二次創作小説(新・総合)

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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.104 )
日時: 2017/12/08 22:58
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第16話「感謝を言葉に!想いを刻め時計塔!」6

「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 名乗りを終えた瞬間、ワスレールが攻撃してくる。
 私達はすぐにそれを避け、外に飛び出した。

「なんで二回連続で狭い場所なんだよ~!」
「文句言ってる場合じゃないでしょ……」

 私は苦笑混じりにそう言いつつ、後ろを振り向く。
 見ると、家の玄関をぶち破ってワスレールが飛び出す。
 しばらく走って、私達を追いかけるワスレールが家から離れるのを見計らい、私はその足を止める。

「人の家を壊すなぁぁぁぁぁッ!」

 叫びながら、私はワスレールを蹴り飛ばす。
 すると、ワスレールの体は一気に吹き飛び、近くの塀を破壊しながらその奥にある家にぶち当たる。
 それを見て、パーストはため息をついた。

「アデッソ……それブーメラン過ぎるよ」
「えっ? ブーメラン?」
「あー……もう良い」

 呆れたような口調で言うパーストに、私はムッとする。
 その時、ワスレールが立ち上がり、こちらを睨んでくるのが見えた。
 私はすぐにキッと睨み返し、その場でクラウチングスタートの体勢を取る。

「はぁッ!」

 息を吐くように声をあげ、私はワスレールに向かって突進する。
 風を切り、一気に世界が後方に流れる。
 すると、なんとか起き上がったワスレールがこちらに腕を振るってくるのが見えた。
 私はそれを、体を捻りながら躱す。
 躱しながらラブメモリーウォッチに桃色の針を取り付け、高速で回転させる。
 強い光が瞬き、アデッソソードが飛び出す。
 空中に飛び出すアデッソソードの柄をしっかり握りしめ、私はワスレールの攻撃を避けた時の体の捻りを利用した遠心力で一気に叩き付ける。
 剣がワスレールの体を切り裂き、傷をつける。

「ガァッ……!」
「まだ、こんなものじゃない……!」

 呟きながら、私はワスレールを見下ろす。
 本当はこんなものでは怒りは収まらない。
 でも―――。

『父さんは、そういう誰かの思い出や笑顔を……守りたいだけだ』

 パパの言葉が、頭に過る。
 そう、私達の目的は、誰かの思い出や笑顔を守ること。
 復讐や、怒りの為に戦うことではない。
 だから私は……―――

「今、楽にしてあげるね。ワスレールさん」

 ―――……できるだけ優しく微笑んで、そう言った。
 そしてラブメモリーウォッチから桃色の針を外し、アデッソソードの窪みにはめ込む。
 その針を指で弾くと、高速で回転し始める。

「今を輝く大いなる光! アデッソソード!」

 叫び、円を描く。
 その円の中心で剣を回転させて、その円を桃色に輝かせる。
 桃色の光が刃に纏い、輝きだす。

「今を輝け! プリキュア! アデッソルーチェ!」

 叫び、私は目の前の空間を両断する。
 すると、一筋の光がワスレールに向かって飛び、奴の体を両断した。
 巨大な時計の文字盤のようなものが現れ、ワスレールを空中に固定する。
 私はアデッソソードを胸の前で構え、回転する針を停止させた。
 すると文字盤がワスレール諸共爆裂し、消し去った。

「アデッソ……お疲れ」
「パースト……うん」

 私達は笑い合い、拳を付け合わせた。
 すると世界が色を取り戻し、記憶世界も修復されていく。
 一応確認しておこうと家の中を覗くと、パパと幼い頃の私が抱き合っているのが見えた。
 パパにとっては、これが一番大切な記憶……か。
 熱くなった胸にソッと手を当ててから、私はリコルンやパーストの後を追って記憶世界を出た。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.105 )
日時: 2017/12/09 18:31
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第16話「感謝を言葉に!想いを刻め時計塔!」7

 あれから、パパは無事に目を覚まし、時計塔の点検も無事に済んだ。
 『お父さん』というタイトルでの作文も無事に書き終え、ついに参観日の日を迎える。
 参観授業は五時間目で、それが終わったらそのまま下校というスタイルだ。

