最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第144次元 偽者



 ガキィィィンッ!!と響き渡る鋭い金属音の音。
 レトは力の強さに圧倒されて遠くへ引き下がった。

 「待て待て待て待て!!ちょっと待てよ!!」

 レトは手を突き出して偽者レトに向かって言い放った。

 「……なんだよ」
 「なんだよ、じゃねぇよ。お前誰だよ!!」
 「誰って……お前だけど?」
 「嘘だろ……」

 目の前には自分そっくりの人物が立っている。
 これは夢ではない。
 レトは激しく目をこすったが、
 やはり目の前に映るのはもう1人の自分。
 現実だという事を、目に焼き付けられる。

 「ちくしょ……」
 「どうしたどうした?早く始めようぜ?」
 「うっせぇな。ったく……調子狂う」
 「んじゃっ!!」

 ダッ!!と迫ってくる偽者に戸惑いを見せながらも、必死に逃げるレト。
 だが偽者は躊躇なくレトを襲う。

 「逃げてばっかじゃ……戦いにならねぇぞ!!」
 「うぉ!?」
 「……なぁお前」
 「?」

 偽者の攻撃をかわし、レトは宙を舞って見事着陸した。
 両者とも、一旦双斬を下ろした。

 「……何だよ」
 「お前、何になりたい?」
 「は?」
 「何でも良い。代表でも支配者でも……何でも良い」
 「お前、俺なんだろ?分かるんじゃねぇの?」
 「……面白いな、お前。良いだろう」
 「……」
 「代表だろう?人族代表」
 「……ビンゴ」
 「でも何でだ?」
 「……は?」
 「何で、人族代表になりたいと思った」

 暗い闇に包み込まれたこの無次元で、
 一瞬だけ、時が止まったような、

 そんな感じが漂った。

 「え……」
 「理由だよ。さぁ、何でだ?」
 「……正義だよ」
 「正義?」
 「この世の正義……俺が世界に見せ付けるんだ」
 「何があったか知らねぇけど、良い目標だな」
 「そりゃどうも」
 「でも、今のお前じゃあ、無理だな」
 「は?」
 「今のお前じゃな」

 そう言って偽者は新たに動き出し、
 レトの元へと走り迫ってきた。

 「ッ!?」
 「遅いぞ、俺」

 ザグシュッ!!!!

 「ぐぁッ!!?」
 
 双斬を横に振り、レトの腹部を裂いた。
 とっさに避けたからいいものの、
 掠っただけですんだ。
 だがその傷は大きく、レトは必死に腹部を抑えていた。

 「く……ッ!!」
 「どうしたどうした?代表になるんだろ?」
 「そうだ……」
 「ま、今のお前じゃあ無理だけどな」
 「それ……どういう意味だよ……っ」
 「それは自分の頭で考えろ!!」
 
 躊躇なく襲ってくるレトの偽者。
 偽者が言った意味は…一体なんなのだろうか。

 ただ偽者は笑い、レトの事を見下した目で睨んでいた。