最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第013次元 元霊



 「第七次元発動______」
 「待てよ!おい!」
 「氷撃ーーーーッ!!」
 
 シャラルの呪文がレトに直撃する。
 レトは、木にぶつかってそのままズルズルともたれていく。

 「意地でも、やる、ってか……」
 「あぁ、本気で来い、レトヴェール」

 さっきまでのシャラルのまぬけさが一切感じられない。
 それどころか、何処か殺気を放っているようにも感じる。

 「んじゃあ行くぜ、双斬!」
 「あいあいさぁー♪」
 
 その可愛らしい声と共にレトの背後から現れたのは、レトの次元技、『双斬』だった。
 次元技は普段、このような精霊の姿をしている。 
 でも、次元技が精霊の姿で現れるのは、最も偶然に近いと言われている。
 レトはその偶然にあたって、このやんちゃでおちゃめな男の子に出会った。

 「双斬、いっきにいくぞ!」
 「な、なんだそいつは!?」
 「こいつは俺の精霊だ」

 精霊。
 簡単に言えばそうなる。
 だが、本来の名は『元霊』
 千年前の戦争でも戦った次元師だ。
 なんと千年前の次元師が次元技となり現れた。
 その理由は誰も知らない。
 ロクの次元技も元霊なのだ。
 兄妹が二人とも元霊に当たっているとは、
 誰も偶然とは思えない。

 「精霊、か。珍しいな」
 「いくよー!レト。僕の力を見せてあげる!」
 「連続切りーーーーッ!」

 いつの間にかレトは呪文を唱え、双斬は武器になっていた。
 
 「なぁシャラル」
 「なんだ!」
 「お前、蛇梅隊に入ったらどうだ?」
 
 周りの空気がしんと静まり返った。
 シャラルも一旦攻撃をやめた。
 
 「嫌だね!誰があんなとこ……!」
 「楽しいぞ?愉快だぞ?」
 「あんな所、不愉快だ!!」
 
 シャラルはレトの襟元を掴んだ。
 そして、上へとあげる。

 「レトッ!」
 「俺は、嫌なんだよ。ああいう所が」
 「あそこは、お前が思ってる以上にいい所だ」
 「根拠はあんのかよッ!!」
 「あぁ、ある」

 レトは、全く揺るぎもせず、そう答えた。
 
 「蛇梅隊は人を助け、人と協力して、人と戦う」
 「だからなんだって……!」
 「お前、どっちがいい」
 「!?」
 「隊長に命令されながら元魔を倒し、人々を幸せに導くか、自分の意思で元魔を探し、わずかな情報だけで神族を目指すか」
 「……・」
 「俺は、隊長に命令されてでも、人々を助ける事を選んだ」
 「何だよ、その選択肢は……」
 「まぁ俺に決める権利はない。お前の、自分の意思で決めろ」
  
 レトは、シャラルの手を振り解き、シャラルに背を向け帰ろうとした。
 
 「待てよ……!」

 レトは、最後に何か紙にメモをして、シャラルに投げた。

 「お前の意思で決めろ。俺は止めたりしない。自分のやりたいようにやれ」

 レトはそう言い残して、キールアの家へと颯爽と足を運んだ。

 「自分の、意思で……」
 
             *

 「あれでよかったの?レト」
 「あぁ、あれが一番良い」
 「そっかぁ」
 「っていうかお前そろそろ戻れよ。実体化すると長くもたないぞ?」
 「大丈夫!レトの元力が上がれば上がるほど、僕の実体化時間が長くなるんだ」
 「そうかい」

 果たして、シャラルは蛇梅隊に来るのか。
 それとも、自分の意思で、元魔を倒し続けるのか。
 どちらにしても、レトは良いと思っていた。
 そんな時、レトのお腹が鳴った。
 
 「腹、減った」
 
 そして、朝ご飯と昼食を食べるために、キールアの家へと、一っ走りするのだった。