二次創作小説(新・総合)

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【オリキュア】メモリアルプリキュア!
日時: 2017/08/01 23:00
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

初めましてかこんにちは!愛です!
本日からはメモリアルプリキュアというオリキュア小説を書きたいと思っています。
基本テンションとノリに任せて書くのでグダグダすると思いますが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.29 )
日時: 2017/08/21 20:45
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第5話「リコルンの帰国!?レッツゴー!メモリー王国!」3

 穴から飛び出し、私と瑞樹ちゃんはなんとか着地をする。
 そして、辺りを見渡し、息を呑む。

「何、これ……」

 そこには……道に倒れ伏す数人の人々がいた。
 皆の目は固く閉ざされ、目を覚ます気配はない。
 周りの町は何の変哲もなく、顔を上げれば、晴天の空が広がっている。
 しかし、周りにいる人たちは、全員倒れたままで……。

「っ……」
「……これが、全ての生命体からメモリアが抜かれた世界の末路リコ」

 その言葉に、私達は息を呑む。
 私達の様子にリコルンは微かに笑い、フワフワと、一人の人間に近づく。

「……この人間の記憶世界に入ってみれば良いリコ」

 その言葉に、私と瑞樹ちゃんは顔を見合わせる。
 しかし、やってみないことには分からない。
 私達はすぐにラブメモリーウォッチを掲げ、胸元にできた穴から中に入る。
 やがて、穴から出て着地し、顔を上げた先には……凄まじい惨状が広がっていた。

「何……これ……」

 瑞樹ちゃんの言葉に、私は静かに生唾を呑み込む。
 なんていうんだろう……これは……。
 ほとんど更地になった場所。
 建物だったであろうそれは、瓦礫と化し、地面に散らばっている。
 そして……その中で素早い動きで暴れる、ワスレール。

「うわぁ……」

 広い記憶世界の中を縦横無尽に動き回り、滅茶苦茶に破壊していく。
 その破壊活動は止まることなく、むしろ、どんどん勢いを増していく。

「……あれを倒せると思うリコ?」

 背後から聴こえたリコルンの声に、私達は同時に振り向く。
 見るとそこには、腕を組んで、暴れ回るワスレールをジッと見つめるリコルンの姿があった。

「リコルン……」
「……あのワスレールを、倒せると思うリコ?」

 その言葉に、私達は同時に目を伏せる。
 倒せない……あんなの、倒せるわけがないよ……。

「倒せないなら、ここにいる理由は無いリコ。……行くリコ」

 リコルンの言葉に私達は頷き、ラブメモリーウォッチを使って外に出る。
 それから、同じようにしてその世界を飛び出して、メモリー王国に戻る。

「杏奈達の世界がああならないように、二人には、頑張って戦ってほしいリコ。……リコルンは、他の世界にも、プリキュアみたいな反抗措置を行わないとダメリコ」
「……でも、リコルンが頑張らなくても、他のメモリー王国の住人さんが頑張るんじゃないの?」

 瑞樹ちゃんの言葉に、私は「確かに」と声にした。
 すると、リコルンはしばらく考え込む素振りを見せた後で、私達に背を向ける。

「付いてくるリコ」

 その言葉に、私達は顔を見合わせた。
 しかし、リコルンにはまだまだ聞きたいこともある。
 仕方なく、私達はリコルンに付いて、歩き出した。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.30 )
日時: 2017/08/22 18:04
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第5話「リコルンの帰国!?レッツゴー!メモリー王国!」4

 それからリコルンに連れられて行ったのは、白い、教会のような建物だった。
 リコルンは扉の前で一度私達の方を見て、それから前を見て、ゆっくり扉を開く。
 ギィ……という重い音とともに、扉が開く。
 やがて、目の前に広がる光景に、私達は目を見開いた。