「はぁ……なんだか緊張するな~」
「ん? 杏の家は見に来るの?」

 昼休憩に愚痴を零すと、瑞樹ちゃんが乗ってくる。
 彼女の言葉に、私は曖昧に笑った。

「分からない。でも、見に来たとしても来なかったとしても、他所の親は来るでしょう? だから、緊張しちゃって……」
「なるほどね~。私はピアノのコンクールで人目は慣れてるし、両親は二人とも絶対に来ないから、気が楽だわ」
「……良いのかなぁ、それ」

 私の呟きに、瑞樹ちゃんは「良いの良いの」と言いながらケラケラと笑う。
 ……本当に良いのかなぁ……。
 まぁ、そんなことを話しているとチャイムが鳴ったので、私達は速やかに席につく。
 それから先生が教室に入ってきて説明をしたりする。
 そしてついに、作文発表が始まった。

「それでは、安藤さんから発表してください」
「はいっ!」

 先生に名前を呼ばれ、安藤さんが緊張した面持ちで教壇に立つ。
 作文の発表を聞きながら、私はぼんやりと、後ろに並ぶ保護者を眺めた。
 ……パパもママも、来てないなぁ……。
 まぁ、Adessoでの仕事が忙しいのかなぁ……。
 ふぅ、とため息をつき、私は安藤さんの発表を聞く。

「―――終わります」

 そんな言葉で、作文は締めくくられた。
 それに私達は拍手をする。
 後ろを見ると、まだ私の家族は来ていない。
 まぁ良いか……。

「では次は……今行さん」
「あ、ハイ!」

 返事をして私は立ち上がり、教壇の前に歩いて行く。
 顔を上げると、クラスメイト達や保護者の方々が私に集中しているのが分かった。
 うぅ……緊張する。
 私は深呼吸をして、原稿用紙に視線を落とす。
 その時、教室の後ろの扉が音を立てて開いた。

「ハァッ……ハァ……間に合ったか?」
「ぱ、パパ!?」

 私がついそう声をあげると、皆がパパに集中した。
 するとパパはすまなさそうに「どうもどうも」と言いつつ、後ろに並ぶ保護者の列に加わる。
 それを見て、私はため息をついた。
 全く……本当にパパは、しょうがないんだから。
 でも、少しだけ……緊張が解れた。

「私のお父さん。二年一組、今行杏奈。
 私のお父さんは、Adessoというお店の店長をしています。
 お母さんと協力して、接客や商品の管理などを行っています。
 元々、Adessoは私のお祖父ちゃんが経営していたお店です。
 でも、お祖父ちゃんが引退することになり、お父さんが店を継ぐことになりました。

 私は、お父さんに聞きました。
 なぜ、Adessoを継いだのかと。
 お父さんにだってやりたいことはあるだろうし、わざわざお祖父ちゃんの後を継ぐ必要は無かったんじゃないかと思ったのです。
 すると、お父さんは言いました。
 自分は、誰かの笑顔を守りたい。誰かの大切な思い出を守りたい、と。
 Adessoは、この時見町でも人気のある時計屋さんです。
 だから、このお店を好きで、このお店を大事だと思っているお客さんがいるなら頑張りたいと、お父さんは言っていました。

 私は、そんなお父さんが頼もしいと思います。カッコいいと思います。
 私も、誰かの笑顔を守りたい。誰かの思い出を守りたい。そう思いました。
 そんなお父さんが、私にとっては誇りです」

 作文はそこで終わっている。
 でも、私は原稿用紙を閉じずに顔を上げ、こちらを見ているパパと目を合わせた。
 それから深呼吸をして、口を開く。

「そんなお父さんが……大好きです」

 私の言葉に、パパは目を大きく見開いた。
 すると、だんだん気恥ずかしくなって、自分の顔が熱くなるのを感じた。
 私はすぐに原稿用紙を閉じて「終わります」と言ってしめくくり、拍手を聴きながら席についた。
 なんとなく反応が気になってパパを見てみると、ちょうどパパも私を見ていた。
 パパがこちらに向かってサムズアップをしてきたので、同じくサムズアップをして、それに応えた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.106 )
日時: 2017/12/09 22:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第17話「描け友達の顔!セフトと紫音二人の時間!」1

