二次創作小説(新・総合)

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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.74 )
日時: 2017/10/23 18:13
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第12話「目指せ金賞!夢を奏でろピアノコンクール!」3

 それからひたすら弾きまくって、なんとか一通りつっかえずに弾けるようになった。
 楽譜もなんとか覚え、コンクールで一応は弾けるようになった。
 しかし、やはりその程度の技量ではコンクールに出る他の参加者に失礼になるかもしれないので、一通り弾けるようになった後はひたすら練習を重ねた。
 ある程度のレベルに達した頃、ついにピアノコンクールの日になった。

「それじゃあ、僕達は観客席で見ているからね」

 会場の前まで一緒に歩いてきてくれた兄貴は、そう言って微笑む。

「瑞樹ちゃんならきっと金賞取れるよ! 頑張って!」

 そう言って拳を作る杏に、私は「ありがとう」と返す。
 彼女に抱かれているリコルンも、目で応援してくれていた。

「頑張ってね。応援してるよ」

 風斗さんはそう言って微笑む。
 私はそれに頷いてから、参加者用の出入り口まで歩いて行く。
 それから、衣装に着替える更衣室に案内されたので、早速着替えを始める。
 水色のシンプルなドレスに着替えて、更衣室を出て歩いていた時だった。

「……瑞樹?」

 名前を呼ばれ、私は振り向いた。
 そして息を呑む。

 紺色の髪に、赤茶色の目。
 最後に会った時より大分背も伸びて、顔も端整になっている気がする。
 彼は私の顔を見て、僅かに目を丸くした。

「やっぱり瑞樹だ……あ、俺のこと覚えてる?」
「……越前 音哉(えちぜん おとや)」
「へぇ、覚えていてくれたんだ。嬉しいな」

 そう言って音哉……オトッペは、嬉しそうに笑った。
 オトッペだ……私のピアノ全盛期に、よく同年代でのライバルとして名前を連ねられていた少年。
 演奏が上手い上に顔も整っているので、女子からかなり人気がある。

「え、なんで、アンタがここに……」
「なんで、っていうか……俺は普段から、近所でやるコンクールには参加するようにしているんだよ」
「へぇ、そうなんだ」

 私がそう返すと、オトッペはなぜか照れ臭そうに目を逸らした。
 不思議に思っていると、「それより」とオトッペは口を開く。

「お前はなんでここにいるんだよ?」
「……ん? 何? 私がここにいたらダメな理由でもあんの?」
「はぁ!? そんなこと言ってねぇだろ!?」

 そう言ってオトッペは呆れたようにため息をつき、口を開く。

「お前、ピアノ辞めたんだろ?」
「……」
「何、ピアノ、再開すんの?」
「……さぁね」
「はぁ?」

 聞き返してくるオトッペに、私は少し視線を彷徨わせる。
 別に、ピアノを本格的に再開するわけではない。
 あくまで今回は自分の実力をしっかりと把握して、それに応じてこれからの進路を決めるだけだ。

「あくまで、今回は自分の実力試しというか……そんな感じ」
「……もし今回の結果が良かったら、どうすんの?」
「結果によっては、またピアノを本格的に始めるのも悪くないかなって」
「ふーん……」

 なぜか納得しない様子のオトッペ。
 しかし、それ以上は言及せずに、二人で歩いて会場に向かう。
 漂う沈黙に、私は耐えられずに、口を開いた。

「オトッペ」
「んあ?」
「絶対アンタなんかに負けないからね」

 少し強気な感じでそう言って見せると、オトッペは顔をしかめながら「そっくりそのまま返すよ」と言った。
 全盛期以来のやり取りがなんだか可笑しくて、私とオトッペは、同時に吹き出した。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.75 )
日時: 2017/10/21 21:27
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第12話「目指せ金賞!夢を奏でろピアノコンクール!」4

