二次創作小説(新・総合)
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- 【オリキュア】メモリアルプリキュア!
- 日時: 2017/08/01 23:00
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.139 )
- 日時: 2017/12/25 21:06
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第22話「未来を照らせ!キュアフューチャー誕生!」2
<瑞樹視点>
Adessoの中に入ると、レジではお義父さんがレジ打ちをしていた。
彼は私を見ると優しく笑い、会釈をする。
それに、私は「こんにちは」と答えた。
「杏奈のお見舞いかい?」
「ハイ。あの……杏は……?」
「……昨日帰ってから、ずっと部屋から出て来なくてね。何があったんだか……」
そう言って困ったように笑うお義父さんに、私は苦笑いを返す。
それから家に上がらせてもらい、杏の部屋の前に立つ。
二度ノックしても、返事がない。
「杏、いるんでしょ?」
「……帰って」
小さく声が聴こえる。
それに私はため息をつき、ドアを開ける。
幸い、鍵はしていなかった。
「ホラ、杏起きて!」
「うー……やだぁ……」
子供のように愚図る杏に笑いつつ、私は掛け布団を剥ぐ。
そこには、制服の状態でベッドに仰向けで寝ている杏の姿があった。
「もしかして、あの生意気モデルの話を聞いた時の格好のまま?」
「……帰って!」
そう言って、杏は枕を投げつけてくる。
私はそれを避けようかと思ったが、なんとなく避けてはいけないような気がして、顔面で受け止めた。
バフッと音がして、枕は床に落下した。
目の前では、何かを投げた後の体勢で私を睨んでいる杏の姿があった。
「……杏」
「瑞樹ちゃんは……星華ちゃんの事情を知っていたのに、言わなかった」
「それは、あの事を知ったら、杏の戦意が鈍ると……」
「言い訳なんて聞きたくない!」
そう言って手元にあったぬいぐるみを投げようとする杏を慌てて宥める。
よく見ると、杏の格好はかなり乱れている。
制服はまるで事後のように乱れていて、髪型もボサボサだ。
私はため息をつき、化粧台の椅子を出す。
「ホラ、とりあえず座って。杏、今一番酷い恰好してる」
杏の口癖を真似してそう言って見ると、杏は頬を膨らませて椅子に座った。
私は櫛を手に取り、杏の髪を梳く。
「昨日話も聞いてないってことは、お風呂もまだなの?」
「……ん」
「そっか……じゃあ、髪梳くより先にお風呂の方が良かった?」
「ううん……大丈夫」
「……そっか……」
そう言いつつ、私は髪を梳く。
その間、杏はずっとぼんやりした表情で目を伏せていた。
試しに頭を撫でてみても、反応は無い。
普段なら「何するのさ~」とか言いながら笑うだろうに。
「……ゴムってどこにあるの?」
「……そこの、引き出し」
「ん……ありがとう」
私の言葉に、杏は答えない。
仕方なく私はため息をつき、言われた引き出しの中を見る。
……おぉ、色々な種類があるな。
恐らく普段使っているであろう桃色のゴムは、まとめ買いしているのか、結構数が多い。
折角だから他の可愛いゴムとかにしてみようか。
リボンもある……これは腕が鳴る。
「……私は、何を信じれば良いの……?」
その時、杏が独り言のように呟いた。
思わず私は顔を上げる。
杏は相変わらず前方を見つめながら、続ける。
「ずっと、考えたんだ……もし星華ちゃんが言っていたことが本当なら、瑞樹ちゃんやリコルンはずっと黙って私のことを騙していたことになる……瑞樹ちゃんやリコルンを信じるなら、星華ちゃんが私を騙したことになる……皆の事を信じたいけど、一方を信じるなら……もう一方は、私を騙したことになる……」
「……正しいのは、生意気モデルの方だよ」
私の言葉に、杏は目を見開く。
それに、私は目当てのゴムを探り当て、杏の髪を束ねる。
「確かに、私もリコルンも、生意気モデルの件は杏に黙っていた。でも、それは私達なりに杏を気遣った結果なんだよ。綺麗事かもしれないけど……私は、杏を悩ませたくなかった」
「……でも……」
「それに……これは、私達の口から勝手に言うべきではないからね。杏に説明するのは、やっぱり、彼女が適任だと思う」
「それは……まぁ……」
困惑したような杏の言葉に微笑みながら、私は杏の髪を纏める。
綺麗な茶色の髪が、私の指の間で擦れる。
その時、杏が口を開いた。
「……じゃあ私は、これからどうすれば良いのかな……」
「……」
「このまま、月乃さんのことは放っておけない。ロブメモワールを倒せば元に戻るのは分かっているけど、でも……それまであの二人があのままなんて、私……」
