二次創作小説(新・総合)

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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.94 )
日時: 2017/12/02 21:39
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第15話「母帰宅!? 奏でましょう感謝のメロディ!」3

<杏奈視点>

 瑞樹ちゃんがいなくなった扉をジッと見つめていると、「あーあ」という声がした。
 振り向くとそこでは、律子さんが退屈そうな顔で伸びをしていた。

「律子さん……」
「……杏ちゃん、だったよね? 瑞樹とは学校の友達?」

 突然そう聞かれ、私は少し動揺してしまった。
 しかし、別に隠す理由も無いので、頷く。
 すると、律子さんは「そうかそうか」と言って何度か頷いた。

「瑞樹は学校ではどんな感じ?」
「え、えっと……いつも元気で、優しくて明るくて、皆の人気者です!」
「へぇ~」

 感心したように言いながら、律子さんは笑みを浮かべる。
 どうしたのだろう、と不思議に思っていると、突然律子さんはクスッと笑った。

「え? え?」
「フフッ……あぁ、ごめんごめん。ただ……杏ちゃんは瑞樹のこと、大好きなんだなぁって思って」
「ぅえ!?」

 突然そんなことを言われ、私は驚嘆の声をあげた。
 そんな私の反応を見て、律子さんはクスクスと笑った。

「だって、瑞樹のことを話す時目キラキラしてたし、割と饒舌だったじゃん?」
「そ、そうですか……?」
「うん。だから……安心したよ。瑞樹が上手くやっているみたいで」

 そう言ってどこか遠い目で鍵盤を見つめる律子さん。
 戸惑っていると、彼女は私を見てはにかんだ。

「娘の友達にこんなこと言うべきじゃないかもしれないけどさ、ちょっと愚痴らせてよ」
「え、はい……」
「ありがと。……この家ってさ、私はこうしてピアノ一筋だし、夫もバイオリニストで、今じゃ家は紫音と瑞樹に任せっきりなんだよね」
「はぁ……」
「二人が小さい頃はまだ国内の仕事だけを受け持っていたんだけど、ホラ、やっぱりこういう親だし、子供にも楽器を触らせたくなるわけだよ」

 長話になると判断したのか、律子さんは少し席を空けて、隣に座るように促してきた。
 律子さんの隣なんておこがましいと思ったが、彼女のお願いを断るのも気が引けたので、仕方なくそこに座った。
 彼女は続ける。

「バイオリンは、流石に子供にやらせるのは少しキツイかなって……ホラ、弦とか押さえたりとか大変だし」
「そうなんですか?」
「うん。私も実際にはやったことないけどね~。弦を指でずっと押さえないといけないから、慣れないと指痛いみたい」

 そういう意見を聞くことが無いので、私はつい聞き入る。
 そんな私を見て律子さんは微笑みながら続けた。

「だからピアノをやらせたの。紫音も瑞樹も凄く上達するのが早くてね? それで、つい教えるのにも熱が入ったりしてさ……あと、瑞樹の上達が特にすごかったから、つい紫音とも比べちゃったんだよね」
「……」
「だから、瑞樹がピアノから離れたのは、私のせいかなって……思ってる。今はピアノは弾いてるみたいだけど……やっぱり、私の前では弾きにくいのかも」

 その言葉に、私は目を伏せる。
 律子さんはそれに「杏ちゃんが気に病む必要は全くないから」と言って笑った。

「……私のせいだから」

 そう言って、目を伏せる。
 それに私は顔を上げ、律子さんの手を握った。

「わ、私は律子さんは悪くないと思います!」
「で、でも……」
「律子さんのおかげで、瑞樹ちゃんはピアノを弾く楽しさを知ることが出来たと思うんです。……私にピアノを教える瑞樹ちゃん、すごく楽しそうなんです。それに、一人で弾く時も、すごく楽しそうに弾くんです」

 私の言葉に、律子さんは顔を綻ばせた。
 それに私も微笑んで、続けた。

「だから、瑞樹ちゃんが照れ隠ししているだけだと思うんです。……折角の母の日ですし、一度、話をしてあげてください」
「……そうだね。ありがとう。ははっ、初対面の女子中学生にこんなこと言われるなんて情けないな」

