複雑・ファジー小説
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- 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト
- 日時: 2012/11/10 18:20
- 名前: 梶原明生 (ID: /PtQL6mp)
美幸へ・・・しがない空手拳法有段者の警備員が「金無し大兄妹アイドル」の不運の死を遂げた未来を変えるために、過去へタイムスリップする。 ひめゆり自衛隊・・・沖縄第15旅団の隊員達が実験と称した防衛省の企みにより特戦群と空挺団の策略に巻き込まれ、時空波装置で昭和20年3月23日にタイムスリップする。そこで彼等が見たものは・・・やがて酷い惨状に特戦群の隊員等も心を動かされる。そして新たな希望が・・・2つ交互にお送りするタイムスリップアクション。ダイジェスト短縮版で執筆いたします。・・・原稿は完成済み。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.72 )
- 日時: 2013/02/05 15:19
- 名前: 梶原明生 (ID: uZAkimhj)
「美幸へ」・・・そんな中美幸さんと義弘が相合傘で一緒にさしていた。これまたベッタリとくっついている。・・・そんなこんなで皆一様に正月休みは終わり辺りは普通の暮らしに戻りつつあった。ある日の夜、テレビは水戸黄門をやっていた。天原家では夜9時までがテレビタイムでそれ以降は就寝と決まっていたようだ。このテレビこそが、美幸さんがアイドルを目指す元になっていた。色んな人が見てるテレビ。泣いてる、ケンカしてる、笑っている。どんな時もテレビは人を惹きつける魔力を持っている事に彼女は憧れを感じていた。たまたま俺も天原家でテレビを見ていたが、皆半分は興味を示さないので、こんな話を振ってみた。「おい、義弘。この助さん格さんの得意技は何だ。」「えっ、あー、そりゃ剣道かな。」「え、あれで。ちなみに助さんは剣術で、格さんが柔術なんだよ。」「えー、あれが柔道。」「あれは柔道じゃない。昔は柔術と言ったが、今俺達がやってる拳技や蹴り技も柔術には含まれていた。だから格さんをよく見てみろ。拳技使ってるだろ。侍と聞くと刀中心に考えがちだが、昔は武芸十八般と言って刀、槍、棒、小遣、分銅、当身術とか全部できて当たり前だったんだ。今俺達がやってるのは所謂、当身術だがな。」「へーそうなんだ。」「本当だ。格さんと飛猿なんかモロに当身術だ。」ビックリしたのは久幸さんだ。何で見始めたのか不思議だったのだろう。兄妹闘争することなく一つになった瞬間だった。・・・5.「兄妹闘争」終わり。 次回6.「ただ一つの写真」に続く。 「ひめゆり自衛隊」・・・天幕から出ると、すでに中央には最後の炊き出しがなされていた。沢田一尉が上座の壇上に立った。「諸君、よくぞこの5日間を耐え抜き、私に着いてきてくれた。私は誇りに思う。いよいよ歴史通りに今夜ひめゆり学徒隊の卒業式が執り行われる。つまり、今夜から米軍の攻撃が来る。・・省略・・さて、固い話はこの辺にして今日は1900時まで無礼講で楽しんでくれ。以上だ。それでは手に持って、乾杯。」「乾杯。」総勢160人がアルコール0.5パーセントのビール缶を飲んだ。「こんなものどこにあったんだ。手際が良すぎるな。」神谷三尉は一口飲んでそう洩らした。「特戦群が隠し持ってたんでしょう。多分偶然ですよ。」植村三曹が応えた。一方、吹田二士は急いでいた。「おーい、イサム。久々外に出られるぞ。オメーの分の特製カレーも用意したからさ、早く降りろ。」手錠の鍵を外しながら叫んだ。「おーっ、ヤッター。もうここ退屈でよ。レトルトも飽き飽きしてた所だよ。おーっ、持つべきは友だな。」「何言ってるんだよ。大丈夫か。」「ああ。・・・でも、エリカの事。・・・本当にゴメンな。俺よ。」