二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.124 )
日時: 2017/12/20 23:30
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第19話「瑞樹VS星華!?友情の三角関係!?」5

 楽器店を出てから、色々な場所を周った。
 どこかに行く度に瑞樹ちゃんと星華ちゃんの間に漂う雰囲気が少しずつ緩和されて、空が茜色に染まる頃には、二人の空気は大分緩んでいた。

「いやぁ、話してみると意外と印象が変わるもんだねぇ。不審者モデル」
「そちらこそ、意外と良い人なんですね。口の悪いピアニストさん?」

 ……緩んだだけで、この喧嘩腰は変わっていないけれど。
 しかし、口調のどこかに冗談っぽさが混じっていたりする辺り、多少はマシになって来たのかもしれない。
 何より、今朝に比べれば、私の感じる険悪さが無くなってきたように感じるし。
 ……私が慣れただけかもしれないけど。
 でも、それだけでもかなりの収穫かもしれない。
 そもそも、たった一日で仲良くなれるほど容易いものでもないし。
 世の中には順序というものがあるから。

 そんな風に考えていた時、目の前にシッパーレが現れた。

「……!? シッパーレ!?」
「ッ……」

 私がそう叫んだ瞬間、星華ちゃんが眉を潜め、数歩後ずさった。
 しかし、シッパーレが手を構えた瞬間、星華ちゃんを含めた周りの通行人からメモリアが抜かれ、世界が白黒に染まり停止する。
 シッパーレの頭上に時計の針が現れる。

「よくも星華ちゃん達を……!」

 私はそう言いつつラブメモリーウォッチを構えた。
 しかしそこで……私の体は強張る。
 なぜなら……シッパーレがその場で蹲り、呻き声をあげはじめたから。

「うぅぁあッ……ギュイイイイイイイイイイイイッ!」

 奇妙な叫び声をあげながら、シッパーレの体が肥大化していく。
 全身を青い鱗が覆い、巨大な魚介類と化していく。
 これは……デロベみたいに……!?
 そう動揺した瞬間、シッパーレが暴れ、辺りを破壊し始める。

「……とにかく変身するよ! 瑞樹ちゃん!」
「分かってる!」

 私達はラブメモリーウォッチを構え、叫んだ。

「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 名乗りを終え、私達はすぐに後ろに跳ぶ。
 すると、数瞬前まで私達がいた所に、シッパーレの尾が叩き付けられる。
 空気が振動し、ビリビリと空気が揺れるのを感じながら、私達は着地した。
 しかし、魚のような見た目だからか、シッパーレはこちらに追撃をすることが出来ずに、その場でのたうち回っている。

「パースト……」
「アデッソ……同じこと、思ってる?」

 パーストの言葉に私は頷き、シッパーレを見た。

「……シッパーレ、今一番哀れ……!」
「だよね! 魚でもせめて腕とか足とか生やしてあげれば良いのに!」

 その言葉に、私はうんうんと何度も頷く。
 だって可哀想だよこんなの!
 そう思っていた時、シッパーレは体を捻り、尾を大きく振るってくる。
 私達は咄嗟に上に跳んで躱す。

「なるほど……遠心力と尾のリーチ攻めてくるか……」
「つまり……遠慮はいらないってこと?」

 私がそう聞くと、パーストはニッと笑い、「そういうこと!」と言う。
 それから私達は手を握り合い、シッパーレを見る。
 少しでも攻撃範囲に入れば、尾によって叩き落される。
 では遠距離攻撃? ……違う。

「いっけぇぇぇッ!」

 パーストは叫び、私をシッパーレに向かって投げつける。
 攻撃範囲に入れば攻撃されるなら……攻撃されるより前に攻撃をすれば良い!
 私は一気にシッパーレに向かって突っ込み、蹴りを放つ。
 しかし鱗に防がれて、上手くダメージが入らない。

「だったらぁ……!」

 私はラブメモリーウォッチに桃色の針をはめ込み、回転させてアデッソソードを取り出す。
 一度振るわれた尾を躱し、両手でしっかりとアデッソソードを持って……突き刺した。

「ギュイイイイアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!?」

 奇声をあげながら身悶えるシッパーレ。
 鱗が割れ、剣が深く突き刺さる。
 シッパーレの叫びが、鼓膜が破れそうなほどに響き渡る。
 その時シッパーレは強引に体を捻り、私を振り落とす。
 アデッソソードを強く握ったままだったので、一緒に地面に落下する。

「アデッソ!」

 パーストが駆け寄って来る。
 私はすぐに立ち上がり、その場で悶え苦しんでいるシッパーレを見る。

「多分、かなりダメージは与えたハズ……今の内に、行くよ!」

 私の言葉に、パーストは頷く。
 それからパーストもパーストソードを取り出す。
 二つの剣の柄をぶつけ合い、針をそれぞれもう一方の剣の柄の窪みにはめ込んで回転させる。

「今を輝け!」
「過去を束ねろ!」
「「全てを司る思い出よ! 記憶を刻み、未来を照らせ!」」

 叫び、時計の針のように剣を回転させて重ねる。
 私達は背中合わせになって、空いている手をつなぎ合った。

「「プリキュアッ! メモーリアイルミネイトッ!」」

 叫びながら、シッパーレに向かって剣を倒す。
 その瞬間二本の剣は眩い光を放ち、シッパーレに向かって突き進む。
 やがてシッパーレを飲み込み、消し去っていく。
 私達はすぐに剣を交差するように構え、それぞれ互いの剣の針の回転を止めた。
 すると、シッパーレの体は光の屑となり、消えて行った。

「……倒した……」

 パーストはそう呟き、その場に膝をついた。
 その時世界が色を取り戻していくのが分かったので、私達は慌てて変身を解いた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.125 )
日時: 2017/12/21 21:24
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第19話「瑞樹VS星華!?友情の三角関係!?」6

<瑞樹視点>

 あれから無事に不審者モデルは目を覚ました。
 まさかこんな所でシッパーレに襲われるとは思わなかったけど、なんとか倒せて良かった。
 それから私達は帰ることになり、道路を歩いていた。

「……あっ、それじゃあ私はここで……」

 その時、不審者モデルがそう言った。
 彼女の言葉に、私は顔を上げる。
 その道の先にあるものを見て、私は目を細めた。

「……私も一緒行くよ」
「「えっ?」」

 私の言葉に、杏と不審者モデルが同時に反応する。
 まぁ、当然か。
 ひとまず杏さえ論破できれば、後はどうとでもなる。

「……今回一緒に遊んでみて、この不審者モデルへの気持ちも大分変わったからね。二人で話してみたくて」
「なんだそんなことか~。分かった。じゃあ、先帰るね」

 杏はそう言って微笑み、私達に手を振ってAdessoに向かって歩いて行く。
 二人きりになると、不審者モデルはサングラス越しに私を見てくる。

「……どういうつもりですか?」
「それはこっちのセリフ」

 私はそう言うと、不審者モデルからサングラスを奪われた。
 路上で目が露わになったからか、不審者モデルもとい生意気モデルは目元を押さえあたふたする。
 私はそれにサングラスを片手に持ちながら、生意気モデルを見る。

「か、返してください!」
「……そうやって、何かで偽っていないと、落ち着かないんだ?」

 私の言葉に、生意気モデルの顔が引きつった。
 それから目を細め、ジト目で私を見る。
 やれやれ……勘の良いことで。

「……リコルンから聞いたよ。全部」
「……そうですか……」
「でもね、杏は知らない。だからこそ聞きたいの」

 私はそう言うと生意気モデルの体を引き寄せ、耳元に口を寄せた。

「ねぇ……アンタはいつまで、真実を隠しているの?」
「ッ……それは……」
「いつまで……真実を隠した状態で、杏に近づくの?」
「……」

 押し黙る生意気モデルの頭にサングラスを乗せ、私は体を離す。

「……アンタは自分の心は開かないくせに、杏とは親しくなろうとする。……彼女を知ろうとする」
「……」
「だから、私はアンタのことが嫌い。自分の素性を隠したまま、相手の素性を探ろうとするアンタが」