 そう言って頬を掻く律子さん。
 それに私は「そんなことないと思いますよ」と答えた。

「私なんか、ただの小娘ですし……大人でも未熟な部分はあるんじゃないですか?」
「そうかなぁ……」
「はい。私の意見だって、無責任に言ってることであって……それに、律子さんはすごい人だから……! だから……情けなく無いですよ」

 私の言葉に、律子さんは「ありがとう」と言って微笑んだ。
 そこで無意識に律子さんの手を握っていたことに気付き、私は慌てて手を離した。
 すると、そんな私を見て、律子さんはクスクスと笑った。

「杏ちゃんはホントに良い子だね。瑞樹にこんな素敵な友達が出来て……安心した」
「律子さん……よしっ」

 声を発しながら、私は立ち上がる。
 不思議そうに見上げてくる律子さんに私は微笑み返した。

「私、ちょっと瑞樹ちゃんの所に行って来ます」

 瑞樹ちゃんにも、話をしなければいけない。
 私の意図を悟ったのか、律子さんも温かい笑みを浮かべ「瑞樹のこと、よろしく」と言った。
 それに私は頷き、リビングを出た。

 すると、開けた先で立っていた瑞樹ちゃんとぶつかった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.95 )
日時: 2017/12/03 16:12
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第15話「母帰宅!? 奏でましょう感謝のメロディ!」4

「み、瑞樹ちゃん!?」

 私が目の前に立つ少女の名前を呼んだ瞬間、彼女の顔は「ゲッ」と言いたげな表情になる。
 つい大きな声で名前を呼んでしまったからか、律子さんが立ち上がり「そこに瑞樹いるの?」とか言ってくる。
 すると瑞樹ちゃんはすぐに私の腕を掴み、ズルズルと引っ張って廊下の奥に連れて行く。
 突然引っ張られたので、私は驚いて瑞樹ちゃんの顔を見た。

「瑞樹ちゃん? 急にどうしたの?」
「……どうしたの、じゃないわよ」

 眉を潜めながら言う瑞樹ちゃんの言葉に、私は首を傾げた。
 すると、彼女は呆れたようにため息をついた。
 しばらく考えた後で、私は口を開いた。

「……話、聴いてたの?」
「……」
「……どこから?」
「割と、最初の方から……」
「そっか……」

 私の返答に、瑞樹ちゃんは照れたように目を背けた。
 ここで私が何かを言うことは簡単だ。
 でも、それだけじゃダメ。
 律子さんには、瑞樹ちゃんに歩み寄りたいという意志がある。
 だったら後は……。

「瑞樹ちゃんと律子さんでさ、一緒に出掛けてみたら良いんじゃないかな?」

<瑞樹視点>

 町を歩きながら、私はチラッと隣を見た。

「へぇ~。割とこの町、色々変わったんだね~」

 感心したように声をあげながら歩くお母さん。
 彼女の言葉に、私は「そりゃ五年も経ったら変わるよ」と端的に答えた。

「それもそっか。あ、あの店は変わったの? あのアンティーク時計ショップの、あ、あ……」
「あぁ、Adesso?」
「そうそう。あそこの時計は良いものばかりだからさ~。家の時計は全部あそこで買ったやつなのよ?」
「え、そうなの!?」

 私が驚くと、お母さんは「そうよ~」と言って得意げに胸を張った。

「年代物だし、保存状態も良いからね」
「へぇ……」

 感心していると、突然お母さんは「あっ」と声を上げて近くにあった店に入った。
 咄嗟に追いかけて中に入ると……そこは、楽器のお店だった。
 入口で固まっている私を置いて、お母さんは飾ってある楽器を見つめていた。
 それを見て、店員のおばさんがクスクスと微笑ましそうに見ていた。

「フフッ、律子ちゃんは小さい頃からこうして楽器を見るのが好きだったわよね。特にピアノ」
「もうおばさんそういう話はやめてくださいよ。特に、今は娘の前なんですから」
「あらあら。娘の前で無邪気に楽器を見ているのはどこの誰かしら?」