不意に止まった吹田だったが、何故か吹っ切れたような笑顔で答えた。「もういいよ、そんなこと。行こう。」彼にとってエリカとのケータイでのやりとりが遠い昔の事のように思えた。・・省略・・増田二曹がほろ酔い加減で絡む。「いやいや、勘違いするな。何もひめゆりがどうとか、上に報告しようとかじゃなくて、少し忠告したくてな。・・・ひめゆりに、あまり感情移入しすぎるなよ。後でやっかいな事になるからな。・・省略・・大まかに言って俺達はお前らの味方だ。よろしくってか。・・・」そう言って握手を求めてきた。日はとっくに沈み、その時は迫っている。・・・続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.73 )
- 日時: 2013/02/07 17:43
- 名前: 梶原明生 (ID: uZAkimhj)
「美幸へ」・・・6.「ただ一つの写真」 フェリーに乗って子供一人と共に52島へ向かう一人の女性がいた。「正月帰ってなかったからな。孫でも見せて許してもらおうかな。」そう海を見ながら呟いたのは天原喜美子こと、現・橋田喜美子だった。天原家の長女であり、すでに家を出ていて鹿児島市内の大企業、タイオー食品株式会社に就職し、同社員と結婚していた。彼女にとって久々の帰郷だった。「美幸、大きくなったかな。この服似合うといいな。」そばに置いてある紙袋を見て呟いた。「あ、そう言えば家に変な奴が住み着いたとか電話で聞かされてたな。一体どんな奴だろ。どこの馬の骨なのかな。父ちゃんもなんで許したのか問い詰めんと・・・」一方、至善は若佐工務店の手伝いをしていた。「お久しぶりです。」「堂守さん。今日はまた何か。」「いえ、大事な事をお伝えしたいと思いましてね。・・・実は、あなたのいた時代に大きな変化がありました。」「と言うと。・・・」「ええ。天原美幸さんが生きていて、藤崎夢尽美という芸名でファウスト・アイリスと言うアイドルユニットのリーダーとしてデビューしているんですよ。しかも別次元ではなく、交錯していて殺害された天原美幸の存在が薄れてきてる。こんな現象は初めてですよ。とにかく一旦は現代に戻りませんと。」何が何だかわからなかったが、とにかく帰りたくなってきた。「それと、これはいいニュースですが、このファウスト・アイリスとは、ママさんアイドルユニットなんですよ。」「え、するとまさか。・・・」「はい。お子さんが3人もいますよ。美幸さんに。」俺は言いようのない幸福感になった。もうそれだけでいいと思えた。彼女が幸せになってくれた。ただそれだけで。そのころ現代側ではこの破天荒なアイドルを作ったプロデューサーと純正芸能会会長の石神奈留人氏のテレビインタビューがなされていた。「・・・ファウスト・アイリスを立ち上げられました白鳥貞丸さんはメディアの窮児と呼ばれた天才プロデューサーで、オリジナルキャラクター、歌手の平野正太とコラボレーションする等、大ヒットを飛ばし、石神奈留人氏を題材にした映画にも出演する予定だそうですね。」「まぁ、そうですね。」「一方、石神さんと言えば、ネットを通じて枕営業や腐敗した芸能界にメスを入れ、全国展開して不純芸能界を払拭して、自ら純正芸能会を発足させた方でもあり、白鳥さんと意気投合して、新芸能界を模索していらっしゃる第一人者でもありますよね。」「はいそうです。」何かが動き始めていた。・・・続く。
「ひめゆり自衛隊」・・・昼間の雑務に追われ、慌ただしく終わった今日一日。ようやく、沖縄師範学校と県立第一高女学校の生徒の卒業式が執り行われた。南端の三角兵舎でわずかロウソク二本が灯されただけの式場。この日はごく少ない一部の父兄来賓の参加となり、卒業式と呼ぶにはあまりにも悲惨な状態となった。それでも多くの生徒は喜びの気持ちでいっぱいとなった。もしもの事を考えて、三角兵舎の周りを特戦群、空挺団、普連の隊員が警護していた。・・省略・・吹田二士が哀願する。「バカな。卒業式なのにロウソク二本しかないなんて。神谷隊長、天幕に使ったライト・・・いや、灯火をここへ持ってきていいですか。ロウソク二本じゃ、あまりにも可哀そうですよ。」「そうだな。できればそうしたいな。」・・・続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.74 )
