >>267
エクストラターン10:決死の特攻 >>268
エクストラターン11:デッド・オア・デッド >>280
エクストラターン12:鬼 >>298
エクストラターン13:暴かれた根源 >>300
エクストラターン14:捨てられたデッキケース >>301
エクストラターン15:ベルフェモール >>304
エクストラターン16:向き合うこと >>305
エクストラターン17:大阪へ >>307
エクストラターン18:咆哮、激震、超克 >>310
エクストラターン19:星として、海に散る >>311
エクストラターン20:絶望への反逆 >>312
エクストラターン21:決戦の舞台へ >>313
エクストラターン22:立ち塞がる無法の皇 >>314
エクストラターン23:激震、インフィニティ・ドロン・ゴー! >>315
エクストラターン24:最後の戦い >>336
エクストラターン25:反逆の一戦 >>337
エクストラターン26:竜神王結合 >>338
エクストラターン27:破壊衝動 >>339
エクストラターン28:絶望と破壊の渦 >>340
エクストラターン29:終焉      >>341

参照3000突破記念!ヒナタへ56の質問
>>176 >>177

短編1:仁義なき戦い(パブリック・エネミー) >>163 >>164
短編2:恋の裏技 >>182 >>185 >>188
短編3:親父の背中 >>206
短編4:恐怖、学園七不思議!? >>281 >>283 >>285 >>289 >>290 >>294 >>295
短編5:探偵パラレル >>306


コラボ番外編

モノクロさん作、デュエル・マスターズMythology

”last smile”
あらすじ:デュエル・マスターズMythologyで活躍中のヒロインキャラ、御船汐。彼女の空白の一年間とは、まさしく鎧竜での一年間のことだった。では、何故彼女はそれを失うことになったのか? そして、記憶と共に彼女が失わなければならなかったものとは。オリキャラによって繋がる2作品の謎が今此処に明かされる。
そして、無法と神々が今、交錯する。
短編のつもりが中編クラスの長さになってしまったこの作品。最後まで必見!

第一話:別れと悲劇はデュエマの後で
>>316 >>317 >>321 >>322

第二話:月夜野シオは彼女なのか?
>>323 >>327 >>328

第三話:神話の使い手
>>329 >>330 >>331 >>332

第四話:そして神話へ
>>335 >>345 >>348 >>349

第五話:”先輩”
>>350

キャラクター裏話

パート1 暁ヒナタ >>293
パート2 黒鳥レン >>299


基本、概存のカードを使用していますが、これからの展開でオリジナルカードを使うかも知れません。ご了承下さい。

なお、クリーチャーの解説などは、以下サイト様から引用させていただいています。
DuelMasters Wiki(デュエルマスターズ ウィキ)様

Re: デュエル・マスターズ 0・メモリー 番外編 ( No.303 )
日時: 2014/03/30 09:38
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

モノクロさん

コメントありがとうございます。レンの名前はそこから来ています。連ゼロという俗称は自分が作ったものですが、まあ連ドラと連デモがあって連ゼロがないのはあれだったので。
そして、黒鳥という苗字もモノクロさんの仰るとおりです。そして、遂に出てきた邪念因子と謎の少女ですが、まあその通りかと。分かりやすい例えが1つあるのですが、それを言ってしまったら完全にネタバレなので。強いて言うなら邪念因子はピンクの魔人ですかね。

そして新キャラのカナデですが、今回再び番外編を書くに当たって少し口調を変えた、というより特徴をつけたキャラです。世界大会編で出るかどうかは-------------未定です。というより、もう出すキャラ決まってしまっているのが理由ですね。ただし、対戦相手以外のモブで出る可能性はあります。

フジの過去だけでなく、他のキャラの苦悩なども描いていこうと思います。例としてはテツヤの病気などですかね。
最後に主人公の消失ですが、彼がどうなるのかは今後の展開をお楽しみとしか。というか、彼に限って自殺はしませんから。


さて、ビギニング・ドラゴンデッキですが、まとまった改造案をこちらは報告させていきます。
まず、結晶龍ですが、やはり展開力を重視した方が良いと思います。《アサシングリード》のバウンス効果が地味に便利なのもあって、やはり水単で組むのがセオリーかと。
何より、このデッキは《ティーチャー》による手札補充も強みの一つなので、リキッド・ピープルのバニラビートとして組んでいくのが一番良いと思います。
つまり、改造点は《ジェスタールーペ》の投入、そして進化させるなら《ヴィルヴィスヴィード》もいいですが、《エヴォリューター》から繋がる《ジャバジャック》もいいかと。

