二次創作小説(新・総合)

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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.9 )
日時: 2017/08/09 23:10
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」3

 昼休憩になり、私は前原さんに連れられて校舎を回った。
 移動教室などを中心に、色々見て行く。
 やがて、ほとんどの教室を回り終え、残るは私達の教室がある棟とは別の棟の三階の突き当たりである、音楽室だけだった。

「ここが音楽室ね」

 前原さんはそう言いながら扉を開ける。
 中に入ると、穴ばかりの壁に、後ろの方には楽器が並んでいて、王道の音楽室って感じがした。
 キョロキョロと周りを見ていた時、黒いグランドピアノに目が行った。

「おぉ……ピアノ……」
「あぁ、うん。まぁ、音楽室だからね」

 前原さんはそう言うとピアノの前に立ち、一つの鍵盤を叩いた。
 ポーンという軽やかな音が響き、教室の空気に余韻を残す。

「……そういえば、前原さんって、ピアノ弾いてたの?」

 なんとなく気になり、私はそう聞いてみた。
 昨日見た前原さんの記憶世界では、前原さんらしき少女が、ピアノを弾いていたから。
 もし弾けるなら、折角だし聴いてみたいなぁ、なんて……。
 そう思っていた時、前原さんの顔が徐々に曇っていくのが分かった。

「ま、前原さん……?」
「……なんでそんなこと聞くの?」

 震えた声。悲しそうな声。
 負の感情が詰まっているであろうその声に、私は、言葉を詰まらせた。
 すると、前原さんは唇を噛みしめ、両手を鍵盤に打ち付けた。
 ダーンッ! という大きな音が響いて、私はビクッと震えあがってしまった。

「ッ……」
「……ピアノなんて、弾けない……私はもう、ピアノなんて……」
「前原さん……」

 私が恐る恐る聞くと、前原さんはハッとして顔を上げた。
 怯えている私の顔を見て、彼女の顔は、徐々に青ざめていく。

「あ、ははは……変なところ見せちゃったね……」
「あ、いや、えっと……」
「……それじゃあ、教室戻ろっか」

 笑顔で言う前原さんに、私は小さく頷いた。
 すると、前原さんは明るく笑い、私の手を握り歩き出す。
 前で揺れる青い長髪を見つめながら、私は恐る恐る口を開いた。

「あの、前原さん……」
「……杏。なんで、あんなこと聞いたの……?」
「えっ……」

 突然の質問に、私は言葉を詰まらせる。
 流石に、貴方の記憶世界に入った時に見ました、なんてトチ狂ったことは言えないからなぁ……。
 逆に、もし同じことを言われたら、事情を知らない状態だったらきっと引く。
 友達辞めるレベルで引く気がする。

「えっと……なんとなく……あ、ホラ、真っ先にピアノの所に向かったし」
「……あぁ、そういうこと」

 なんとか誤魔化すと、前原さんは私に背を向けたままそう返事をした。
 彼女の返事に、私は俯く。

「……ごめんね。ピアノ、弾けなくて」
「ううん……こっちこそ、急に変なこと聞いてごめん」
「良いよ。平気」

 前原さんはそう言って、私の手を握る力を強くする。
 私はそれに何も答えられなくて、俯いた。
 彼女はそれ以上何も言わずに、私の手を引いて、少しだけ、歩く速度を速めた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.10 )
日時: 2017/08/10 18:52
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」4

 それからは特に何事もなく、放課後になった。
 鞄の準備をしていた時、机の前の方をポンポンと叩かれた。

「ふぇ……?」
「杏。一緒帰ろ」

 顔を上げると、前原さんがそう言ってニヒッと笑った。

「え、でも……」
「実は、私の家も『Adesso』の方向なんだ。だから、ちょうどいいかなって」
「なるほど」

 そう納得すると、前原さんは「行こうか」と行って笑う。
 私はそれに頷き、鞄を背負って彼女に続いて教室を出た。

「それで、新しい学校では上手くやっていけそう?」
「うん。前原さんのおかげで、クラスにもすぐに慣れること出来そうだし」
「私のおかげかぁ……ハハッ、嬉しいな」

 照れたように言う前原さんに私は苦笑しつつ、靴を履き替える。
 それから玄関を出ようとした時、「おーい」と背後から声を掛けられた。
 振り返ってみると、そこには、こちらに手を振って来る女生徒の姿があった。
 えーっと……。