<セフト視点>

 相変わらず少ないメモリアの集まりに、俺はため息をつく。
 もう直、“奴等”が目を覚ます頃だろう。
 それまではあの幹部共を使い潰さなければならない。
 とはいえ、流石にたったこれだけのメモリアの集まりでは、ボウキャーク様もじれったく思っている頃だろう。
 そこで、俺の脳裏に紫音の顔が過る。

 メモリアもだが、プリキュアもどうにかしなければならない。
 流石にこれはすぐにどうにか出来る問題ではない。
 だから、今は少しでもメモリアを溜め、外堀から埋めていくしかない。
 そこで使うのが……紫音だ。奴との距離を少しでも縮めたいところだが、どうしたものか……。
 俺は瞼を閉じ、意識を集中させる。

 すると、俺の意識は飛び、俺が芹谷風斗として通っている学校に吸い込まれていく。
 さらに意識は飛んで行き、職員室のとある教諭のメモリアに潜り込む。

 プリキュアを除去するために、情報収集などに役立ちそうな人間にはメモリアにマーキングを施しておいた。
 あの二人に直接マーキングするのも考えたのだが、ラブメモリーウォッチの影響か、長時間のマーキングは出来ないようだった。
 一瞬覗いたり、別の生物とメモリアを交換したりすることも出来る。
 しかし、一瞬覗く程度では大まかな記憶しか見れない。
 メモリアを交換するのは、リコルンとキュアアデッソのメモリアを交換した時のことを考えると……あまり得策ではない。

 だから、プリキュアへの直接マーキングは避ける。
 その分、周りの人間の情報を集めたりして、外堀から徐々に追いつめておく。
 そういう意味でも、紫音という存在は中々に有難い。
 何と言っても、キュアパーストの家での情報のほとんどを把握できるのだから。
 キュアアデッソは、家族と接触したことがないから把握できない。
 しかし、二人の内の一人の情報を把握できるのは中々に重要だ。

「む……?」

 そんな風に考え事をしつつ教師のメモリアを探っていた時、気になる情報があった。
 俺はその情報に意識を集中させる。
 それは、明日の授業の時間割のようだった。
 美術の授業の内容を把握した俺は、舌なめずりをした。

「へぇ……面白そうじゃん」

 俺は目を開き、ニヤリと笑った。

---

<瑞樹視点>

「はい、それでは今日は、お友達の似顔絵を描いてもらいます」

 美術の先生の言葉に、僕は柄にもなくガッカリしてしまった。
 高校生にもなって……友達の似顔絵?
 子供か? いや、法律上は子供だが……うーん……。

 と、どうやら面倒だと思ったのは僕だけではないようだ。
 他の皆も文句を口にしている。
 ブーイングが巻き起こる中、先生が「文句言わないの」と窘めた。

「それじゃあ好きな人と二人組を作って、早速始めて下さい」

 先生の言葉に、皆、文句を言いつつもペアを作り始める。
 面倒だな……ここは余った人と適当に組めばなんとか……―――

「前原君! 私と一緒に組んで欲しいの!」
「いいえ前原君は私と!」
「前原君!」

 ―――……ならなさそう。
 押し寄せてくる女子を、僕は必死に抑える。
 ダメだ。もしここで、ペアを組む人がいないような地味な奴と組んだら色々面倒なことになる!
 せめてこの女子達が納得するような相手を……!

「紫音」

 その時、僕の名を呼ぶ声がした。
 顔を上げるとそこには、僕と同じように押し寄せる女子を宥めながらこちらに近づいて来る風斗の姿があった。
 目が合うと、彼は嬉しそうな笑みを浮かべ、口を開いた。

「良かったら、一緒に組まない?」

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.107 )
日時: 2017/12/10 17:21
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第17話「描け友達の顔!セフトと紫音二人の時間!」2

 向かい合わせに座り、僕達はキャンバスのようなものの前にそれぞれ座る。
 まずは僕が風斗の顔を描くことになった。
 風斗は自分の前からキャンバスをどかし、膝に手を置いて好奇心に満ちた目で僕を見つめて来た。