次に天聖龍ですが、実はデュエル・マスターズRev.のコミックにあった虹矢未来のデッキを参考に組んでみた結果、これにさらにブロッカー強化のための《ムルムル》と手札補充の《ガガ・ピカリャン》を投入することでさらに強く出来ました。《ハッチャキ》よりも序盤の安定性が出てよかったです。後、自然文明を無理に投入しなくても、光水だけで案外いけるものですよ。ブロッカーで足止めしておいて、手札補充もし、後は毎ターン、マナをチャージすれば自然と《ヴィブロス・ヘヴン》を出すだけのマナは溜まるので。
必須カードは《セブ・コアクマン》ですかね。あわよくば3枚カードを引けることもあります。

最後に戦闘龍ですが、こっちはまだ模索中ですね。ですが、《ギャノバズガ・ドラゴン》は思った以上に良い仕事をしてくれます。《バトラッシュ》の火力範囲を広く出来るからですかね。
そして組むなら、敢えて闇文明もいいかもしれません。《ガーリック》を投入して、光臨でさらに展開していくのもいいですし、超竜に進化させることもできます。
---------とは言ったものの、これはまだ試していないんですよね……。
ちなみに、手札補充は《ライク・ア・ローリングストーム》で擬似的に可能なので、組めると思います。
どのみち、爆竜はビート系が多いので、9コスト以上の重いドラゴンは採用しにくいです。

というわけで、今後の展開に乞うご期待です。

それでは、また。

PS

結局天聖龍は光単色でコストの低いものを沢山積んだデッキにすると、安定しました。水必要あったのか……。

エクストラターン15:ベルフェモール ( No.304 )
日時: 2014/03/28 23:27
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

 時を少しさかのぼり、オーストラリアで束の間の休息をとっていたシントは、本当に休息が束の間になるとは思っていなかった。
 街に突然姿を表した黒き竜神王、《アングバッド・アンカラゴン》が何体も現れる。それらは、正しく飛竜。翼を羽ばたかせて、次々に人を喰らっていく。
 が、シントはそれらを休む間もなく倒していくことになった。

「ぜぇぜぇ、はぁはぁ」

 まずいことに、1人だけでは追いつかない。片っ端から決闘空間を挑んで倒していくが、”本体”が見当たらない。

「くっそぉ!!」

 と、その時だった。次々に、アンカラゴンが黒い肉塊に変わって飛んでいく。

「に、逃げられたってことで良いんだな……」

 疲労が相当溜まっている。シントは一度苦笑いを浮かべると、膝を付いてそのまま意識を闇に葬った。直前に、瞼の裏に仲間の姿をすりこんで。

 ***

「デッキケースが、何でゴミ箱に……」

 ドラポンはデッキケースを拾った。散らばったカードを見れば、思い出深いものばかりだった。まして、ドラポンにとっては盤面の上で共に戦った仲間。
 デッキケースは二段状になっており、デッキ改造用のカードも入れられてあった。

「……あいつ、もしかしてデュエマ辞める気とちゃうんじゃろうな」

 ギリッと歯を噛み締めた。


「ヒナタの、バカヤロオオオオ!!!!!」


 誰もいないからか、虚しく、叫び声だけが木霊した。

 ***
 
 戦いから一夜明けたということを実感した、レン達。先日は、そのまま路上で寝てしまったようだ。
 ボロボロに朽ちた海戸ニュータウン。人は皆逃げて、蛻の殻。

「竜神王のヤツ、許さない!!」
「先輩、落ち着いてです。ここで感情的になっても意味が無いです」

 シオが怒る彼をたしなめる。レンは、ふぅっとため息をつくと、ケータイの伝言を見た。

「竜神王は、一点の方向へ集まった後に反応が消えたらしい」
「まずいです。奴らは何が目的なのかも分からないまま、唯時間だけが過ぎていくです」
「奴らに動きは? 最新の情報をツイッターなんかで知ることが出来れば良いのだが」


「ツイッターなんか要らないねぇ」

 声がする。上を見れば、ジェット機の音と同時にシルエット。そして、それがどんどん地上へ近づいていくのが分かる。
 激しい風に髪がなびく。
 それは、小さな自家用機でこそあったが、飛行機と見て間違いなかった。
 そして見覚えのある銀髪の少年が現れた。