 店員のおばさんの言葉に、お母さんはわざとらしく咳をした。
 それから、ふと、店の中に飾られているグランドピアノを見た。
 お母さんの視線に気づき、おばさんはフフッと笑った。

「律子ちゃんは昔からピアノ馬鹿だからねぇ。久々に弾いて行く?」
「……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 そう言うとお母さんは椅子に座り、軽く指を解す。
 真剣な目で鍵盤を見つめ、口元には小さく笑みを浮かべている。

「お母さん。何を弾くの?」
「ん~……私が一番好きな曲」

 そう言うと鍵盤に指を乗せ、一度目を瞑って深呼吸をする。
 私達以外に客はいないので、静寂が辺りを支配する。
 そして母さんは目を開き……演奏を始めた。

「えっ……」

 つい声を漏らす。
 だってそれは……私が一番好きな曲、『子犬のワルツ』だったから。
 軽やかな演奏が店内に響き、心がどこか軽くなる。
 その演奏を聴きながら、私の中に、幼い頃の記憶が浮かんだ。

---

「おかーさん! おかーさん!」

 私が名前を呼ぶと、紅茶を飲んでいたお母さんは私を見る。
 飲みかけの紅茶を置き、「どうしたの?」と言って微笑む。
 母の服の裾を掴み、私はリビングにあるピアノを指さした。

「ぴあの。ひいて?」
「おい瑞樹。母さんをあまり困らせるんじゃない」

 バイオリンの手入れをしていた父の苦笑混じりの言葉に、私は「だって~」と抗議する。
 すると、母さんは「良いわよ」と言って笑い、ピアノに向かって歩き出す。
 私はソファの上で膝立ちになり、ピアノの前に座る母さんを見つめる。
 そんな私を見て母さんは微笑んでから……ピアノを弾き始める。

---

 軽やかな音色。
 優しい演奏。
 細くて長い指が、鍵盤を強く叩いて、音を奏でていく。
 これ……昔から変わっていない。
 昔と同じ演奏だ……。

 あぁ……そっか……。
 私がピアノを好きになったのは……この演奏があったからだ。
 お母さんみたいに綺麗な演奏をしてみたくて。
 お母さんみたいに、綺麗な音を奏でたくて。
 するとお母さんは私を見て、微笑んだ。

「瑞樹も……弾いてみる?」
「……うん」

 私の言葉に、お母さんは無言で隣を譲った。
 それに私は隣に座り、鍵盤に指を重ねた。
 いざ弾き始めようとした時、楽器店の扉が開いた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.96 )
日時: 2017/12/03 20:32
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第15話「母帰宅!? 奏でましょう感謝のメロディ!」5

---時は遡り---

「デロベが……死んだ……?」

 表情を驚愕に染めながら聞くラオベンに、セフトは「えぇ」と答える。

「この中でも特にメモリアの集まりが悪かったですし、少し唆せばプリキュアに特攻してくれましたよ。……まぁ、結局プリキュアに倒されてボウキャーク様への糧となりましたが」
「そんな……」

 掠れた声で漏らしたシッパーレの言葉に、セフトは「おや?」と笑顔のまま首を傾げた。

「忘れましたか? 我等の目的を」
「ッ……それは……」
「メモリアを集め、ボウキャーク様を復活させる。貴方達は、あくまでその駒なのですよ?」

 セフトの言葉に、二人は答えない。
 その様子にセフトは「やれやれ」と呟き、メモリアの器に手を当てる。

「あくまで、貴方達はメモリアを集める道具でしかありません。それとも……ボウキャーク様に見切られたいですか?」

 セフトの言葉に、二人は顔を青ざめさせた。
 それを見て、セフトはクスクスと笑った。

「まぁ、せいぜいボウキャーク様に見切られないようにしましょう?」
「ッ……私が行ってくるわ」

 そう言うと、シッパーレはプリキュアがいる世界に向かった。
 その様子を、セフトは冷たい眼差しで見ていた。

---現在---

「シッパーレッ!」

 私は立ち上がり、咄嗟にお母さんとシッパーレの間に立つ。
 すると、シッパーレは驚いたような表情で「あら」と呟いた。

「濃厚なメモリアの気配を辿って来てみれば、プリキュアがいるとは……」
「ッ……お母さん、逃げてッ!」

 咄嗟に言うと、お母さんは「そんなこと出来るわけないでしょう!?」と悲痛な声をあげた。
 こんな時くらい言う事聞いてくれよ……馬鹿ッ!
 するとシッパーレは舌なめずりをして、手を構えた。
 咄嗟に目を瞑った時だった。

