最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第180次元 魂の決意



 「お、お前、ら……っ!?」
 「はっはーん、まさかお前、びっくりしてんの?そうだよ、そうだよなぁ?お前ら2人の為にわざわざ来てやったんだからよ」

 サボコロは愉快そうに口元を歪ませて、レトの驚く顔を見て楽しんでいた。
 今此処で絶体絶命の危機に迫られていた2人に与えられた…希望。
 その希望がたった今―――目の前に立っている。

 「ねぇ……」
 
 ロクは震える声で、冷たい汗の流れるその焦った顔で、困るようにしてそこにいる全員に尋ねる。
 口元を小さく開き、まるで幼い子供のようにその機械の目を皆に向けた。
 
 「どうして……――――――――?」

 それ以上何も言えなかった。
 どうして助けに来てくれたのか、なんて。
 言える筈もなかった―――。
 
 「ど……どうしてって……」 
 「そりゃぁ……ねぇ??」
 「僕達……此処にいる全員は、貴方に助けられたのですよ?――――――、ロク」
 「え……」

 ロク本人も思わず声を上げた。
 ガネストの一言に、なんの狂いも誤算もない。
 気付いていないだけ―――――――、ロクは知らず知らずのうちに蛇梅隊の中を明るくしていったのだ。

 「僕とルイルはお互いに素直になる事を、貴方に教わったんです」
 「うん、そのおかげで今じゃこの通りだもんねっ!!」
 「俺はそうだな……、1人でいちゃ、意味が無い事。……もっと早く、前に進む冪だったよ」
 「私は特に助けられてないけど……強いて言うなら姉さんの性格を戻してくれた事……、それは感謝すべき事だわ」
 「あたしは勿論、あの実験の時……。ロクちゃんが仲間だよって言ってくれたから……だから信じられるって思ったの!!」
 「ぼ、僕は……、本当の強さの意味、ロクさんが一生懸命僕に、お、教えてくれました・・っ」
 「私、命がけでロクさんに守ってもらいました……っ、死んでいたかも……しれないのに」

 1人1人ロクに助けられたことを述べていると…後ろの方から3人の姿が現れる。
 今ではお馴染みのメンバーとなった…サボコロ、エン、キールアの3人だ。

 「俺は笑顔になる事だな!!、苦しんで笑ったって意味なんかねぇって、教わった」
 「……俺は単に、無理やりにでも俺の心を取り戻そうって必死になってくれた事だ……おかげで今は心がある」
 「あたし……あたしだって、そう。初めて友達になってくれて……本も探してもらって。感謝しきれないもん……っ!!」

 此処にいた計10名全員が、目の前でロクに微笑んでる。
 レトに、じゃない。
 救ってくれた感謝の言葉を乗せて、1人1人、ロクに思いを告げて言った。
 それは言葉だけじゃ伝わらない。
 自分達を救ってくれたロクを次は自分達が救ってみせると―――――、そう、その顔が物語る。

 「おっしゃあ!!!皆、一暴れしてやろうじゃねぇか――――ッ!!!!」
  
 サボコロが大々的に拳を上げてそう叫ぶと…。


 「おっと……じゃあ俺達も混ぜてもらおうかな?」


 「「「「「―――――――――――ッ!!!??」」」」」

 
 何処からか…大人びた声が聞こえた。
 その声の主を探るべく全員がきょろきょろと首をまわして周りを探すと―――――。

 「よ……久しぶりだな、レトヴェール?」
 「な……、なな……!!?」
 「俺の顔忘れちまったかそうかそうか、じゃあキールアは俺の嫁に―――――」
 「シェルとしゃ……シャラル―――――ッ!!?」

 聞き覚えのある名前が大きく響き渡る。
 そう…、嘗てレトがレイチェルの街と、その隣町で出会った2人。
 シャラル・レッセルとシェル・デルトールだ。

 「お、お前らまで……何で此処に……!?」
 「何でって……丁度通りかかったんだよ。それに俺達、偶然にもあの後会ったんだよ」
 「てか、偶然にも偶然重なったっていうか……」
 「んで、お前に出会った者として意気投合した訳だ」
 「まぁシェルは俺らより年上だけどな」
 「……なんか、……もうごっちゃごっちゃ……」
 「それより、そろそろ出てきたらどうだ?岩の後ろにいる双子さん?」

 シェルがそう言って岩の方へとちらっと目を向けると、そこから現れたのは薄い青色をした髪の双子の兄妹だった。
 少女の方は少し頬を膨らませて膨れっ面をしていて、兄の方は少し汗を流して苦笑いをしていた。
 
 「あ……!?」
 「どうした、ロク」
 「リリアンと……リリエン?」

 少女は膨れっ面を止める事なくそっぽを向いた。
 ロクが蛇梅奪還の為に処刑場まで行って、そこで一戦交えたあの双子の兄妹だ。
 妹のリリアン・エールと兄のリリエン・エールだ。

 「何で……?」
 「別に来るつもりはなかったんだけどぉ……、リリエンがい、行くって!!」
 「えぇー!?お、俺じゃなくて……リリアン、だろ?」
 「……~~~っ!!どっちでもいいの!!兎に角、あの時貴方に言われた事、まだ覚えてるんだからぁっ」
 「あたしが……言った事?」
 「動物の大切さ。何も喋らなくたって、生き物は生き物。大切にする冪存在なんだって、貴方に教わったのっ!!」
 「あ……っ」
 「そのおかげで良心目覚めちゃったじゃないの、バカァ!!!」
 
 よく理解できない怒り方をする少女だな、とレトも心底思う。
 顔を真っ赤に染めて怒り出した少しルイル似の口調の少女は、またぷいっとそっぽを向く。

 「だから……、だから私達も戦わせてほしいの」
 「俺達だってまだ、お前の事忘れた訳じゃない。……手伝う事があるなら、やるよ」
 「2人とも……」
 「にしても相変わらず身長伸びないんだな、ロクアンズは」
 「な……!!?そ、それは余計だァッ!!!」
 
 つい先程まであんなに暗い空気に打ちのめされていたこの砂漠地帯。
 それが、たった1人の少女為に集う次元師により今、最高の場所となる。
 だがその姿を見ていた剣闘族の男は声を震わせて…、

 「ふざけるなぁ!!!何故そんな神を助ける必要がある!?お前らを騙し、人間の敵のフェリーを、何故!!!」

 焦った口調で、汗の滲み出る拳を握りながら懸命に男は叫んだ。
 だが聞いていた次元師達は見向きもしない――――――寧ろ。

 「ばっかじゃねぇーの?」

 サボコロは、そう笑って言い放つ。
 男の心そのものを突き放すかのように冷たく鋭い、尖った口調で言い放つ。
 
 「言っただろ―――――、俺達はロクやレトに救われた存在だと」
 「その存在に対してどんな感情を抱くかは己の自由」
 「よって僕達次元師の選択肢は1つですよ――――――、哀れな剣闘族さん?」


 その瞬間、次元師達の魂を燃やすその感情が表れ、形と成す―――――――っ!!。


 「行くぜ皆―――――――――――――、派手に暴れてやろうじゃねぇかッ!!!!!」

 「「「「「「「「オォ――――――――――――ッ!!!!!」」」」」」」」