最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第128次元 世界一の宝物Ⅴ



 「な……っ!?」
 「誰だッ!!」
 「誰……と言われましても」 
 「んー……?あたしはよその国から来た旅人」
 「僕はそこの我儘な王女様の執事です」
 
 (嘘……どうして……っ!?)

 ガネストは手にはめていた手袋を取り、 
 ロクはまたしても隊服を脱いだ。

 「……どうして……、来たの?」
 「主を助けるのに……理由でも?」
 
 (喧嘩……してるのに……?)

 「お姉ちゃんの事を悪く言ったあんたなんかに助けられたって全然嬉しくないっ!!」
 「……僕だって、国王に叱られたら嫌ですから」
 「……ッ!!」
  
 (まだ喧嘩してたのか……この2人)

 「おいお前らッ!!」
 「俺達の事……無視すんなよ」
 「これは失敬。無視したつもりはないのですが」
 「同感♪」
 「なめやがって……――――――ッ!!!」

 1人の大柄な男がガネストに向かって拳を向けた瞬間……、

 「第五次元発動」
 「何ッ!?」
 「速連弾―――――ッ!!!」

 ガネストは男に銃口を向け、
 そのまま真っ直ぐに撃ち込んだ。

 「ぐあぁぁぁぁッ!?」
 「ただの人間が……次元技に勝てるとでも?」
 「ほぇー……」
 「こっちの姉ちゃんがガラ空――――」

 ロクは後ろから迫ってくるもう1人の敵に一瞬で気付き、
 すぐに足を引いて後ろを向き、にッっと笑った。

 「雷撃ーーーーッ!!!」
 「な……ぐぁぁぁぁッ!!!」

 見事に命中した雷撃に痺れた男はその場で倒れこんだ。

 「……さぁ、これからが本番です」
 「さぁーて、次は誰があたし達の相手になるのかなぁ?」

 (すごい……2人とも強い……っ!?)

 「調子に乗るなよッ!!!」
 「ッ!?」
 
 (大きな……太刀ッ!?)

 「危ないガネストーーーっ!!!」

 ルイルがそう叫んだ瞬間―――、

 「第六次元発動――――ッ!!」
 「な……ッ!?」

 (そんな崩れ易い剣など……僕の銃の敵じゃないッ!!!)

 「爆義即弾―――――ッ!!!」

 銃が放った2発の弾が太刀を構えた男を躊躇なく襲う。
 1秒もかからずに射撃された男は腹を抱えてまたしても倒れる。
 ガネストは銃を構えていた手を、ルイルの近くにいた男達に向けた。

 「……さて、貴方達はどうしますか?」
 「く……っ」
 「もしもルイルお嬢様の首が欲しいなら、まずは僕を狙うのですね」
 「お……覚えてろよこの糞餓鬼共ッ!!!」

 誘拐犯はそう言い捨てていった。
 まるで上司に拷問を受け、逃げ去っていった部下のように。

 「……さて帰りましょうか、ルイル様」
 「……聞いてるの?」
 「……?」
 「何で……助けに来たの?」
 「そんなの執事としての役目に――――」
 「やっぱりね」
 「?」
 「あんたなんか大嫌いッ!!執事なんて……本気で忠誠を誓うわけじゃないじゃんっ!!」
 「……何を言ってるのですか?言ったでしょう?嫌々、と」
 「……ッ!!」

 またしても言い争いを続けるルイルとガネストの姿を見て、
 ロクはもう限界にまで達していた。

 「……もう2人ともうるさいっ!!」
 「「っ!?」」
 「さっきから自分の気持ちを素直に言わないで!!そんなんだから上手くいかないんだよッ!!」
 「……」
 「ルイルだって素直じゃないよッ!!さっき思い切りガネストに叫んでたじゃんっ!!」
 「……それ……は」
 「心配だったからでしょう!?傷つけられたくなかったからでしょっ!?」
 「……っ!!」
 「ガネストだってっ!!自分からルイルを助けに行ったくせにっ!!それに……」
 「……?」
 「ルイルが泣いてるのに気がついて、部屋の前で一晩寝てたじゃんッ!!」
 「何故……ッ!?」
 「何でそれを……ルイルに言わないのッ!?」
 「……」  
 
 ロクが2人に向かって叱っている時、
 ロクとガネストは気付いた。

 ルイルの背後で嫌な気配を漂わせ、大きく鎌を振り上げた誘拐犯の生き残りを。

 「―――――――――――――ッ!!?」