二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ 0・メモリー 堂々完結
日時: 2014/12/07 13:44
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: oLjmDXls)

【読者の皆様へ】
初めまして、二次などで創作を行っている、タクと申します。この度はデュエル・マスターズ 0・メモリー、完全に完結しました! 今まで皆さん、応援ありがとうございました。続編、デュエル・マスターズ D・ステラも応援よろしくお願いします!

【番外編あらすじ】
教団の脅威は去ったはずだった。教団の神官、バラモンとデトロイトによって呼びこされた2人の無法の覇者、そして竜神王。しかし、それはやがて世界を脅かす要因に。そして、ヒナタがデュエマをやめる!? 衝撃の番外編、ついに本格始動!

用語集>>10

登場人物紹介>>02
デッキ紹介>>67
デッキ紹介2 >>190
参照1000突破企画:切札紹介 >>114

本編>>247

番外編:強襲の竜神王編

エクストラターン0:キー・メモリアル >>246
エクストラターン1:異変 >>253
エクストラターン2:竜神王 >>254
エクストラターン3:恐怖 >>257
エクストラターン4:狂気 >>258
エクストラターン5:行動開始 >>261
エクストラターン6:デコード >>262
エクストラターン7:ケリを付けろ >>265
エクストラターン8:敗者の条件 >>266
エクストラターン9:急襲、竜神王 >>267
エクストラターン10:決死の特攻 >>268
エクストラターン11:デッド・オア・デッド >>280
エクストラターン12:鬼 >>298
エクストラターン13:暴かれた根源 >>300
エクストラターン14:捨てられたデッキケース >>301
エクストラターン15:ベルフェモール >>304
エクストラターン16:向き合うこと >>305
エクストラターン17:大阪へ >>307
エクストラターン18:咆哮、激震、超克 >>310
エクストラターン19:星として、海に散る >>311
エクストラターン20:絶望への反逆 >>312
エクストラターン21:決戦の舞台へ >>313
エクストラターン22:立ち塞がる無法の皇 >>314
エクストラターン23:激震、インフィニティ・ドロン・ゴー! >>315
エクストラターン24:最後の戦い >>336
エクストラターン25:反逆の一戦 >>337
エクストラターン26:竜神王結合 >>338
エクストラターン27:破壊衝動 >>339
エクストラターン28:絶望と破壊の渦 >>340
エクストラターン29:終焉      >>341

参照3000突破記念!ヒナタへ56の質問
>>176 >>177

短編1:仁義なき戦い(パブリック・エネミー) >>163 >>164
短編2:恋の裏技 >>182 >>185 >>188
短編3:親父の背中 >>206
短編4:恐怖、学園七不思議!? >>281 >>283 >>285 >>289 >>290 >>294 >>295
短編5:探偵パラレル >>306


コラボ番外編

モノクロさん作、デュエル・マスターズMythology

”last smile”
あらすじ:デュエル・マスターズMythologyで活躍中のヒロインキャラ、御船汐。彼女の空白の一年間とは、まさしく鎧竜での一年間のことだった。では、何故彼女はそれを失うことになったのか? そして、記憶と共に彼女が失わなければならなかったものとは。オリキャラによって繋がる2作品の謎が今此処に明かされる。
そして、無法と神々が今、交錯する。
短編のつもりが中編クラスの長さになってしまったこの作品。最後まで必見!

第一話:別れと悲劇はデュエマの後で
>>316 >>317 >>321 >>322

第二話:月夜野シオは彼女なのか?
>>323 >>327 >>328

第三話:神話の使い手
>>329 >>330 >>331 >>332

第四話:そして神話へ
>>335 >>345 >>348 >>349

第五話:”先輩”
>>350

キャラクター裏話

パート1 暁ヒナタ >>293
パート2 黒鳥レン >>299


基本、概存のカードを使用していますが、これからの展開でオリジナルカードを使うかも知れません。ご了承下さい。

なお、クリーチャーの解説などは、以下サイト様から引用させていただいています。
DuelMasters Wiki(デュエルマスターズ ウィキ)様

エクストラターン12:鬼 ( No.298 )
日時: 2014/03/26 22:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「……コトハ、コトハ」

 揺さぶられて意識が戻る。目を開ければ、そこには相棒のオーロラの姿があった。

「オーロラ……?」

 気付けば、フジの書斎にある長椅子に座らされていたコトハ。あの後、動転して気を失っていたに違いない。
 直接こそ見なかったが、フジの言葉。「リョウは……死んだ」という無意識の呟きを聞いて、様々な葛藤が-------------------

