最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第019次元 誇り高き閃光の騎士Ⅰ
レトとロクが二人で組手をしていると、家からキールアがタオルを持って出てきた。
「お疲れ~」
「お、ありがとな」
「っていうかレト、強すぎ……」
「俺をなめんな」
「ねぇ、レト」
二人で言い合いしていると、キールアがその会話を遮った。
「隣町に用とかって、ある?」
「へ?何で?」
「もし用があったら一緒に行こうかなーっと……」
「あぁ、ある、けど……」
「ホント!?」
「あぁ……」
レトがきょとんと不思議がっていると、キールアは喜びながらはねていた。
「ありがとう。じゃあちょっと待ってて?」
「レトだけずる~い!」
「ロクはお留守番だな」
「何その子供扱い……」
「だってお前チビじゃん」
「なッ!言ったね……?」
「あ」
レトの顔は青ざめていた。
そう、ロクにとって『チビ』というのは禁句なのだという。
ロクは身長が152cmしかないために、その言葉が禁句となった。
「お待たせレト。って……」
キールアが見たのはボロボロになったレトの姿だった。
その怪我からして、あの事だろうとキールアは察した。
「これはレトが悪い」
「わ、悪かったよ……」
「レトなんか知らないよーっと」
「……・大丈夫?」
「何とか、な……」
レトとロクは仲が非常に良い。
だが時に非常に悪い時がある。
これは兄弟喧嘩と言って良いのか……。
「んじゃ、行くか」
「うん。行こう」
そして、二人で隣町まで足を運んだ。
その二人の姿は、誰から見ても恋人同士のデートに見えただろう。
「っていうか、何でこの町に?」
「この町に最新の薬品の元があるって聞いてさ~」
何か女の子らしい発言かと思えば……。
やはりキールアはキールアという事になる。
「やっぱりか……」
「んでレトは?」
「俺は本を買いに」
……似た者同士だ。
「それじゃあたし、買って来るね~」
「あぁ、三時にこの時計台な」
「うんッ」
二人で別れた瞬間だった。
「もうシェルなんか知らないッ!」
「あぁ俺だってアリルの事なんか知らないねッ」
いきなりレトの耳に入ったのは夫婦喧嘩か?
レトが不思議そうにその家を見ていると、何処からか知らない老いぼれたお婆さんが話始めた。
「あの二人、昔はあんなに仲良かったのにねぇ」
「知ってるんですか?」
「あぁ、この町じゃ有名な仲の良い幼馴染さ。元気が良くて、アリルの方はこの町の看板娘さ」
「すげぇ……」
「でも、この頃何があったか、喧嘩しっぱなしなんじゃよ……。どうしたものか……」
その話を聞き終わったと同時に家から可憐な少女が出てきた。
その娘はさっきの話に出ていた『アリル』という人物だろう。
「もうシェルなんて大ッ嫌いなんだからッ!」
「……・勝手にしろよ」
レトは、他人事だと思い、その場に立ち去ろうとした。
だが、
「あ、話、聞いたんですか?」
「え、あ、まぁ……」
「お願いですッ!ついてきて下さいッ」
「あ、へ、へ!?」
と、勝手に巻き込まれてしまった。
「あ、あの、迷惑、でしたか?」
「あーいやー……」
つれてこられたのは美しい花が咲き乱れている庭園だった。
カラフルな花があちらこちらで風に揺られながら踊っていた。
「んで、何があったんだよ」
「喧嘩、しちゃって……」
「それは分かる」
「実は、この前、あの少年、『シェル』が街中で女の子とデートしてたの」
「!?」
バトル系の男子にそんな恋愛話はきくのか……。
レトは驚いた。
いきなり浮気の話になるとは……。
「でも、シェルは全く反省しないの。あたし、別にシェルと付き合ってるわけじゃないけど……」
「つまりお前はあの男、じゃなくてシェルが好きなんだな?」
レトは、思ったことを口にしてしまう性格だ。
アリルは顔を真っ赤にさせてしまった。
「あ、わりぃ……」
「ううん、いいの。本当、だから……」
「は!?」
「あたし、シェルが好きなんだけど、全然シェルは分かってくれなくて……」
レトはため息をついた。
しかも深い。
「どうしたら、いいかな?レトヴェールさん」
「レトでいい」
「え……」
「皆俺の事はレトって呼ぶから」
「分かった……」
「やっぱり、素直が一番なんじゃないのか?良く分からんけど」
「素直……?」
「素直な気持ちだったら、相手に伝わるんじゃないかって……」
アリルがまっすぐで綺麗な瞳でレトを見つめた。
(素直な、気持ち__________)
そして、決心した。
「ありがとうレト。あたし分かったような気がする」
「へ?」
「怒ってばかりじゃダメなんだって。自分で、謝るべきだって……」
「そうか」
「うん」
レトがふいにこんな事を聞いた。
「なぁ、シェルは、次元師か?」
「うん」
「人族代表になりたいとか、言ってたか?」
「言ってたな。それで世界の人々を守るのが夢だって、ね」
「そうか。ありがとな」
「ううん、こちらこそ」
「素直な気持ちで謝るんだぞ?」
「うんッ」
アリルは、今まで泣いていた顔を笑顔に変えた。
いきいきしてて、今までで一番可愛い顔だった。
「じゃあね!ありがとうレト!あたし、頑張って素直な気持ちで謝るからッ!」
レトは、軽く手をふった。
アリルは笑顔で町へ戻った。
レトは、アリルがシェルに謝って仲直りできる光景を浮かべた。
でも、その想像が大いなる悲劇を生むとは、誰にも分からなかった。

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