二次創作小説(新・総合)
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- 【オリキュア】メモリアルプリキュア!
- 日時: 2017/08/01 23:00
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.39 )
- 日時: 2017/08/29 18:41
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」2
「それじゃあ、どこ行きますか?」
嬉しそうに、跳ねるように歩きながら言う星華ちゃんに、私は頬を掻く。
どこに行くと聞かれても……この間瑞樹ちゃんに色々案内されたばかりで、別に行きたい場所はないんだよねぇ。
元々、この町の楽しい場所とか分からないし。
そう思って顔を上げた時、とあるものを見つけて、私は立ち止まった。
突然立ち止まった私を心配したのか、星華ちゃんも立ち止まる。
「どうしましたか?」
「えっと……私の行きたい場所に、なるんだけど……」
「今行先輩の行きたい場所……ですか?」
星華ちゃんの言葉に、私は頷く。
すると、彼女は明るい笑みを浮かべた。
「どこですか!?」
「えっと……あそこなんだけど……」
私がそう言いつつその場所を指さすと、星華ちゃんは弾かれたように振り向いた。
そこにあるのは……巨大な時計塔だった。
「ここです」
そんな言葉と共に、星華ちゃんは扉を開く。
吹き抜けのように、かなり高い天井。
そして、上に上るための螺旋階段。
星華ちゃんに促され、私は早速階段を上り始めた。
「……今更ですけど、なぜ、時計塔に?」
階段を上りながら、星華ちゃんはそう聞いてくる。
彼女の言葉に、私ははにかんだ。
「いやぁ……この町に引っ越してきたばかりの頃、瑞樹ちゃんに、時見町の名物だって言われて……」
「……今行先輩は、去年まで、別の町に?」
「うん。でもパパの仕事の関係で、引っ越してきてね。それで、瑞樹ちゃんに町を案内してもらった時に、ここにも行く予定だったんだけど、色々とハプニングがありまして……」
私の言葉に、星華ちゃんは小さく「へぇ……」と言った。
彼女の反応に少しドギマギしつつ、私は階段の手すりを指でなぞる。
「……でも、なんだかんだお互いに忘れちゃって。結局行く機会逃しちゃったんだけど……」
「今日私にどこに行こうか聞かれて、ここを選んだ……ということですか?」
「ご名答」
私の返答に、星華ちゃんは「やった」と言って拳をつくる。
それから拳を下ろした星華ちゃんは、少しだけ軽やかになった足取りで階段を上っていく。
「でも……そっか……じゃあ今行先輩が初めてこの時計塔に上った相手は私なんだ……」
「そうなるのかな……あ、もしかして、初めてここに上った人が運命の人とか、そういう言い伝えがあったりするの!?」
「あははッ、無いですよ。……ただ、今行先輩の初めての人になれて、ちょっと嬉しいだけです」
星華ちゃんの言葉に、私は肩から力が抜けた。
私の反応に星華ちゃんはクスクスと悪戯っぽく笑いながら、手すりを握り締める。
「……今行先輩って、なんていうか、普通の先輩として接してくれますよね」
しばらく上っていた時、星華ちゃんはそう口を開いた。
彼女の言葉に、私は首を傾げた。
「どういうこと?」
「……他の先輩もクラスの皆も、芸能人だからか、私のことを特別視しているというか……一線を引いて接している感じがあるんです」
星華ちゃんが放った言葉に、私は足を止める。
すると、星華ちゃんはこちらに振り向き、私の手を握った。
「でも、今行先輩は違う。……今行先輩は、私のことを、普通の後輩として見てくれてる感じがあるんです」
「そ、そうかなぁ……? 私だって、星華ちゃんのことは特別視してるよ? 星華ちゃんは、超人気モデルで、有名人で……私にとっては、憧れの存在だから」
「そう言ってもらえると嬉しいです。でも、今行先輩は、私を見る目が変な感じじゃないんです。珍しいとかそういうのじゃなくて、単純に……誰に対しても、すごく優しくて、キラキラした目で」
その言葉に、私は首を傾げる。
自分の目のことなんてよく分からないしなぁ……。
腕を組んで考え込んだ私に、星華ちゃんは「フフッ」と笑い、ラブメモリーウォッチを指でなぞった。
「……だから、私、嬉しいんです。今行先輩が……なってくれて……」
「なって……?」
私の言葉に、星華ちゃんは微笑み、私の腕を掴んだ。
そして、私の手を引いて、階段を駆け上る。
「わ、ちょッ……星華ちゃん!?」
「……私、今行先輩のこと好きなんです。優しくて、純粋な先輩が」
そんな言葉と共に、階段を上り切る。
目の前に広がる、巨大なガラス張りの時計。