 お母さんが、私を突き飛ばしたのは。

「ッ……!?」

 床を転がり、右半身を打ち付ける。
 しかし、すぐに体を起こし、お母さんを見た。
 そこには……胸元に時計の針のようなものを浮かび上がらせているお母さんの姿があった。

「お母さんッ!」

 私はすぐにお母さんに駆け寄る。
 するとお母さんは仰向けに倒れ、胸元が裂ける。
 顔を上げると、シッパーレが中に入ろうとしているのが見えた。

「ダメッ!」

 咄嗟に私は叫び、シッパーレの体を抱きしめる。
 するとシッパーレは動きを止めて、私を見下ろした。
 だから私も彼女の顔を見上げて、叫んだ。

「絶対にお母さんに手出しさせないッ! アンタなんかにッ!」
「え、何この状況……」

 聴き慣れた声が聴こえ、私は視線を向けた。
 そこには、カーネーションを持った状態で固まっている杏の姿があった。

「……! 杏ッ!」
「え、シッパーレに……瑞樹ちゃん?」

 状況の理解に時間が掛かっている杏を見ていて力が抜けた隙に、シッパーレは私の腕を振りほどいた。
 そのままお母さんの胸元の異世界の中に入り、消えていく。

「瑞樹ちゃんッ!」
「おや……これはどういう状況だい?」

 慌てた様子で店のカウンターから出てくるおばさん。
 どうしよう……状況を全部話すわけにはいかないし……。

「……あの、おばさんは人を呼んできてください。ここは私達でなんとかするので!」
「え、でも……」
「良いから!」
「私からも、お願いします!」

 私だけでなく杏の言葉に、おばさんは少し戸惑った様子を見せつつも「分かったよ」と答えて店を出る。
 その後ろ姿を見送ってから、私達はラブメモリーウォッチの針を合わせ、お母さんの胸元に掲げる。
 すると胸元が裂けるので、その中に足を踏み入れた。
 穴を抜けて出た場所は、私にとって、物凄く見覚えのある場所だった。

「ここは……私の、家……!?」
「えっ!?」

 驚きの声をあげる杏。
 その時、とある一点で私の視線は固まった。

「おかーさん! あのね、この曲弾いてほしいの!」
「ん? どれどれ……」

 幼い私が差し出した楽譜を受け取って、今より若いお母さんはそれを開く。
 しばらく音符を目で追ったお母さんは一度頷いて、幼い私を見た。

「良いよ。隣来る?」
「うんっ」

 笑顔で頷いた幼い私は、お母さんの隣に座った。
 お母さんは一度私の頭を撫でると、鍵盤に指を乗せた。
 そして弾こうとしたところで……世界が止まる。

「来るッ!」

 杏の言葉に、私は顔を上げた。
 同時に、巨大な時計の針から空間が裂けて、中からピアノとバイオリンを合体させたような姿のワスレールが出てくる。
 私はそれに舌打ちをして、ラブメモリーウォッチを構えた。

「行くよ! 杏ッ!」
「うん! 瑞樹ちゃん!」
「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.97 )
日時: 2017/12/04 20:36
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第15話「母帰宅!? 奏でましょう感謝のメロディ!」6

「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 名乗りを終えた瞬間、ワスレールが襲い掛かってくる。
 私達は咄嗟にそれを躱すと、ワスレールの攻撃が床を抉る。
 するとそこから黒い光が漏れる。