 いよいよコンクールが始まった。
 私の刻一刻と迫って来る出番に、私は胃がキュッと縮まるような思いをした。
 しかし、その時にオトッペがクッキーを一枚くれたので、それで少しだけ気を紛らすことが出来た。
 他の人の演奏中は、自分の出番にさえ間に合えば観客席から演奏を見ていても良いそうだ。
 赤の他人の演奏はあまり聴く気にはなれなかったが、どうせすることもなかったので、後ろでのんびり聴いていた。

「瑞樹ちゃん?」

 ちょうど人の演奏が終わった時、小さい声で名前を呼ばれた。
 見ると、そこにはリコルンを抱いた杏がいた。

「杏。どうしてここに?」
「さっきまでトイレ行っててさ。演奏と演奏の合間じゃないと入れてもらえないんだよ」
「へぇ……」
「瑞樹ちゃんこそ、なんでここに?」

 杏の質問に答えようと、口を開いた時だった。

『次は、エントリーナンバー8。越前音哉君です』

 その放送に、私はハッとステージに視線を向けた。
 すると、ちょうどそこには、観客に向かってお辞儀をしているオトッペの姿があった。
 彼はピアノの前の椅子に座ると、椅子の高さを少し調節して、早速弾き始めた。

 一曲目は仔犬のワルツだった。
 軽やかで明るい感じのメロディが、ホールの中に響く。
 ……あぁ、どうしよう。
 私は口元を手で押さえ、一歩後ずさった。

 この演奏……すごく良い……。
 語彙力の無い私には、残念ながらそれしか言えることが無かった。
 いや、本当に……すごく綺麗な演奏だ……。
 奏でられるメロディはとても綺麗で、とても美しくて……私は呼吸をすることも忘れ、その演奏に聴き入った。

 二曲目の革命も、すごく良かった。
 盛大な拍手が巻き起こるのを聞きながら、私は茫然とした。

 ……負けた。
 すでに、負けた。
 そう感じた。

 そりゃそうだ。
 数年間ピアノを嫌い、最近になってまた好きになったような私と、何年もピアノを愛し続けたオトッペが、同じ土俵で競えるわけがないのだ。
 そんなこと、分かっていたハズだ。

 でも……―――もしかしたら、なんて、希望を持ったんだ。
 もしかしたら、私も、良いレベルまで行けるんじゃないかって。
 でも、実際は違った。
 見せつけられた。格差というものを。

「瑞樹ちゃん……」

 その時、私の強張った手に、誰かが触れるのを感じた。
 小さな手は、そのまま私の手をなぞるように動き、細い指が私の指を絡め取り、キュッと握るのが分かった。
 顔を上げると、そこでは、杏が微笑んでいた。

「杏……」
「大丈夫だよ。瑞樹ちゃん、すごく頑張っていたじゃない」
「でも……」
「……瑞樹ちゃんは、ピアノを弾くのが好きなんだよね?」

 杏の問いに、私は一度たじろいだ。
 しかし、脳内には、すでに、その解答は定まっていた。
 迷う時間なんて、0だった。

「……うん」
「だったら、それで良いんじゃないかな? 好きなことを全力でやるのが、一番だよ」

 ね? と微笑む杏に、釣られて私も笑った。
 それから、杏の手に私の指を絡め、ギュッと握る。
 一瞬、杏は驚いたように目を丸くしたが、すぐに目を細め、握り返してくれた。

「ありがとう、杏。……落ち着いた」
「そっか。良かった」

 そう言ってはにかむ杏。
 杏のおかげか、先程圧倒されたオトッペの演奏は、もう怖くなかった。
 確かに、オトッペの演奏はすごく上手。
 でも、そんなこと当然だ。
 オトッペはオトッペ。私は、私。それで良いじゃないか。


 それから、杏と分かれてステージ裏に行くと、ちょうどオトッペと出くわした。
 私はすぐに腰に手を当て、キッとオトッペに視線を向けた。
 彼はそんな私を見て、少し笑った。