 私はそれだけ言って、彼女に背中を向け、歩き出す。
 一方的に言って勝手に逃げるような図になってしまったが、知ったことではない。

「前原先輩に!」

 突然後ろから声が聴こえ、反射的に振り向く。
 そこには、泣きそうな目でこちらを見つめる生意気モデルの姿があった。
 彼女は続ける。

「前原先輩に……何が分かるって言うんですか!」
「……分からないよ。アンタの気持ちなんて」

 私の言葉に、生意気モデルはスッと身を引いた。
 それに、私は彼女に向き直り、続ける。

「だからこうやって、無責任なことが言えるの。アンタの苦しみも悲しみも、分からないから」
「……」
「ただ、これだけは言っておく。杏は、アンタに心を開いている。アンタを信じている。だから、これからも杏と仲良くしたいのなら……アンタも杏のことを、信じてあげて」
「……」
「杏を信じて、杏に……心を開いて。アンタの悩みを、あの子なら……解決してあげられると思うから」

 私はそれだけ言って、彼女に背中を向け、歩き出す。
 もう、彼女に呼び止められることは無かった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.126 )
日時: 2017/12/22 16:28
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第20話「星華の秘密?杏奈の仕事場見学!」1

<杏奈視点>

「それじゃあ今日の授業はここまで! 号令」
「起立。気を付け。ありがとうございました」

 学級委員長の言葉に、私達も同じように「ありがとうございました」と言う。
 今日も一日が終わった。
 荷物を纏めていると、瑞樹ちゃんが教室を出て行こうとするのが見えた。

「瑞樹ちゃん。帰るの?」

 私が聞くと、瑞樹ちゃんは立ち止まる。
 それから私を見て、微笑んだ。

「ん……今日はこれから兄貴と電子ピアノ見に行くんだ~」
「あぁ、前に出かけた時に言ってた?」
「そうそう。やっぱ兄貴も、家で二人同時に練習出来ないのは気にしてたみたい」

 なるほど……。
 相変わらず、二人は仲の良い兄妹だ。
 私はそれに頷き、「分かった」と答えた。

「紫音さんと楽器店で言い争いしないようにね?」
「分かってるって~。じゃ、お先」

 そう言って軽く手を振る瑞樹ちゃんに私も手を振り返し、鞄を持った。
 瑞樹ちゃんには、プロのピアニストになるという夢がある。
 私にも何か……そういう、目標とか出来ないかな。
 そんな風に階段を下りていた時、前に星華ちゃんが現れるのが見えた。

「星華ちゃん!」

 私が名前を呼ぶと、星華ちゃんは顔を上げ、「杏奈さんっ」と嬉しそうに笑った。
 階段を一段飛ばしで駆け下り、私は星華ちゃんに駆け寄る。

「星華ちゃん。今から仕事?」
「はいっ。杏奈さんは帰りですか?」
「うん。星華ちゃんと違って暇なので」
「フフッ……杏奈さんってば」

 そんな風に会話をしていると、玄関に差し掛かる。
 一年生と二年生の玄関は離れているので、そろそろお別れか。
 私がバイバイを言おうとした時、星華ちゃんが「あっ」と声をあげた。

「星華ちゃん?」
「あの、杏奈さんが良かったらなんですけど……」

 星華ちゃんの言葉に、私は首を傾げる。
 すると星華ちゃんは上目遣いで私を見て、はにかんだ。

「あの……私の仕事場に、見学に来ませんか?」

---

<セフト視点>

「……シッパーレもやられましたか……」

 俺の言葉に、ラオベンは答えない。
 きっと分かっているハズだ。
 次は自分だ……と。
 “奴等”が目を覚ますのも、もう間もなく。
 ラオベンも、そろそろ用済みの頃合いだ。

「……ラオベンさん」
「お前は……なんでそんな風に、残酷なことが出来るんだ?」

 ラオベンの言葉に、俺は首を傾げる。
 するとラオベンは、近くにある壁を殴った。
 鈍い音が、メモリアの容器がある部屋に響く。

「残酷?」
「分かってんだよ。あのメモリアの活用法は……プリキュアに勝っても負けても、消えるんだろ!?」

 ラオベンの言葉に、俺は「よく分かりましたね」と答えて見せた。
 するとラオベンは血走った目で俺の胸倉を掴み、顔を近づけた。

「テメェ……ふざけるなよ!?」
「そう怒らないでください。私は、あくまでボウキャーク様の為に行動しているだけです。私も貴方達も……結局はボウキャーク様の捨て駒でしかないのですから」

