二次創作小説(新・総合)
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- 綴られし日々-作者とキャラの日常-
- 日時: 2022/11/28 20:05
- 名前: 柊 (ID: y98v9vkI)
ついに手を出してしまいました、日常系…!!
注意事項
・クロスオーバー
・クロスオーバーCPあり
・キャラ×オリキャラ、オリキャラ×キャラもあるかもしれない
・当方独自設定あり。矛盾することもあるかもしれない
・キャラ崩壊あり
・キャラの裸族化、不憫化などもあり
・作者が夢女子でもあるので夢っぽい要素(キャラ←←作者)が出てくる。テンションがおかしくなったら大変なことになるので注意
・時々シリアスもあり
・時々キャラ掴めてないかもしれない
・荒らしなどはご遠慮ください。
※スマブラに関して
原作をプレイしていないキャラクターが多々いるためキャラの設定が公式設定と矛盾する可能性大(一応調べます…)
こんな感じの注意事項で『大丈夫だ、問題ない』な方はどうぞお楽しみください!
そうでない方は注意してくださいませ。
タグ
スマブラ、刀剣乱舞、艦これ、アズールレーン、フラワーナイトガール、戦艦少女R、文豪とアルケミスト、しんけん!!、夢王国と眠れる100人の王子様、茜さすセカイでキミと詠う、オトメ勇者、フードファンタジー 、Fate/Grand Order、ポケットモンスター、ボーカロイド、Identity_V、ダンガンロンパシリーズ、School Days
目次
『始まりの158』 >>1-3
『魔法少女騒動〜少女とは言ってない〜』 >>6-9
『小さなお宿-前編-』 >>15-20
『小さなお宿-後編-』 >>21-28
『甘くて美味しい果実』 >>29-35
『うちの長曽祢さんがこんなにも可愛い!!〜ただの主張だ気にするな〜』 >>36-40
『虎と春』 >>46-57
『たまにはきちんと歓迎会を!』>>58-63
『信頼した結果-1-』 >>69-75
『信頼した結果-2-』 >>79-85
『信頼した結果-3-』 >>86-92
一振り目と二振り目の呼び方一覧 >>93
『桜よ、彼女を攫わないで』 >>94-96
『バグにも種類がありまして!?』 >>97-101
『恋に落ちないなんてできなくて』 >>105-111
『練習、裸族講座!』 >>112-116
『悪魔の城は崩れない』 >>121-126
『悪魔の城は崩れ始める』 >>136-140 ※140はおまけになります
『悪魔の城は崩壊す』 >>148-155
∟闇の御子の情報 >>156
『VS闇の御子』 >>160-163
∟厄除けの宝玉の情報 >>164
『赤ずきん☆ラグナス』 >>167-171 ※天悪さんとのコラボ!
『赤い花騎士と銀の騎士』 >>178-179
『私が教えるよ』 >>182-184
『コピペSS』 >>185-186
『癒しとカオスと歓迎会』 >>190-197
『六月の花嫁たち』 >>202-209
『七夕は奇跡に染まり』 >>214-217 ※天悪さんとのコラボ!
『お嬢様()な交流会』 >>221-224 ※天悪さん、琴葉姫さんとのコラボ!
『緊急特番()!刀剣乱舞の大盤振る舞い』 >>229-233
『忍び寄るは光の信者』 >>239-244
『南の島、砂浜騒動!?』 >>248-252
『子どもビーチは危険がいっぱい!〜王様は保護者〜』 >>259-263
『私たちは、きっと。』 >>270-274
『解き明かせ、真実! 1』 >>281-286 ※286はおまけです
『解き明かせ、真実! 2』 >>291-297
『解き明かせ、真実! 3』 >>300-304
『VS神殺しの蟲』 >>307-313
∟神殺しの蟲情報 >>314
『出会いは夢の中にて(第一印象は考えないものとする)』 >>317-321
『ちびノブのお仕事!』 >>324-328
『【柊「空を見上げて『バカな…早すぎる…』ってつぶやいたら」】 >>334-335
『新年は新ジャンルと共に!』 >>340-346
『甘い束縛』 >>352-353
『メンヘラマネジメント』 >>356-358
『にっかりファンタジーUDON』 >>362
『コピペSS、おかわり!』 >>363-365
『手を振り解かれ、手を取って。』 >>369-374
『それぞれの決意と忠義』 >>378-383
『扉問答』 >>390-394
∟ねこじぞーの情報 >>395
『水無月祭の出会い』 >>401-403
