最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第062次元 殺人鬼、キラー



 「……レト?」

 真っ暗な部屋で机の上に本とペンダントを置き居眠りしていたレトはロクの声で目を覚ました。
 寝ている間に朝になっていたのだろう。

 「おわぁ!?、ろ、ロクか……」
 「おはよう。そして何であたしのペンダントを持ち出してるのかな?」
 「ちょっとな。気になる事があって。あ、その件に関しては謝るよ」
 「……んで、その気になる事って?」
 
 ロクに質問され、レトが机の上にあった本を差し出した。
 そして、ロクも頁をめくろうとした。
 その時、本の1頁目が光り始めた。
 それもものすごい勢いで。

 「な、なんだ……!?」
 「ちょ……、何なの!?」

 カ――――・・・・・・ッ
 やがて光はおさまり、本は元に戻った。
 レトが恐る恐る本を開き、1頁目をめくった。
 するとそこにはなにやら難しい文字が並べられていた。

 「この字……、前にもあったよな?」
 「あたしが、読める字だ……」
 「なんて書いてある?」
 「え、とね……」

 今日は、町で素敵な人と出会った。
 素敵な素敵な男性。
 一目惚れって言うの、かな?
 すごく、かっこよかった。
 もう一度会いたい。
 名前、聞き忘れちゃった。
 今度会った時、名前聞こうかなぁ。

 「なんだ、これ」
 「良くわかんない。っていうか書いてあったのをそのまま読んだだけだよ?」
 「日記っぽいな」
 「誰の本か書いてないの?」
 「いや、フェリーのっぽいんだ」
 「フェリーの!?」
 「あぁ、一番後ろに【FERRY】って書いてあった」
 「へぇー……」

 この本がもしフェリーのだったとしても、
 フェリーは千年前の人物。
 こんなに古いが、残っている可能性など少ない。
 それが何故、蛇梅隊の図書室の奥の方にあったのかも不思議だった。

 「でもさ、フェリーなんてこの世に何人いるんだろうって感じにならない?」
 「確かにな。だから違う人かもしれないし」
 「……何だろう、すごく不思議な感じがする。ほら、前にもこの文字の看板見つけたじゃん」
 「あぁ、その時お前はあの文字が読めた……、つうことは……?」
 「あたし、何で千年前の文字が読めるの!?」
 「そこが不思議なんだよなぁー」
 
 うーんと唸るように腕を組み考えたレトとロクはとりあえずコールド副班に報告するようにした。
 その後も任務に行くため、本を部屋に置き去りにして出て行った。
 
 真っ白で気が遠くなるような長い廊下。
 そこで2人はフィラ副班とばったり会った。

 「あ、2人ともおはよう。どうしたの、そんな疲れきった顔しちゃって」
 「あぁ、ちょっとね」
 「あ、まさか人生を歩むのに疲れちゃったとか?だめよー、まだ若いんだから」
 「違うし、何か別の方向に持っていってるだろ」
 「ふふ、じゃあね。あたしもこれから予定あるから」
 「分かった。じゃあな、フィラ副班」
 「ロクもね」
 「はーい」

 廊下で2分くらいフィラ副班と話し、また任務室に向かう。
 任務室のドアを開けるといつもと同じく騒がしく、いつもと同じ光景を見せている。

 とそこで、レト達の前に班長があらわれた。
 何か用があるのか、コーヒーも飲んでない。

 「……2人に話がある。ちょっと班長室へ来てくれ」
 「いい、っすけど……」
 「は、はい」
 
 班長に連れて行かれ、2人は班長室に向かった。
 レトとロクは入るのが初めてだったため非常に驚いた。
 とても綺麗に本や書類が整理されていたので、2人とも驚いた。
 だが、良く見るとところどころにメイド服があったのに気が付いた。
 
 「帰ります」
 「待て待て待て!無反応じゃちょっと寂しいよー!いや、この服で変な事とかしないから!」
 「んじゃ何してるんですかこの部屋で。ルイルでも連れ込んで変な事してるんだろ?」
 「してないしてない!前はちょっとルイルつれてきたけど……」
 「ロク、帰るぞ」
 「任務で忙しいもんね」
 「分かった分かった!ちょっと隊長から緊急任務がお前らにあるんだよ!」
 「……緊急任務?」
 「あぁ、ついこの間、町で連続殺人事件が起こったんだ」 
 「いつ!?」
 「お前らが任務に行ってる時だ」
 「誰が犯人だか分かってるのか?」
 「実は、あの『剣闘族』の殺人鬼、『キラー』だそうだ」
 「き、らー?」
 「あぁ、お前らはまだ知らないだろうから教えておく。ここらへんじゃ有名な殺人鬼、キラーだ」
 「何でそんな奴がここに?」 
 「さぁな。でもあいつら剣闘族は気に入らない存在は全て打ち消す最悪最低の一族だ」
 「どんな姿をしてるの?」
 「金髪の赤目。少し背が高く背中にものすごく大きな入れ墨があると聞いたな」
 (金髪の……、赤目?)

 レトは何か思い当たる事があるのか頭を抱えた。
 金髪の赤目の殺人鬼キラー。
 一体どんな人物なのか。

 (まさかこの間町で会ったあの男か……!?)

 そう。
 レトが第一図書館に向かう途中にすれ違ったあの男。
 あいつが殺人鬼、キラーなのか。

 「その殺人鬼をあたしらにどうしろと?」
 「捕らえて欲しい。殺さなくて良いから」
 「捕らえろ、ねぇ……」
 「そんな悪人、どうやって捕まえるのさ」
 「お前らの実力にかけて隊長がお願いしたんだ。受けてくれるな?」
 「……はいはい」
 「そんじゃいっちょやりますか!」
 「お前らがそういう奴らで良かったよ。頼んだぞ、レト、ロク」
 「「はい!」」

 町に突如現れた謎の殺人鬼。
 キラーを捕獲し蛇梅隊に連れて来いという命令を、レトとロクが受けた。 
 この世で最も神に近い存在。
 それが剣闘族と言われてきた。
 剣闘族に逆らう者はいない。
 だが、剣闘族はただの人殺しの一族だった。
 剣闘族に逆らった者は殺され、
 また剣闘族のターゲットとなった者達も、殺される。
 
 (金髪赤目の殺人鬼……、あいつがキラーか。でも、何でこの町に来たんだ……)

 レトは不思議思った。 
 その殺人鬼が何の目的でここに来たのか。
 それは一族のターゲットの人物がここに存在するからか。 
 それともただたんに殺人鬼として、町を荒らしに来たのか。
 これ以上犠牲者を出すわけにはいかない、とレトは心の中で思っただろう。