「奴らは、”地球のへそ”。つまり、オーストラリアのエアーズロックでリンクしたのが今朝確認されたよ」
「ジェイコフ!?」

 そう、まさしくジェイコフ・クライニューだった。

「ヘリに乗ってくれ。特別に、オーストラリアへの入国許可を貰った。燃料は途中で補充するから、このままラリアに行くよ」

「って、ええええええ!!」

 レンは叫ぶ。
 金持ちはチートだ、金持ちは最強だ、という思考がぐるぐる回る。
 が、仕方なく乗ることに。敵がようやく姿を現したというのならば、行くしかあるまい、と。
 向こうにはシントもいるのだ、恐れることは何も無いはずだ。


 ***

 オーストラリア、エアーズロック。地球のへそとも呼ばれる此処は、本来ならば先住民、アボリジニの人々にとって神聖なる場所のため、登山が制限されることもある巨大な岩だ。
 そう、岩なのだ。この山自体が1枚の岩で成されているのである。
 この周辺には、許可なく入れば罰金が課される聖地が他にもあるが、ここは特別だ。

 しかし、それを嘲笑うかのようにその頂上の遥か上で竜神王とローブを被った少女は浮いていた。

 その横には、二体の無法者。

 無限を司る《ジャッキー》。
 不死を司る《ブルース》。

 この2体は少女を護るかのように付いていた。
 クリーチャーには、地球や他の惑星においても、自らが最も力を発揮できる聖地というものがある。
 ここは、クリーチゃーの力が見えない竜脈によって最も溜まっている場所。故に少女はここを選んだのである。

 邪念因子が最大限の力を発揮できる場所ならば、どこでも良かったのである。

「さあ、最後の儀式のはじまり」

 少女はクスクスと笑う。そして、ローブを脱いだ。艶やかな緑色の髪、そして幼さが残る顔立ち、そして手に持った水晶付きの杖。

「------------------この《箱庭のイザナイ ベルフェモール》はついになしとげちゃうんだー。せかいをこのてに。全ぎゃらくしーオラクル化計画のだいいっぽが、この地球で-----------------」

 オラクルの残党、ベルフェモール。
 それが彼女の本名だった。

「今までべるを閉じ込めてきたヨミに一泡吹かせてあげる。地獄からちゃんとみていてね? ヨミ」

 くすりと笑う姿は、年相応の少女のもの。
 しかし、その裏にある思惑はとても少女には考えられないものだった。
 全ギャラクシーオラクル化計画。
 そのために、竜神王を呼び起こし、さらにそれらを揃える事で現れる最狂最悪のクリーチャーをこの手にするために、彼女の野望は狂気へと変わる。


 ***

「ヒナタがいなくなった!?」

 コトハがその知らせを受けたのは、レン達が知らないうちに出発した数十分後だった。どうやら、

「あのバカ……どこにいったのよ!!」

 仕方が無く、海戸中央病院へ戻ることにする。が、案の定病室には誰もいない、と思いきや。

「コトハー!!」
「ドラポン!? 居たんだ!」

 コトハはドラポンが飛びついてくるのを見事に避け、赤いそれがへしゃげるのをしっかりと見届けた。

「す、すまんすまん、ちいとはっちゃけてしまったっちゃ!」
「あんたねえ、いくらコトハの胸が極上だからと言って、絶対ダメだよ!」
「確かに、オーロラはAA未満っちゃな……痛い痛い痛い!!」

 怒るオーロラの光弾がドラポンへ炸裂した。
 ああ、ヒナタといいドラポンといい、どうして男子はこうもデリカシーに欠けるのか。

「それはいーとして、ドラポンはヒナタが1人で行きそうな場所って分かる?」
「いかがわしい本のコーナー……いだだだだだ、冗談っちゃ!!」
「アンタねえええ!! 好い加減にしときなさいよぉ!! よーく、こんなときに冗談が言えるわねえ!!」
「だけど、アイツはなぁ……1人で滅多に出歩かんしなぁ」

 彼が好きだった場所なんか、カードショップ以外分からない。
 まして今は、カードショップという可能性は消されているのに。


「いや、待って------------これはカンだけど、1つだけ場所があるかも」

 コトハは急に妙案を思いついたらしかった。

エクストラターン16:向き合うこと ( No.305 )
日時: 2014/03/30 09:21
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