- 日時: 2013/02/08 20:10
- 名前: 梶原明生 (ID: uZAkimhj)
「ひめゆり自衛隊」・・・それを脇で聞いていた増田二曹が少し冗談まがいに声をかけてくる。「何なら全員に暗視ゴーグルでも配ってやるか。・・・」言われて一瞬想像したが、想像したくない光景だった。「いやですよそんなの。あー、クソ。何か灯火してやれる方法ないかな。」・・省略・・「よし、分かった。ではお前達数名で三角兵舎の中を今すぐ捜索してこい。しっかり・・・灯火で照らせ。」「了解。」意外だった。あの沢田一尉の指示とも思えぬ発言だった。それだけに神谷三尉は心から彼に感謝する思いだった。しかし、これに黙る幸村二尉ではない。・・省略・・「やったぁ、そうこなくっちゃ。あの鬼の沢田にも涙って事っすかね。」「こら、言葉を慎めよ吹田二士。」植村三曹が少し戒めるように言った。そして、神谷三尉は先頭に立って三角兵舎の扉を開けた。丁度、祝辞答辞が始まる頃だった。手に持った大型灯火に点火して中を照らし出した。吹田二士も、植村三曹も、新垣陸士長も、皆がひめゆり学徒を囲むように明るく映し出した。「野田校長、そして先生方。これが我々のせめてもの気持ちです。陽の光ほどではありませんが、これでやっと卒業式会場らしくなると思います。さぁ、式を続けてください。」感動のあまり、涙したくなる心境だったろう。しかし、それをこらえて野田校長は応えた。「有難うございます。まさかこのようなことまでしていただくとは思いにもよりませんでした。我が校の生徒、いや、ひめゆり学徒隊の卒業式に相応しい事となるでしょう。」野田校長はそう言うと皆に向き直った。「さぁ、祝辞、答辞を行ってください。」こうして明々と灯された式場で卒業式は続けられた。・・省略・・やがて、式次第が終わりをとげて最後の目録となった。全員による「海ゆかば」の斉唱である。しかし。・・・その雰囲気を破るように沢田一尉から無線による下達があった。「海ゆかばだ。総員、撤退に入れ。ひめゆり学徒隊の警護と誘導をして、迅速に避難させろ。ここからが勝負だ、油断するな。」「了解。」遠くから響いていた砲撃の音が、急に爆音となって三角兵舎に近付いてきた。「野田校長、米軍の砲撃がここを直撃する。今すぐに各壕へ全員を撤退させてください。速くっ。」「わかりました。全員兵舎の外に出るんだ。」まるで、地震とガス爆発が一度に来たような轟きの中を背にして一斉に走り出す。「急げ、急げ、行くんだ。」神谷三尉は必死に彼女達を誘導しながら叫んだ。・・・続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.75 )
- 日時: 2013/02/09 17:49
- 名前: 梶原明生 (ID: uZAkimhj)
「美幸へ」・・・その頃俺はようやく堂守と共に現在側へと戻っていた。「堂守さん、今は何日何時ですか。いや、そもそも何年ですか。」「落ち着いてください。心配いりません。まだこちらはあの時の昼過ぎですよ。有休願い出したんでしょ。なら問題ない。」自分の家の2階の部屋で喰ってかかったものの、すぐ落ち着いた。「それよりも、この時空の交錯原因を調べないと。すぐに大阪に飛びましょう。心配いらないですよ。飛行機のチケットは取ってあります。」「何故です。行くなら鹿児島か東京のプラチナンプロダクションでしょ。」「いえ。今回この捻れは大阪府吹田市から発生しているので。どうやら蒼碧石を手にしたのはあなただけではないようです。急ぎましょう。」一方、90年側の52島では、すでに喜美子が中52町まで来ていた。「何これ。