「……すまない」

 フジが歩み寄る。いつもは威風堂々としている佇まいが、今日は何故だかしおれて見えた。

「リョウを護れなかった。あいつが危険な場所に行ったにも拘らず、俺たちは何も……」

「無責任、バカッ、この役立たず!!」

 立ち上がり、一気にフジへ食って掛かるコトハ。フジは最初、驚いてこそいたが、甘んじて受けることにしたのかそのまま表情を変えず突っ立っていた。
 オーロラがコトハを止めようとしたが、すぐに振り払われた。

「じゃあ、あの時何で駆けつけなかったの!? あの時、クリーチャーの力でも使ってすぐに病院に駆けつけていれば、間に合ったかもしれないじゃない!! やることもやらずに、何が『すまない』よッ!!」

 普段、綺麗だった目は今は怒りと悲しみの混沌とした色に変わり、髪はそれを表すかのようにぼさぼさだった。狂ったかのように、何度も拳をフジの胸に叩きつける。

「返して!! リョウを、アタシ達の仲間を返してよ!!」
「……俺たちは出来ることはやっていた。仲間をゴルニッヒが現れた地点に呼び寄せて決闘空間を開き、殲滅するように命じた。だが、失念していたんだ。”本体”があんな場所にいるとは……まさか、あんなに沢山いるとは……」
「言い訳は聞いてないわよ!! ねえ、教えてよ!! 何で人一人死んだのに、アンタ達はそんなに冷静で居られるのよ!! 何で、涙一つ零せないのよ!!」

 言葉がフジに深く突き刺さる。
 脳裏に、その言葉が蘇る。

『何で!? 何でうちの息子は死んだのに、他の社員は生きているのよ!!』
『申し訳ございません。あれは不幸な事故でして……』
『言い訳なんか聞いていないわよ!! ねえ、上司だったらどんな危険なことでもやらせていいっていうの!? 何で人一人死んだのに、アンタ達はそんなに冷静で居られるのよ!! 何で、涙一つ零せないのよ!!』

 そして、全く同じ言葉がフジをさらに深く突き刺した。


「アンタは人間じゃない!! 鬼よ鬼!! 最低な鬼よ!!」


 瞼を一度閉じた。しばらく、放心状態だったかもしれない。

 ------------そうだ。俺は屍食い鬼(グール)。今、事実ここで人が一人死んだんだ。なのに俺はッ-------------俺は何故涙一つこぼせないんだ!!
 ------------親父が鬼なら、俺だって鬼だ。
 ------------人が死んだのに、まるで逆に喜んでいるみたいじゃねえか。餌が増えたグールみたく喜んでいるんだ。
 ------------最悪だよ俺は……最悪だ。


「好い加減にしろ、言い過ぎだ!!」


 言葉が横切った。ふっと、すべてが現実に引き戻される。息を切らせて、部屋に躍り出たテツヤの姿がそこにはあった。

「さっきから黙って聞いてりゃ、抜かしやがって……フジも、俺も!! 皆、出来ることはやったんだ!! 結果は確かに最悪だった。結局、俺達は誰も護れなかった。 だけど、涙を零せないんじゃない!! 零してる場合じゃねえんだよ!! こうしている間にも、竜神王に喰らわれて命を落としている人々が何人居ると思っているんだ!!」

 普段冷静なテツヤがここまで熱くなったのを見たのは初めてだった。


「今俺たちに出来ることは何だ!? ここで哀しくお通夜ですか、コノヤロー!! ちげえだろ、ちげえだろッ!! 今俺たちに出来ることは、とにかく次の犠牲者が出るのを止めることだろうが!!」


 -----------俺たちだって悲しくないわけじゃない。
 テツヤは、俯いた。
 が、すぐに顔を上げると言った。同時に、ドタドタドタと足音が後ろから迫ってくる。

「フジ。”カナデ”がようやく、例の解析を終えた」

 ***

 封李とゴルニッヒのデュエル。怒りに狂うヒナタに代わり、封李は打倒ゴルニッヒに魂を燃やす。

「ならば、このターンで一気に決める。俺のターン! 《転生プログラム》で《カツドンGO!》を破壊!! ドロン・ゴーだ!!」

 大きな剣が突き刺さり、大地から溢れんばかりのマナが吹き出る。そこからは、赤き勝利の無法将軍が姿を現す。

「来い、《超法剣 カツキングGANG》召喚! 効果でブロッカーである《イヌハッカ》を破壊だ!!」

超(ビクト)法(レイジ)剣(カリバー) カツキング GANG(ギャング) R 火文明 (8)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体、破壊する。その後、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体、破壊する。
W・ブレイカー
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《法》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《超法》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。