 いつの間にか、空は鉛色になっていた。
 土砂降りの雨が叩きつける。何もかもを忘れてしまいそうなくらいに。確かに高いところで、恐怖こそ感じたが、そんなもの吹っ飛んだ。
 鎧竜決闘学院の屋上。臨時休校で誰もいない学校の屋上。

 -------------封李さんも、ここに来てよく授業サボってたっけか。

 だが、カードを再び握ろうという気には、もうなれなかった。
 こんなカードゲームに足を突っ込まなければ、こんな思いをすることも無かっただろうに。
 友をなくす悲しみにくれることも無かっただろうに。
 だからこそ、ここで足を洗うのも悪くないと思った。
 悪くないと思った、なのに。
 何故だろう。
 未練がましく、まだやりたいという気も起きる。

 いや、ダメだ。そんなものに足をとられていては。
 いずれ、このまま続けていても壊れてしまうような気がする。

 もう、デュエマで大事な人を亡くすのは嫌だった。


「やっぱり、ここに居たんだ」

 
 聞き覚えのある声。だが、敢えて知らんふりをした。
 足音が近づいてくる。

「最初、変な気でも起こしたんじゃないかって思った。ま、アンタの頑丈な体のことだし、こっから落ちても死ねないと思うけど? 前の七不思議の件で実証済みだし」
「ほっとけ」

 ぶっきらぼうな口調だが、初めて口を開いた。

「デッキケースを置いてくるなんて、アンタらしくない」
「バカ、たりめーだろ。もう------------デュエマなんか辞めるんだよ。やってられねえよ、あんなゲーム」
「バカはアンタ。ほら、アンタのデッキよ」

 デッキケースをヒナタに無理やり押し付ける。

「るっせぇ!! やめるったら、やめるんだよ!!」

 疎むような表情を浮かべたヒナタが振り向き、手でデッキケースを振り払う。
 デッキケースはガシャン、と無機質な音を立てて屋上のタイルの上に落ちた。

 その時、ヒナタは振り向いた自分の顔が別の方向に振れたのを感じた。

 じんとした痛みが後々から伝わってくる。
 視界には、俯き加減のコトハの顔が見えた。そして、平手が浮かんでいるのも見える。
 
 「てんめぇッ! 何しやがる!」と喉から出てきそうになった台詞を引っ込めた。
 言える訳が無かった。
 
 しずくが、コトハの瞳には浮かんでいる。

 赤く染まった頬が、混沌とした感情を表している。

 彼女は、こらえてすぐに叫んだ。
 
 「アンタは大嘘つきよ!! 自分に大嘘をついてる!! デュエマが好きで、この学校に入って--------------そして今も!! 心のどっかでデュエマがしたいって思いが、迷いがあったから此処に来たんじゃないの!? そうじゃなきゃ--------------こんなところには来ないよ」

 自分に---------嘘を----------ついてる?
 ヒナタは、意味が解せなかった。
 しかし、だんだん染み込むかのように分かってきた。
 ひっく、とすする声が混じった。だが、彼女は続けた。

「自分で自分に嘘をつくのは勝手! だけど、だけどっ!! その嘘を人に押し付けないでよ!! アタシも、レンも、シオちゃんも、リョウも!! 皆、ヒナタにデュエマをやめてほしいなんて思ってない!」

 ------------俺に、デュエマをやめてほしくない?
 コトハは、限界が来たのか膝を付いた。そして振り絞るかのように、言った。


「アタシは好きなんだよ、ひっく、デュエマをしてるアンタが、一番っ!! 世界で一番、好きなんだって--------」


「それに---------」と彼女は続けた。

「竜神王を倒せるのは、アタシは世界どこを探してもヒナタしかいないと思ってる!」

 ----------俺しか、いない------------?

「何で、そう断言できるんだよ」
「それはだって、ヒナタはヨミだって倒した-----------それにアタシを何回も助けてくれた。だから、賭けて良いと思う。アンタとドラポンのコンビなら、絶対に勝てると思う!」

 -----------俺のデュエマを必要としてくれる人が、まだいるんだ。

「だから、これを受け取って!」

 ドンと胸にデッキを押し付けられる。
 熱い。

 何故だかしらないが、デッキが熱い。

「俺は、大事なことを忘れてた」

 確かに、辛いことはいっぱいあった。だけど、このデュエル・マスターズというカードゲームをやらないと味わえなかった感覚も、思い出も、いっぱいあった。
 楽しいことも、一緒に戦った仲間も、このゲームで得たこと。
 これからもやりたい。
 
 ずっと、やりたい。
 
 これからも仲間と一緒に!!