「あれ、みっちゃん。みっちゃんも今帰り?」
「うん。瑞樹と今行さんも?」
「んー。まーね」

 前原さんはそう言って私の肩を組む。
 その様子に、みっちゃん? は苦笑した。

「良いなぁ瑞樹は今行さんと仲良くて。私とも仲良くしてよ」
「え、あ、私は大歓迎だよ!」
「本当? あ、私は山田美穂。よろしく」
「あ、うん。よろしく」

 山田さんが差し出した手をしっかり両手で握って、私はそう答えた。
 すると、前原さんがムーッとした表情をする。

「何よ瑞樹」
「いや、杏が私以外と仲良くするのはなんかなぁ……って。杏と一番最初に仲良くなったのは私なのに」
「あはは……でも、私は前原さんと一緒にいるのが一番楽しいよ」

 そう言って見せると、前原さんは「本当?」と聞き返してくる。

「うん。本当。まぁ、やっぱり、皆より一日早く仲良くなったし、昨日はずっと一緒だったからかな」
「なるほど……んー。それなら良いや」

 前原さんはそう言って私の腕を抱く。
 それに、山田さんが呆れたように笑う。
 その時、「あらあら」という声が聴こえ、私達は足を止めた。

「プリキュアの周りには良いメモリアの持ち主が集まるのかしら?」
「誰……」

 そう漏らしつつ、私は咄嗟に前原さんと山田さんの前に立とうとした。
 しかし、それより先に前原さんが前に歩み出て、目の前に立つ魚みたいな青い女の人を睨む。

「何ですか? 変な見た目して……警察呼びますよ」
「フンッ。勝手にしな。すぐ済ませるから」

 そう言うと青い女の人は手を掲げる。

「危ないッ!」

 咄嗟に私は叫び、前原さんの体を突き飛ばした。
 すると、彼女の鞄が地面を跳ね、中から教科書やら筆箱が散乱する。
 その時、その中にラブメモリーウォッチがあるのを見つけた。

「あれは……!」
「っつぅ……みっちゃん!」

 前原さんの叫びに、私は咄嗟に顔を上げる。
 すると、そこでは胸元に時計の針のようなものが現れ、目から光が無くなっていく山田さんの姿があった。
 やがて、女の人が手を引っ込めると、山田さんは倒れ、彼女の胸元が裂けて異空間のようなものが出来る。
 それに女の人は舌なめずりをして、中に入っていく。

「なッ……! みっちゃんに触るなッ!」

 前原さんはそう叫ぶと、掴みかかるように女の人に吠える。
 私は咄嗟に彼女の体を抱きしめ、押さえる。
 その間に女の人は山田さんの体の中に消えていき、その裂けた部分は閉じて行く。

「みっちゃん! みっちゃんッ!」
「ッ……! 前原さんは、すぐに先生を呼んできて! 私がここで見ておくから!」

 そう言いつつ鞄からラブメモリーウォッチを取り出そうとしていた時、その腕を掴まれた。

「嫌! 杏を一人にしていたら、何か起こりそうだから!」
「で、でも……」
「先生を呼びに行くなら、一緒に行くよ」

 真面目な顔で言う前原さんに、私はしばらく迷った後で、彼女の腕を握り返す。

「じゃあ……私に付いてきて」
「えっ……」
「あ、一応、あの時計……持ってきて」

 私がそう言いつつ地面に落ちるラブメモリーウォッチを指さすと、前原さんは不思議そうな顔でその指さした方向に視線を向ける。
 そして地面に落ちているラブメモリーウォッチを見て、「えっ……」と声を漏らす。

「なんで、これ……」
「急がないと……早く拾って」

 そう言いつつ手を差し出すと、前原さんは頷き、慌てた様子でラブメモリーウォッチを拾い、私の手を握る。
 私は一息つき、先ほど針を合わせておいたラブメモリーウォッチを掲げた。
 すると、山田さんの胸元が裂け、異空間が広がる。