『コピペSS、もういっちょ!』 >>408-410
『Real or Dream』 >>411-417
『幼児化☆パニック!』 >>422-428
『似てない二人』 >>434-436
『凄惨なる宴』 >>441-446
『雪の別離』 >>449-452
『年末だ!コピペSS!』 >>453-455
『新たな邂逅』 >>458-462
『決戦前〜医師の罪〜』 >>465-468
『決戦前〜泥棒の偽善〜』 >>469-471
『決戦前〜弁護士の覚悟〜』 >>474-477
※477はおまけです
『決戦前〜庭師の想い〜』 >>480-483
『エイプリルフールで嘘予告SS』 >>486
『決戦前〜学生組の会議!〜』 >>487-489
『レオ・ベイカー奪還戦・1』 >>497-500
『レオ・ベイカー奪還戦・2』 >>504-507
『レオ・ベイカー奪還戦・終』 >>511-514
『やっとできるね! 歓迎会』 >>517-522
『異世界にて、恋に出会う』 >>525-527
『コピペSS、いつつめ!』 >>530-532
『オリキャラご紹介その1』 >>535
『いっそ『大嫌いだ』と思えたら』 >>536-543
※543はおまけです
『困りごとはきっかけ』 >>546-548
『本気になったのはどちらだったのか』 >>549-550
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.49 )
- 日時: 2020/02/03 20:22
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: FBVqmVan)
その少女──駆逐艦の艦娘、春雨はぼうと夜空を自室から見上げていた。本来、艦娘というのは基本的には海に近い鎮守府や艦娘に与えられる寮で生活を送るのだがこの春雨は山の中にある屋敷で生活しており、もう軽く一年は海に出ていない。
海に出ずとも、この屋敷の主人であり春雨の提督である男は春雨に何でも買い与えた。本に服に調度品に。春雨が何も言わずとも買い与えられ、服も本も着ても読んでもいない物が増えてきた。この上品かつシンプルに纏められた部屋も男から与えられたものだ。
こんこん、と部屋のドアがノックされる。どうぞ、と声をかければ失礼しますと一声かかって入ってきたのはこの屋敷で働くメイドだった。メイドは湯気の立つ紅茶を持っており、春雨の座るテーブルの前に置いた。
「お待たせいたしました、春雨様」
「……ありがとうございます」
「いいえ。飲み終わりましたら、外のカートに置いてくだされば回収いたしますので」
「……はい」
必要最低限のやり取りだけ済ませたらメイドはお辞儀してから部屋を後にした。これも仕方のないことである。何故なら、春雨は『不幸を呼ぶ』からだ。だから提督である男以外は必要以上に関わろうとしてこない。寂しくはあったが仕方ないことだと言い聞かせて紅茶を一口飲んだ。
すると。またこんこん、と音がした。それには驚いてドアを見るが声はかからない。もう一度、こんこん、と音がする。窓からだ。
春雨が窓を見ると、ベランダに何かがいた。もっふりとした体を持ったその鳥は首から何かをかけている。
「フクロウ……?」
ホー、と一声鳴いてまたフクロウはくちばしで窓を叩いた。開けて、と言っているのだろうか。
窓に歩み寄り、鍵を開ける。そっと窓を開けばちょこちょこと控えめに中に入ってきた。何だか愛らしくて、しゃがんでそっと手を差し出せばフクロウは手元に歩み寄ってきて撫でてと言わんばかりに頭を手に擦り付けてくる。
「ふふ、可愛いですね。フクロウさん、首にかけているのは……?」
フクロウがそれを聞くとじっと春雨を見た。首を傾げたが、もしかして、と思いそっと首にかかった何かを手にする。フクロウは一切抵抗せず、それどころかどうぞと言うように自ら頭を引き抜いた。その『何か』は手紙だった。
淡い桃色の横型封筒を開き、中に入っていた手紙を開く。
【初めまして。僕は五虎退と言います。先日、虎くんと一緒にこの近くにいました。
突然手紙をお送りする無礼をお許しください。僕は、貴女とお話ししてみたいと思い、この手紙を送ることにしたのです。
もしよろしければ、お屋敷の外に出てきてお話ししていただけませんか?もちろん、いきなりこのようなことを言って失礼なのは承知の上です。
お返事、お待ちしています。】
「あの時の……?」
春雨も、彼のことは覚えていた。白くてふわふわとした髪をした少年を。その隣には大きな白い虎がいたからよく覚えている。……そして、昨日からずっと彼のことを思い出していた。会って話してみたい、と思っていたのは春雨もだった。けれど、春雨はこの屋敷から一年間ずっと出ていない。いや、出てはいけないと言われていた。