「ありがとよ、コトハ。もう、大丈夫だ」


 何故だかしらない。
 だが、また戦える気がする。
 にわかに沸いてきた勇気とともに、デッキを受け取ったヒナタ。

 同時に、受け取った手からとても熱いものが体に流れ込んでくる感覚を覚える。

 これが、今まで戦ってきた証なんだ、と実感したのだった。

「ったく、よーやく元に戻ったみたいじゃな!」

 デッキから、相棒の声が出てくる。

「デッキ捨てたときは、どーなることかと思ったけど」
「ごめん、皆!! 俺、バカだった!! 皆を捨てたりして、本当にゴメンな!! 俺、もうやめねえから!! デュエマはずっとやめねえから!!」

 ヒナタは涙を流し、謝った。
 だが、この涙が全部洗ってくれるような気もしたのだった。


『すんませーん、てめーらちょいこっち向いて。つーか向け』


 メガホンで増大された音と共に、突如やや大きい、この一辺を覆う影が現れる。
 今、いいところだったのに、殺意が何者かに向いたヒナタとコトハだったが-------------

「って、ありゃなんじゃぁー!!」

 自家用飛行機だ。それも、丸に「武」のマークが施されたものだ。

「武闘先輩!?」
「あー、世界文化遺産先輩、飛行機まで引っ張ってきて乙っス」

『おいヒナタ、俺様を今完全に富士山呼ばわりしたな? つーかしたね? お前次そのネタ使ったら、墓場に逆さでぶち込んどくからね?』

 フジの若干ブルーな突っ込みが帰って来たところで、中型自家用飛行機が着陸した。

 ***

「まず、これから大阪に向かってカナデを迎えに行く」
「えと、先輩? カナデさんって一体?」

 いきなりの事に着いていけないヒナタ。

「フジ先輩達の昔の仲間でとっても頭が良いんだって」
「へーえ、へえ」
「シントさんと昔取り合ったんだって」
「へーえ、へえ。この仏頂面でも恋はするんだな。うん」
「殺すぞヒナタ。つーか、余計なこと言わなくて良い。別に取り合ってねえし」

 フジの睨みが好い加減怖くなってきたので、やめることにした。
 座席に腰をかけるヒナタ。同時に、これからの戦いへの決意を固める。
 すると、コトハが珍しく隣に腰を下ろしてきた。

「隣、いいかな? 今までの経緯はアタシがするように言われてるし」
「ったく、説明お前に丸投げかよ」

 浮き上がる感覚を覚える。
 そして------------空が気がつけば青く澄んでいたことに気づいた。

短編5:探偵パラレル  ( No.306 )
日時: 2014/03/31 08:15
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 俺の名は、ヒナタ・アカツキ。今ロンドンで、最もホットでクールでちょっぴりお茶目な探偵である。
 喧騒なロンドンの街から少し外れに立派ではないが、事務所を立てているのだ。
 今日も、俺の力を借りに迷える子羊共--------じゃなかった、依頼人がやってくる。

「すみません! ヒナタ・アカツキ探偵事務所って此処ですか?」

 やってきた。見れば、中肉中背、紳士服を着こなしたどこにでもいそうな男だった。丸ひげが特徴的で、細い目は切れ込みのようだった。

「ええ、此処ですよ。事件の依頼でしょうか」
「はい、そうなんです。大事件なんです」

 大事件---------それは聞いていて、腕が鳴るというものだ。早速俺は、依頼人をもてなそうと机のある客間に通そうとしたが、依頼人は手短に話すのでこのままで、と断った。
 畜生、クライアントの分際で俺の提案を断るたぁ、いい度胸-----------いや何でもない。本音がちょぉっぴり漏れただけだ。うん。

「では、どうぞ」
「実は-----------」

 依頼人は、改まった様子で口を開く。


「家のトイレが壊れちゃったので、トイレ貸してくれませんかね?」


 あー、成る程成る程、よーするにトイレを借用しに来たのね、んじゃあ俺は親切だから----------------って、バッキャロオオオオ!! ここは探偵事務所なんだよ!!
 トイレがぶっ壊れたのなら大工に頼め!!
 ついでに公衆トイレを使いやがれ!! ドブネズミがよく沸く公衆トイレをよぉ!! ああ!? 
 思わず、依頼人に掴みかかって恨み辛み全部ぶちまけてやったぜ、ヒャッホー! クレイジー!
 ハイテンションMAXの突っ込みが炸裂。
 だが、依頼人はこびて言い訳タイムを開始。
 ったくもう、付き合ってらんねえよ。