 3000火力を発動できなかったのは残念だが、そんなことは逐一言っていられない。

「んばぁ?! 何のつもりだべえ!?」
「俺も一応、怒っているんだ!! さらに、《転生プログラム》の効果で------------来い。その圧倒的な力ですべてを蹂躙せよ!! 《武闘将軍 カツキング》!!」

 今度は、無限の力を持つ無法将軍。これで、2体のカツキングが場に現れる。しかし、これでは終わらないのだ。

「さらにさらに、今度は《ヒラメキ・プログラム》で《GANG》を破壊! 山札をめくり------------------来た、《ボルシャック・クロス・NEX》召喚だ!! 効果で1枚ドロー」
「んばぁ……!?」
「そしてっ!! ドロン・ゴーで《無法伝説 カツマスター》も召喚だ!!」

 完璧にまずいことになった。場には3体の超巨大クリーチャーが睨みを聞かせている。

「さあ、行くぞ!! 《カツマスター》で攻撃して、効果発動。3枚墓地に落として、それらの合計コスト以下になるように敵獣を破壊する!! 必殺、レイジ・スクラッパー!!」

 墓地に落ちたのは《フェアリー・ライフ》に《プロメテウス》、《コンコルド》。十分すぎたほどだった。ゴルニッヒの場は吹っ飛ぶ。まっさら、何も無いのである。

「T・ブレイク!!」
「ぐはぁ!?」

 さらにここで、追撃が迫った。

「《NEX》で残りのシールドを破壊」

 何も無い。そこに、《カツキング》が迫る。勢い良く武器を振り回し、無防備を醸すゴルニッヒを打ち砕かんとばかりに。


「お終いだ。《武闘将軍 カツキング》でダイレクトアタック!!」

キャラクター裏話 パート2 ( No.299 )
日時: 2014/03/26 22:01
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 コメディからシリアスに戻ると一気に疲れるタクです。さて、今回はヒナタの自称ライバルから本当のライバルに昇格した黒鳥レン君です。

黒鳥レン 

13歳で中学一年生。美学美学うるさいのが特徴、しかも堅物融通が利かないという性格ですね。
名前の由来は黒鳥と《真実の名 修羅丸》を使った”連ゼロ”(または連デモ)デッキを使うことから、”レン”です。
というのも、デュエル・マスターズにおいて”綺麗な勝ち方”に拘っており、大量破壊で相手の盤面をまさしく無に帰す、などといった戦法をとります。また、中盤からはゼロ文明をどうせ使うならゼロだけで、といった趣のデッキを組んでいます。とにかく、統一性にこだわるデッキ構築をしています。ただ、中盤からはそんなことも言っていられなくなったのか、水文明をタッチで入れるなどして強敵との戦いに備えています。
容姿は、長めの黒髪をイメージしています。また、吊った感じの目も特徴で、表情もあまり変えず、常にむっとしている感じです。ただ、最近はよく怒鳴ったりもするせいで表情がころころ変わったり。
モデルとなったキャラは特にあるわけではありません。ただ、ヒナタのライバルになることを想定して作ったキャラで、とにかく「勝ちゃいいんだよ!」というヒナタとは逆に「デュエマは芸術だ!」と張り合えるキャラを作りたかったんですね。
そして、ポジションもヒナタがボケたら突っ込むという、ツッコミのポジションだったはずなのですが、最近ヨミが取り付いた後はロリコンという名の変態になってしまいました。

使用する文明は、前述したとおり無色です。まず、最初のヒナタ戦では火文明を入れて《メッサダンジリ・ドラゴン》で《修羅丸》と《真実の名 ボルメウス・ゼロ・ドラゴン》をスピードアタッカーにしてフィニッシュするというものを使用。それ以降はゼロ単色によるビートダウンデッキを組んでいますが、ここで《破界の右手 スミス》という戦力を手に入れます。それ以降は、その強力なパワーで大概の敵は打ち倒していたりそうじゃなかったりですが、《ナッシング・ゼロ》による打点増強はやはり驚異的です。そもそも、殴り返されませんし。
そして、天草戦では《ゼロの裏技 ニヤリー・ゲット》や《終末の時計 ザ・クロック》など、水を少し入れた構成になっており、より安定性が増しています。これは、彼自身も負けられない戦いに身を投じる中、自分のこだわりを捨てることで更に強くなろうとした結果でしょう。