頭上では歯車が回り、これが時計を動かしていることを知る。
呆然としていると、星華ちゃんはガラス張りの時計の前まで歩いて行き、立ち止まる。
そして、こちらに振り向いて、優しく微笑んだ。
「だから、嬉しいんですよ。……先輩が選ばれたことが」
「選ばれた……? 星華ちゃん、一体何の話を……」
「今行先輩」
私の言葉を遮るように、星華ちゃんは口を開く。
それについ押し黙ると、彼女は笑って、続けた。
「先輩……プリキュアってご存知ですか?」
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.40 )
- 日時: 2017/08/30 21:42
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」3
「先輩……プリキュアってご存知ですか?」
その言葉に、氷の塊を飲み込んだような、胃の奥から体全体が冷えるような感触を覚えた。
しかし、まだ誤魔化しが効く範囲だ。
だって、プリキュアを知っているか否かを聞かれているだけだから。
私は一度深呼吸をして、口を開いた。
「ぷ……ぷりきゅあ……? 何それ、聞いたことない……」
「……先輩、嘘が下手ですね。目逸らしちゃって」
そう言いながら星華ちゃんは私の顔を覗き込み、目を見つめてくる。
彼女の目は星のようにキラキラしていて、純粋で、とてもじゃないが今の私に見ることなんて出来ない。
耐え切れず目を逸らすと、星華ちゃんはクスクスと笑って、体を起こした。
「しょうがないですね。それじゃあ、もっと細かいところまで聞きますけど……」
そう言うと、ズイッと私に顔を近づけ、満面の笑みを浮かべた。
「先輩……プリキュアですよね?」
ビクッ、と。自分の体が震えるのを感じた。
彼女は……一体何なんだろう。
プリキュアの関係者なのか……ロブメモワールの刺客か。
後者ではない……と信じたい。
しかし、確実に違うとは言えない。
とにかく、ここは否定しておこう。
「ち、違うよ〜……プリキュアなんかじゃないって」
「嘘! その時計で変身するんですよね!?」
そう言いながらラブメモリーウォッチを指さす星華ちゃん。
どこまで知っているんだこの子は……。
私は咄嗟にラブメモリーウォッチを隠しながら、なんとか声に出す。
「ち、違うって! これは、その……あ、私の家、時計屋さんでね? 新しい学校に行くお祝いで、パパがくれたの。これ、元々は家の商品」
嘘をつくのは、全くの嘘だと見抜かれると聞く。
九割本当のことを言って、一割嘘を混ぜておけば人は騙せるらしい。
それに、これは今行家での認識だ。
確実に誤魔化せる。
「で、でも……!」
「……だったらさ、私の家の店……行ってみる?」
きっと、このまま話していても埒が明かないだろう。
腑に落ちない様子の星華ちゃんを説得して、私は我が家である『Adesso』に案内することにした。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.41 )
- 日時: 2017/08/30 23:11
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」4
「ここが、今行先輩の家……?」
「うん。結構この町では有名な店って聞いたけど……」
Adessoを前にして驚いた様子の声を漏らす星華ちゃんに、私はそう説明する。
それから扉を開き、「どうぞ。遠慮しないで」と促す。
すると、星華ちゃんは「お邪魔します……」と言いながら、中に入った。
「ふぁぁぁ……」
中に入った途端、店中に飾られた時計を見てため息を漏らす星華ちゃん。
それが微笑ましくて、私は笑ってしまった。
「フフッ。星華ちゃん、今一番好奇心旺盛だね」
「え、そうですか?」
自分の顔に手を当てながら言う星華ちゃんに、私は頷く。
すると、星華ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。
その時、店の奥から誰かが出てくる。
「おや、杏奈。お友達かい?」
「パパ!」
私がそう呼ぶと、星華ちゃんはパパに顔を向けた。
星華ちゃんの顔を見た瞬間、パパは驚いたように目を丸くした。
「君……もしかして、モデルの後宮星華さん?」
「はい……」
「おぉ……本物の有名人だ……あ、良かったらサイン貰って良いですか? 店に飾りたいので」
「ちょ、パパってば! 勝手にビジネスしようとしないで!」
「杏奈は星華さんのサイン欲しくないのか? いつも可愛い可愛いって言ってたじゃないか」
「そうだけどッ……って、本人が目の前にいるのにばらさないでよ!」
私がそう声を張り上げると、パパはクスクスと悪戯っぽく笑う。
よりによって星華ちゃんが目の前にいるのに……!
恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じていた時だった。
「ぷッ……あっはは!」
突然笑い出した星華ちゃんに、私とパパは同時に顔を上げた。
見ると、星華ちゃんは腹を抱えて大笑いしていた。
しばらく笑った後で、目尻に溜まった涙を拭いながら、彼女は顔を上げる。
「せ、星華ちゃん……?」
「あははッ……あぁ、いや……なんだか今行先輩とお父さんのやり取りが、少し、微笑ましくて」
そう言いながら目尻の涙を拭いきった星華ちゃんは、やがて、優しく笑った。
「今行先輩は……普通の人なんですね」
「普通の人?」
私が聞き返すと、星華ちゃんは優しく笑い、頷いた。
「はい……だから、私がその、普通の生活を壊したらダメだと思うんです」
「……?」
「だから、その……私は……!」
星華ちゃんがそこまで言った時、窓の外に、一瞬、青い、魚みたいな女の人がいるのが見えた。
あれは確か……ロブメモワールの!
「ごめん、星華ちゃん! ちょっと、急用思い出した!」
「え、ちょっと先輩!」
呼び止める星華ちゃんを無視して、私はAdessoを飛び出した。
青い女の人を追いかけて路地裏に入ると、すでに、そこには倒れ伏す男の人の姿があった。
「あれ、杏。何してんの? あの生意気モデルは?」
「瑞樹ちゃん!」
路地を覗き込む瑞樹ちゃんは、私の目の前で倒れる男の人を見てすぐに血相を変える。
私はそれにすぐにラブメモリーウォッチを構えた。
「行くよ、瑞樹ちゃん!」
「う、うん!」
瑞樹ちゃんもすぐに鞄からラブメモリーウォッチを外して手首に装着する。
それから男の人に掲げて胸元を裂かせ、異空間に飛び込んだ。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.42 )
- 日時: 2017/09/21 21:56
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」5
降り立った場所は、野球のグラウンドのような場所だった。
辺りを見渡して見ると、高校生くらいの男の人達が野球をしているのが見える。
もしや、これがあの男の人の思い出……?