「どういうこと……?」

 そこには、たくさんの妖精が眠っていた。
 先ほど見た異世界の人々のように瞼は固く閉ざされ、目覚める気配が無い。

「もしかして、皆……メモリアを……?」
「なっ……」
「……メモリー王国は、全ての世界の記憶中枢を……そして、メモリアを司る世界リコ」

 その言葉に、私達は口を閉ざす。
 それを横目で見ながら、リコルンは続ける。

「人間が死んだとき、その人が今まで生きた時間で溜まったメモリアは解き放たれて、この教会で循環されて、別の生命への力となるリコ。リコルン達は、そんな命とメモリアの循環を見守りながら、平和に暮らしていたリコ」
「「……」」
「……でも、ロブメモワールの奴らが現れて、すぐに皆のメモリアを奪っていったリコ。なんとかリコルンと長老様だけが残ったけど、長老様は……」

 そこまで言うと、リコルンは俯く。
 その様子に、私達は首を傾げる。
 すると、リコルンは小さく頷き、私の手を引いた。

「わ、リコルン!?」
「すぐに来るリコ。長老様に会わせるリコ」

 その言葉に、私達はすぐにリコルンに手を引かれ、長老様がいるという部屋に案内される。
 いくつか扉をくぐって、さらに教会の奥へと……。
 リコルンがその扉を開くと、そこには、青い石を台座のようなものに置き、両手を上でかざす妖精の姿があった。

「長老様。……プリキュアになった女の子達を連れて来たリコ」

 その言葉に、妖精はこちらに振り向く。
 長い、白いひげを生やしていて、暗い目で私達を見ている。
 私と瑞樹ちゃんの顔を交互に見て、「おぉ……」と声を漏らした。

「君達が、今のプリキュアかい?」
「は、はい……」
「……あっ、私は前原瑞樹。時見中学校二年生、です」

 瑞樹ちゃんの自己紹介に、慌てて私も「あ、同じく、今行杏奈です!」と答える。

「ふむ……瑞樹に、杏奈か……良い名前じゃ……」

 そう言って、長老様とやらは自分の髭を小さな手で優しく撫でる。
 そして、私達の顔を交互に見て、何度も頷いた。

「えっと……」
「……長老様は、こうして、メモリアを循環する聖なる石を見守っているリコ。ロブメモワールに盗まれないように、奥の部屋に移して……」
「その間に、リコルンは色々な世界に飛んで、プリキュアを増やしてたんだ……ていうか、今更だけど、このラブメモリーウォッチっていうのは何なの?」

 瑞樹ちゃんがそう言いながらラブメモリーウォッチを構える。
 それに、リコルンは「あぁ……」と声を漏らした。

「それは、このメモリー王国に伝わる伝承リコ。いつか、全てのメモリアを奪い、世界を滅ぼさんとするものが現れた時、それを守れる素質がある者に力を与えるという……それが現れるのは、ロブメモワールが、その世界に干渉を始めた時リコ」
「なるほどね……それで私と杏が……」

 瑞樹ちゃんの言葉に、リコルンは頷く。

「ロブメモワールの干渉は少しずつ強まっているリコ。だから、せめて色々な世界に、プリキュアの伝承だけでも伝えて……」
「……そっか……」

 リコルンの言葉に、私達は顔を見合わせる。
 まさか、こんな事情になっているとは思わなかった。
 私達には何をするのかが最善なのかも分からないし、ここは、リコルンに任せるのが一番なのかもしれない。

「分かった。私達も、頑張って、私達の世界を守るよ。だから、リコルンも頑張ってね」

 私の言葉に、リコルンは「ありがとうリコ」と言って笑った。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.31 )
日時: 2017/08/22 20:25
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第5話「リコルンの帰国!?レッツゴー!メモリー王国!」5

「でもさ……本当に私達だけで、出来るのかな……」

 外に出てから放たれた瑞樹ちゃんの言葉に、私は立ち止まり顔を上げる。
 すると彼女も立ち止まり、私の顔を見る。

「ホラ、私達、まだプリキュアになったばかりだし……やっぱり、まだリコルンの存在が必要だと思うんだよ」
「……でも、リコルンは私達を信じてるみたいだし……リコルンの事情を聞いちゃうと……」
「でも……!」

 瑞樹ちゃんはそこまで言うと俯く。
 確かに、自信がないのは分かる。
 でもやらなくちゃ。私達がやらないと、このままじゃ、私達の世界は……。

「……ねぇ、あそこ行こうよ」

 私はそう言いながら、真っ黒に染まったシャボン玉を指さす。

 それからは流れ作業だった。
 ラブメモリーウォッチを使ってシャボン玉の中に入り、それから、倒れている人の中に入った。
 目を開けば、そこには、相変わらず俊敏な動きで暴れまわるワスレールの姿があった。