家族構成は、一応両親と3人暮らしという設定です。ただ、共働きなので意外に家事はこなせるタイプだったりします。

そして、天草が言っていたゼロの力を宿しているため、無色クリーチャーに好かれやすい傾向にあります。ただ、何故彼がそのような力を持っているのかは、また番外編で明言するつもりです。

イメージCVは日野聡さん。冷静でクールですが、たまに弾けるイメージです。ヨミが取り付いた時の声も変わらずです。


次に相棒のスミスです。まず、ドラポンとオーロラの露出が多いせいで本編にはあまり出ていませんが、それでもレンのデッキの1パーツとして活躍しています。
性格は自由奔放で好戦的、といういかにもアウトレイジらしいものです。
また、一時期ドラポンや他のアウトレイジと徒党を組んで別世界の各地を荒らしまわっていた過去がありますが、それについてはまた番外編で語るとしましょう。
CVは杉田智一さん。低い青年のイメージです。また、フリーダムなかんじも合っているので。

エクストラターン13:暴かれた根源 ( No.300 )
日時: 2014/03/28 01:45
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「これを見ろ」

 ピッ、とテツヤがリモコンのボタンを押すと、急にホログラム状のモニターが現れた。立体プロジェクタというものだろうか。

「フジ、お前の思ったとおりだ。竜神王が現れた場所は、必ず空間のゆがみが現れている。その証拠に、ぐにゃりとビルが曲がっていたり竜神王の周りが妙に歪んでいたりな」

 モニターには、それを示す画像が次々に現れる。

「さて、フジ。そして奴らの行方だが……大変なことが起こった」
「は?」

 いきなりテツヤが話題を変えたため、フジは目を見開く。奴ら、つまり竜神王の行方に付いてだった。

「さっき、封李先輩から連絡があったんでね。ゴルニッヒに逃げられたとのことだ」
「やはり。天川からも同様の連絡があったよ」
「まあ、良い。一応、報告しておく」

 フジは、人々を喰らっていくゴルニッヒの分身を倒すため、天川やレン、シオを向かわせていた。動揺こそ初めはしていたが、3人ともやるべきことを理解して向かった。
 子供3人で向かわせるのは、少々心許ないが(自分も子供だが)決闘空間での出来事は全てこの世界では一瞬で済まされる。それは、この世界と決闘空間の流れる時間が違うから、というアインシュタインの相対性理論のもと成り立つ。
 というわけで、敵の数は10体。が、次々に倒されていった。それによって、何人の命が救われただろう。
 ところが、倒されたゴルニッヒに共通するのが--------------------

 ***

「ぐばぁ……よくも、おでを……!!」
「さあ、観念しな!」

 ドスの利いた声で、ゴルニッヒに迫る封李。今にも噛み付かない勢いだ。
 と、そのときだった。ゴルニッヒの体が突如、硬直する。そして、肉体があわ立ってスライムのように形を変えていった。そして、肉塊はそのまま、一直線に消えていく。
 
 ***

 1つの方向へ向かっていく、というものだった。

「一体、どういう……」
「テツヤ。封李さんが倒したのは、”本体”だが……これが倒されて逃げた同時刻に、”他の竜神王も同じ動きを見せている”と言ったら驚くか?」

 フジの台詞に戦慄を覚えるテツヤ。まさか、竜神王は再びリンクするため、あるいは他の目的のために人間を喰らっていたというのか。
 そして、満足したから再び集まった。

「まるで、どこぞの満足同盟だな」

 テツヤは考え込むように顎に指を当てる。やはり、自然と言えば自然な出来事ではある。
 
「とにかくだ!! 竜神王が向かった場所を特定するように、カナデに言え!」
「分かったよ」

 竜神王が向かった場所が1つならば、そこを叩けば良い。実に簡単な話だった。
 テツヤは駆け抜けるかのように、部屋を出て行く。
 だいぶ、気持ちが収まったのか、コトハがフジに話しかけてきた。

「そ、その……さっきはすみませんでした……ちょっと、どうかしてたみたい……」
「いや、いいんだ。それに……どうかしてたのは---------------俺のほうみたいだからな」
「え!? いや、あれはその-------------」