「ッ……」

 ここはお母さんの記憶世界。
 ここは……私の家。
 だから、許せない。

「私達の思い出が詰まった家を……壊さないでッ!」

 叫び、私は蹴りを放つ。
 するとその蹴りはワスレールを吹き飛ばす。
 壁を破壊し、外に飛び出す。
 それを見て、アデッソはジト目を向けて来た。

「家を壊さないでと言いつつ、パーストが一番壊してるじゃん……」
「うッ……こ、これは正当防衛ッ!」

 私の言葉に、アデッソはため息をつく。
 その時、ワスレールが立ち上がろうとしているのが見えた。
 だから私はすぐに家から飛び出し、上空に飛び上がる。

「これ以上……立つなぁッ!」

 叫び、私は上空から全体重を込めてワスレールに足をめり込ませる。
 それにワスレールの体はビクンッと跳ね、地面に倒れ伏す。
 ふと顔を上げると、アデッソが若干引いた様子で口を開いた。

「お、オーバーキルだ……」
「なんで引いてんの!?」

 私は青ざめた表情でこちらを見ているアデッソに呆れつつ、ワスレールを睨んだ。
 未だよろよろと立ち上がろうとしているワスレールを睨みながら、空色の針を取り出す。
 そしてラブメモリーウォッチにはめて、パーストソードを出す。
 柄の部分にある窪みに針をはめ込み、指で弾いて高速で回転させる。

「過去を束ねる大いなる夢! パーストソード!」

 叫び、パーストソードを上空に掲げるようにして構える。
 それから自分を軸にするように剣を振るって円を描き、その円を四等分にして、その光を纏う。
 空色に淡く輝くパーストソードを一瞥してから、私は叫ぶ。

「過去を束ねろ! プリキュア! パーストレーヴ!」

 そう叫びながら、私は縦、横、右斜め、左斜め、と空を切り刻んでいく。
 すると、青い光の刃が出来て、ワスレールに向かって飛んでいく。
 その光が全てワスレールにぶつかると、光がワスレールを捕らえ、時計の文字盤のようなものが現れてワスレールの体を空中に固定した。
 私は胸の前でパーストソードを構えると、高速回転する針を指で止めた。
 すると、ワスレール諸共光が爆発し、浄化していった。

「ねぇ、今回私が変身する意味あったかな?」

 苦笑しながら聞いてくるアデッソに、私は「無いね」と答えた。
 するとアデッソは眉をハの字にして「そんなぁ~」と情けない声をあげた。
 その時、世界は動き出す。
 記憶世界が修復していき、粉砕した壁などが戻っていく。
 咄嗟に家の中に駆け戻ると、ちょうどお母さん達が動き出し、演奏を始めるところだった。

 奏でられる、子犬のワルツ。
 お母さんは優しい笑みで演奏し、隣に座っている幼い頃の私はゆっくり体を揺らして曲に聴き入っていた。
 するとお母さんは微笑んで、口を開いた。

「折角だから、瑞樹も弾いてみる?」
「えぇ? わたしにはむりだよぉ……」
「できるわよ。ホラ、この鍵盤を指で押してみて?」

 お母さんに指導されながら、幼い私は鍵盤を叩いて行く。
 拙く脆い演奏が、リビングに響く。
 しかし、ピアノを弾いているお母さんと私の顔は、すごく楽しそうだった。

「……まぁ、確かに、小さい頃の瑞樹ちゃんを見られたから、良いかな」
「何それ」

 私が笑っていると、アデッソも「何だろね」と言いつつ笑った。
 二人で笑い合っている時、リコルンが突然目の前に現れた。

「何してるリコ! 早く記憶世界を出るリコ!」
「あ、そっか!」

 リコルンに急かされ、私達は慌てて記憶世界を脱出した。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.98 )
日時: 2017/12/05 18:47
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第15話「母帰宅!? 奏でましょう感謝のメロディ!」7

「んんっ……?」

 ゆっくりと、お母さんは瞼を開く。
 焦点の合わない目で、ぼんやりと私がいる方を見ていた。
 やがて徐々に目に生気が戻り、ガバッと体を起こした。

「わ、ちょ、無理したら……」
「瑞樹! 怪我無い!?」

 私の肩を掴んでそう言うお母さん。
 それに私は驚きつつも、安心させるように微笑んで見せた。

「大丈夫だよ。この通り元気いっぱ……」

 無事なことを安心させようと、軽く腕を振ろうとした時だった。
 お母さんに強く抱きしめられたのは。

「……」
「良かった……瑞樹が無事で、本当に……」
「お母さん……」
「私も……お母さんが無事で……良かった……!」

 安心感からか、私の目からも涙が溢れる。
 お母さんの体を抱きしめ返し、私も泣いた。
 心のどこかで、杏に先に帰らせて良かったって思った。
 だって……親子揃って泣き崩れる醜態を、見せなくて済むから。