そう思っていた時、世界が白黒に染まり、停止する。
「ッ……! もう!?」
私達はすぐに立ち止まり、上空に視線を向ける。
直後、巨大な針の部分から空間が裂けて、野球ボールのような見た目のワスレールが出てくる。
私はすぐにラブメモリーウォッチを構え、瑞樹ちゃんに向かって叫ぶ。
「瑞樹ちゃん! 行くよ!」
「う、うん!」
「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」
そう名乗った直後、野球ボールのような何かが地面に着弾する。
最初は的から逸れたのか、とぼんやりと考えていた。
しかし、すぐにパーストに襟を掴まれ、後ろに引っ張られる。
息が苦しくなる感覚に顔をしかめた時、地面に着弾した野球ボールが爆発した。
「なッ……」
「やっぱり爆弾か……止まったままの私達に攻撃して外すなんて、変だと思った」
パーストはそう言いながら私の襟を掴んで後ろに引っ張り距離を取る。
大分意識が遠退きそうになっていた時、ようやく襟から手を離された。
気道が確保され、私は膝をついて咳き込む。
「ケホッ、ケホッ! パースト、流石に荒っぽいよ」
「ごめんごめん。咄嗟だったからさ」
軽く笑いながら言うパーストに嘆息しつつ、私はすぐに立ち上がり、ワスレールを睨む。
すると、ワスレールは雄叫びをあげ、またもや野球ボールをぶつけてくる。
すぐに二人で横に跳んで躱すと、高速で目の前を野球ボールが通り過ぎ、壁にめり込む。
数瞬後、壁が爆発し、瓦礫が飛び散る。
「着弾して、時間を置いて爆発するタイプか……どうする?」
「どうする、って……あの球速は中々速いから当たったら痛そうだし、だからってこのままじゃ容易には近づけないし……」
パーストの言葉に、私は歯噛みする。
どうすればいい……どう、すれば……。
その時、地面に落ちている金属バットが目に入った。
「そうだ!」
私はすぐに金属バットを掴み、ワスレールに向かって構える。
そんな私を見て、パーストは顔色を変えた。
「ちょっ……アデッソ、正気!?」
「正気だよ。ボールを打ち返して、あのワスレールにぶつける」
「無茶だって! それより、時間を掛けてワスレールの体力を奪った方が……」
「私は少しでも早く終わらせて星華ちゃんに会いたいの!」
そう声を張り上げると、パーストは口を噤む。
私はそれに息をつき、改めてバットをワスレールに向ける。
挑発されたからか、ワスレールは怒り、すぐにボールを構える。
「来い!」
私はそう叫び、バットを構えた。
すると、ワスレールの口から野球ボールを模した爆弾が飛んでくる。
かなりの速度だが、私はそれに狙いを定め、バットをぶつける。
プリキュアの力での補正が掛かり、ボールは高速で打ち返され、ワスレールの口に入る。
数瞬後、ワスレールの口の中が爆発した。
「おぉ……ナイスショット」
「よし……一気に決めるよ! パースト!」
私の言葉に、パーストは慌てた様子で頷く。
そして、二人で手を繋いだ。
口の中での爆発に戸惑うワスレールの頭上に行き、二人で手を構える。
「「プリキュア! シャインドリーマー!」」
そう叫び繋いだ手を掲げた瞬間、五線譜の輪がワスレールを囲う。
そして、光が出て、ワスレールを浄化していった。
- Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.43 )
- 日時: 2017/09/22 22:11
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
第7話「正体がばれる!?杏奈と星華急接近!」6
男の人の記憶世界から出ると、すぐに瑞樹ちゃんと二人で彼の体を支えて、細い路地から出る。
放っておいてもすぐに目を覚ますハズ。
だから本当は放置でも良いのだけれど……まぁ、人間としてそれは流石にどうかと……。
というわけで瑞樹ちゃんと頑張って男の人を休ませられる場所に運んでいた時、Adessoから星華ちゃんが出てくるのが見えた。
まずい!