 そう言いながら、俺は胸倉を掴む手を離させる。
 するとラオベンは悔しそうに顔を背けた。

「だからって……!」
「それとも貴方は……ボウキャーク様に見切られたいですか?」

 俺がそう聞いてみると、ラオベンは目を見開いた。
 それに俺は笑い、自分の胸に手を当てて見せる。

「我等の全ては、ボウキャーク様のためにある。それを忘れないでください」
「ッ……」

 ようやく納得したラオベンに、俺は「分かれば良いのですよ」と笑う。
 それから目を伏せ、自分の頭を押さえる。
 確かに、先程ラオベンに言ったことに嘘偽りはない。
 でも……なぜ一瞬、紫音の顔が浮かんだ?

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.127 )
日時: 2017/12/22 18:32
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第20話「星華の秘密?杏奈の仕事場見学!」2

<杏奈視点>

「ハイ、星華ちゃん良いよ~」

 カメラマンのおじさんはそう言いながら星華ちゃんを撮る。
 それに、綺麗な服を着た星華ちゃんは笑って、ポーズをとる。
 しばらく撮っていると、カメラマンの人が少し首を傾げた。

「うーん……次はもう少し、その帽子が目立つようにしてくれないかな?」
「帽子が……ですか?」

 星華ちゃんの問いに、カメラマンは頷く。
 すると星華ちゃんは少し考えてから微笑み、「分かりました」と言った。
 そして束ねていた髪を下ろし、大人な雰囲気を漂わせる。

「これでどうですか?」
「おぉ! 良いねぇ!」

 星華ちゃんの変化にカメラマンは歓喜の声をあげ、シャッターを押していく。
 それをぼんやりと眺めていると、撮影がひと段落した様子でこちらに星華ちゃんが歩いてきた。

「星華ちゃん。お疲れ様」
「杏奈さん……ありがとうございます」

 そう言って疲れた様子で笑う星華ちゃん。
 髪を下ろしているので、年下のハズなのに、大人びた雰囲気を感じてしまう。
 どう声を掛ければ良いのか分からずたじろいでいると、星華ちゃんが悪戯っぽく笑った。

「どうしたんですか? 杏奈さん。なんかぎこちないですよ?」
「え? あぁ、えっと……なんかすごく印象が変わったからさ。いつもと雰囲気が違って……」
「あぁ……元々、この衣装って大人びた感じになりますから。髪も下ろしましたし」

 そう言ってクルリとその場で一回転する星華ちゃん。
 そして私を見て、微笑んだ。

「杏奈さん。今の私、綺麗ですか?」
「……うん。星華ちゃん、今一番綺麗」

 私の返答に、星華ちゃんの顔がカッと赤くなった。
 それから被っている帽子を押さえて顔を伏せた。

「あ……ありがとうございます」

 小さい声でそう言った。
 まぁ、喜んでくれた……のかな?
 不思議に思っていた時、撮影現場にスタッフさんらしき人が駆け込んで来た。

「大変です! ここから離れた場所で事故があったようで、この後の撮影をする予定だった芹田さんが来れないらしいです!」
「芹田って……芹田翼ちゃん?」

 私が星華ちゃんに聞いてみると、星華ちゃんは重々しく頷いた。
 芹田翼とは、最近人気のモデルの一人だ。
 年齢は私と同い年で、星華ちゃんに比べると人気は劣るものの、有名なモデルさんだ。

「……これから一緒に撮影の予定だったんですけど……」

 暗い声で呟く星華ちゃんに、私は動揺する。
 これから撮影なのに来れなくなるだなんて……相当まずくないか?
 素人の私でも分かることに、当然星華ちゃんも気付く。
 顎に手を当てて熟考し、やがて、ふと私の顔を見た。
 すると、突然目を丸くし、私を見つめる。
 ……嫌な予感がする。

「あの……杏奈さんって、身長いくつくらいですか?」
「え? えっと……157センチ、だけど……」

 私の返答に、星華ちゃんの目が輝く。
 ……逃げよう。
 そう思って鞄を取りに行こうとする私の腕を星華ちゃんは掴み、スタッフさん達の所に連れていかれた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.128 )
日時: 2017/12/22 20:53
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第20話「星華の秘密?杏奈の仕事場見学!」3

「星華ちゃん……やっぱり無理だって」

 強引に着替えさせられた服を押さえながら、私は言う。
 私の言葉に、星華ちゃんはジッと私を見つめてから、グッと親指を立てた。
 いや、グッじゃない!