 それから、楽器屋のおばさんをなんとか誤魔化し、私達は家に帰った。
 家に帰ると安心感からか、一気に体から力が抜けた。
 ソファにへたり込むように座っていると、お母さんが紅茶を淹れてくれた。

「……ねぇ、次はいつ仕事に出るの?」

 淹れてもらった紅茶を啜りながら、私はそう聞いてみた。
 すると向かい側に座っていたお母さんは砂糖を入れながら「そうねぇ」と呟いた。

「予定では……明日の早朝にはもう家を出るわね」
「そっか……次はどこの国?」
「イタリアよ。美味しいイタリア料理食べに行ってくるわ」
「何それ。太るぞ~」
「大丈夫よ。その分動くから」

 冗談めかしながらそう言うお母さん。
 なんていうか、色々ありすぎてゴタゴタしていたが、ようやく家族団欒が出来ているといった感じだった。
 そこで、私はピアノを見た。

「……」

 何か言おうと、口を開いた。
 でも、照れ臭さから何も言えなくて、私は無言で立ち上がり、ピアノに向かって歩いて行く。

「瑞樹?」

 お母さんが、不思議そうに私の名前を呼ぶ。
 私はそれに答えずに、ピアノの前の椅子に座った。
 鍵盤に指を乗せ、一度深呼吸をした。

 そして……奏でる。
 音を。軽やかに……温かく。
 時には強く。時には優しく。鍵盤を叩いて、音を奏で上げる。

「……上手くなったわね、瑞樹」

 子犬のワルツを弾いている途中、隣に立ったお母さんがそう言った。
 それに私はどう答えればいいか分からず、無言でピアノを弾き続けた。
 するとそれを見て、お母さんがクスッと笑った。

「……良かった。また、ピアノ弾いてて」
「……」
「……私のせいで、ピアノ嫌いになったんじゃないかなって思って……不安だった」
「……」
「でも良かった。瑞樹が……またピアノ、好きになってくれて」

 お母さんがそう言うのと、子犬のワルツを弾き終わるのは同時だった。
 私は鍵盤から指を離すと、椅子の端に身を寄せた。
 そしてお母さんを見て、無言で隣に座るように促した。
 すると、お母さんは優しく微笑んで、私の隣に座った。

「急にどうしたの?」
「……確かに、私は昔、ピアノを嫌いになった……だから、ピアノから離れた……でもさ」

 そう言いつつ、私は隣に座るお母さんの顔を見上げた。
 そして、続ける。

「でも、お母さんのせいじゃないよ。それに、杏のおかげで、またこうして弾けるようになった。……あのね、今、杏にピアノ教えてるの。子犬のワルツだけど……杏も上達してきてさ。……こうやって杏にピアノ教えることが出来るのも、全部、お母さんのおかげなんだよ」

 私はそう言いつつ姿勢を正し、お母さんを見つめた。
 窓から差し込む夕日が、部屋を茜色に染める。
 一度深呼吸をしてから、私は口を開いた。

「……いつもありがとう。お母さん」
「……瑞樹……」

 驚いたように目を丸くしながら、お母さんは呟いた。
 すると、段々自分が言ったことが恥ずかしくなって、私は目を伏せた。
 少し考えて、私は少しお母さんに身を寄せた。

「……仕事に行っちゃうまでに、もう一回、お母さんの演奏……聴きたいな」
「瑞樹……分かった。子犬のワルツで良い?」
「うん。この曲……好きだから」

 私の言葉にお母さんは微笑み、子犬のワルツを弾き始める。
 やはりプロなだけあって、私なんかよりすごく上手い。
 甘美な演奏を聴きながら、私は瞼を閉じ、その演奏に聴き入った。


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