・・・」家の隣に聳え立つ住居兼道場のプレハブを見て彼女は驚いた。赤ちゃんを抱えながら中を覗く。「羅心流・・・サンドバッグ、おまけにヌンチャクも・・・」関心したのか呆れたのか、しばし見入っていた。「あれ、喜美子じゃねーか。まぁー、この子も大きくなって。」「母ちゃん、久しぶり。元気で何より。芋掘りのバイトは。・・・」「ああ、今日は休みでな。」「母ちゃん、早速で悪いけど、何これ。その至善とかいう人。今度うちの旦那が福岡に出張するけどさ、身元調べてもらおうか。」「お前何言ってる、いきなり。」・・・続く。 「ひめゆり自衛隊」・・・神谷ノブ子はつい何かに躓き、前のめりにこけてしまう。「大丈夫か君。・・き、君は。」腕を掴んで引き上げたものの、神谷三尉は何かに気付いた。「君はもしや、神谷ノブ子と言うんじゃないか。」「はい、でも。・・・何故私の名前をご存知なんですか。」「あ、いや、何でもない。とにかく皆と一緒に避難するんだ、早く。」彼女の手を取り、促した。「よし、時間だな。」沢田一尉が82式指揮装甲車で後退しながら呟いた。同時に卒業式の会場となっていた三角兵舎が、砲撃により轟音と共に凄まじく破壊されていった。「全員の無事を確認。」「こちらも無事を確認しました。」木村三尉や神谷三尉がそれぞれ沢田一尉に無線で報告する。「よし、総員掩蔽にて待機。指示あるまで動くな。」「了解。」遠くからの艦砲射撃が明々と山々と平地をしっかり照らし出していた。・・・3月29日。米海軍の戦艦、巡洋艦、駆逐艦による艦砲射撃が始まったのだ。双眼鏡を覗きながら米海軍スプルーアンス大将は痛烈な面持ちでこの様子を見ていた。「またバンザイ攻撃でもしてくるんだろうな。あのジャップ共は。」隣にいた士官が応える。「はぁ。何せサイパンでもあの調子ですから。しかし、沖縄は本土から差別されていた歴史があることを考えますと、我々に寝返るのは早いかと。・・・占領するのに苦戦はないかと。」「だといいがな。」双眼鏡を胸に落としながらも海の向こうの沖縄を見つめる彼だった。・・・続く。
- Re: 美幸へ。ひめゆり自衛隊。混合ダイジェスト ( No.76 )
- 日時: 2013/02/10 16:59
- 名前: 梶原明生 (ID: UlsZCx61)
「美幸へ」・・・「だって、怪しいじゃない。父ちゃんも母ちゃんも人が良すぎるよ。絶対何か怪しいって。」「色々事情があるんだよ。そんな悪い人じゃない。お前帰って早々そんな話するんじゃないよ全く。」「母ちゃん。・・・」そこに岩佐社長が割って入ってきた。「どうも、天原さん。屋根大丈夫ですか。うちが格安で工事しますがね。」「ああ、こりゃ岩佐さん。・・・今のとこいいですよ、何とかなります。」岩佐社長は偶然を装ったが、実のところ喜美子が気になり尾行していた。その頃、大阪府吹田市のマンションで蒼碧石を両手で握りしめる主婦がいた。「天原さん。あなたの大ファンだった私にとって、これが唯一できる事。誰かがあなたの運命を変えようとしてるけど、いっそのこと別次元でなくて、この次元と接続したい。」それは日野まりという人物だった。「やはりここか。」オートロックをどうかい潜ったのか、堂守と俺はその主婦の一室に入った。「あ、あなた達は一体。け、警察を呼びますよ。」「あなたにそれが出来ますか。」堂守が落着き払って言った。「もしかして、あなたは・・・陽だまりさんじゃ。」俺に心辺りがあった。・・・続く。 「ひめゆり自衛隊」・・・一方、神谷三尉等は、ひめゆり学徒隊を護衛しつつ、各病院壕へと送り届けた。ただ、心残りは彼女達にせめて「海ゆかば」を最後まで斉唱させてやりたかったことだった。彼は砲撃の閃光を睨みながら、89式自動小銃の握把を握りしめていた。彼等が元の時代に帰れる大時空波発生まで後、86日。・・・「春の恋」終り。次回「激変」に続く。
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