仮に彼と会いたいと言っても許可をもらえるだろうか。もらえないと思う。残念に思いながら返事を書こうとして、封筒にもう一枚紙が入っていることに気が付いた。それを取り出して読む。
【初めまして、私はイライ・クラークと言う者です。五虎退くんの手紙と、この手紙を届けたフクロウの相棒、と思っていただけると幸いです。
五虎退くんと会えないとしても、せめて手紙を送り合うのはいかがでしょう? そのためなら私は、フクロウに頼んで手紙のやり取りをお手伝いさせていただきます。
貴女の現状を変える、ほんの少しのお手伝いでよろしければいくらでも】
「!!」
春雨は目を見開く。……このイライ・クラークという人物はどこまで知っているのだろう。少しだけ薄ら寒いものを感じながらも『貴女の現状を変える』の一文から目を離せない。
これは自業自得なのだと。むしろ自分はまだ自分を生かしてくれる提督に感謝しなくてはならないと思ってきた。だけど。だけど。
春雨はフクロウに少し待っててくださいと声をかけて、『春雨のように可愛らしいから』と買い与えられた、けれど春雨には使うことはないと思っていた便箋を取り出し、一枚を破り取り、ペンを走らせた。
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.50 )
- 日時: 2020/02/03 20:29
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: FBVqmVan)
数日後。五虎退は複数の便箋を嬉しそうに眺めている。この便箋は全てあの少女──春雨からの手紙だ。最初は出ていくことはできないと書かれていて残念に思ったが文通をすることになったのだ。ただ、屋敷の主に見つかってはいけないからとイライがフクロウを飛ばして、と言った形でだが。
「五虎退っ」
「ひゃあっ!? あ、乱兄さん……」
「最近、便箋を見て嬉しそうだね! あの孤児院の子たちから?」
「あ、いえ、これは……その」
「ん?」
「……さ、最近知り合った、お友達です」
「そうなんだ! ねえ、どんな子? 名前は?」
乱が聞いてきて、五虎退は一生懸命に返していく。そんなやりとりの最中だった。
「はぁあ!? 艦娘の監禁!?」
「声が大きいですよ、審神者様!」
こんのすけと柊の声に五虎退と乱は顔を見合わせ、そっと聞き耳をたてた。
「あ、ごめん……ってかそれは本当?」
「はい。とある提督が一人の艦娘に一目惚れし、その艦娘を追い詰めて精神的に弱らせてから山奥の屋敷に監禁しているという情報がその提督の鎮守府より入りました。厄介なことに、提督としての仕事はまだしていたらしく、報告も遅れに遅れたようで」
「胸糞悪い話だな……あーなるほど。それで私に話が来たってことか」
「そのようです」
「……こんのすけ、詳細を」
「承知しました。審神者様の予想通りではあると思いますが、屋敷はごく最近購入された土地に建つ屋敷にございます」
五虎退は目を見開いた。その屋敷に、心当たりがありすぎたから。
「監禁された艦娘の名前は」
「……白露型駆逐艦の五番艦、春雨様です」
「!!」
五虎退は一瞬だけ息を忘れ、乱は目を丸くして手紙を見た。五虎退の文通相手の名前だ。
「了解した。あちらは何と言ってる?」
「第一は春雨様の救出及び保護、第二に提督の捕縛、できることならば監禁に関わった者の捕縛です」
「分かった、なら早速部隊を」
「あのっ!!」
「どひゃぁ!?」
「ひゃあっ!? ご、五虎退様!?」
五虎退が思わず飛び出し、大きな声で話しかければ柊は大きく体を震わせ、こんのすけの体毛も逆立った。けれどそれどころではない。
「あ、主さまっ、彼女の救出、僕にも手伝わせてください!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.51 )
- 日時: 2020/02/03 20:36
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: FBVqmVan)
それから、また数日後。五虎退の文通相手である春雨もまた、五虎退からの手紙を繰り返し読んで顔を綻ばせていた。誰にも見つからないように隠しながら、時々取り出して。
「いつか、会いたいなぁ……」
「誰にだい?」
体が大きく震え、すぐに手紙を隠そうとするも春雨の華奢な手は捻りあげるように掴まれ、無理やり手紙を奪われる。春雨が見た先には整った顔立ちの青年──春雨の提督がいた。