「何してんだよ。お前」
「……アンタの演奏、すごい良かった」

 正直に褒めると、彼は目を丸くした。
 私はすぐに彼の前まで歩み寄り、胸を強く人差し指で押した。
 少しよろめいて、彼は一歩後ずさると、私をポカンとした表情で見た。
 私はそれにフンッと息を吐いた。

「でも、だからって負けないから。今は無理でも、いつかは絶対アンタを越えて、世界一のピアニストになるんだから」

 そう言いながら、私は自分の頭上を指さした。
 オトッペはしばらく驚いたような表情で私を見ていたが、やがて、「プハッ」と笑った。

「瑞樹は相変わらず面白いなぁ」
「なっ……私は本気なんだからね!?」
「分かってる。だから面白いんだよ」

 その意味を吟味しようとしている間に、ツカツカとオトッペは私の方まで歩いてきた。
 私の横を通り過ぎ、その際に肩に手を置いて……。

「……待ってるぜ」

 そう言った。
 ……余裕ぶりやがって〜!
 私は振り向き、すぐに声を張り上げた。

「そうやって余裕でいられるのも今の内なんだからな〜!?」

 そう叫ぶと、オトッペは「ハイハイ」と言いながら軽く手を振った。


 それからステージ脇に行くと、ちょうど私の前の出番の子が子犬のワルツを弾き始めた頃だった。
 彼女の演奏も中々上手で、私はつい聴き入った。

 やっぱりレベル高いなぁ……でも、もう覚悟は決めた。
 私は私なりに、楽しく精一杯演奏してやるんだ!
 そう決意すると同時に演奏が終わり、巻き起こる拍手喝采に少女はペコペコと頭を下げていた。

『次は、エントリーナンバー12。前原瑞樹さんです』

 そのアナウンスと共に、私はステージに出て、観客にお辞儀をした。
 ピアノの前に座り、椅子の高さを調節する。
 一度指をパキパキと鳴らしてから、私は、鍵盤に指を乗せ、弾き始めた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.76 )
日時: 2017/10/22 22:55
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第12話「目指せ金賞!夢を奏でろピアノコンクール!」5

<音哉視点>

 瑞樹が奏でる音色を客席から聴きながら、俺は言葉を失った。
 相変わらず……綺麗な演奏だ。
 それこそ、俺と一緒に競い合っていた時期に比べれば、やはり劣る部分はある。
 しかし、それを差し引いても、彼女の演奏は素晴らしいものだった。
 観客は皆、彼女に演奏に魅入られていた。

「へぇ……中々のメモリアを持っているじゃない」

 そんな声が聴こえ、俺は慌てて振り向く。
 見ると、そこには、一人の女がいた。
 観客席が暗くて顔はよく見えないが、なんだか嫌な予感がする。
 つい数歩後ずさると、女は暗闇の中でも分かるくらいの笑みを浮かべた。

「それじゃあ、そのメモリア、渡してもらおうか」

 その言葉と同時に手を掲げられ、俺の意識は薄れていった。

−−−

<瑞樹視点>

 それは、あまりに唐突だった。
 演奏を終え、挨拶をした時、観客席の後ろの方に一瞬、光り輝く時計の針が見えたのだ。
 あれは、ロブメモワールが出て来た時の……。
 動揺をひた隠し、私はお辞儀をして舞台を後にすると、すぐにドレスのまま駆けた。

 観客席の方に、後ろのドアから入ると、そこには倒れ伏すオトッペの姿があった。
 よりによって、今日の被害者はオトッペか……!
 私はその場に膝をつき、オトッペを抱き起こした。

 安らかな顔で眠るオトッペ。
 観客席が暗く、皆ステージでの演奏に見入っているため、気付かないのだろう。
 私はひとまずオトッペを寝かせ、ラブメモリーウォッチを懐から取り出し、手首に巻く。
 華やかなドレスにカラフルな腕輪……似合わない。

