最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第001次元 砂漠の中の兄妹



 「レト~、休まない?」
 「ざけんな。お前体力きれんの早すぎ」
 「ふぇ~~っ!!」
 「ほら、もう着くぞ」

 砂漠の中。
 2人の兄妹が熱く太陽の燃え上がる日差しの中歩いていた。
 
 金髪の少年はレトヴェール・エポール。
 蛇梅隊の第一部隊に所属する優秀な次元師だ。
 左にいる、のろのろと歩いている少女がロクアンズ・エポール。
 蛇梅隊第二部隊に所属する大食い少女。
 そう、この2人は今日任務に来ていたのだった。

 砂漠の奥に見えたのは、古風な風潮が漂っている町。
 老いぼれたお爺さんや、お婆さんが住んでいた。
 なのに、その向こうの大きな湖の上にはオークション会場がある。
 だが、国の掟で人身売買は固く禁じられている。
 それを止めるため、レト達は本日ここにやってきた。

 「おし、行くぞっ!!」

 オークション会場の中は、真っ暗だが、客人は大騒ぎしている。
 何故ならここに、人魚がくると噂があったからだ。

 「皆さぁぁーんっ!!次の商品は―――ッ」

 会場にいた観客たちが息を飲んだ。

 「右と左とで目の色のが違う11歳の少女だーーッ!!」

 盛大に響き渡る、客達の声。
 その五月蝿くも喧しい声に思わずロクとレトは耳を塞いだ。

 「うるさい……」
 「我慢しろ、これも仕事だ」

 そして……、

 「俺1100万!!」
 「あたしは1200万よ!!」
 「あたしゃ1600万だねぇ!!」
 「すげぇな……」
 「確かに……」
 「ロク、準備はいいか?」
 「うん」

 二人で同時に顔を頷き、そして疾風の如く走り始めた。

 「お前ら!!そんなチンピラみたいな行動はやめやがれ!!!」
 「どこがオークションだい!!ばっかみたい!!」
 「……んだと?お前ら何者だッッ」
 「蛇梅隊の次元師……とでも説明しようか?」

 レトは、隊服の胸元に付いているエンブレムを見せた。
 それを見た1人の男は一瞬で後ずさりをした。

 「な、なんだと!?」
 「容赦はしねぇぞこのバカピーマン共!!!」
 「あ、貴方達は……?」
 「あたしたちは、任務で此処に来たの」
 「へぇー……」
 「余計な邪魔はさせないぞ!!次は大注目の人魚だァァァァ!!!」
 「んな!!?」
 「あいつ、いつの間に……!?」
 「俺は8000万で買う!!」
 「てめぇ俺の話きいてんのかッ!!」

 レトが男に上から切りかかろうとした。
 そう、レトが持ってるのは正しく“2つの剣”だった。

 「流石我兄貴……」

 すると、ロクの背後から見知らぬ男の姿が見えた。

 「後ろががらあきだぜ!!ねえちゃん!!!」
 「お姉ちゃん!!」
 「……・次元の扉、発動」
 「―――――ッ!!?」
 「雷撃ィィーーーっ!!!」

 ロクが呪文を唱えると、ロクの掌から突如現れた雷の砲撃がその男の体に直撃した。

 「がはッ!!?」
 「言っておくけど、あたしも次元師なんだ♪」
 「んだと……!?」
 「あの女、雷の次元技だ……!!」
 「逃げろーーーッ!!」
 「誰が逃がすかァァァァッ!!」
 「貴方達……大丈夫?」
 「平気……でも、人魚さん達が」

 ロクは大きな水槽の中に入っている人魚に目をやった。
 水槽の中には思わず見とれてしまう程の美しい姿の女の人が苦しそうにしていた。

 「そうか、逃がしてあげよう」

 ロクが水槽に巻きついていた鎖を解いた。
 そうすると、人魚がとても素敵な笑顔を浮かべて笑ってくれた。

 「ありがとうございます!!なんてお礼を言ったらいいか……っ」
 「いやいや、貴方が届けたんでしょ?この依頼」
 「そうです。ありがとうございました」

 ロクが握り締めていた紙切れには、『任務届け』と書いてあった。
 ロクは、人魚を海に帰してあげると、

 「さぁ、行こっかっ」

 と言って、女の子の手をひいて町へ戻った。

 「レトーっ!!どこにいんのー!?」
 「お……ロクー、片付いたぞ」
 「……もう、レトはいつも限度というものが……」

 そこには、さっきの人たちに屍の山。 
 レトにやられ、ぐったりと倒れていた。

 「まぁ良いだろ。一仕事終わりっと」
 「いいのかな……」

 そこで、
 プルルルルル……プルルルルル……という振動により腕時計が鳴った。

 「班長からか?」
 「みたいだね」

 レトが腕時計を90度回して話しかけ始めた。

 「はい、レトっすけど」
 「よく頑張ってくれたな。もう帰還していいぞ」
 「そのつもりですけど」
 「そうかそうか、なら戻って・・」
 「班長さん♪また誰かと喋ってるのぉ~?」
 「遊ぼびましょ~よ~」
 「分かってるさ、待っててね、My ハニー達」
 「……・班長……」
 「これだからロリコンは……・はぁ……」
 「ち、違うぞ!!これはだな……・!!!」

 ブチ!!
 レトは、班長の言葉を遮って電話を切った。

 「切っちゃったね」
 「当たり前だろ」

 2人の兄妹は、笑いながら帰っていた。