「杏……本当にできるのかな……?」
「できるか、じゃない。やるんだよ。……これができれば、きっと、ロブメモワールのワスレールくらいどうにでもできるって」
「……杏はさ、怖くないの?」

 不安そうに聞く瑞樹ちゃん。
 私はそれに「怖いよ」と言って、彼女の手を握る。

「多分私、今一番、怖がってる」
「じゃあ……!」
「でも……瑞樹ちゃんと一緒なら、なんでもできるって信じてるから」

 私の言葉に、瑞樹ちゃんは驚いたように目を見開く。
 しかし、すぐに優しく微笑んで、私の手を握り返した。

「分かったよ。……やろう、杏」
「うんっ!」
「「プリキュア! メモリアルコンバージョンッ!」」
「今を輝く、一つの光! キュアアデッソ!」
「過去を束ねる、一つの夢! キュアパースト!」
「「取り戻せ! 愛のメモリー!」」
「「メモリアルプリキュア!」」

 変身を終えた私達は、すぐに、ワスレールに向かって駆けだす。
 手はしっかりと握られ、足取りも軽い。
 やがて、ワスレールもこちらに気付き……―――。

「ガハッ……!?」

 気付いた時には、吹き飛ばされ、地面を転がっていた。
 攻撃された……? そう思う頃には、さらに二撃、三撃と攻撃され、私達はみるみるうちにボロボロにされていく。
 やがて地面に私達は倒れ伏し、動けなくなる。
 私達に興味を失ったのか、ワスレールは、またもや記憶世界を暴れ始める。

「アデッソ……動ける……?」

 微かに聴こえた声に、私は首を動かす。
 見ると、私と同じように倒れ伏したパーストが、私に手を伸ばしていた。
 私もそれに地面を這い、手を伸ばす。
 やがて、私達は手を繋ぎ、指を絡めて、強く握る。

「思いのほか、強いね……私達、今一番、ピンチだ……」
「だね……ハハッ。メモリアを全部失った人が目を覚ませないわけだ。あんなに強いんだもん……倒せるわけがないよ」

 パーストの言葉に、私も息を吐くように笑った。
 きっと、メモリアを奪った分だけ力が上がるとか、そんなところだろう。
 もしかしたら、このまま私達は負けてしまうのかもしれない。
 そうしたら、ラブメモリーウォッチはどうなるのだろう……私達から解き放たれたメモリアは、ちゃんと、次の生命へと続いてくれるだろうか。

「……私、まだ諦めたくないな……」

 そんな言葉が聴こえ、私は顔を上げる。
 そこでは、フラフラと立ち上がろうとしているパーストの姿があった。

「パースト……」
「どうせ負けるなら、せめて、一人のメモリアくらいは、解放したい……アデッソもそうでしょ?」

 その言葉に、私は「うん」と頷き、一緒に立ちあがる。

「私も……まだ諦めたくない」
「アデッソ……」
「たとえこの命に代えても、せめて、この人のメモリアだけは……」

 私の言葉にパーストは微笑み、私の手を強く握った。

「アデッソ……私達」
「うん……今一番」
「「輝いてる!」」

 覚悟は出来た。
 さぁ、戦おう。この命が燃え尽きる、その時まで。
 そう思い、一歩踏み出そうとした時だった。

「何自分達で酔っているリコぉぉぉぉぉッ!」

 そんな声が聴こえ、目の前の空間に穴が出来、リコルンが飛んできた。
 そしてそれは、見事に私の顔面にクリティカルヒットした。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.32 )
日時: 2017/08/23 17:20
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第5話「リコルンの帰国!?レッツゴー!メモリー王国!」6

「ぐへぁ!」

 私は顔面に衝撃を受け、後ろに仰け反る。
 しかし、なんとかパーストに受け止められ、私はすぐに姿勢を正す。
 そして、目の前にいるリコルンを手で掴んだ。

「リコルン……なんでここに?」
「それはこっちのセリフリコ! メモリー王国にいないから、もう帰ったのかと思ったら、長老様がこの世界から二人の気配がするって言うから来てみれば……何してるリコ!」
「何って……あのワスレール倒そうとしてたんだけど」