「星華ちゃん!?」
「杏奈さん大丈夫です。よく似合ってますよ」
「いや、そういう問題じゃ……」

 私はそう言いながら、スタッフさん達を見た。
 彼等は私を見て、うんうんと頷いた。

「ちょうど翼ちゃんと身長が近い子がいて助かったよ~。スリーサイズも近かったし」
「だからってこんな……良いんですか? 私なんかで」
「まぁ顔は充分良いし、とりあえずポーズとかは星華ちゃんに色々教えてもらって」
「で、でも……!」

 反論しようとした時、肩を叩かれた。
 見ると、星華ちゃんがニコッと笑った。

「大丈夫ですよ。気楽に行きましょう。ちょっとした職業体験だと思って」
「そういうわけには……」
「じゃあそろそろ撮影を始めるから、二人は位置ついて」

 その言葉に、星華ちゃんは笑って私の腕を引いて撮影場所に連れていく。
 立って見ると、照明やカメラや人がこちらを見ていて、すごく緊張する。
 体が硬直してしまっていた時、ソッと手を握られた。
 見ると、星華ちゃんが私を見て笑っていた。

「杏奈さん。スマイルスマイル」
「す、スマイル……?」
「……失礼します」

 突然一礼する星華ちゃんに、私は首を傾げた。
 次の瞬間、星華ちゃんは私の脇腹に指を這わせ始めた。

「……!? あっはははは!? ちょ、星華ちゃ!? はははッ!?」
「ホラ、笑えてるじゃないですか」

 星華ちゃんの言葉に、私は無意識に自分の顔に手を当てた。
 そうだ……私今、笑えてる。
 そんな私を見て、星華ちゃんはクスクスと笑った。

「他にも表情解す方法はあるんですけどね。でも、これが一番手っ取り早いので」
「星華ちゃんそれは卑怯だよ~」
「フフッ。撮影中に緊張したら言って下さい。またやるので」

 そう言いながら指をワキワキとさせる星華ちゃんに、私は苦笑いをした。
 すぐに撮影が始まりそうだったので、私達は並ぶ。

「うーん……杏奈ちゃん、だっけ? ちょっと髪下ろしてもらえる?」
「え? はい」

 カメラマンの言葉に、私は二つに結んでいた髪を下ろす。
 するとカメラマンはうんうんと満足そうに頷き、ポーズの指示を出し始める。
 私達はそれに従いながら、ポーズを決めていく。

「良いよ~。最高!」

 カメラマンはそう言いながらシャッターを押していく。
 二人組でのポーズなんて分からないけど、星華ちゃんにリードされながらなんとかポーズをとる。
 その時、星華ちゃんが「フフッ」と少しだけ笑みを零した。

「星華ちゃん?」

 私が小声で尋ねると、星華ちゃんは「あぁ、いえ」と同じく小声で答える。

「ただ……今回は私がリードしているので、フォークダンスの時とは反対だなって」
「フォークダンス……あぁ、確かにそうだ」

 私の答えに、星華ちゃんは少しだけ微笑んだ。
 その時、私達の会話が聴こえていたカメラマンが「フォークダンス?」と聞いてくる。

「あぁ、あの……前に私の学校の体育祭でフォークダンスをやって……その時に、私が男子役で、星華ちゃんと一緒に練習したりしたんです」
「なるほど……ちょっとフォークダンスのポーズみたいなのもいってみようか」

 フォークダンスのポーズってなんだよ……と思ったけど、すぐに星華ちゃんにリードされてポーズを決める。
 それから、他にも様々な写真を撮られていった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。