 記憶が駆け巡る。

 ***

 確かに見かけは華やかだったかもしれない。確かに、見た目は何でも出来るスーパーマンだったかもしれない。
 だけど、親父だって人間だ。
 ある日、建設事業で作業員が1人、事故で死んだ。その時、親父もコトハが言ったことと同じことを遺族から言われたんだ。「鬼」だって。それを影で聞いていた俺は、幼いなりに親父が可哀想だと思ったんだろう。
 慰めようかと愚かにも俺は思って、その日の夜に部屋をのぞいたんだ。
 
 だけど、違ったんだ。

 親父は涙は絶対に流さなかった。
 それどころか、いつも通りに機械的にキーボードを叩いてたんだ。

 責任を全部背負うことになったとしても、親父は絶対に弱音を吐いたりしなかったんだ。

 それが頂点に立つものの誇り。

 親父は、表では何でもないかのように振舞ったんだ。裏でも何でもないかのように振舞った。
 まるで、それが人間じゃないように俺は見えた。


 鬼だ。

 俺はそれに憧れた。


 鬼に憧れた俺は、鬼になった。


 くだらねえ情は全部捨てて。


 冷徹な鬼(グール)に。




 なのに---------------アイツは、俺の心に干渉して来やがったんだ。


「よお、またデュエマすっか? フジ」


 それが、今の歪んだ俺を形成してる。
 鬼でも、人間でもない俺を作ってる。
 だが、それでいい。


 それでいいんだ。


 ただ、心残りなのは---------------------俺の中の鬼と人間が傷つけ合っていることだ。

 ***

「先輩、どうしたんですか」

 気付けば、ぼうっとしていたのか。フジはコトハの声で、突然我に返ったようだった。

「いや、なんでもない」

 フジは、ため息をついた。そして続けた。

「どのみち、今の俺たちに出来るのは情報収集だ。実働メンバーが聊か不安だが、仕方あるまい」

 ***

「こんのバカ……ちーと強く殴りすぎたか」

 封李はヒナタを背負って、彼が元居た病室に運ぶ。白い床の病室に着くと、すぐに寝かせた。ドラポンのカードは棚においておく。

『ふ、封李。やっぱ、やりすぎたとちゃうんか? 確かにあの状況で熱くなったヒナタを戦わせるのは危険だったと思うちょるけど』

 珍しく、ドラポンが話しかけてくる。

「ああ、俺もそう思う」
『って、オイ!!』
「加減はしねーとな、加減は」

 しかし、友の死を目のあたりにした彼は----------------起きたら、どうなっているだろうか。
 ドラポンは真っ先にそんな思いが浮かんだのだった。

 ***

「うおらあああああ!!!」

 ヌンチャクを振り回す竜人の姿。見境無く、周りにあるものすべてをなぎ倒していく。
 一方、対になるように鎌を振りかざす死神。それが振るわれた痕は、まるで包丁で切ったかのように綺麗に斬れていた。
 気高き無法の血は、今やくすぶっていた。
 だが、それらは全て”彼女”の箱庭の中の出来事に過ぎない。

「うふふ……かーわいい……べるのかわいいお人形さん」

 上空から見上げる少女。ローブを纏い、顔は見えない。だが、この壮大なジオラマは、彼女の所有物らしい。
 そして、指を鳴らすとさっきまでの景色は全て消え、真っ黒い空間のみが残った。
 
「さーて、竜神王達も帰ってきたみたい?」

『ただいま帰還いたしました』

 そこには、ガルグイユを初めとした四柱の竜神王。

「うーん? にんげんの魂をたっぷり喰らってきたみたいね。 だーけーどぉ、まだ足りないわ。ねーねー、べるはもっと沢山人間の魂がほしーの」

 あざと可愛らしい仕草で、自分の身の丈の10倍はあろうと思われるガルグイユの目の前で囁く。
 そう、まさしく悪魔のように。


 -------------邪念因子が復活するのも、じかんの問題ね。

エクストラターン14:捨てられたデッキケース ( No.301 )
日時: 2014/03/28 11:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「だめですねー、やっぱり突然特定できなくなりますー」

 青い髪を持ち、眼鏡をかけた少女。白衣を纏い、少しボサボサになり気味なパソコンを目の前にカタカタカタとキーボードと鳴らしている。
 だが、水のように透き通った目は水晶のように光を乱反射させる。そして、白い肌は雪のように何処か優しい。そして整った顔立ちは普通の男なら一発でノックアウトさせる。つまり、美しさより可愛さを際立たせていた。
 