「……私は、杏が正しいと思うことをすれば良いと思うよ」
私はそう言いながら、もう片方の髪を纏める。
元々、髪を弄ったりするのは得意な方だ。
ピアノの発表会で髪型を整えたりすることは多々あるから。
指で髪を梳いて、纏めて、束ねる。
やがて、いつもの二つ結びを作る。
ただ、一か所だけ違う場所がある。
黄色の、星の飾りがついたゴムだ。
「これ……」
「何も信じられないなら、杏は自分を信じれば良い。……私は、杏を信じるよ。杏の選んだ道なら、私は付いて行く」
「瑞樹ちゃん……」
杏はこちらに振り向いて、私の顔を見る。
だから私は笑って、杏の頭を撫でる。
すると杏は気持ちよさそうに目を細めた。
「ん……私も、瑞樹ちゃんを信じる」
「杏……!」
「……だから、ワガママ……良い?」
杏の言葉に、私は頷く。
すると杏は「ありがとう」と微笑み、続けた。
「あのね……月乃さんのワスレール、一緒に倒してほしいの」
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.140 )
- 日時: 2017/12/25 23:08
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第22話「未来を照らせ!キュアフューチャー誕生!」3
<杏奈視点>
月乃さんの胸元に異空間を開け、私達は記憶世界に出る。
リコルンには、病室で待っているように頼んだ。
危険な目には遭わせたくなかったから。
けど、もし三十分経って私達が戻って来なかったら、迎えに来てもらうように頼んだ。
正直、今回に命を懸けるほど私達も馬鹿ではない。
ロブメモワールを倒すことが目的だし、今回ワスレールを倒せなかったらそれだけだ。
ただ……行動したという事実が、欲しいだけ。
結局は、私の気持ちを満たしたいだけの、自己満足。
「……瑞樹ちゃん」
「ん? 何?」
「……私ってさ、最低だよね……こんなの……」
私の言葉に、瑞樹ちゃんはフッと笑った。
それから私の体を抱きよせ、私の頭を撫でた。
「私はそんなこと思わないよ。人のために行動することが大切なんだから。それに、ここにまた来ようと思えるだけ、すごい勇気だよ」
「瑞樹ちゃん……えへへっ」
瑞樹ちゃんの言葉に笑っていた時、遠くにワスレールが見えた。
まだ私達の存在に気付いていないようで、記憶世界を暴れている。
私達はゆっくりと離れ、ラブメモリーウォッチを構える。
「でもさ……折角ここまで来たなら、勝って帰ろうよ!」
「うん! ……行くよ、瑞樹ちゃん」
「オーケイ。杏」
「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
眩い光が、私達を包み込んだ。
---
<星華視点>
思いのほか早く仕事が終わり、私は少し疲れた体でお姉ちゃんの病室に入る。
すると、ベッドの脇に置いてある棚の上でぬいぐるみに成りすましているリコルンが目に入った。
「……リコルン。何してるの?」
「せ、星華……」
リコルンが顔を引きつらせて私を見る。
それに私は鞄を床に置き、棚の近くにあるパイプ椅子を展開して近くに座った。
「お姉ちゃんのお見舞い? ……実は、コッソリ来てたとか?」
「いや、その……そういうことじゃなくて……」
「……まぁ、今まで色々な異世界を練り歩いていたんだもんね。たった一人の犠牲なんて、一々気にしないか」
つい零した言葉が、嫌味のように聞こえた。
そんなつもりじゃなかったのに、つい言ってしまい、私は慌てて訂正する。
「あ、いや、別に皮肉とかじゃなくて……」
「いや……事実だから、良いリコ」
「ん……」
リコルンだって、心を失った異生物というわけではないのだ。
人と同じ心は持っているし、私が偉そうに言えるわけではないが……きっと誰よりも、辛いハズ。
責めたらいけないってことは分かっているのに……。
「……じゃあ、なんでここに……」
「……今、杏奈と瑞樹が、月乃の記憶世界にいるリコ」
リコルンの言葉に、私は目を見開いた。
それからフラフラと立ち上がり、リコルンの体を掴む。
「ねぇ、今、何て言った……?」
「だ、だから……」
「杏奈さんが! 今! どこにいるって!?」
「く、苦しいリコ!」
リコルンの言葉に、私は慌てて手を離す。
しかし気は動転したままで、フラフラと後ずさって、壁に手を当てる。
「そんな……あの世界に、杏奈さんが……」
「み、瑞樹もいるリコ……」
「そんなのどうでもいい!」
つい声を荒げて言うと、リコルンが固まる。
それに私は深呼吸をして、床に膝をつく。
もしこのまま杏奈さんがワスレールにやられたら……私は、お姉ちゃんだけじゃなく、杏奈さんまで失うことに……?