 パーストの言葉に、リコルンはあんぐりと口を大きく開けた。
 その表情に、私とパーストは顔を見合わせ、首を傾げた。
 すると、すぐにリコルンが私とパーストの頭を同時に叩いた。

「いったぁ……!?」
「そんなことできるわけないリコ! 二人の力はまだまだ未熟で、二人だけで戦うことなんて……!」

 そこまで言った時、リコルンはハッとする。
 リコルンの言葉に私達も察し、やがて、顔が自然ににやけるのが分かった。

「ホラ、やっぱり私達、リコルンがいないとダメなんだよ」
「や、でも……!」
「リコルンいないと何すれば良いのか分からなくて、こうして暴走しちゃうからね〜」

 パーストの言葉に、リコルンは「ぐぬぬ……」と歯ぎしりをする。
 すると、ワスレールがすぐにこちらに攻撃しようと近づいて来る。

「とにかく、先に逃げるリコ!」
「う、うん!」

 リコルンの言葉に、パーストはすぐにラブメモリーウォッチを構える。
 それから出来た穴に、私達はすぐに飛び込んだ。
 やがて、外に飛び出した私達は、すぐにその世界から抜け出して、メモリー王国に出る。

「全く……ヒヤヒヤしたリコ。大体、何が私達今一番輝いてる、だリコ」
「いやぁ……まぁ、ノリ?」
「中学二年生って、そういうのに手を出しちゃう年頃だからね〜」
「そんな年頃いらないリコ!」

 怒るリコルンを宥めつつ、私達は変身を解く。

「でもさ……これじゃあ、リコルンを心配させないつもりが、逆に心配させちゃうかな」
「心配……させない……?」

 リコルンの言葉に、私達は同時に頷く。

「うん。リコルンが思う存分、安心して、ロブメモワール倒しに専念できるようにって」
「でもまぁ、ボロボロにされた挙句、リコルンのおかげで冷静になれたわけだけどね〜」

 瑞樹ちゃんの言葉に、リコルンは何とも言えない表情で目を伏せる。
 私はそれに笑い、頭を撫でる。

「一緒にいようよ。やっぱり私達は、リコルンも含めて、メモリアルプリキュアだと思うんだ」
「で……でも……」
「ふむ。それが良いかもしれんのう」

 突然背後から聴こえた声に、私達は飛び上がる。
 振り向くとそこには、宙に浮く長老様の姿があった。

「ちょ……長老様……」
「……リコルンよ」
「は、はいッ!」

 突然名前を呼ばれ、リコルンはビクッとして、宙に浮いたまま気を付けの姿勢をする。
 そこで私はとあることに気付き、「あのぉ……」と声を出す。

「すいませんけど……あの青い石、みたいなのの面倒は見てなくて良いんですか?」
「む? あぁ……。大丈夫じゃ。今のわしは、あくまで精神体。肉体と、石を守るという意志は残してきた」

 よく分からないけど、知る必要も無さそうなので無視をする。
 すると、長老様はもう一度「リコルンよ」と言って、リコルンの頭に手を置いた。

「まだ未熟な身でありながら、よくぞ今まで頑張って来た。しかし、先を急ぎではある。確かにプリキュアの伝承を伝えて心構えをさせておくのも手ではあるが、その手段では、まず杏奈達の世界が滅ぶのは確定しているようなものじゃぞ?」
「そんなことは……!」
「分かっておる。だが、お主は責任感が強いからのぉ。自分で解決しようと先を急ぎすぎて、目的と手段をはき違えてしまったのじゃろう」
「……」