「肉塊は1点へと向かっていったんですー。けど途中で消えちゃいましたね」

 ま、それより竜神王による被害件数とか色々調べるのが先決ですけどー、と少女は呟くと、「上書き保存」のボタンをクリックしてノートパソコンを閉じた。

「それより、それより、シントさんがオーストラリア帰ってくるのはいつですかね? 楽しみですー、ヤダ私ったら……すっかり焦らされてるかんじです。学校サボって迎えに言っちゃおうかなぁー、ヤダヤダ、私ったらダメな娘ですね、うふふ」

 少女は、自分で言ったことに赤面しながら、コーヒーを啜った。

 ***

「ところで、武闘先輩。”カナデ”さんって一体?」
「教えておいてやる。水澤カナデ。俺たちの仲間だが、鎧竜には行かず、大阪の木芽布陀ニュータウンにある聖(セント)羽衣決闘学院に入学した。お前らの仲間、キイチもそこに転校していたはずだ」

 フジ曰く。非常に頭がよく、それは同じく”天才”の異名を持つテツヤを凌ぐという。IQ400の脳指数を持つ。
 しかし、彼女は唯一つの欠点を抱えていた。

「ずばり、ドジだということだ。しかも、持ち前の不幸特性のせいでいつもやらかしてばっか。だが、とても優しい性格で、美人で……はぁ、結局俺なんかじゃ釣り合わなかったがな」

 はぁ、と憂鬱気味にため息を漏らすフジ。

「武闘先輩、カナデさんのこと好きだったんですね」
「な、何で分かったし! いや、まあそうなんだが。今となっては……」

 フジは意外と素直に答える。だが、彼女の話をしているときに顔が若干赤くなっていたので、バレバレだったが。

「アイツはだって、シントに惚れてたんだからな」
「え?!」
「そうだ。ある事件で、彼女は追われているところをシントに助けられて同時に惚れたんだ」
「ある事件って?」
「お前らには話したこと無かったな。ま、ちょい長くなるがいいだろう」
 
 ”ブランク”と呼ばれる真っ白なカードが引き起こした事件。それは当時、全国に分校を作っていた”獅子王デュエルスクール”という名の塾の塾頭が引き起こしたものだったが、それは子供が突如、凶暴化してデッキのカードを実体化させてしまうというものだった。
 カナデは自身が通うその塾の秘密を、ある日偶然知ってしまい、追われる身に。

「俺も被害者の1人で、”ブランク”を所持していた。その時間帯だけ、ぽっかりと記憶が空いちまうんだ。不自然に思ったが、別段気にしても居なかった」
「いや気にするでしょ」
「んでもって、テツヤはそれを追っていたんだが、”ブランク”によって凶暴化した俺に襲われたんだ。そこに---------------たまたま場に居合わせたアイツが、シントが出てきた」

 ”ブランク”による魔力を封じるには、クリーチャーが実体化する命を賭けたデュエルで勝つしかない。シントは見事、フジを倒して”ブランク”から開放したのだった。
 というのも、無頼シントは大会上位者の常連で、この頃から高い実力の持ち主だったという。

「そして、カナデだが。他の生徒にクリーチャーで襲われて倒れていたところをシントに拾われてて世話になって以来、あいつにベタ惚れしていた」
「はは、分かる気がします」
「あ? お前も同じようなもんか?」
「い、いえ! そういうわけじゃ!」
「んじゃ続ける。んでもって、塾頭の正体が、クリーチャー界を統べるゼニス、《「俺」の頂 ライオネル》だった。日本を拠点に、次々に子供を”ブランク”で兵器へと改造していったんだ。しかし、俺たちが直接殴りこんで、結局ぶっ倒した」

 「まあ、その後紆余曲折あってアイツは俺たちの通っていた小学校に転校した」とフジはコーヒーをカップに注ぐ。

「さて、シントだがな。『助けたのに付けこむ訳にはいかねえだろ』って言ってな。なかなか、カナデの好意を素直に受け取ったりはしねえ」
「えー、意地悪な」
「気の迷いだろ、アイツには他に釣り合う奴がいるって俺に零してやった。だから一発怒鳴ってやったよ。『テメェは逃げてるだけだ!!』ってな。そしたら目ェ覚ましたみたいだ。そっからどうなったのかは知らんがな。あいつら今は、遠距離恋愛してやがる」
「ロマンチックですねー、そういうの憧れます! でも、いくら友達のためだからと言って、自分の恋をあきらめることは無かったんじゃ」
「はっ、いいんだよ。これで借りは返したからな」

 ***

「珍しく呼んだと思ったら、お前は俺に何のようだ?」
「悪かったね、テツヤ」

 テツヤは、目の前の人物を前にして若干ブルーになりながら息を吐いた。
 場所は、海戸ニュータウン中央病院のロビー。多くの人は、さっき避難して、もうここには誰もいない。
 