「わ、何、これ……」
「前原さん……私の手、離さないでね!」

 私はそう言いつつ、彼女の手を引いて、山田さんの胸元の部分に足を踏み入れる。
 すると、体が強く引っ張られ、私達はそのまま吸い込まれていった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.11 )
日時: 2017/08/10 22:58
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」5

<瑞樹視点>

「うわぁぁッ!」

 穴から落ちた私は、その場に尻餅をつく。
 すると、綺麗に着地した杏が「大丈夫!?」とこちらに振り向き、手を差し出してくる。
 それに私は「大丈夫、大丈夫」と返事をしつつ、彼女の手を握り、立ち上がる。

「それで、ここは一体……」

 そう言いつつ辺りを見渡してみると、それはどこかの広い公園だった。
 周りで色々な人が遊んでいる中、一人の少女がフリスビーのようなものを構えているのが見えた。
 そしてその上に、何か、黒くて巨大な時計が……。

「あれは、みっちゃん……?」

 よく見ると、それはみっちゃんだ。
 今より少し幼いけど、結構みっちゃんの面影がある。
 そういえば、去年飼っていた犬が死んだって……。
 じゃあこれは、みっちゃんの記憶の中……?

「……来る……」

 杏の言葉に、私は顔を上げる。
 すると、黒い針がちょうど六時半を指し、そこから空間が裂けて、中から毛むくじゃらの巨大な化け物が現れる。
 よく見ると周りの景色は一瞬でモノクロに変わり、私達以外動いていない。

「な、何これ……!」
「ッ……! 前原さんは、私より前に出ないで!」
「え、でも……!」

 そこまで言った時、杏が腕を構えているのが見えた。
 腕時計の、針を回すネジを摘まみ、彼女は口を開く。

「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」

 その叫びと共に、彼女の体を光が包み込む。
 一瞬目を瞑り、次に目を開いた時、目の前にいたのは知らない女の子だった。

「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」

 ……は?
 呆然としていた時、キュアアデッソと名乗った女の子はこちらを見て、微笑んだ。

「前原さん……ビックリした?」
「は、え、ほえっ……?」
「……私が、山田さんも救って、前原さんのことも守るから」

 恐らく、目の前にいるのは杏だ。それは分かった。
 しかし、やっぱり思考が追いつかない。
 呆然と立ち尽くす私を置いて、彼女は化け物の方に向かって走り出す。

「はぁぁぁッ!」

 そう叫び、化け物を殴る。
 すごい……。自己紹介の時に緊張で固まっていた彼女とは段違いだ……。
 呆然としつつ、私は自分の手を見た。
 ……私は、なんでここにいるんだっけ……。
 私は確か、みっちゃんを助けたかっただけなのに……。
 でも、助けているのは杏一人で、私はこうして見ているだけ。

『瑞樹ちゃんの演奏も綺麗だけど、お兄さんと比べるとまだ……ねぇ……』
『おい。やめてあげなさい。アイツは天才なんだ。瑞樹だって充分プロになれる逸材だ』
『そうですけど……』

 ……まただ。
 自分がしたいことを、自分より上手くできる人間が現れる。
 そうやって私の存在意義はどんどんなくなっていくのが怖くて……だから私は……―――。
 と、そこまで考えていた時、杏が化け物に掴まれ持ち上げられるのが見えた。

「ッ……! 杏ッ!」
「だい、じょうぶ……! 私が、前原さんを、守るん、だ……!」

 彼女の言葉に、私は、彼女に言われて持ってきた腕時計を見つめた。
 いつの間にか私の近くに落ちていたこれは、杏とお揃いの腕時計。
 さっき、杏はこれを使って変身をしていた。
 だったら、もしかしたら、私も……!

「杏ッ!」
「はいッ!?」
「私も……これで、変身できるかなぁ!?」

 その言葉に、杏は驚いたように目を見開く。
 しかし、すぐに頷いた。

「できる!」
「どうするの!?」
「針を十二時で合わせて、プリキュア、メモリアルコンバージョンって叫ぶの!」
「分かった!」

 その言葉に、私はすぐにネジを回して、十二時に合わせる。
 あとは、叫ぶだけ……!

