最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第151次元 仲間



 「「雷撃ーーッ!!!」」

 2つの雷の塊が交差する。
 何度繰り返しているのだろうか。

 「……っ!!」
 「もうギブアップー?早すぎだよ~?」

 偽者はまるで嘲笑うかのように高笑いをした。
 ロクは流血し続ける腕を抑えてもなお、立ち上がった。
 
 「こんな実力じゃ人間を護るどころか、神さえ倒せないよ?」
 「そんなの……あんたに関係ないっ!!」
 「だってあんたはあたしで、あたしはあんた」
 「……」
 「関係ないはずないもんねー?」
 
 偽者がにっと笑ったとき、
 素早くロクの背後に姿を現した。
 殺気を感じてとっさに避けたロクの息は、もう既に荒かった。

 「……ねぇロクアンズ」
 「……?」
 「人間ってさ、何だと思う?」

 飛んだ質問に、ロクは少し戸惑った。
 偽者から出た言葉の意味が、理解できないのだろう。

 「……どういう事?」
 「つまり、人間ってのはさ、何のために生きて、何のために死んでいくモノなのかって事」
 「……そんなの、簡単じゃん」
 「へ?」
 「それを見つけるために生きて、限界まで生きて……死んでいく。人間は素晴らしいモノだよ!!」
 「……それ、本当に言ってんの?」
 「え……?」
 「人間ってのは弱いから集団で行動して、過ちを犯すから心が歪む……弱い生き物だよ」
 「違う!!人間は弱くない!!」
 「……」
 「1人じゃ何もできないから、仲間がいる。過ちを犯しても……また何度でも立ち上がれるんだよ!!」
 「違うね。人間は弱いもの、1人じゃ何もできない?それは小さい子が言う“言い訳”だよ」
 「言い訳なんかじゃない!!足りない部分を補って、支えて生きていく……それが生きる理だよッ!!」
 「……生きる理……か。でもそれって実際さ……」 
 「……」
 「――――弱いから、頼ってるんでしょ?」
 「――――――ッ!?」

 ロクが一瞬油断した隙に、
 偽者はロクの腹部を、素手で貫いた。

 「――――――ぐはッ!!!」
 
 口から多量に溢れだす、真っ赤な血。
 止まる事もなく、川のように流れる。

 「あーらら……神族の前で油断は禁物だよ?」
 「……ぐ……くぁ……ッッ!!!」

 ずぶッっという音をたてて偽者は腕を引っ込めた。
 ロクの体中を駆け巡る衝撃は、もう立つ事もできない程の痛みを覚えさせた。
 床に倒れたロクは、それでもまだ、

 弱い力で、偽者の靴にしがみついた。

 「……だ……わって……ッ!!」
 「そんな体になっても、まだ戦う?」
 「戦……なきゃ……意味……な……ッッ」
 「ロクアンズってさ」

 偽者は、微笑みながらしゃがみ込んだ。

 「人間に、見放されてるんでしょ―――――?」
 「――――――ッ!!?」

 偽者が再度告げる、 
 ロクの心の大きな傷。

 「街でぎゃーぎゃー言われて、仲間からも見放されて……君には兄と幼馴染だけ」
 「……ち……ぁ……」
 「それで――――――、本当に人間を護る権利が、君にあるとでも……?」

 “権利”
 唯一、人間が誰しも欲する、欲望の塊。
 ロクが逆らう事のできない、絶対的な壁。

 「権利がない君に、人間が護られて嬉しいの?……それとも名誉が欲しいだけ?口だけ?」
 「……ち……が……」
 「言えないでしょ?人間の本音を聞いてるわけじゃないのに……言い張れないでしょ?」


 『帰れ!!帰れ!!!』


 『神族の場所があるんでしょう!?』


 『ロクちゃんだったなんて……ショックだよね』


 『騙してた……って事なのかな』

 
 『仲間だとは――――認めんがね』




 ドクン……


          ドクン……


 (あたしは―――――――――――)



 その時、


 静かにも、哀れな者を見るかのように、




 (―――――――――――――仲間じゃ、ないんだ……)




 偽者は、一撃を放ち、


 その不適な笑みで、





 微笑んだ。