「す、すみません! ”事件は親切に何でも解決”って看板に書いていたもんですから」
「いや、確かにテメーにとっては大事件かもしれないけれども!! ざっけんじゃねえよ、何度も言うけど此処は探偵事務所なんだよ!!」
「あの、すみません、でも私そろそろ限界---------」
「ちょ、やめろ! ヤメテ! 此処で我慢をといたら、一巻の終わりだからね!? おい、ちょ、やめ---------ぎゃあああああああああ」

 こうして、俺の一日は最悪な形で始まったのだった。
 そこからはもう、大惨事だったことは目に見えているだろう、親愛なるシャーロキアン諸君。そんぐらい推理しやがれ。
 え? 推理したくない?
 ま、そーだろーよ。


 ***

 〜第一節:怪盗キット(続きません、多分)〜

 俺は、今までにも幾多もの事件をといてきた自他共に認めるスーパー名探偵だ。このロンドンで極上の事件が起こる限り、俺はそれを解くだけ。
 そして、ついこの間もかっこよく犯人を追い詰めてやったぜ。

「ギャルの着替えを覗いたのは貴方ですね? 何故こんなことを……」
「ギャルのシャワー覗き魔事件の犯人は、貴方しかいないんですよ!」
「俺の秘蔵のコレクションに賭けて! 絶対にこの謎を解いてみせる!」
「もうダメだぁ、お終いだぁ……逃げるんだぁ……」

 ……。
 おい、今くだらない事件しかないって思ったやつ、後で屋上に来い。
 え? 最後のは何かって? いや、違うんだ! 決して事件が迷宮入りしたとか、そんなんじゃなくてな!!
 あ、墓穴掘ってるって?
 サーセン。
 
 さて俺は今、ヨルムンガル博物館にいる。何故かって? 知り合いの警部からの依頼に決まってるだろ。
 何故なら世紀末の大物怪盗、キットが今夜、この美術館の目玉といえる宝玉、レイジクリスタルを盗りにくると予告状を出してきたからな!
 え? キッドじゃないの?
 バカいえ、そもそも此処は19世紀ロンドンって設定なんだよ!
 にしても、広い博物館だ。あちこちに、宝石による派手な装飾が施されている。
 目がチカチカしてやってられねえよ。
 と、その時だった。

「ヒナタ君」

 声を掛けられた。振り向けば、聞き覚えのありまくる声。でっぷりとした貫禄のある腹に、若干赤みのかった茶髪が特徴の中年男性。長い髭が特徴的だ。
 この方が、俺の知り合いのマグレ警部だった。

「やはり、キットは予告どおりにやってくるんじゃろうか」
「そうですね。はぐれ警部」
「マグレだ。それ別のデカ」
「ヤツが予告状を出してこなかった時はないですよ。ゴリラ警部」
「マグレだ。それもう原型崩れかけてるから。完全にわざとだよね? 悪意すら感じられるんだけどね?」
「ですが心配無用。この俺、超天災名探偵ヒナタ・アカツキが携わって解決した事件は多いことは知ってますよね?」
「天災って何? 本編のほうの自分の切札意識したの? それに普通自分では言わないからね? つーか君が解決してきた事件の殆どは覗きか自分の盗まれた同人誌の行方くらいだからね?」

 ふ、事件に上も下もないんですよヘタレ警部。あ、マグレだった。
 にしても、キットが言っていた予告の時間までだいぶあるな……。

「警部。一度、予告状を見せていただきますか?」
「ああ、これだ。”マヌケな警察諸君。今回も1つ、君達に挑戦させてもらうよ。21日の月夜の元、レイジクリスタルを頂に参ります”とな。完全に元ネタの怪盗をパクってるのだよ」
「しかも、挑戦して今まで一度も宝石が盗まれなかったことはないんですよ? 何としてでも阻止せねばなりません。それじゃあ、宝石の方を拝見したいのですが」
「ああ、良いとも」


 ***

 ずさんと言えばずさんだった。
 まず、レイジクリスタルと呼ばれる宝石は、七色に輝く非常に珍しい性質で、他の宝石のどの特長にも当てはまらないという。
 だが問題は、その管理の仕方だった。
 宝石は床に置かれ、さらにその横に看板が立っているのである。ご丁寧にも、”盗ってちょ”と。
 これでは、まるで盗ってくれと言わんばかりである。