「プリキュア! メモリアルコンバージョン!」

 そう叫んだ瞬間、腕時計が光って、私の体を包み込む。
 学校の制服が一瞬で薄手のワンピースになり、周りを小さな時計が舞う。
 目の前に舞う小さな時計二つに、それぞれ片手ずつ突っ込んでいくと、針が回転して十二時になり、白い手袋へと変わる。
 足を突っ込んでみると、同じように針が回転して、ブーツに変わる。
 それから、頭上から大きな時計が落ちてきて、針の中心部分に私の頭が来る位置で少しずつ私の体を貫通していく。
 髪は鮮やかな水色になり、頭の上の方で一つ結びになる。
 長さ自体も長くなって、膝くらいまで伸びる。
 それから、服装も水色と青のフリフリした服になった。
 何が起こっているのか理解するより前に、私の脳裏に、一つのセリフが浮かんだ。

「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.12 )
日時: 2017/08/11 16:13
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」6

「キュア……パースト……?」

 変身を終えた私は、そう呟きつつ自分の手を見つめる。
 なんだろう……不思議と、力が溢れ出てくる。
 私は拳を握り締め、真っ直ぐ化け物を見た。
 今の私なら、戦えるッ!

「はぁぁぁぁぁぁッ!」

 私は叫び、一気に駆け出す。
 化け物の攻撃を躱し、蹴りを放った。
 すると、化け物が杏を掴む力が弱まり、彼女の体が宙に投げ出される。
 私はすぐに体を捻り、落下する杏の体をしっかり抱き止めた。

「ッ……前原さんッ……!」
「杏……!」

 私は一度地面に下ろし、杏の顔を見つめる。
 良かった……特に怪我も無さそうだし、無事で……。

「前原さん……やっぱりそれ、本物だったんだ……」
「なんかよく分かんないけど……一緒に戦おう!」

 私の言葉に、杏は笑顔で「うんっ!」と頷いた。
 そして、二人で化け物を見る。
 私は手探りで杏の手を探し、握る。
 こうしていないと、彼女がいなくなってしまいそうな気がして。

「行くよ、杏!」
「うんっ。前原さん!」

 そう言いつつ、二人で化け物に向かって突っ込む。
 すると、化け物は私達に腕を振り下ろしてくるので、慌ててそれを躱す。
 体が軽い。いつもの十倍以上、体が早く動く。
 ジャンプすると、少し跳んだだけで、数メートルくらい余裕で跳べてしまう。

「「はぁぁぁぁぁぁッ!」」

 私達は叫び、化け物に向かって同時に蹴りを放つ。
 すると、化け物の体は揺らぐ。

「今だよ! 前原さん!」
「うんっ! ……って、どうすれば良いの?」

 私が聞くと、杏が説明してくれる。
 ふむ……この腕時計のネジを引っ張れば良いのか。
 説明を受け、私は早速引っ張ってみる。
 すると、針が高速で回転し始めて、脳裏にフレーズが過る。

「過去を束ねろ! プリキュア! パーストドリーマー!」

 そう叫び、手を上空に掲げた瞬間、手に何か光の輪のようなものが纏う。
 その手を化け物に向けると、化け物の頭上から五線譜のような物で出来た輪が降って来て、化け物の動きを固める。
 やがて、その五線譜は化け物の体を締め付けて、化け物の体を消し去って行った。

「何……この力……」
「前原さんすごいよ!」

 驚いていた時、杏がそう言って抱きついてきた。
 ……まぁ、みっちゃんや杏を守れたから、いっか。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.13 )
日時: 2017/08/11 17:21
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第2話「過去を束ねろ!キュアパースト誕生!」7

「んぅぅぅ……ハッ!」

 目を覚ましたみっちゃんは、素早く体を起こす。
 ここは保健室。先ほどまでと違う場所にいるからか、彼女はキョトンとした表情で、ベッドの横に並んで座る私と杏の顔を見る。