「今行先輩! 何してるんですか!?」
「ゲッ。生意気モデル」
そう言ってあからさまに顔をしかめる瑞樹ちゃん。
彼女の反応に、星華ちゃんもムッとした表情を浮かべる。
け、喧嘩はやめて……。
「な、何って……気絶している人がいたから、どこかで休ませようと……」
ひとまずそう言ってみると、星華ちゃんは目を見開いて私と男の人を交互に見る。
「そんなの、救急車でも呼んで放置で良いじゃないですか……なんで、わざわざ……」
「だ、だってそんなの可哀想だもん……少しでも私に出来ることがあるなら、やってあげたいかな?」
私の言葉に、星華ちゃんはポカンとした顔をした。
その時、「んぅ……」という重たい声と共に、男の人がゆっくりと目を覚ました。
「あ、起きましたか?」
「え? あ、うん……あれ、俺何してたんだっけ……」
「さっきそこの細い路地で倒れていて……大丈夫ですか?」
私がそう問いかけると、頭を押さえつつ、男の人は頷く。
それからすぐに私たちから離れ、頭を下げた。
「迷惑かけてごめんなさい。それから、心配してくれてありがとうございます。多分、もう大丈夫なので」
「……気を失っていたなら、念のため、病院行っておいた方が良いですよ」
星華ちゃんがそう呟くと、男の人は星華ちゃんの方を見る。
しばらく見つめてから、パァァァと目を輝かせた。
「わ、もしかしてモデルの後宮星華さんですか!?」
「え……」
「わぁ、本物だ! あ、俺、星華さんの大ファンで! あ、今日出た雑誌もちょうど買ったばかりで……」
そう言って男の人は持っていた鞄からレジ袋を取り出し、一冊の雑誌を取り出した。
それは、私も毎月買っている雑誌だった。
そういえば今日発売か……後で買いに行かなくちゃ。
「えっと……」
「あの、よ、良かったら、サインを……!」
「……良いですけど」
星華ちゃんはそう言うと、雑誌を受け取り、ポケットからペンを取り出してサラサラとサインを書く。
恐らくこういうことは初めてではないのだろう。
やがて、サインを書き終わると、その雑誌を男の人に渡した。
直筆のサインを本人から貰ったりしたものだから、男の人はかなり緊張した様子で頭を下げ、去って行った。
「すごいなぁ、サインをせがまれるなんて……やっぱり私とは住む世界が違うや」
つい、そう呟いた。
すると、星華ちゃんは私の方を見て、優しく笑った。
「えぇ……確かに、私と今行先輩は住む世界が違いますね」
「ほえ?」
「……今日、一緒にいてみて気付きました。今行先輩は、ごく普通の良い人なんだ……って」
「えっと……?」
「私は今行先輩の生活を壊したくありません。……だから、その時計に関する詮索も止めます」
その言葉に、私と瑞樹ちゃんは同時にラブメモリーウォッチを付けた手を背中に隠した。
星華ちゃんはそれに可笑しそうにクスクスと笑ったが、やがて、恥ずかしそうにモジモジしつつ、目を伏せる。
「そ、それで、ですけど……もし、今行先輩が嫌じゃなければ、その……わ、私と、友達になってください……」
頬を少しだけ赤く染めながら言われた言葉に、私はしばし固まる。
憧れていたモデルさんは、蓋を開けてみれば、ただの可愛い後輩ちゃんだった。
それがなんだか微笑ましくて、私はクスッと笑ってしまった。
「な……なんで笑うんですか!?」
「フフッ、ごめん。……私の方こそ、お願いしたいくらい」
「本当ですか!?」
嬉しそうに言う星華ちゃんの言葉に、私は頷く。
「うん。ずっと憧れていた星華ちゃんと友達になれるんだよ? 私、今一番幸せ」
私の言葉に、星華ちゃんは嬉しそうに笑う。
それから、手を差し出してきた。
「それじゃあ、改めて……よろしくお願いします。今行先輩」
「杏奈、で良いよ。星華ちゃん」
私はそう言いつつ、手を握り返す。
すると、星華ちゃんはしばらく視線を彷徨わせた後で「じゃあ……杏奈、さん」と言って、はにかんだ。
その時、瑞樹ちゃんが近くにいないことに気付く。
いつの間に……まぁ、生意気モデルとか言っていたしね。気に食わないのかも。
瑞樹ちゃんも星華ちゃんと仲良くしてほしいなぁ……。
<瑞樹視点>
杏に、何も言わずに離れて来てしまった。
今の心理状態で彼女と一緒にいることは辛かった。
別に、後宮星華のことは嫌いじゃない。
ただ、彼女を見る時の杏の顔が気に入らないだけ。
すごくキラキラしていて、私には向けたことないような……眩しい顔をするんだ。
……あの二人が、仲良くならなければ良いのに……なんて……。
「やだな……今の私、最低だ……」
そう呟きながら、私は近くの塀に凭れた。
杏があの子に憧れていることは分かっている。
だから、あの二人が仲良くなれば、結果的に杏だって幸せ。
それは分かっている……分かって、いるんだ……。
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