嫌だ……大切な人を、二人も失うなんて……。
「……リコルン……」
「な、何リコ?」
私はリコルンを抱きしめ、小さい声で呟いた。
「私を……杏奈さんの所に、連れて行って」
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.141 )
- 日時: 2017/12/26 21:17
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第22話「未来を照らせ!キュアフューチャー誕生!」4
リコルンに開けてもらった穴で、私は記憶世界に入る。
後から続くリコルンを抱きしめ、私は顔を上げた。
すると、目の前にワスレールの爪が私を切り裂こうと迫っていた。
「……!?」
「危ないッ!」
固まっていた時、杏奈さんが剣でワスレールの爪を防ぐ。
金属音が響き渡り、二人がせめぎ合う。
それにただ呆然としていた時、前原先輩が私の体を抱きかかえ距離を取る。
やがてワスレールから距離を取ると、前原先輩は私の肩を掴む。
「こんなところで何してるの!」
「杏奈さんが、お姉ちゃんの記憶世界にいるってリコルンから聞いて……心配で!」
「何も出来ないアンタが来たところで何が出来る! ……まぁ、もうそろそろ潮時かもしれないけど」
前原先輩はそう言ってワスレールを睨む。
よく見ると、彼女も杏奈さんもボロボロで、かなり満身創痍だった。
「前より強くなったハズなのに……全然勝てないや」
「そんな……」
「やっぱりロブメモワールを倒すしか無いのか……」
前原先輩はそう悔しそうに言うと立ち上がり、杏奈さんの方を向いて声をあげた。
「アデッソ! 今回はもう戻ろう! 流石にもう……」
「う、うん!」
杏奈さんはワスレールから離れようと、ワスレールに背を向ける。
その瞬間ワスレールは咆哮し、杏奈さんの体を横薙ぎに吹き飛ばした。
「杏奈さん!」
咄嗟に叫ぶ。
次の瞬間には、杏奈さんの体は吹き飛び、地面を何度も転がった。
それに私は息を呑み、固まる。
しかしすぐに私とワスレールの間に前原先輩が立ち、杏奈さんのものに比べると小振りな剣を構えた。
「前原先輩……」
「やっぱ、相変わらず私達だけじゃ楽観視しちゃうなぁ……」
前原先輩はそう苦笑混じりに呟く。
しかし、次の瞬間には真顔になり、ワスレールを見つめながら口を開いた。
「……星華」
初めて、名前を呼ばれた。
私は無意識の内に表情を引き締め、次の言葉を待つ。
そんな私を見て前原先輩は笑い、続けた。
「私が時間を稼ぐ。その間に、アデッ……杏の所まで行って。それから、リコルンと一緒に……先に、記憶世界から……」
「そんな……前原先輩は!」
「私は最悪自分の力で戻れる! 良いから、早く!」
前原先輩の言葉に、私は口を噤んだ。
すぐに頷き、杏奈さんの元に駆け寄った。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.142 )
- 日時: 2017/12/26 21:33
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第22話「未来を照らせ!キュアフューチャー誕生!」5
響き渡る戦闘音を聴きながら、私は杏奈さんに駆け寄り、体を抱き起こした。
「杏奈さん! しっかりして! 杏奈さん!」
「ぅ……星華……ちゃん……?」
薄く瞼を開き、そう言う杏奈さん。
それから優しく微笑み、私の顔に手を伸ばし……私の頬を撫でた。
「杏奈さん……!」
「ごめん……お姉さんを取り戻そうとしたんだけど……やっぱりダメみたい……あのワスレール……強いね」
そう言って悲しそうに笑う杏奈さん。
私は彼女の手を握り、「もう良い……もう良いですから……」と掠れた声で呟いた。
その時、杏奈さんは「そうだ……」と呟いて、何かを探るように自分の服の上をなぞった。
