複雑・ファジー小説
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- 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト
- 日時: 2012/11/10 18:20
- 名前: 梶原明生 (ID: /PtQL6mp)
美幸へ・・・しがない空手拳法有段者の警備員が「金無し大兄妹アイドル」の不運の死を遂げた未来を変えるために、過去へタイムスリップする。 ひめゆり自衛隊・・・沖縄第15旅団の隊員達が実験と称した防衛省の企みにより特戦群と空挺団の策略に巻き込まれ、時空波装置で昭和20年3月23日にタイムスリップする。そこで彼等が見たものは・・・やがて酷い惨状に特戦群の隊員等も心を動かされる。そして新たな希望が・・・2つ交互にお送りするタイムスリップアクション。ダイジェスト短縮版で執筆いたします。・・・原稿は完成済み。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.272 )
- 日時: 2016/11/06 20:35
- 名前: 梶原明生 (ID: hwITajaP)
「更科の別れ」…昭和20年6月19日 午前0038時、第三外科壕。壕入り口近くの広い場所で分散会が開かれていた。夜遅くまでクタクタになるまで働いてやっとできた一時である。しかしそれは同時に悲しい一時でもあった。まるで死出の旅立ちのようであり、軍隊という大きな力を失い、いきなり野原に放り出されるような心境だったろう。だからこそこの分散会だけは特別にしたかった。皆制服に着替えて胸に桜と白百合のバッジをつけて、残った乾パンと牛肉の缶詰めが配られて最後の晩餐が行われた。「皆、この日までよく頑張ってくれた。もはやこうならざるおえないが、最後まで望みを捨てず、皆で行動を共にしてゆこう。」「はい、先生…」東風平先生の訓示に折しもその言葉しか浮かばず、誰もが涙ぐんだ。「泣くな、大丈夫だ。さぁ、今から私が歌を歌おう。聞いてくれ。」そう言って立ち上がると、「海ゆかば」を唱えはじめた。それが終われば今度は「別れの曲」を先生生徒全員で合唱しはじめた。…「歌声か。沁みるな、こんな時は。」暗視ゴーグル越しに第三外科壕入り口が見えてきた元村一曹がふと足を止めて呟いた。…続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.273 )
- 日時: 2016/11/25 01:59
- 名前: 梶原明生 (ID: 87ywO7pe)
「美幸へ」…「美幸ちゃん、自分の好きなものを理解させようとするのも分かるが、君がお母さんをどこまで理解できるかも大事だよ。そのうち分かる時がくるから。」「うーん。何だかよくわかんないけど、覚えとくね。」美幸さんは笑顔になって答えてくれた。時は過ぎ、美幸さんはいよいよ小学校五年生になっていた。その魅力に気負かされそうな自分を戒めるのに必死だ。そんな時、友成に変わって離れにやってきたのは義弘だった。「先生、お久しぶりです。」「おお、義弘。話には聞いてたぞ、こっちに住むんだってな。」「はい、それから…」気恥ずかしそうに後ろを振り向くと、そこには見知らぬ綺麗な女性がいた。「お、もしかして彼女か。」「え、何でわかったんですか。」「いや、そ、そりゃあ、何となくだよ。ど、ども。天原家に居候させてもらっている至善と申します。」…続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.274 )
- 日時: 2017/01/23 18:34
- 名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)
「ひめゆり自衛隊」…「ええ、そうです。本来ならこの数時間後に米軍のガス弾が投げ込まれて…」神谷三尉が応えた。「そうはさせないために我々が行くんです。それよりも神谷三尉本当に現隊復帰して大丈夫ですか。」高山陸士長が割って入る。「大丈夫ですよ。信じています。我々の小隊長殿ですから。」「ならいい、しっかり頼みます。」「はい。」唇を固く結びつつ、神谷三尉は返事を返した。「義烈空挺部隊の者だ。入るぞ。」元村一曹が大声で叫ぶと、東風平先生が応えた。「はい、お入り下さい。」続々と中に入る元村部隊メンバー。勿論彼等がここへ来たのは屋良ヨシ、上間道子、そして、神谷ノブ子等を保護するためである。悲しい結果を知らされた後なだけに、彼女達にとって、彼等の出現は渡しに船のようなものだったろう。「おお、これはこれは…やはり、我々を引率して下さるのですか。」東風平先生の言葉に顔を曇らせながら答える元村一曹。「ええ、まぁそうです。明け方壕を出ます。その際に我々について来て下さい。」「はい。」東風平先生以下、ひめゆりの生徒は涙ながらに喜んだ。そんな中、神谷三尉は神谷ノブ子と目が合った。会釈する彼女に戸惑いを見せつつ頷いた。「よし、全員明け方5000時まで待機だ。時間を合わせるぞ。もうすぐ0130時だ。5、4、3、2、1、現在(いま)。これより3時間30分後に行動を開始する。いいな。」「了解。」その掛け声と共に各自待機と警務を行った。89式小銃の被筒を持って座り込む神谷三尉。…続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.275 )
- 日時: 2017/01/24 19:26
- 名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)
「ひめゆり自衛隊」…上間道子に向かって言い放った。「上間さん。聞かせてくれないかな。君の歌う浪曲、更科の別れ を。」「はい、わかりました。では聞いて下さい。」すっくと立ち上がり、彼女の歌声が壕内に響き渡り、ひめゆりの生徒は再び涙ぐんだ。やがてそうした分散会も終わりをとげて、元村一曹は彼女達に仮眠を取るよう指示し、一時の「嵐の前の静けさを実感していた。神谷三尉はじめ、他の隊員はガスマスクを二個握りしめていた。防護マスク4型だ。吉川三曹がガス検知器を担当していた。神谷三尉は時折89式小銃の弾倉を抜いては指先で、5.56ミリ弾のチェックをしていた。気になって仕方なかった。そんな時、誰かが自分に小声で声をかけてきた。「神谷三尉。…」それは神谷ノブ子だった。「ど、どうした。眠れないのか。」「それもありますが。…こんな事を言ったらおかしいかも知れませんが、その…まるで神谷三尉が身内の人間のように感じるんです。前々から思ってたんですが、何かこう、私の弟のような。」「弟…」「あっ、何言ってるんだろう。私どうかしてますね。こんな話してすみません。」「そうだよ。…でも、弟じゃなく遠縁の孫かも知れない。」…続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.276 )
- 日時: 2017/01/26 20:05
- 名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)
「美幸へ」…「あ、こちらこそ。義弘さんとお付き合いさせてもらってます早紀といいます。確か義弘さんに空手拳法を教えてたんですよね。実は…」その時は気恥ずかしそうに答えた。「そうなんですよ。この子が絡まれてたところを俺が助けたもんだから。それでお互いに連絡を取り合ってたら…」「つまり付き合う仲にってことか。」「まぁ、そんなところで。先生がいなかったら出会えてなかったかもしれないし、まさに先生は縁結びの神ですよ。」「おいおい、神だなんて。持ち上げても何も出んぞ。」「ハハハッ。」そんな和気藹々の中、道場の扉をピシャンと閉める音がした。美幸さんだ。「そうか。美幸さんにとって彼女はこれから仇みたいになるんだよな。」「仇って…。」俺は義弘の言葉に慌てた。「いよいよ、その、なんだ、堅気の女性で良かったなぁ、なんてな、ハハハッ。」笑ってごまかした。それからの美幸さんの攻勢はすごかった。…続く。
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