「あの、警部。腹切る準備は出来ましたか?」
「ちょ、物騒なこと言うもんじゃないよ君! 罠だよ罠、これはね! ほら、このどこにでもありそうな壺を見ていたまえ! これを宝石の前に放ると------------」

 すると、警部の手から壺が離れて宝石の近くへ舞って行く。が、次の瞬間だった。突如、どこからか赤いラインが飛んでくる。それが、何方向から合わさって、壺の形を消し去った。

「どうだね! このレーザーは!」
「へー、すごいっすね。つーか、良いんですか? こんな明らかに時代に合わないハイテクなマシン使っても」
「ノープロブレムだよ」
「へー、すごいっすね。つーか、良いんですか? 今の壺が時価数億円の”デトロイトの壺”だったとしても」
「ノープロブレムだよ-------------って、え? 今何て? 時価数億円!? あのボロっちぃ壺が!?」

 時既に遅し。
 壺は消し墨と化してしまった。だが今、警部が壺を投げるシーンは誰もがばっちり目撃してしまっている。
 まさか、本当にそれを投げるとは思わなかったのか、というかどこから持ち出されたのか、誰もが唖然としている。
「あの、警部---------------」俺は、にっこりと営業スマイルで言った。


「腹切る覚悟は出来ましたか?」


 こうして、警部は何やかんやで警部を辞めることになった。そして、事件はばっちり解決されたのだった。

 ***

 その夜---------------。

「あれ? 誰もいない? もしかして俺来るの忘れられている?」

 怪盗キットは確かに予告通りに来た。だが、盗みという所業を人に魅せることが生きがいの怪盗には、これはショックだったらしく----------------。

「もう怪盗やめよう」

 こうして、キットは何やかんやで怪盗をやめることになった。そして、二度とキットの予告状が届くことはなかったという。

エクストラターン17:大阪へ ( No.307 )
日時: 2014/03/31 23:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 流石飛行機というところだろうか。大阪には45分程で着くらしい。
 その間に、コトハは今までの経緯を話していた。
 水澤カナデの詳細、そして竜神王の行方。

「アタシ達も、ついさっきジェイコフから竜神王がオーストラリアのエアーズロックに向かったのが分かった。だから、今度こそ一気に叩く」
「それにしたって、急展開だな。竜神王は何のために人を喰らったんだ?
 つーかシントさんに彼女とか居たんだ」
「遠距離交際やってるみたいだけどね。手紙とかで」

 ふぅ、と息をつくとコトハは呟いた。

「後は、竜神王の動きなんだけど、実はエアーズロックの上空で未だ動いていないみたい」
「動いていない? リンクしたままジッとしてるってことか」

 竜神王は未だに動きを見せていなかった。
 だが、ここでもう1つの疑問が生じたのである。

「後は、無法の覇王----------《無限皇》と《不死帝》が護るように竜神王の横についてるって--------------」
「な、何だって!?」

 じゃあ、訳が分からなくなってきた。2体のアウトレイジの王が何故、こんな場所に、まして護るように竜神王に付いているのかということだった。

「まあ、今はそーゆー疑問は丸投げしておくとするか。さ、ところで----------------」

 コトハは思わず目を逸らしそうになった。自分のほうを向いたヒナタの顔が思ったよりも近かったからだ。

「お前さっき、俺のこと好きって言ってたけど、あれは告白ととっていいのか?」
「良いわけないでしょバカ!!」

 ガスッ、と思いっきり赤面したコトハに殴られるヒナタ。
 ああ、これで二度目である。

「--------全くアンタは----------でも、もしそうだったらアンタはどう返すのよ」
「は? もしそうって何さ」

 逐一腹が立つ少年だとコトハは軽く鬼に目覚めようとしたが、何とかこらえた。
 頬が真っ赤に、そしてカイロのように熱くなる。

「だーかーらっ! さっきのが、もし本当に告白だったのなら、アンタはどう返したのよっ!」
「ああ、そういうことか。俺はな----------」

 少し考え込むような仕草を見せた後、ヒナタはこう言った。

「悪いけど-----------少しだけ待っててくれっ、て返すな」
「は?」
「だからさ。俺の頭の中今ごっちゃごちゃなんだよ。アイツの-----------死んだ幼馴染の幻影を竜神王に見せられたことで、やっぱり未練がましくまだ忘れられないんだ。前を向けとか言うけど、やっぱダメだな俺」