「えっと……あれ、さっきまで……てか、女の人が……」
「え、何言ってんの。そんなのいなかったよね? 杏」
「う、うん……変な夢見てたんじゃないかな」

 杏の言葉に、みっちゃんは「なんだぁ。夢かぁ」と残念そうに呟く。
 本当のことを言っても、多分信じてもらえないだろうから。
 それなら、夢で済ませた方が早い。
 そう思っていた時、みっちゃんは頭の後ろで手を組んだ。

「まぁでも、あれは夢って言われた方が納得するかなぁ」
「え、どういう意味?」
「んー? いや、夢の中の瑞樹がかっこよかったからさー」
「へ?」

 つい聞き返すと、みっちゃんはクスクスと笑った。

「夢の中で変な女の人が現れた時にね、瑞樹ってば、すぐに私達の前に出て、私や今行さんを庇ったの」
「へぇ……」
「カッコよかったなぁ……正直、ちょっと見直した。でも、夢かぁ……」

 落胆したような様子で言うみっちゃんに苦笑していた時、脇腹を誰かに突かれた。
 見ると、そこには優しく笑う杏の姿があった。

「杏……」
「……やったね」

 そう言って歯を見せて笑う杏に、私も釣られて笑う。
 そんな私の笑顔に、杏は「前原さん。今一番、輝いてる」と呟いた。


 それから、みっちゃんと一緒に三人で帰り、途中で彼女と別れた私達はそのまま杏の家である時計屋『Adesso』に向かった。
 どうやら、プリキュア? が増えたことを報告しなければならない相手がいるそうだ。
 杏に案内されて、彼女の自室に入る。

「リコルン。帰ったよ」

 誰もいないハズの部屋で、杏はそう言う。
 一瞬誰に話しかけてるんだと思った時、ぬいぐるみの一つがピクッと動き、フワフワと浮かぶ。

「うーん……退屈だったリコ」
「ぬ、ぬいぐるみが喋ったぁ!?」

 そう叫びながら後ずさると、ぬいぐるみの方も「人間リコッ!?」と言う。
 しかし、杏が「大丈夫だよ!」と言って、私の腕を掴んで、腕時計を見せる。
 それを見て、ぬいぐるみはキョトンとする。

 それから、杏は、私がプリキュアになったことを含めた今日の出来事を話した。
 それを聞いて、ぬいぐるみはすぐに怒鳴り声をあげた。

「おまッ……プリキュアのことを人に話したリコッ!?」
「だ、だって……しょうがなかったんだもん!」

 杏がそう不満を口にすると、ぬいぐるみは私を見た。
 そして、「まぁその子もプリキュアになったなら良いリコ……」と漏らす。

「えぇっと……」
「早く説明しておけば良かったリコ……プリキュアをしていることは、誰にも内緒リコ」
「え、なんで?」

 私がついそう聞き返すと、ぬいぐるみはムッとした表情をした。

「プリキュアのことを知っている人間は、襲われやすくなるリコ。そうしたら、危険な目にも遭いやすくなって、すごく危ないリコ」
「へぇ……まぁ、そういうことなら、内緒にせざるを得ないのかな……」

 私はそう言いつつ杏に視線を向けた。
 杏もそれは理解したようで「そうだねぇ」と言う。
 私達二人の反応に、ぬいぐるみは「分かってくれて良かったリコ」と言う。

「それで、その……プリキュアっていうのは、一体何なの?」
「よくぞ聞いてくれたリコ! プリキュアっていうのは……―――」

 それから、ぬいぐるみ……もといリコルンとやらが、プリキュアについて説明する。
 まぁ、簡単に言うと、ロブメモワールとやらから人々の記憶を守る伝説の戦士、のようだ。

「なるほど……分かった。私も戦うよ。杏を一人で戦わせるわけにもいかないしね」
「前原さん……うんっ!」

 嬉しそうに言う杏に、私も笑う。
 それに、リコルンも「仲間が一人増えて心強いリコ!」と嬉しそうに言った。
 これから何が起こるかは分からないけど、きっと、杏と二人なら大丈夫。
 なぜかは分からないけど、そんな、謎の自信があった。


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