最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第161次元 白銀の少女Ⅰ
「ミルっ!!ねぇ見て見て!!」
今から約、10年前。
センター外れの古びた研究所。
そこであたしは拾われた。
拾われたというか……簡単に言えば、“回収された”。
研究所の近くにある小さな村。
そこであたしは産まれたんだ。
でも、産まれて4年―――――4歳の時に捨てられた。
それはあたしが、次元師だったと知ってしまったから。
それから村の人々はあたしを忌み嫌うようになった。
幸福と処罰を与える次元技を持つって……怖がられた。
その村で唯一の、次元師だったから。
「どっか行けッ!!」
「この化け物ッ!!!」
「早く此処から出て行ってッ!!」
何度も……言われてきた。
“化け物”って言われた時は、正直辛かった。
次元師なだけ、少し人間から外れているだけ。
それだけで、“化け物”にされたんだもの。
あたしだって……すぐに消えたかった。
誰もいないところで、静かに生きて。
誰にも会わずに……死んでいきたい。
そんな願望も、
あの男のせいで打ち消された。
「さぁ―――――来るんだ」
無理やり引っ張られて連れてこられたその先は、
多くの子供達が集められた――――研究所だった。
あたしはそこでも、嫌われてた。
子供達全員は次元師じゃない。
だから……妬まれた。
「あいつ……次元師らしいぞ?」
「ホント?いいの?次元師がいても……」
「良い訳ないじゃん。……何でいんだろうーな」
微かに聞こえる……子供達の声。
あたしと同い年の子も多いのに、
あたしは何処に行っても嫌われるんだな……って。
そう思ってた、矢先だった。
「ねぇねぇ、君新しく入ってきた子!?」
瞳をキラキラさせて、わくわくしてる顔をして。
興味津々であたしに話しかけてきた。
純白の短い髪を揺らして、
黒い淵の真っ赤な眼鏡越しに、
あたしの事を珍しそうに……顔を覗き込んできた。
「私、【HL124】の、ハルって言うんだっ!」
【HL124】っていうのはきっと……実験番号。
あたしは確か……。
「君の腕、【ML368】って刻まれてるねっ」
「え……あ、まぁ」
「368って……もしかして368人目??」
……益々意味が分からなかった。
この子は……一体誰なんだろう。
あたしを見て、怖くないのかな?なんて。
ずっと……考えてた。
「私、名前付けてるんだ!!ほら、“HL”とかじゃ、可愛くないでしょ?」
「……」
「だから、ハル!!へへっ、自分で付けたんだよ?」
「……そう、なんだ」
「もうーっ、もう少し話そうよっ!!君、名前まだないの?」
「まぁ……」
「“ML”だったよね?……んー……今付けられてない“ML”の読み方と言えば……」
女の子はんー、っと、ずっと唸っていた。
名前なんて……別にいらないのに。
このままで、良かったんだけど。
「あっ!!【ミル】ってのはどう!?ミル!!、ミル・アシュラン!!」
「……ミル、アシュラン?」
「アシュランっていうのは、あたしが此処に来る前の、お母さんの姓……だったかな?ほら、姉妹みたいでしょっ!」
ミル……アシュラン。
それが……あたしの名前?
別に……付けてほしくなかったのに。
「あ……っ」
あたしはその場を離れた。
何も言わないで、何もしないで。
ただ……あの子から離れたかった。
どうして……あたしが怖くないんだろう?
「はぁ……」
友達なんて大層なもの持ってないし、
ましてや人間関係なんて……築いた事もない。
人と真正面から話した事もない、
人に……触れた事すらない。
それなのに……。
ハルって言ったかな、あの子の名前。
唯一、あたしに話しかけてきた女の子。
苦しくないのかな?実験が……嫌じゃないのかな。
あの子とは、話したくないかも。
あたしと一緒にいてもつまんないだろうし、面白い事も言えないし。
無理に構ってくれなくても……良い。
「う……ぁ……ァァァぁああァぁッ!!!!」
この研究所に来てから、何度も実験を繰り返してきた。
それも……あたしだけ、特別な実験。
ここの実験の目的を、1度だけ聞いた事があった。
【十一次元覚醒実験】
そう……今、この時代では多くの次元師に関わる実験を繰り返している。
その中でこの第二研究所では、“十一次元”という未知の次元の覚醒を待ち望んでいた。
他にも、人造的な次元師の製造や、神族を創りだす実験とか……色々。
あたしは沢山あるうちの1つ……“十一次元”の実験に巻き込まれたという事。
十一次元なんて、有り得ない。
普通の人間の次元師が行えるのは、十次元の発動まで。
まさか十一次元なんて……考えた事もない。
そんな多大なる力を、どうやって人間のような小さな存在に取り込むんだろう。
そうする為には……どうすればいいのか。
全く関係のない子供達まで巻き込んで、出来る事なのか?
なんて理論は簡単に出来上がるけど、
あたしは今、そんな事を考えている余裕はなかった。
毎日毎日……あの子があたしの目の前に現れる。
「見て、ミル!!ほら、とっても綺麗な花だよっ!」
「ミル~、私お腹すいたぁーっ」
「ミルミル!!ねぇ、ミルってばぁっ!!」
ずっと……考えてたんだ。
あたし、どうするべきなのかなって。
本当は……あたしだって友達が欲しい。
同い年で、何でも語り合える、安心の出来る存在が欲しい。
そう……もし、それを望んで良いのなら、
あたしのような化け物でも――――――友達をつくることが出来ますか?

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