最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第085次元 千年に続く魔人Ⅹ



 すると、すごい勢いで2人の手の間から光りが零れだした。

 「な……、何だッ!?」
 「何……これ……」

 その光りは瞬く間にレトの体を包みだした。
 ロクは、その姿に呆然としていた。

 「……行くぞ、ロク」
 「う、うん」

 2人は呼吸を合わせてまた大きく叫んだ。

 「「雷斬――――――ッッ!!」」

 “雷斬”と呼ばれたその技の名を叫び、ロクは力が抜けたかのように地面に座り込んでしまった。
 雷斬は、どうやら雷を帯びていて、普通の双斬とは何かが違った。

 「……へ?」
 「どうやら、俺の番らしいな」
 「何だと……、両次元ッ!?」

 セルガドウラは目をまんまるにして驚いた。

 「千年間も誰1人として成功しなかった両次元を……、何故ッ!?」
 「それはずばり、あれだな」
 「うん、あれだね」
 「……?」
 「「愛ッ!!」」

 馬鹿っぽく叫んだつもりだった2人の姿を見てセルガドウラが呆れ顔。
 何で、こんな2人に出来たのだろうと不安でしょうがないのだろう。

 「んじゃ、行きますか」
 「いってら~」
 「……ッ!?」
 「雷斬りーーーーッ!!」

 レトが雷の帯びた双剣を横に振るった。 
 すると、そこから弧を描くようにして雷が飛び出した。

 「ぐあああぁぁああッ!!」
 「お、おぉー……」
 「す、すごい……」

 雷斬りは見事にセルガドウラの腹部に命中し、セルガドウラは倒れてしまった。

 「貴様……らぁッ!!」
 「やっべ、怒らせちった」
 「責任取ればかやろー」
 「ロク、お黙りなさい」
 「な……、なんという口調……!?」

 レト、セルガドウラの目の前から一気に駆け抜け、背後にまわった。
 セルガドウラも少し戸惑い、懸命にレトを探している。

 「こっちだぞー?」
 「……なッ!?」
 「八斬切りーーーーッッ!」

 八斬切りはセルガドウラの背中にヒット。
 見事な早業だ。

 「うっしゃ、命中ッ」
 「速い……、何故・・、だ……」
 「俺達が何で両次元できたかなんて知らないけど、とりあえずセーフだな」
 「本当だよねー……」
 
 レトの異様な足の速さにセルガドウラも流石に驚いてるようだ。
 多分、キラーとの戦いで強くなったのだろう。

 「なぁセルガドウラ、そろそろ中にいる子供、出してくれない?」
 「出してたまるか……ッ!やっと手に入れた魂なんだッッ!!」
 「何のために、千年間生きてきたんだ?」

 レトは、セルガドウラに問い詰めるようにして話し始めた。
 雷斬も、手を下ろしているかめに使わない気だろう。

 「何、だと……?」
 「今まで、何で生きてきたんだ?」
 「そんなの、死ねなかったからに決まっているだろう?我は封印されていたのだ……」
 「その封印、解こうと思えば解けるだろ?何でそうしなかった?」
 
 セルガドウラの口が、その一言によって閉ざされた。

 「……何でだよ」
 「我は千年間、この泉の下でずっと眠り続けてきた。そうすれば、いつか会えると思っていた」
 「いつか?」
 「人間によって処刑されてしまった、あいつに」
 「ま、さか……」
 「我はフェアリーの笑顔が誰より好きだった。もう千年間も待ったんだ、あの日から」 
 「あの日?」
 「フェアリーは、処刑される前日、我にこう言った」

 『またいつか会おうね。絶対に約束、だよ?』

 「と。だから、まだ我は待つ、千年経った今でも、この、この土地で」
 「そうか……、それで……」
 「ねぇ、セルガドウラ」
 「……何だ?」
 「その約束、あたしが果たしてあげる」
 「はぁ!?」
 「何、だと……?」
 「いつか、何年経っても、あんたの目の前にフェリーを連れてきてあげる、約束ッ!」
 
 ロクは、笑顔で小指を差し出した。
 セルガドウラは、いつかこんな笑顔を見た事があると、呟いた。
 
 「……その笑顔、そっくりだな、フェアリーに」
 「へ?」
 「澄んだ汚れのない緑色の髪。首にかけていた何よりも輝いていたペンダント、そして……」
 「……?」
 「誰にも負けない、優しく偽りなき笑顔」
 
 セルガドウラは、さっきまでレトに殺気を向けていたが、今では優しい表情になっていた。

 (そして何より、その台詞――――――――)

 「セルガドウラッ!!」
 「……?」
 『絶対に約束、だよ?』

 フェリーの台詞を、ロクが告げた。
 千年も待っていた、心優しき魔人に。

 「そうか……、では、破るでないぞ?名も知れぬ娘よ……」
 「うんッ!!」
 「それでは、魂だけでもここに残そう。子供の若き魂は返す」
 「ありがとうーッ!」
 
 セルガドウラの体から、す……っと子供が出てきた。
 セルガドウラは眠るようにして、目を瞑っていった。

 (ありがとうな……―――――――――、心優しき人間の娘よ)



 
 「ん……ぁ……?」 
 「お、目覚めたか」
 「良かったーっ」
 「此処、ど、ど何処ですかッ!?」
 「洞窟だ。よかったなぁ、無事で」
 「た、助けてくれたんですか……?」 
 「あぁ、それが任務だし」
 「まぁお礼なんぞいらんぞよ」
 「お前が言うな」

 レトとロクは、リルダという少年を助け出した。
 くるくる天然パーマにおどおどとした性格、まるで女の子のようだ。

 「あ、ありがとうございますっ!」
 「でも、こっからどうやって出るかなー……」
 「横に道でもないの?」
 「さっき見たら俺らの戦闘のせいで崩れてた」
 「あ」
 「あ、大丈夫ですよ」
 「「?」」
 「僕が、出してあげますっ!」

 リルダは、まるで少女のような可愛い笑顔で微笑んだ。
 
 
 ……何でレトとロクが両次元を成功させたのか、分からない気もしない。
 何故なら2人は、成功させたい気持ちより、2人が義理の兄妹という事以外考えてなかったからなのだ。 
 もし、何にも考えてなく、成功ばかり考えていたなら、きっと成功などしなかった。
 だが2人は千年の長き時の渡りにつれ、その神業を成功させてしまったのだ。

 ゆるく、お互いを強く思うという曖昧に繋がった絆で。