最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第109次元 夢×嘘
『あいつが――――――――――――――――――――――――――――、神族だなんて』
朝、小鳥の囀りで目を覚ましたロクの顔はいつもと何かが違った。
昨日の事だろう。
(昨日……、何があったんだっけ)
そう、ロクはあのあと衝撃に耐えられなくなり、その勢いで自室に逃げ込むようにして帰った。
衝撃的すぎるその現実に目を背けたロクはそのまま眠ってしまった。
「おいロクー、起きてるかー?」
(ッ!?、レト!?)
「う、うん……」
「何だ元気ねぇなー、悪い夢でも見たか?」
「そ、そうかも……」
「んじゃ依頼室で待ってっから朝飯終わったら来いよー?」
「……うん……」
昨日はあれほど悲しい顔を浮かべていたレトは、まるでなかったかのようにけろっとしていた。
無理もない、ロクが聞いていたなんて知らなかったのだから。
ロクは大きくため息をついて隊服を羽織ろうとした。
「あたし……、神族だったのかな」
あの言葉に偽りさえなければそうなる。
だがロクは必死に考えた。
寧ろロクは全く驚くようも見られない自分に腹が立っていたのかもしれないが。
「昨日のって……、夢、だったのかな」
夢だと信じたい、夢であってほしい。
ロクは心成しか心底強くそう思っていた。
「遅いぞロクー。あ、まさかまたおかわりしてたのか?」
「い……、いや……、まぁねッ」
「……?まぁいいや、さっさと決めちゃえ決めちゃえ」
「どれに……、しようかなぁっ」
「……?」
流石にレトも気付いたのだろうか、ロクの無理ある笑顔に。
昨日の事を嘘だと、夢だと信じて、ロクは空元気を続けた。
レトもロクのその表情に違和感を抱いた。
「どうしたんだ?ロク」
「え?な何が?」
「何がって……、妙に空元気に見えるぞ?」
「そう?いつもと変わんない、き、気がするなぁー……ははは」
「なんかあったら言えよー?義理だけど一応兄なんだし」
「うん、何か、あったら、ね……」
もうとっくに悩まされているのだ、その張本人に。
そうロクは心の中で呟いて、A級の依頼書を手に取った。
未だにSやGには挑まないらしいが。
「あ、ロク、レトー」
「おー、キールアか。ってか何で此処にいるんだ?」
「医療部隊も何かと任務あるらしいわよ。出張治療だけど」
「あぁ、そゆことね」
「……ねぇ、レト」
「ん?」
「ロク、なんか可笑しくない?まさか……」
「バーカ、昨日ロクはぐっすり眠ってただろ?聞いてるわけねぇって」
「それなら……、いいんだけど」
「まぁ俺に任せとけって、今から任務行くし」
「朝からあんたらは大変ね。あたしには真似できないわ」
「真似しなくてもいつか忙しくなるからなー?次元師は」
「あぁ、そう」
「ロクーっ、行くぞー?」
「はぁーいっ」
ロクと共に任務へ出かけるレト。
その顔は昨日の事を覆すような笑顔だった。
キールアは未だに不安を抱いていたらしいが。
「今回はわりと簡単だったな、ロク」
「うん、だって『元魔に盗まれた宝石を取り戻してくれ』だったんだもん」
「あんなの元魔の能力分かってりゃ1発だな」
「だなだな」
任務の帰還中、2人は今日の任務について話し合っていた。
「それにしてもあの元魔まぬけだったなー」
「そうそう、だって自分からこけたりしてさ。あぁいう個人差とかもあるんだね、元魔って」
「損な性格してるぞあの元魔。おどおどしてたし。同じ元魔でも違うのなぁー」
「あの新元魔が現れたっていうことは任務にも出されるかもしれないから要注意だね」
「だな。新元魔の時は疲れたし、今まで以上に体力も元力も消費した。
もう2度とあんなのと戦うのはごめんだなー、俺のんびりやりたい派だし」
「同感ー、あたし……も―――――」
ズキ――――――ッ!!!
「うぁッ!!?」
「どうした?ロク」
「い……、いや……、痛い……」
「!?、ど、何処だ!?」
「頭が……、また痛い……」
(何で……、どうしてあたしなの……?)
「分かった、今から本部に急いで戻るからそれまで我慢しろよ?」
「う……、うん」
ロクは昨日と同じく痛くなっていく頭を抑えた。
(何で……?昨日も、昨日も痛かった……)
頭が痛くて何も考えられなかったロクは、がっしりレトの捕まっていた手を、離しつつあった。
その事に気がついたレトはとっさに後ろに向いた。
「ロク……?」
「ごめ……、あたし……、……痛ッ!!!」
「耐えろ!!あと少しで……」
(どうやらあたしは……、本当……、に――――――――)
ド・・・、サ――――・・・、
「おい……、ロク!!返事しろ、ロク!!」
―――――――――――――神族、なのかも……、ね……

小説大会受賞作品
スポンサード リンク