「言いたいことは、1つだけ」
「ならとっとと言え」

 天川は、「全く君は……」と悪態をつく。そして続けた。


「君、無理するのも好い加減止めにしたらどうだい」

 
 -----------やはり、気付いていたか。
 テツヤは、気分を害したかのように天川を睨む。

「どうして気付いた?」
「同じ文明を使う者同士、気が合うのかな。だけど、最近君。やっぱり、度々痛みをこらえてる」
「ハッ、バカ言え。この程度」
「君の病状は、君が思っている以上に重大だ。やはり、あの事故の後遺障害じゃ……」

 テツヤは、ふっと息を漏らすとベンチに腰を下ろした。

「脳腫瘍だ。治療しなきゃ、やばいって言われてる」
「やっぱり……て、何だって!? あの事故関係なかった!? 何故、誰にも言わなかったんだ?」
「あ、伏線じゃねえよ? それに、この程度で、あいつらに心配かけたなくないんだ」
「だけどっ!! せめて、治療を! 海戸の医療技術なら」
「それでも、俺が抜けることであいつらに迷惑はかけたくねえ!! それに、手術しても成功する確率は半々。失敗したら、それこそ俺は死ぬって言われた」

 テツヤは立ち上がる。そして続けた。

「これは俺が戦うための延命措置だ。俺はぎりぎりまで戦わなきゃいけねえ!! シントが居ない今、俺が戦うしかないんだ!!」

 そういって駆け出した。

 ------------テツヤ。君は1人で戦ってるんじゃないんだ。怖がっていたら、それこそ前に進めないよ。

 ***

「うーん……朝か」

 ドラポンは、目を覚ますと同時に実体化する。霞んだ視界がようやくはっきりしてきた。

 が、ベッドを見た瞬間衝撃が走る。

 いない。

 そこにいるはずの人物がいない。

 そして、いつもヒナタが肌身離さず持っているはずのデッキケースが、ゴミ箱に放られている。


「た、大変じゃ-----------ヒナタが居らんこうなった!!」

Re: デュエル・マスターズ 0・メモリー 番外編 ( No.302 )
日時: 2014/03/28 18:10
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 今更追伸に気付いたモノクロです。話が長くなりそうなので、最後に語るとします。

 まず最初にレンの設定からコメントしますが……連デモはともかく連ゼロというデッキタイプは初めて聞きました。成程、確かに《修羅丸》の能力で次々と無色を展開するなら、連ドラに倣って連ゼロと言えますね。そして連続してクリーチャーを展開するようなタイプのデッキを使うから「レン」なんですね。成程。
 苗字の黒鳥は、色のない(白色)と黒の対比だったりもするんですかね。ああ、でも、デュエマだと光文明が白なのか……まあ、実際のカラーでは無色カードがどう見ても白ですけど。

 そして封李が連続で《カツキング》系列のエグザイルを並べてゴルニッヒを倒したようですが、やはりこれで終わらないですよね……
 まさかこんなところで満足同盟の名を聞くことになるとは露ほども思いませんでしたが、それはさておき。ヌンチャクを振り回す龍やら鎌を振り回す死神やら、謎の少女やら、まだまだ謎は深まりますね……ですがこの少女が《「黒幕」》……じゃなかった、黒幕っぽい感じがします。そして邪念因子がラスボス……? 少女がイズモなら、邪念因子はヨミみたいな? なんか違う気もしますが……

 さらにカナデなる新キャラらしき人物も登場と。容姿はともかく、口調はわりとモノクロ好みでした。当人はシントにベタ惚れみたいですが、まさかここで味方サイドの新キャラが出るとは思いませんでしたが……この人もシントたち同様に前作(と言っていいのか悪いのか……)に出て来たキャラなんですかね?
 さらにさらに、ここで大阪の羽衣決闘学院という学校名が出て来たり、キイチがそちらに転校していたりして、世界大会と絡めてこれは後でなにかあるのではと一人勝手に勘繰っています。

 しかし……まさかここでフジの過去が掘り下げられるとは思いませんでした。これが一番の驚きというか意外というか……これって実は、フジのための番外なんじゃないですかね?
 なんて冗談はさておき、ヒナタいなくなっちゃいましたね。デッキも放り出して……海に身を投げてなければいいですけど……いや、こんな不吉なことを言うのは止めましょう。
 竜神王、謎の少女、カナデ、フジたちの過去、ヒナタの行方と、そろそろモノクロの中で謎が飽和状態になってきました。これらが解明されていく時を、ゆっくりと待つとします。