「瑞樹ちゃん?」

 早速オトッペの記憶世界に飛ぼうとしていた時、杏が観客席に上って来る。
 まぁ、コンクールのドレスのままだし、目立っていたのかもしれない。
 杏は倒れているオトッペを見て、目を丸くした。

「杏。行くよ」
「……うん」

 状況を理解した杏は、すぐにラブメモリーウォッチを付けた手を掲げる。
 オトッペの胸元に穴が出来ると、すぐに私達は中に入った。
 異空間を通って抜け出た場所は……昔、私が通っていたピアノ教室だった。

「ここは……」

 そう呟いた時、二台並ぶピアノに、それぞれ同い年くらいの男の子と女の子が座るのが見えた。
 よく見るとそれは……幼い頃のオトッペと私だった。
 二人は顔を見合わせると、ニコッと微笑み合った。
 やがて鍵盤に指を乗せ、弾こうとしたところで……世界が止まる。
 モノクロになった世界。止まる針。現れるワスレール。
 私達はすぐにラブメモリーウォッチを構え、叫んだ。

「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 名乗りを終え、すぐにワスレールに攻撃を入れようと動き出す。
 しかし、ワスレールは暴れ、私達の体を吹き飛ばした。

「カハッ!」

 壁を突き破り、私はピアノ教室の外にある植え込みに体を埋めた。
 すぐにアデッソが私とワスレールの間に入り、アデッソソードを出そうとする。
 しかし、それより前にワスレールに飛ばされ、私と同じように壁をぶち破って植え込みに体をぶち込む。
 小さい葉っぱだらけになりながら、アデッソは飛び出す。

「あのワスレール……強い!」

 そう言ってピンクの針をラブメモリーウォッチに嵌めようとするアデッソ。
 しかし、それより先にワスレールが歩いて来る。
 アデッソがアデッソソードを出すことが出来れば戦況は変わるかもしれない。
 しかし、このワスレールの異常な強さの前に、成す術が無い。

「何、この強さ……!」
「……ワスレールは、詰まっているメモリアが濃いほど、強くなるリコ……」

 リコルンの言葉に、私は目を見開く。
 メモリアは、その記憶への依存度が高いほど、多くなるハズだ。
 つまり……あぁ、なんだ、そんなことか……。

「ハハッ……オトッペ、可愛いところあるじゃん……」

 そう呟きながら、私は震える膝を奮い立たせて、立ち上がる。
 なるほど、そういうことね……オトッペにとって、私とピアノを弾いていた時代は、すごく楽しかったか。

 ……私もだよ。
 私も、オトッペと一緒にピアノを弾くのは楽しかった。
 共に笑い、共に競い合い、共に切磋琢磨し合ったあの時期は、すごく楽しかった。
 なんで、忘れていたのかな……。

 今思えば、ピアニストになりたいっていう夢があったのに。
 オトッペと競い合うのも、すごく楽しかったのに。
 それなのに、大人達からの重圧如きに押し負けて……私ってば、すごい弱虫だ。

「思い出させてくれてありがとう……オトッペ」

 そう呟きながら、私は顔を上げた。
 目の前にいるワスレール。
 ありがとう。お前のおかげで、思い出せたよ。
 私は、やっぱり、ピアニストになりたい。
 オトッペとまた……競い合いたい!

「私は夢を……叶えたいッ!」

 そう叫んだ瞬間、胸元が強く光り輝いた。
 数瞬後、空色の針が出てくる。
 同時に、ラブメモリーウォッチの時計の文字盤を覆うガラス板が縁ごと開き、針がある部分が剥き出しになる。
 私はすぐに空色の針を掴み、時計の短針に重ねるようにはめ込んだ。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.77 )
日時: 2017/10/23 16:39
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第12話「目指せ金賞!夢を奏でろピアノコンクール!」6

 空色の針をはめた瞬間、ラブメモリーウォッチの光が強くなる。
 ワスレールがたじろぐのを見ながら、私はラブメモリーウォッチのネジ部分を引っ張った。
 次の瞬間、針が高速回転し始める。
 回転する針から強い光が漏れ、パァンッと音を立てながら、何かが弾けた。
 手に取ってみると、それは、空色の件だった。