やがて、どこからか灰色のラブメモリーウォッチを取り出し、私に渡してくる。
「杏奈さん……」
「星華ちゃん……これ、やっぱり星華ちゃんが持っておくべきだよ……」
杏奈さんの言葉に、私は無言で灰色のラブメモリーウォッチを受け取った。
すると杏奈さんは少しだけ嬉しそうに笑って、私の手を撫でる。
「ごめんね……私、弱いから……星華ちゃんのお姉さん……助けてあげられなくて……」
「そんなの……大丈夫ですよ……もう、充分です……」
私はそう言いつつ、杏奈さんの頬を撫でる。
すると杏奈さんは申し訳なさそうに笑って、何度も「ごめん……ごめんね……」と言う。
彼女の言葉に私は胸が痛くなって、つい立ち上がった。
「私はもう……大切な人を失いたくない……」
「星華。何をするリコ?」
ずっと黙って様子を伺っていたリコルンが、そう言って私の顔を覗き込む。
だから私はリコルンの頭を撫でて、ワスレールを睨む。
「前原先輩。下がってください」
「は? 星華?」
「私はもう……大切な人を傷つけたり、失いたくないから」
私の言葉に、前原先輩はギョッとした顔をする。
だから、私はすぐに訂正する。
「勘違いしないでください。前原先輩は……杏奈さんにとっての、大切な人です。前原先輩がいなくなったら、杏奈さんが悲しむから」
「でも、そんなの……! それより、アンタが先に逃げた方がかくじ……―――」
そこまで前原先輩が言った時だった。
彼女の持っている剣が弾かれ、ワスレールの攻撃が入りそうになるのは。
「前原先輩ッ!」
私は叫び、前原先輩の体を引っ張る。
前原先輩の前に立ち、私は手に握りしめたままの灰色のラブメモリーウォッチを構える。
「星華ッ! 逃げてッ!」
「逃げません! 私は……何も失いたくないからッ!」
そう叫んだ瞬間、ラブメモリーウォッチが光った。
その瞬間、頭の中に、様々な思い出が浮かぶ。
お母さんが生きていた頃の記憶。
お姉ちゃんとの楽しかった記憶。
そして……杏奈さんとの、記憶。
全て、失いたくない大切な記憶。
そりゃあ、楽しかった記憶ばかりではない。
辛かったことや、苦しかったこと。悲しかったこともある。
でも、全てが私にとって大切な記憶だから。
だから私は……これからもそんな記憶を増やしていきたい。
これからも、守っていきたいと思える未来を作っていきたいから。
その時……傍に、杏奈さんがいてほしい。
そう思っていた時、ラブメモリーウォッチの光が微かに収まるのが分かった。
眩い光の中心にあるのは、灰色だったのが嘘のようなカラフルな時計だった。
金色の針。カラフルな宝石で彩られた文字盤。
そして、そこから伸びる金色の鎖が、ネックレスのようになっている。
私はそのラブメモリーウォッチ握り締め、ネジを回して針を十二時に合わせる。
すると、頭の中に言葉が浮かんだ。
「……プリキュア、メモリアルコンバージョン」
そう呟いて、ネジを引っ張った。
すると、光が私を囲う。
髪が解け、私の体を光のワンピースが包み込む。
目の前を舞う時計のようなものに変わる。
そこに手を入れたりする度に、プリキュアとしての衣装に変わる。
巨大な時計が降って来て、そこに頭を突っ込むと、徐々にプリキュアとしての衣装になっていく。
髪は変身前と同じサイドテール……だけど、髪が伸びて、その質量は増す。
最後に空中に放ったラブメモリーウォッチが降ってくるので、それをキャッチして胸に当てる。
すると金色の鎖がリボンとなって、時計部分を中心に胸に黄色のリボンが付く。
キュアアデッソ……ではない。
それは、杏奈さんだから。
杏奈さんが、今を輝くプリキュアだから。
そして、それを支える前原先輩は、過去を束ね、それらを柱にして今を支えるプリキュア。
だったら私は……―――
「未来を照らす、一つの希望! キュアフューチャー!」
―――未来を照らす、希望になる!