「それじゃあよろしく、紫音」

 そう言って微笑む風斗。
 彼の言葉に、僕は鉛筆を筆箱から出しながら口を開いた。

「あまり上手じゃなくても、怒らないでよ?」
「大丈夫だよ。それに、俺も絵心無いし、気楽に行こう?」

 風斗の言葉に、肩から力が抜けるのを感じた。
 これなら、少しは上手く描けるかもしれない。
 緩い笑みを浮かべながら佇む風斗を観察しながら、僕は画用紙に線を引いていく。

「それにしてもさぁ、すごい騒ぎだったよね。アレ」
「アレ?」
「ホラ、俺が紫音を誘った時」
「……あぁ」

 風斗の言葉に、僕は先ほどの女子の騒ぎを思い出した。
 確かにあれは酷かった。
 黄色い悲鳴を多々上げる女子生徒達。
 美術の先生によりなんとか静まったが、あの騒ぎは酷かった。

「まぁ当然かぁ。このクラス……いや、学校でも一、二を争うイケメンが組んじゃったんだからね」
「……自分で言ったら苦労は無いな」

 僕が吐き捨てるように言うと、風斗は「そうだね」と言いつつ笑う。
 今は輪郭だから良いが、顔のパーツを描く時にはずっと無表情でいてもらわないと……。
 そう思いつつ、僕は線で彼の顔の形を繕っていく。

「……ねぇ、紫音」
「何?」
「紫音はさ……人生楽しい?」
「は?」

 突然妙な質問をされて、僕は聞き返す。
 すると、風斗はクスクスと愉快そうに笑った。

「だって、紫音、毎日退屈そうだしさ。……学校、退屈?」
「……まぁ、退屈かな。大体、学校を楽しいと思う人、普通いないでしょ」

 僕の言葉に、風斗は「まぁそうだけどさ~」と言いながらケラケラと笑う。
 そんなやり取りをしている間に輪郭を描き終え、いよいよ顔のパーツに入る。

「風斗。目とか描くから、しばらくあんま顔動かさないで」
「ん……了解」

 僕の言葉に素直に従い、無表情になる風斗。
 その顔を観察しつつ、出来るだけ似せるように、描いていく。
 こうして見ると……本当に、整った顔なだけあるな。
 堂々と自分のことをイケメンとか言うだけのことはある。
 目や鼻、口を書き終わり、次は髪を描く。

「……風斗。もう、顔は動かして良いよ」
「ん……紫音はさ、学校とか家とか……楽しくないと思うの?」

 風斗の言葉に、僕は一瞬、彼の顔を描く手が止まった。
 家が楽しくないか……か。

「……家にいるのは楽しいよ。妹やその友達がいつも楽しそうにピアノを弾いてるんだ。それを見ていると、こっちまで楽しくなって。……ホラ、風斗も前に会っただろ」
「あぁ……あの二人ね。……紫音は、あの二人のことが大好きなんだね」
「大好き……か。まぁ、うん。大切だとは思うよ。瑞樹は当然家族だし、杏奈ちゃんも、瑞樹がピアノをまた弾くようになったきっかけでもあるからね」

 僕の返答に、風斗は微かに笑みを浮かべた。

「そっか……じゃあ紫音は、今、家に帰りたいって思う?」
「……今帰っても、二人は家にいないよ?」
「そうじゃなくて……ずっと、そんな楽しい時間を過ごしていたいと思うかい?」

 風斗の言葉に、僕は少し考えてから「そうだね」と答えた。
 その時風斗の顔を描き終わったので、僕はキャンバスを裏返し、風斗に見せた。

「どうかな?」
「……うわ、すごい上手! 写真みたい!」
「本当? それは良かった」

 ホッと安堵しつつそう答えると、風斗も嬉しそうに笑った。
 それから、僕の手を握った。

「わ、ちょっ」
「……俺なんかじゃ、紫音の力になんてなれないかもしれない。でも、俺は紫音に、この学校も楽しいって思ってほしい。そんな、退屈そうな顔しないで欲しい。だから……俺、もっと紫音と仲良くなりたい!」