「ショートソード……?」

 そう呟きながら、私は短い剣を見つめる。
 空色の両刃に、柄は濃い水色。
 刃は七色の宝石で彩られ、その根元の辺りには丸い窪みがあり、真ん中に細い突起がある……と、ここら辺はアデッソソードと同じか。
 そう観察していると、ワスレールが突っ込んでくるのが見えた。

「パーストッ!」
「分かってる!」

 そう叫びながら、私はワスレールの攻撃を躱しながら懐に潜り込み、ショートソードで切り付ける。
 片手で容易く扱えるため、私は舞うように動きながらワスレールの腕の中でショートソードを振るう。
 短い刃がワスレールを切りつける度に、メモリアが溢れ、光の屑となって消えていく。
 しばらくワスレールと戯れた後で、私は奴から離れ、バックステップで距離を取る。

「凄いよパースト!」
「そりゃどうも。……それより、あの、すごい必殺技みたいなの使う時ってどうするんだっけ?」
「あ、えっと……」

 アデッソから説明を受け、私は早速ラブメモリーウォッチから空色の針を外す。
 そして柄の根元にある窪みの中にはめ込むと、針が光り輝き、窪みに合う程度の大きさになる。
 すぐに針に指を掛け弾くと、それは高速で回転し始め、同時に私の脳内に言葉が過る。

「過去を束ねる大いなる夢! パーストソード!」

 そう叫んでから、私はパーストソードとやらを上に構え、円を描くように剣を振るった。
 一つの丸が出来るのを確認してから、私は、その丸を縦に両断する。
 すると、半月型になった丸が水色に染まる。
 さらに横に両断すると、四等分された空色の欠片が出来上がる。
 その中央にパーストソードを持って行き指先で回すと、その欠片が溶けてパーストソードに纏い、空色の光と化す。

「過去を束ねろ! プリキュア! パーストレーヴ!」

 そう叫びながら、私は縦、横、右斜め、左斜め、と空を切り刻んでいく。
 すると、青い光の刃が出来て、ワスレールに向かって飛んでいく。
 その光が全てワスレールにぶつかると、光がワスレールを捕らえ、時計の文字盤のようなものが現れてワスレールの体を空中に固定した。
 私は胸の前でパーストソードを構えると、高速回転する針を指で止めた。
 すると、ワスレール諸共光が爆発し、浄化していった。


 記憶世界から出て、私はオトッペを抱き起こす。
 しばらく眠っていたオトッペだが、やがて「ハッ!?」という声と共に目を覚ます。
 そして私を見ると、「わわッ」と驚きながら後ずさる。
 そんな彼の様子に、私はクスクスと笑った。

「あははッ。ウブだなぁ」
「え、あれ、俺は……」
「うん? どうかした?」
「いや、今、変な女が……」

 女……今回の敵はシッパーレだったか……。
 彼の言葉に、私は「何それ~」と言いながら笑って見せる。

「本当だよ! なんか、メモリアがどうとか言ってて……!」
「メモリア? ゲームの話?」
「ちがッ……あぁもう!」

 説明するのが億劫だったのか、オトッペは不貞腐れた態度でプイッと顔を背けた。
 その様子が小さい子供みたいに思えて、なんだかすごく微笑ましかった。

「フフッ。オトッペかーわいっ」

 そう言いながら頬を突くと、オトッペがその顔に憤怒の感情を露わにしながら私を睨んだ。

「てめっ……ふざけてんじゃねぇぞ!」
「きゃー! オトッペこわーい!」
「うるせぇ!」

 そんな風にじゃれ合いながらも、気付いたら私もオトッペも笑っていた。
 久々に会ったのに、そんな感じしなくて……気付けば、私達は同時に吹き出し、そのまましばらく笑っていた。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.78 )
日時: 2017/10/23 18:05
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第12話「目指せ金賞!夢を奏でろピアノコンクール!」7