 図星なのか、口を閉ざして俯くリコルン。
 その様子に長老様は笑い、リコルンの頭を優しく撫でた。

「だから、今は杏奈達と一緒に戦い、一生懸命ロブメモワールに立ち向かいなさい。二人の為にも……お主の為にも」
「……はいッ!」

 リコルンの返事に長老様は優しく笑い、リコルンの頭から手を離した。
 ずっとそのやり取りを眺めていた私と瑞樹ちゃんは顔を見合わせた。

「つまり……またリコルンと一緒にいれる……ってこと?」
「そう……だね……」

 そう返事をすると同時に、私達は徐々に興奮のようなものが湧き上がってくるのを感じた。
 すぐに私達はリコルンに駆け寄り、抱きしめた。

「わッ! 何するリコ!?」
「またリコルンと一緒にいられるんだよね!?」
「あははッ! 嬉しいぞこのやろー!」

 瑞樹ちゃんがそう笑いながらリコルンの頭をワシャワシャとすると、リコルンは「やめるリコ〜」と言う。
 しかし、その表情はどこか、嬉しそうだった。

Re: 【オリキュア】メモリアルプリキュア! ( No.33 )
日時: 2017/08/25 20:35
名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)

第6話「人気モデルは一年生!?美少女星華現る!」1

「プリキュアが……メモリー王国に?」

 ラオベンの言葉に、シッパーレは「えぇ」と頷いた。

「先日、メモリー王国内に奴等の気配があったそうよ」
「なるほど……ということは、奴等も知ったのか。俺達の戦いがどういうものであるか。……そして、負ければどういう結末が訪れるのか」

 デロべの言葉に、二人も顔を引き締める。
 その様子に、デロべは口元に冷たい笑みを浮かべた。

「ようやく面白くなってきたじゃねぇか……せいぜい、前のプリキュアくらいには、楽しませてくれると良いな」

−−−

「いやぁ、この間の土日は散々な目に遭ったねぇ」

 学校に行く道を歩きながら、瑞樹ちゃんはため息をつく。
 彼女の様子に、私は苦笑した。

「あはは……でもさ、おかげで覚悟も固まったし、良かったと思うよ」
「そうだけどさぁ……あーあ。なんか、この週末は全然休めた感じしないや」

 瑞樹ちゃんはそう言ってもう一度ため息をつき、前を見る。
 私もそれに釣られるように前を見て……とある人を見て、固まった。

「ぁ……」
「ん? どしたの?」

 瑞樹ちゃんにそう声を掛けられるが、私はそれどころではない。
 目の前にいる人影に、徐々に、テンションが上がっていくのが分かった。

「あれ……人気モデルの、後宮 星華(あとみや せいか)ちゃんだ!」
「あー……」

 私の横で、瑞樹ちゃんは間抜けな感じの声を漏らす。
 そんな声無視しつつ、私は鞄を肩に掛け直し、星華ちゃんの元に駆け寄った。
 芸能人なんて初めて見た……! しかも、最近超人気の星華ちゃんなんて……!
 興奮をひた隠しながら駆けていた時、私はとあることに気付き、足を止めた。

「星華ちゃんが着てるの……時見中学校の制服……?」
「あぁ、うん。あの子、同じ学校だからね」

 追いついてきた瑞樹ちゃんの言葉に、私はしばらくそれを理解するのに時間を要した。
 やがて、その意味を理解した瞬間、私は「えぇぇぇぇぇぇぇッ!?」と声をあげた。
 すると、前の方を歩いていた星華ちゃんがこちらに振り向き、歩いて来る。

「はわわッ……?」
「えっと……何度か私の名前が聞こえた気がしましたけど、何か用ですか?」

 綺麗な黄色の髪をサイドテールにして、オレンジ色のシュシュでとめている。
 小さく、整った顔に、大きめな目。
 うわぁ……本物だぁ……本物の後宮星華ちゃんだぁ……。

「あ、えっと、初めまして! 私、二年の今行杏奈って言います! あの、私、星華ちゃんのファンで……!」
「なんだ、そんなことか……まぁ、サインくらいなら……」

 そこまで言った時、彼女の目は、私の手首に向く。
 ラブメモリーウォッチを見た瞬間、彼女の目つきは微かに鋭くなり、私の顔をジッと見つめてきた。

「えっと……?」
「……貴方達、まさか……」

 彼女がそこまで言った時、学校のチャイムが鳴った。
 これ、確か朝のHR五分前の……。

「ヤバッ! 早く行かないと遅刻だよ! 杏、行くよ!」
「わ、ちょ、瑞樹ちゃん……!」

 強く私の手を引く瑞樹ちゃんに驚きつつ、私は星華ちゃんに視線を向けた。
 彼女は無表情で、ただジッと私を見ていた。


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