 恥ずかしげもなく言う風斗に、こっちが恥ずかしくなってしまう。
 僕は目も合わせられなくて、つい顔を背けながら「分かったから……」と誤魔化す。

「じゃあ、次は俺が描く番だよね。俺みたいに、何でも質問してくれよ」

 そう言って風斗は自分の前にキャンバスを持って来て、俺を見てニカッと笑った。
 その笑顔が、なぜかすごく、眩しく見えた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.108 )
日時: 2017/12/10 23:20
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第17話「描け友達の顔!セフトと紫音二人の時間!」3

 真剣な表情で僕の顔を描く風斗の顔を、僕はぼんやりと眺めた。
 何でも質問しろとは言われたが……正直、聞くほどの内容が無い。
 しかし、ここで風斗の好意を無下にするのも気が進まない。
 ここは何か、質問してみようか。

「……風斗はさ、この学校に来る前は、どこに住んでいたの?」

 僕が聞くと、キャンバスに鉛筆を走らせていた風斗は僕の顔をチラッと見た。
 それから少し目を細め、「そうだなぁ……」と言って、シャッシャッと線を引いていく。

「色々な所に行っていたよ。色々な場所を転々と」
「へぇ……親御さんは、何の仕事をしているの?」
「……それは、あまり人には言うなって言われているんだ。ごめんね」

 申し訳なさそうに微笑みながら言う風斗に、僕は「そうか……」と呟くように返事をした。
 それから少し考えて、口を開く。

「でもそんなに色々な場所に行っているなら、またすぐに別の学校にでも行くの?」
「……いや、それは無いよ」
「え?」

 風斗の言葉に、僕は聞き返す。
 すると風斗は目を伏せ、続ける。

「……俺達の目的を果たすまでは、ね……」

 暗い声で、そう言った。
 俯いているため、彼の表情がこちらから伺えない。
 不思議に思っていると、彼はパッと顔を上げた。
 すでにそこには先ほどの暗い雰囲気はなく、明るい笑みを浮かべていた。

「さ、他には質問は?」
「えっ? あぁ……じゃあ、好きな食べ物は?」
「うーん……これと言ったものは特には……」
「……」

 何だろう……会話が盛り上がらない。
 とはいえ、考えてみたら当たり前なのかもしれない。
 例えば博人は、テンションが高いから勝手に盛り上げてくれる。
 それに比べて、僕自身はあまりテンションが高い方ではないので、自分から盛り上げる方ではない。
 風斗自身も博人のように元気な部類では無いので、自主的に会話を盛り上げたりはしない。
 というわけで、僕達二人の会話は非常に平淡なものになってしまう。

「……風斗はさ、僕と一緒にいて楽しい?」

 気付いたら、そんな風に聞いていた。
 僕の疑問に、風斗は不思議そうな顔で僕を見つめる。
 絵を描く手を止め、どこか真剣な表情で僕を見つめていた。

「……なんで、そんなことを聞くの?」
「え、いや……僕と一緒にいても、話盛り上がらないしさ。楽しくないんじゃないかな……って」
「……じゃあ紫音は、楽しい人と友達になるの?」
「え?」

 僕が聞き返すと、風斗はフッと顔から表情を消し、素早く鉛筆を走らせる。
 無表情でひたすら絵を描く様子に、僕は言葉を失った。
 風斗は口を開く。

「俺は違うと思う。……俺はさ、一緒にいたいから、一緒にいるんだと思うよ」

 そう言いながら、彼はキャンバスから鉛筆を離す。
 そして顔を上げ、僕の顔を見て微笑んだ。

「一緒にいたいから、大事にする。一緒にいたいから、その人のことを大切にする。一緒にいたいから……一緒にいる」

 立ち上がり、キャンバスを裏返す。
 こちらに向けられたそれを見て、僕は息を呑んだ。

「ずっと一緒にいれば、自然と楽しくなる。自然と笑顔になって……自然と、友達になっていく」

 キャンバスに描かれていたのは、満面の笑みを浮かべる僕の顔だった。
 風斗はそれを手で示し、僕を見てニコッと笑った。

「だから、俺は君と一緒にいたい。君という人間と友達になりたい。……君と一緒にいる理由がそれだけじゃ、ダメかな?」
「……まぁ、僕なんかで良いなら」

 僕の言葉に、風斗は「良かった」と言って笑った。
 その無邪気な感じの笑顔に、僕も釣られて笑った。


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