最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第117次元 裏切り者の噂



 ロクはただ1人、部屋でのんびりとしていた。
 暑い季節になり、動く事もできないのだろう。
 
 「やっほ~、ロク、起きてるー?」
 「うぁ……、キールア、どったの?」
 「ううん、1つ言っておこうと思って」
 「?」
 「あたしもレトと同じ、死んでもロクの見方だからね?」
 「キールア……」
 「あたしだって何だかんだ言ったってロクの幼馴染だし。第一初めての友達を誰が恨むのよ」
 「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいかな」
 「どういたしまして。……だから、絶対1人で考え込まないでね?」
 「あ……うん」
 「愚痴だろうと何だろうと、ぜーんぶ聞いてあげるからっ!!」
 「そか。それじゃあ今度どっか遊びに行かない?キールアの好きそうな店、見っけたから」
 「本当ッ!?ありがとうロクーっ!」
 「へへっ、まぁ幼馴染ですから」
 「んじゃあね。あたしこれから仕事なんで」
 「うん、ばいきゅ~」

 キールアはロクの部屋から出て行き、医療室へと向かって行った。
 
 『ま、少なくとも俺はロクの見方だから、安心すればいい』

 『死んでもロクの見方だからね?』

 (見方か……、2人には、本当に悪いな……)

 今まで自分が神族だって事も隠してもらっていて、それでいて信じて貰えている。
 これ以上の幸せなど、あるのだろうか。

 (街にでも行くかな……、任務あんまし行けないし)

 ロクはささっと支度し、隣の部屋でぐっすりと寝入っていたレトを無理やり起こして街へと出かけた。
 
 広間に出たロクは、あの日壊れた壁や木々が直りかけているのに気が付いた。
 自分じゃ無意識にやったのだろうか。あの神族の仕業だとはよく覚えてはいた。
 あの日、一瞬にして2人の神族を始末したロクは、今どんな気持ちなのだろうか。

 「ロク……」
 「……あ、行こっかっ」
 「どうして……、知ってたんだ?」
 「へ?」
 「お前が神族だって事、もしかして最初から知ってたのか?」
 「う……ううん。この間の夜にちょうどレトとキールアが話してるの、聞いちゃって……」
 「それでか……しくじったなぁ」
 「でもあたし、悔やんでないから大丈夫」
 「そうなら……いいけど」

 ロクは嬉しそうに駆け出して、蛇梅隊の門をくぐっていった。
 レトはそんなロクの姿に、不安な気持ちを抱いていた。
 もし、あの笑顔が消え去る事があればどうしよう、と。

 「レトーーっ?早くしてよーっ!」
 「はいはい……、ったく……」
 「……ねぇ、あれ神族のロクアンズ・エポールじゃない?」
 「ッ!?」

 レトはとっさに振り向いた。
 なんと、街の人々にもあの真実が知れ渡っていたのだ。
 レトは、きょとんとしているロクにも無視をして、話に耳を立てていた。

 「あぁ……確かに。自分を人間だと偽って蛇梅隊に忍び込んだって噂だぞ?」
 「えぇーっ?本当ー?そんな……人間を殺しにきたんじゃない?」 
 「だよなぁー……、あぁもう物騒だから消えてほしいよ」
 
 (何だよ……それ……ッ!?)
 
 「ねぇ知ってる?あのロクアンズ・エポールって子っ!」
 「あぁあの神族でしょ?もう本当に何しにこの街に来たのかな?」
 「さっさと次元師達が始末すればいいのにねー?」
 「そうそうっ!!」

 (いや……、こんなに早く噂が立つなんて……、何で……ッ!?)

 「レトー?何してんのー?」
 
 (やばい……、これをロクが聞いたら……ッ!!)

 「い、今行くから待っ……」

 「見て見てー、兄まで騙してんじゃないの?」
 「可哀相なお兄さんだよねー?あの有名なエポール兄妹の名が折れるよー」
 「え……」

 (ロクが……気付い……たッ!!?)

 ロクは、その場に立ち尽くしてしまった。
 自分の噂が、こんなに悪く通っているとも思わなかったのだろう。
 
 「ホンット、迷惑ーっ!!」
 「裏切り者に、用はないってのっ!!」

 (裏切り……、者……―――――――――)

 ロクはあの言葉を思い出した。

 『あたし……裏切りなんて―――――――――――ッ!!!』

 (どうして……、重なるの……ッ!?)