青年は冷えたような目で手紙を読み、舌打ちすると手紙を破き始めた。
「っ!! 司令官っ、や、やめて、やめてくださいっ!!」
「ねえ春雨。キミは、何故ここにいるのか分かっていないのかな?」
それに春雨の体がまた震える。呼吸がうまくできない。
「それはね、キミが、『周りに死をもたらす死神』さんだからだよ?」
「あ、あ……!」
聞きたくない。なのに耳を塞ぐことすらできない。
「キミのせいで、白露も、時雨も、村雨も、夕立も、他の白露型の駆逐艦たちも沈んだんだよ? でも私はキミを失いたくなかった。だから私以外との接触を最小限にしたんだよ?」
「う、あ」
「なのに。恩を仇で返すなんて。春雨はなんて恩知らずな子なんだろう。
ねえ春雨。勝手に他の誰かと交流を持つなんて。私に対して……いいや、今までキミのせいで沈んだ艦娘たちに対しての、ひどい裏切りだと思わないかい?」
「い、や、いやぁ……ごめんなさいっ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
春雨の目から涙が溢れる。止まらない。止まるはずがない。
青年の、幼子に優しく語りかけるような口調が余計に春雨の心を追い詰める。青年がそっと春雨の頬を包み、顔を上げさせる。涙でボヤけているから、どんな顔をしているのかが分からない。
「大丈夫。私はキミがだぁいすきだからね。キミがいくら恩知らずでも、いくらでも助けてあげるし、いくらでも許してあげよう。
ああ、でも今回は……うん。ちょっと、『謝罪の気持ち』を示してもらおうかなぁ?」
青年が頬から手を退いたと思うと手を引かれ、ベッドに押し倒される。それが何を意味するか、分からないほど春雨も無知ではない。
「っ、や、やめてっ、やめてくださいっ!! いやっ、いやぁっ!!」
「暴れるな!! ああそれとも今まで沈んだ艦娘に対して悪いとも思ってないのか!?」
「!! う、うぅ……」
「大丈夫、大人しくしていれば酷くはしないよ」
青年の手が服にかかる。春雨は恐怖で目をキツく瞑る。
「助けて……助けて」
──五虎退くん……!!
その時。屋敷に警報音が鳴り響いた。
「なっ、なんだ!? 警備システムは、くそっ」
青年は慌てた様子でスマホを取り出すと慣れた手つきでどこかに電話をかけた。
「おい、警備システムはどうした!? ……突破された!? ふ、船が壊しただと!? 馬鹿も休み休み言え! ……白い虎!? なんなんだ一体!!」
白い虎。それに春雨は五虎退が来てくれたのだと考えてしまう。でも、もしかすると。
「くそっ!! とにかく、引き留めろ!!」
荒々しく切ると青年は暗い笑みを浮かべてまた春雨を押し倒した。
「さっきは大人しくしていれば酷くはしないと言ったけど、そんな余裕はなさそうだ。
……せめて最後に。キミの純潔を私に差し出しなさい」
さっきまでは、罪悪感と恐怖で彼の『慈悲』に従うしかないと思っていた。だけど、五虎退が来てくれたかもしれないと考えるだけで、彼の『慈悲』に従おうとは思えない。
「いや、いやです! 離してくださいっ!!」
「なっ!? さ、逆らうのか!? キミのせいで沈んだ艦娘にっ」
「絶対にっ、絶対に嫌です!! 助けてっ、助けてください!! 助けて、五虎退くんっ!!」
春雨の叫びに応えるように、部屋のドアが開かれる。
そこに立っていたのは。
「その子から、離れてください!!」
「あ、あ……五虎退くん!!」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.52 )
- 日時: 2020/02/03 20:41
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: FBVqmVan)
五虎退の目の前には、天蓋付きのベッドで押し倒されながら、涙を浮かべながらも自分を見てホッと笑みを浮かべてくれた春雨。そして春雨を押し倒している青年だ。
虎が唸れば青年は顔を青くした。虎以外にもイライ、カヴィン・アユソ、ウィリアム・エリス、景光りゅうこ、乱がいる。青年にとってはあまりに分が悪い。
「その子を、こちらに渡してください。あなたが罰を受けることは変えられませんが、主さまや他の方に罰を軽くしていただけるようにしてもらうことはできます」
「ぐ、く……!! ふざけるなっ!! 私からこの子を奪うつもりか!? それならっ、それくらいなら!」
青年は春雨の細い首を両手で掴もうとする。目的は容易に分かった。だが。
「そんな隙だらけじゃあ、どんな子猫ちゃんも捕まれられる訳ないだろう?」
