最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第133次元 冷たき瞳の言葉Ⅲ



 ロクが何を言い出すかと思えば、かなり無茶な事だった。
 レトはもう追いつけないと踏んだのか、1人でそっと自室に戻った。

 「あれ?レト?」

 ロクが気付いた頃にはレトは自室に静かに寝息を立てていた。
 シャーッっとロクは頭を掻き、堂々と食堂の中央を通って食堂を後にした。

 

 「何なんだよ……あの野郎」

 廊下でぽつりと何か呟いたのはさっきまで食堂でロクと喧嘩していたラミアだった。
 ロクが気に入らないのか、さっきから舌打ちしか繰り返していない。

 (あんな……あんな……)

 ラミアは、持っていた1つの紙切れをぐしゃりと無残にも潰した。

 (あんな目ぇして……、俺の事見るんだよ……っ!!)

 ラミアはそっと自分の手に持っていた紙切れを見る。
 だが、忌々しいと思うように、またしてもくしゃりと握りつぶした。

 (あんな約束……知ったこっちゃねぇよ……、)

 
 「目」
 「……は?」

 レトの自室。
 ロクはぽつりと何か言葉を零した。

 「あの……って、え?」
 「目だよ、あの目」
 「あの目って……ラミア?」 
 「そうそう、あのラミアの目」
 「お前が言ってた、『訴えの声』がどうのってやつか?」
 「そう、それそれ」
 「……んで、お前は何をするつもりだ?」
 「……あのさ」
 「ん?」
 「ラミアの目……一見見ると、冷たそうな目してるじゃん?」
 「まぁ……な」
 「でも……」
 「……?」
 「でもあのラミアの目は、“寂しい目”」
 「寂しい目?」
 「ラミアはあんなに強く言い放ってるけど、すごく寂しそうな目、してる」
 「そうか?俺には分からん」
 「……ま、こっから本番だしねっ!!」
 「威勢が良くて良いぞー、ロク」
 「んじゃ行ってくるっ」
 「余計な事だけはすんなよー?」
 「はいはぁーいっ!!」

 ロクは元気な声を上げ、レトの自室から出て行った。
 勿論、先程食堂から姿を消したラミアを追って。

 「おっかしぃーなぁー……何処にもいないや……」

 だが、考えが安易すぎたのか、ラミアの姿は何処にもない。

 「ラミアー?おぉーいっ?」

 挙句の果て、ロクは蛇梅隊本部の屋上の扉を開けた。
 前方から襲うように吹き抜ける風。
 そんな心地よさを感じながら、ロクはその風の中を潔く、力強く進む。
 
 そして、屋上のフェンス近くにはラミアの姿が。

 嬉しそうに微笑み、ロクは歩み寄ろうとした。
 が、ロクは途中で足を止める。
 微笑んだ顔が、一気に冷めていく。

 そこで見たのは、今までのラミアではなく、


 泣き崩れ、伏せきって顔も見れぬラミアの姿。