 それから全員の演奏が終わり、いよいよ結果発表の時間になる。
 ステージに全員が並べられ、銅賞、銀賞、金賞の順番で発表される。
 当然、初心者同然の私は呼ばれず、銅賞と銀賞は知らない子が呼ばれていた。
 そして金賞は、予想通り、オトッペだった。
 賞状と金の楯を受け取ったオトッペは、清々しい笑顔を浮かべていた。

『それでは最後に、審査員特別賞を発表します』

 そんなアナウンスの言葉に、私は顔を上げる。
 これも知らない子だろうけど、しっかり名前を聞いてあげよう。
 そう思っていたのに、気付いた時には、スポットライトが私を照らしていた。

「へ……?」
『エントリーナンバー12。前原瑞樹さん』

 その言葉と共に、膨大な拍手が巻き起こる。
 予想外の出来事に、私はしばらくの間放心する。
 それから流されるまま賞状と花束を受け取り、ピアノコンクールを終えた。

 着替えを終え、花束と賞状とその他荷物を持って出ると、ロビーでは兄貴と風斗さん。杏が待っていた。
 杏は私の顔を見ると笑顔を浮かべ、駆け寄って来る。

「瑞樹ちゃんの演奏すごく良かったよ! それに、特別賞おめでとう!」
「ありがとう。それもこれも、杏や兄貴が応援してくれたおかげだよ」
「俺のおかげじゃないの?」

 困ったような笑みを浮かべながら言う風斗さんに、私は少し笑いながら、「風斗さんも、ありがとうございます」とお礼を言っておく。
 すると、兄貴が私の手から鞄を取った。

「疲れただろ。帰りは持つよ」
「兄貴ありがと~……あ、じゃあ、この賞状もよろしく!」
「あ、うん……花束は?」
「それは……」

 説明しようとした時、私服に着替えたオトッペが出てくるのが見えた。
 私はそれに適当に答えをはぐらかし、オトッペの元に駆け寄った。
 彼は私の顔を見ると、驚いたように目を丸くしながら「おっ」と言った。

「よ、瑞樹。特別賞おめでとう」
「ありがとう。オトッペこそ、金賞おめでとう」
「ヘヘッ、まぁな」

 得意げに笑いながら金の楯を掲げるオトッペに、私はクスクスと笑う。
 それから、私は花束をオトッペに差し出した。
 すると、彼は「えっ?」と言いながら私の顔を見た。

「これ、あげる。金賞祝い」
「え、でも、これはお前が……」
「良いから」

 強引に突き付けてみせると、オトッペは困ったように笑い、荷物を床に置いて、両手で花束を受け取った。

「えっと……ありがとう。でも、良いのか?」
「良いよ良いよ。だって、それは私の挑戦状だから」
「挑戦状?」

 オトッペが不思議そうに聞いてくるので、私は頷き、花束を指さした。

「今回は私が負けた。でも、次は負けない。次のコンクールで私がアンタより良い賞を取ったら、これよりももっと派手な花束を渡してもらうからね?」

 そう言ってみせると、オトッペがポカンとした顔をした。
 しばらくして、「プハッ」と吹き出した。

「ハハッ、あぁ。次負けたらでっかい花束用意してやるよ」
「おぉ!」
「ただし、次もお前が負けたら、お前がでけぇ花束用意するんだぞ?」
「ゲッ……」

 つい顔をしかめると、オトッペはニヤリと笑った。
 しかし、すぐに私は不敵に笑って見せ、「良いよ」と言ってやった。

「次負けたら、私が花束買って来てあげる」
「へぇ……?」
「だって、私負けないもん」

 私の言葉に、オトッペは「言うじゃん」と言って、笑う。
 彼の言葉に私も笑い、拳を突き出した。
 オトッペはそれに少し驚いたが、フッと笑うと、自分の拳を当てて来た。
 コツン、と良い音がした。


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