ヒュッ、と音がした。瞬間、投げ縄が的確に春雨だけを捕まえ、りゅうこが駆け出し、青年を蹴り上げると同時に春雨がこちらへ引き寄せられる。
慣れた様子で、カヴィンが引き寄せられた春雨をそのまま担いだ。
「えっ、えっ!?」
「そう、こんな風に横から掻っ攫われても仕方ない! 特に、僕は子猫ちゃんたちの扱いには慣れているつもりだからな」
「その割にはフラれてばかりな気もするぞ」
「余計なことは言わなくていいんだよウィリアム!!」
「まあまあ。カヴィンさんは手筈通り、このまま春雨さんを連れて逃げてほしい」
「分かってる。後は頼んだ。
ああ、それとりゅうこちゃんは後でデートでもしないかい?」
「なぁにバカなこと言ってんだ、とっとと行きな!」
「はは、つれないところも素敵だよ!」
そう言いながらカヴィンは混乱する春雨を抱えたまま走り去っていった。
「待て!! 返せっ!!」
「返すわけないだろうが!! あまつさえ、あの子を手に入れるためだけにあの子の姉妹艦を目の前で沈むように仕向けたお前なんぞに!!」
りゅうこの言葉に全員が青年を嫌悪した目で見る。
そう、青年はわざと春雨を追い詰めるために姉妹艦である白露型の駆逐艦が春雨の目の前で沈むように仕向けていた。時には、春雨を庇うように仕向けて。青年の思惑通り精神的に追い詰められた春雨は青年が言う通りに自分を『死神』と思い込み、青年に願った。
もう自分のせいで誰も沈めたくない。どうか、自分を解体してほしいと。そしてその資材は、使わずに廃棄してほしいと。だが青年はその願いを退け、彼女をここに監禁した。接触を最小限にすれば、誰も被害は被らないと宣って。
「ぐっ、なぜ、それを!!」
「……あなたの所業を、どうしても許せない艦娘たちがいた。彼女らは全員で結託してあなたに気付かれないように証拠を集めて報告したんだよ。
今頃、あなたの鎮守府は解体されてみんな清々してるかもね!!」
乱の言葉に青年も気づいたらしい。自分の鎮守府の艦娘が結託し、青年を告発したのだと。
「……私には分からないな」
イライが静かに口を開く。
「な、にが、だ」
「どうして、愛しいと思った人を平気で傷つけられるのか。傷つけて、追い詰めて、それで手に入れても喜べるはずがないのに。
普通なら、愛しい人は守りたいと思うんだ。本当に、あなたは春雨さんを愛していたのかい?」
「っ!! 黙れ、黙れぇええっ!! 私はっ!! 私は春雨を愛していた!!
だからあの子が絶望した顔だって愛しかった!! 知っているか? あの子の絶望した顔は、笑顔よりも美しいんだ」
「……だから、なんだって言うんですか」
- Re: 綴られし日々-作者とキャラの日常- ( No.53 )
- 日時: 2020/02/03 20:46
- 名前: 柊 ◆K1DQe5BZx. (ID: FBVqmVan)
五虎退が涙を浮かべて男を睨んでいる。虎の唸り声も大きくなった。
「あなたが言う愛しいは、嘘に決まってます。だってそんなことできるはずがないです。もし自分の兄弟がそんなことで折られたと思ったら……僕は、できないです。
それに……好きな人には、笑顔でいてほしいから」
「五虎退の言う通りだよ。あなたは春雨さんを傷つけるだけ傷つけて、思い通りにならなきゃ殺そうって? 春雨さんを何だと思ってるの!?
彼女はあなたのおもちゃじゃない、所有物でもない!! 彼女は艦娘だ、本来なら、美しい海を駆けて戦う美しくて勇ましい子たちなんだよ!! あなたのそんな下らない欲望を満たすために生まれたんじゃない!!」
乱と五虎退の言葉に青年はぐっと黙り込んだ。しかし、その口はいやらしく歪んでいる。
それを見られたのは一番近くにいたりゅうこのみで、彼女は嫌悪に満ちた目をそのままに青年を見ている。
「何がおかしいんだい!」
「ははっ、そろそろのはずだよ……ここには、お前たちのような者が入り込んだ時のためにガードロボットがあってね?
侵入者は、蜂の巣にされてしまうんだよ!
ああ、先に行ったお仲間はすでにやられてる頃じゃないかな?
……春雨も巻き添えを喰らったのは惜しいが、あんなに反抗的ならもういらない。他の鎮守府から奪って、新しい春雨を作るさ」
「っ!! あんたっ……最低な野郎だね!!」
りゅうこがさらにキツく青年を睨みつける。しかしもはや青年は感覚が麻痺でもしているのか笑っているだけだ。
だから誰も気付かない。イライだけが薄く笑っていたことを。イライの肩にいるはずのフクロウが、いつの間にかいなくなっていたことを。
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