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.143 )
- 日時: 2017/12/26 23:21
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第22話「未来を照らせ!キュアフューチャー誕生!」6
「キュア……」
「フューチャー……?」
私の後ろに立つ前原先輩と、フラフラと立ち上がりながらこちらに近づいて来る杏奈さんを見る。
だからそれに私は笑い、胸の前で両手を合わせた。
「二人とも、私のためにここまでしてくれて、ありがとうございます。でも、やはりこれは、私達姉妹の問題なので……」
そう言いながら合わせた手に力を込めると、徐々にメモリアが集まって、形になっていく。
細い針のようになっていくのを見つめ、私はそれを手のひらに乗せる。
すると光が無くなり、それは、透き通ったレモン色の針になる。
「……私が責任を持って、姉のメモリアを……取り戻します」
そう言いながら、私は服をたなびかせ、ワスレールを見る。
レモン色の針を胸のラブメモリーウォッチに嵌め、回転させる。
すると、ラブメモリーウォッチが光り輝き、やがて、細い剣が出てくる。
「レイピア……?」
前原先輩の呟きを聴きながら、私はレイピアを観察する。
レモン色の細身の刃に、柄は山吹色。
刃は虹色の宝石で彩られ、付け根の辺りに丸い小さな皿のような形状のものが付いている。
真ん中に突起が付いている……これは一体……?
「星華ちゃんッ!」
杏奈さんに名前を呼ばれた。
何の用なのか、確認する間でもない。
私はすぐに上に跳び、ワスレールの攻撃を躱す。
……体が軽い。
久々の感覚……これが、プリキュアになるということ……。
今まで、プリキュアの力はワスレールを倒すだけものだと思っていた。
でも、それだけじゃないんだ。
プリキュアの力は、大切な何かを守る力。
そのために、ワスレールを倒さなければいけないだけだ。
「はぁぁぁぁッ!」
叫び、私はレイピアでワスレールを切り裂いた。
するとワスレールは雄叫びを上げ、私に腕を振るう。
攻撃を受けると思い、私は咄嗟に腕を交差して瞼を強く瞑る。
「星華ちゃん!」
「星華!」
しかし、攻撃はされなかった。
顔を上げると、そこでは、互いの剣を交差してワスレールの攻撃を受け止める杏奈さんと前原先輩の姿があった。
「杏奈さん! 前原先輩!」
「今の、内に……ワスレールをッ!」
苦しげな声でそう言う前原先輩の言葉に私は頷き、剣を交差した部分を踏み台にして跳ぶ。
それから空中で身を捻り、ワスレールに向かってレイピアを振るった。
すると、ワスレールはさらに苦しげに声をあげてその場に倒れた。
「一気に決める!」
叫び、私は胸元のラブメモリーウォッチから針を外した。
そしてそれをレイピアの柄にある皿のようなものに嵌め、回転させる。
「未来を照らす大いなる希望! フューチャーレイピア!」
叫んでから、私はレイピアを構える。
大きく円を描き、その中で星を描く。
それからレイピアを横に構えその円の真ん中に持っていくと、レイピアがその光を纏い、輝きだす。
「プリキュア! フューチャーエスペランス!」
叫び、体を回転させながらレイピアで目の前の空間を両断する。
すると、眩い光が一筋の刃となり、ワスレールに飛んでいった。
その光がワスレールにぶつかると、奴の体を空中で固定させ、停止させた。
私はワスレールに背を向け、針を停止させた。
すると、背後から爆発音がした。
「……ふぅ」
安堵の息を漏らし、私は変身を解く。
するとすぐに杏奈さんが駆け寄って来て、私を抱きしめた。
「星華ちゃん凄いよ! あのワスレールを倒しちゃった!」
「ちょっ……杏奈さん!?」
突然のことに、私は動揺する。
すると杏奈さんは私の肩を掴んで、嬉しそうに笑った。
「星華ちゃん……やったね!」
「杏奈、さん……ハイ!」
「感傷に浸るのも良いけど、とりあえず記憶世界を出るリコ!」
リコルンの言葉に、私達はすぐに記憶世界を抜け出した。
出る時に、私は一度振り向いた。
完全に破壊されていた記憶世界が、少しずつ修復されていく。
その情景を見て、私は目が少し潤んだが、それをすぐに拭って皆の後に続いた。
「ん……」
記憶世界を出て、数分程度経った頃だろうか。
お姉ちゃんはそう声を漏らし、ゆっくりと瞼を開く。
やがて、彼女の顔を覗き込んでいる私の顔を見て、カッと目を丸くした。
「星華……? あれ、少し……大きくなった……?」
「お姉ちゃん!」
私はそう叫び、お姉ちゃんの体を抱きしめる。
すると彼女はフッと息を吐くように笑い、私の背中を撫でた。
それに、私はいよいよ耐え切れずに、お姉ちゃんを抱きしめながら泣いた。
声をあげて、子供のように……ただひたすら、泣きじゃくった。
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