 竜神王に幻影-----------それで、ヒナタはあんなに精神的にダメージを負っていたのか。
 それとは別に少し残念な気分になった。
 だが、コトハは少し思ったことを口に出してみることにした。

「よっぽど好きだったんだね。その幼馴染のこと」 
「たりめーだ。あの頃の俺は弱虫で、よくいじめられていたのをかばってくれたのもあいつ、デュエマを教えてくれたのもあいつだった。赤ちゃんの頃からの付き合いだったからな。だから--------------」

 苦い思い出を反芻するかのように、顔を俯かせながらそれでも無理に笑顔を浮かべてヒナタは続けた。

「死んだとき、実感がわかなかった」

 彼は俯き加減だった顔を上げると、もう一度言う。

「あいつ、お前に似てるんだよ。勝気な所も、お節介な所も。だけど、全部ひっくるめて、俺はあいつが------------いや、もう良いんだ。過去に引っ張られてるようじゃ、俺もまだまだだな」

 ***

 着いたのは、(本来ならば)ヘリポートらしき場所だった。しかし、雲は鉛色。視界が悪く、ここまでよく安全に来れたものだと感心する。

「流石、自家用ジェット。本当に45分で着いてしまいましたね。」
「しかし、ここもやはり竜神王の襲撃を受けているのか」

 廃墟が連なる。襲撃を受けたのは海戸だけではない。此処、木芽布陀(きめふだ)ニュータウンも竜神王による襲撃を受けていたのである。

「確か、彼女は此処で待ち合わせの予定だ」

 真っ先に降りたフジが、くるりと辺りを見回した、が誰もいない。

「まさか、竜神王に食われたとか……いや、ありえん」
「ちょ、ちょ、ちょ、フラグ立てないでくださいよ武闘先輩っ!」
「コトハとついでに世界文化遺産先輩。とにかく探すしかないだろ」
「ヒナロット、お前から血祭りに上げてやる」

 かの伝説の超戦士の台詞をパクってヒナタに飛び掛るフジ。すぐに、十字ロックが炸裂した。
 悶える様に、苦を並べるヒナタ。
 
「痛い痛い、ギブ! ギブっす!」
「オマエなぁ!! 世界文化遺産呼ばわりならともかく、てめえ俺様をついで呼ばわりしたろ!!」

 必殺、武闘バスターが決まった後、ヒナタは呟いた。

「しかし、これだけ仲間が集まってるんだ! ”もう、何も怖くない”」
「おいそれフラグ」
「この戦いが終わったら、先輩、”ラーメン食いに行きましょう”」
「おいそれもフラグ」
「もう勝ったも同然」
「全部死亡フラグだって言ってんだよテメェ!! 某大手イラストサイトの百科事典の死亡フラグ網羅してどうする!!」

 再び怒鳴るフジ。にしても、遅い。というか、来ない。
 全く、時間にルーズなのか何なのか。

「遅いッ! いったい、いつになったら来るんだ」
「まあまあ、フジ先輩。そうキレないで。血管切れますよ?」


「ひぃひぃ、遅れてすみませーん!!」

 声が聞こえる。振り向けば、眼鏡に青い髪の少女の姿が。白衣を揺らし、水晶のように透き通った目は美しく、凛としている。それを見た瞬間、胸が跳ねるほどに。

「遅いぞ! 全く、俺様を待たせやがって!」
「ち、違うんですよぉ〜!! 私、実は追われてて……」

 は? と、皆が空を見上げた瞬間だった。耳を割る甲高い声が聞こえる。見れば、空には大穴が開き、大量の影が飛来してくる。さらに、大穴は遠くを見渡せばさらに見えた。
 まさしく、クリーチャーが大挙して人間界に押しかけてきているのである。

「ギヒャハハハ!! 獲物だ獲物だ、喰らってやるぜぇ!!」

 さらに、既に上陸していたと思われるクリーチャーがこちらへ向かってくる。大量の装甲竜(アーマード・ドラゴン)や悪魔(デーモン・コマンド)、そして獣人(ビースト・フォーク)等、種類を問わずクリーチャー達がこちらへ大口を開いてやってきたのだった。

「来るぞ、皆!! 構えろ、決闘空間を開け!」

 
 始まる。2つの世界を巻き込んだ大混戦が。
 そして、告げた。

 俺たちの日常は既に、無くなったと。


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