 さて、最後にモノクロも(カードを持っていないくせに)ビギニング・ドラゴン・デッキを語るとします。一応、執筆にあたってどのような動きをするのかを感覚でつかんでおくためにプロキシカードで動かしているので、語れないこともないです。が、実戦経験は圧倒的に不足しているので。その辺りの差異はどうかお許しください。
 まず結晶龍ですが、《トライグラマ》はいいですよね。手札に2コストバニラ三体を握っておけば、コスト6のスピードアタッカーでTブレイカー、+モヤシになるという高性能。《iQサイクロペディア》も最速4ターン、平均でも5ターンくらいに出て来きて《トリプル・ブレイン》とアンブロッカブルつきWブレイカーですもんね。ただ、クリーチャーのパワーが総じて低いので、全体火力に弱いのが難点ですが……
 それでも展開力は凄いので《アクア・ジェスタールーペ》でさらに展開力を強化したり《超閃機 ジャバジャック》で打点を上げたりする改造がスタンダードなんですかね。個人的には打点の低さが気になるので進化クリーチャーなんかをいれたいのですが……《クリスタル・ランサー》は、少し重いか……?
 ちなみに最近は《超閃機 ヴィルヴィスヴィード》がお気に入りです。《アクア・エボリューター》から繋がらないのが残念ですが、バウンスとそこそこのパワー、打点もあるので、結構便利です。あと略称がヴヴヴというのも少しツボに。
 天聖龍は、最初は微妙だと思っていましたが《ヴァルハラ・ナイツ》の制圧力が凄まじい……3コストを出すだけでフリーズって、意外にやばいですね。それに《ハッチャキ》と組み合わせるというのは、考えが及びませんでした……でもそれなら姫乃に使えそう……
 《ヴィブロ・ヘブン》もそうですが、切り札が重いので、自然でマナを加速させつつ、そのマナで軽量クリーチャーを並べて相手をフリーズし、数で押し切るという戦法しかモノクロは思いつきませんでした。これもこれで色々欠陥がありますし。
 戦闘龍はやはり《バトラッシュ・ナックル》と《バトライオウ》のコンボが爽快ですよね。こちらのデッキは、ヒューマノイド爆をメインにしたタイプか、連ドラ、もしくは《爆裂のイザナイ ダイダラ》をエンジンにしたフレイム・コマンドの種族デッキに分裂しそうな感じがします。
 ただ、やはりモノクロとしてはマナ加速の自然を混色したいところですが……頭固いですかね。
 ヒューマノイドはまだよく分かりませんが、連ドラなら《バルケリオス・ドラゴン》感覚で頭数を増やすのに《バトライオウ》、cipで所巨ができる《バトラッシュ・ナックル》、後はデッキを選びますが軽量ドラゴンの《フジサンダー》あたりが有用かなと。《フジサンダー》は連ドラと言うより、ドラゴン進化の進化元とかに使えそうですね。
 構築済みデッキの方を改造するという観点で見れば、《トルネードシヴァ》は相性よさそうですが……若干重いのが難点ですか。
 《勝負だ!チャージャー》でマナは伸びますが、個人的にはマナを伸ばす前に《鬼切丸》で殴りたいところです。次のターンに《ヘーゼル・バーン》が来れば、チャンプブロックも意味をなさなくなりますし。
 バトルをするという観点で見れば、《仁義無き戦い》や《爆竜 ベルナルド・タイソン》、後は色が増えますが《偽りの名 ゾルゲ》なんかも使えそうです。こいつらを使うとなると、デッキが重くなるので、マナ加速は必須になると思われますが……
 あとはなんでしょう……《カツキング》や《ゾルゲⅩⅢ》もバトル関係ですが、これにエグザイルやアウトレイジを組み込むのは無謀ですかね。

 なんだか軽い一話分の文字数を書いてしまいましたが、やはり現役でやってる方には敵いませんね。実際に書いていて分かりましたが、動かし方とか思考の方向性とかが違ように感じられます。
 一応、近場と言えるようなところにデュエルロード開催店舗はあり、復帰したいと思わないでもないのですが……流石に部活動しながら部長職をこなしつつの受験生という身では、手が出にくいものですね……

 いつも以上に長々と語りすぎて申し訳ないです。流石にここまで書くことは稀だと思いますが、今後は気を付けます。
 とりあえず今回はここまでにします。ではまた。


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